SAFER 基地の見学と NRC リージョンIIIでの意見交換

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カテゴリ: 第14回
1.諸 言
SAFER施設はFLEX対応の第三段階として緩和機能を 無期限で維持するためサイト外から十分なリソースを得 るための方策として設置するものである。つまり発電所 からの要請を受けて24時間以内にFLEX機器を運ぶこと が必要となる。 今回,機械学会の訪米調査団として施設の視察調査を 行い,設備仕様や運用状況を確認した。 また,NRCリージョンIIIでは米国のFLEX戦略と原子 炉監視プロセスについて意見交換を行った。
2.SAFER 施設の仕様と運用
SAFER施設は米国内にフェニックスとメンフィスの2 カ所存在しており,今回の視察場所はフェニックスの対 応センターであった。(図1参照) Fig.1 Position of National SAFER Response Center in USA(at Phoenix and Memphis) 施設内にはFLEX 機器のセットは5つあり,4つの原子 炉施設と予備 1 セットである。具体的な設備の種類と仕 様を表1に示す。各機器の接続する配管口やケーブル接 続口は米国の原子力サイトで全て標準化されており,ワ ンタッチで接続が可能である。また,フェニックスとメ ンフィスのどちらからでも米国全ての原子力発電所に 24 時間以内に届けることが必要となる。このため,各FLEX 機器の形状と重量に制約がある。形状は輸送飛行機のカ ーゴで運べるもの,重量は中型のヘリコプターで運べる こと(8000ポンド≒3.6t)が条件となる。輸送方法はFedEx カスタムクリティカル社と契約することで,陸送,空輸 などあらゆる輸送手段を使用できるほか,専門的組織に より24時間,365日の輸送体制を確立している。 なお,FLEX設備は安全関連設備ではないため,SAFER 施設の条件として外部事象(地震,溢水,火山など)に 対する耐性はない。つまり,フェニックス,メンフィス の 2 カ所に施設を分散することで,外部事象による同時 機能喪失を避ける考えで冗長性を担保している。 Table.1 FLEX facilities.at SAFER ?4160Vケーブルトレーラー ?燃料移送ポンプ ?480Vケーブルトレーラー ?発電機テスト用負荷(抵抗器) ?ブースターホ?ンフ? ?淡水化装置 ?480V電源車(1MW) ?高圧ホース、低圧ホース ?480V遮断器(CB) ?HVACファン ?高圧注入ホ?ンフ?(60G/分) ?水タンク ?低圧SG注入ホ?ンフ?(500G/分) ?DEWATERホ?ンフ?(排水用) ?低圧注入ホ?ンフ?(2,500G/分) ?ボロン水撹拌タンク ?低圧注水ホ?ンフ?(5,000G/分) ?エアーコンフ?レッサー ?4160V電源車(1MW) ?可搬式照明 作者(アレバ社)を送り込み,現地で機能確認を行う。 SAFER施設からサイト近くのステージングエリアまで の移動は飛行機やトラックで運搬し,ステージングエリ ア~サイト内はヘリコプターで運搬(30 マイル以内)する。 保守については3 ヶ月毎に運転試験(30 分)を行い, 流量・温度確認,通水試験・出力試験などの性能確認を 実施し,運転データを記録している。 Fig.2 .Low Pressure-High Flow Pump(150psi/5000GPM) 3.NRCリージョンIIIとの意見交換 NRCリージョンIIIにおいて,米国のFLEX 戦略と原子 炉監視プロセス(ROP)について説明があり,実施状況 を確認するとともに意見交換を実施した。 (1)米国のFLEX 戦略 福島事故対応としてNRCは3つの命令を事業者に出し ている。これに対応するための事象緩和策や緊急時対策 のルール作成している。具体的には以下のとおり。 1)事象緩和策 事象(BDB)があった時の多様性ある柔軟に対応する。 Phase 1:8時間以内は恒設設備で対応する。 Phase 2:8~24時間以内はサイト内の可搬式バッテリー 等のFLEX 設備で対応。 Phase 3:24時間以降はERCやSAFERのサポートで対 応。 2)強化ベント Step 1:BWRのMark I,II型に対するWet Well Vent Step 2:BDB時のDry Well Vent,それ以外のPCV 保護 システム 3)SFP の水位計測強化 SFP 全体の水位を3段階で計測するが,電源・計測器 の独立性を確保したり,運転員アクセスにより計測器を 確認できる仕組みとしている。 FLEX 機器の保守についてはINPOのAP913(設備信頼 性プロセス説明書)活用している。また,保守,定期的 な試験はEPRIのテンプレートを活用している。NRCは 福島事故後の検査マニュアルを作成することを事業者に 要求し,SFP の水位計測,通信手段等に基づいて記載す るよう要求している。この検査マニュアルに基づいて訓 練,FLEX機器の保管,メンテナンスの状況等もチェック している。またBDBが起こった場合でも対応できるスタ ッフの人数の妥当性についても評価している。 米国ではROPが根付くまでは長い年月がかかっている。 ROP 以前のSALP は評価の仕方が統一されていなかった ことが問題であったが,ROP はリスクの要素を入れてプ ラントの評価を定量的に実施できるように改善している。 例えば,ポンプの検査で重要度に応じて何を検査するの か,どのようにサンプルを選択し,いくつ検査するか, どのポンプを検査するのかをリスクの考えを取入れ定量 的に考えるようにしたことが挙げられる。 また,手順の変更を進める中で公聴会をもち,ワーク ショップ等で産業界のフィードバックも求めてきた。こ のような取り組みにより,ROPは透明性及び客観性も持 つことで上手く根付かせている。 a.リスクインフォームドの浸透について SALP からROP にプロセスを変更したときに,既にあ る程度のPRAや故障率等を持っていたこと,NEIがガイ ダンスを定めていたことがスムーズな移行に寄与した。 日本と米国の大きな違いで重要な事は,NRCは独自の PRAを持っていること。NRC は各サイトに対してPRA を作っている。(SPARモデル) PRA評価は故障発生の有無に関わらず活用している。 例えば,リスクが高い系統は,故障するとCDF に大きな 影響を及ぼすので検査の頻度が多くするなどの判断に活 用している。 b.日本がROP制度を導入するにあたって NRCが言えることは規制側と事業者側のコミュニケー ションが大切であることである。プロセス変更のときに お互いの理解が深まればその後の判断等の話し合い時に も非常に役に立つ。情報をオープンにすることも重要。 4.まとめ 米国SAFER施設の視察調査を行い,設備仕様や運用状 況を確認した。また,NRC リージョンIIIにおいて米国の FLEX戦略と原子炉監視プロセス(ROP)の実施状況を確 認し,意見交換を行った。 - 445 - (2)ROPについて“ “SAFER 基地の見学と NRC リージョンIIIでの意見交換 “ “山崎 謙吾,Kengo YAMAZAKI
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