シビアアクシデント時のプラント挙動予測について

公開日:
カテゴリ: 第14回
1.緒言
泊発電所においては、福島第一原子力発電所の事故の 教訓から、シビアアクシデント(SA)に至りうる種々の 事故シナリオを想定した事故対策を施してきた。他方で、 多重防護の観点から、万が一のSA発生時を想定し、政府 や自治体も含めた発電所内外における対応能力を高める ための防災訓練を繰り返し実施している。 SA発生時における炉心損傷、原子炉容器(RV)破損、 原子炉格納容器(CV)破損といった一連のプラント挙動 の時間予測は、防災訓練において関係各所の意思決定の 前提となる重要なアクション事項であることから、事象 進展に応じて速やかに定量的な予測データを提示するこ とが求められる。現状、上記のような事前予測データと しては、一次冷却材喪失事故(LOCA)や全交流動力電源 喪失(SBO)などいくつかの代表的なシナリオベースで のデータがあるが、防災訓練の典型的なシナリオとして、 事象発生から一定時間経過後に安全設備が機能喪失する といった事象進展の様々なバリエーションにまでは必ず しも対応できていなかった。 今回は、SA に至る事故シナリオとして代表的なLOCA 事象について、泊3号機において事故発生後に一定の時 間が経過してから、非常用炉心冷却設備(ECCS)やCV スプレイ設備などの安全設備が機能喪失に至るような事 象進展データをテーブルとして整備した。
2.検討結果
2.1 想定シナリオについて 想定する事故シナリオとしては、一次冷却材配管両端 破断の大LOCA及び2インチ破断の小LOCAの発生を事 故発生時間t=0とし、安全設備の機能喪失(ECCS 注水 機能及びCVスプレイ注水機能、再循環機能、2次系除熱 機能の喪失)として、事故発生後経過時間t=0~24時間 までをSA時に想定される物理現象のモデルを備えてい るプラント挙動計算コードであるMAAP コード[1]により 解析し、予測方法を検討した。 2.2 解析結果について 小LOCA及び大LOCA発生後、一定時間経過後に安全 設備が機能喪失し、新たに整備したSA対策設備(代替炉 心注水設備、代替格納容器スプレイ設備など)も作動しない場合の炉心露出、炉心溶融開始、RV破損、CV圧力 2Pd(最高使用圧力の2倍)到達(CV破損を想定)の MAAP コードによる各予測時間を図1及び図2に示す。 これらの結果から、以下のように考察できる。 - 446 - ==0~24時間における任意のtに対する炉心露出、炉心溶 60融開始、RV破損、CV圧力2Pd到達の各予測時間につい 炉心露出 50炉心溶融開始 ては、以下の方法で求めることとした。 原子炉容器破損 1 t=0~2時間:t=0及び2時間における予測時間の 40CV圧力2Pd到達 直線内挿値 302 t=2時間~24時間:t=2時間及び24時間における 20予測時間の直線内挿値 102.4 小LOCA及び大LOCA発生時の予測時間の比 較 00 2 5 10 15 20 25 一般的に小LOCAと大LOCAを比べると、直感的には 安全設備の機能喪失時間 t 大LOCAの方が事象としては厳しく、炉心露出、炉心溶 図1 小LOCA発生時の予測時間 融開始、RV 破損の各予測時間は予測通り大LOCAの方 が短い結果となった。しかしながら、CV圧力2Pd到達時 60間は小LOCAの方が短い結果となった。 炉心露出 50炉心溶融開始 原因については確認中だが、破断口径の違いによる再 原子炉容器破損 40CV圧力2Pd到達 循環切替時間の相違が一因として考えられる。大LOCA の方が破断口径が大きいために再循環切替水位に到達す 30る時間は早い。また、再循環運転に移行した後は循環水 20が余熱除去冷却器及び格納容器スプレイ冷却器を介して 10除熱される。このため、大LOCAの方が早期に再循環運 00 2 5 転に切り替わり、CV内に蓄積されるエネルギー(崩壊熱) 10 15 20 25 がより多く系外(最終ヒートシンク)に持ち出されるこ 安全設備の機能喪失時間 t とでCV 圧力が2Pdに到達する時間が遅くなっている可 図2 大LOCA発生時の予測時間 能性がある。 2.3 プラント挙動予測時間について 3.結論 安全設備の機能喪失時間t=2時間~24時間においての SA発生時における炉心露出、炉心溶融開始、RV破損 各予測時間は、ほぼ直線に合致した傾向となっており、t 及びCV 破損の時間予測を、MAAP コードを用いて解析 に応じた一次式による予測(直線内挿)が可能である。 した。解析は小LOCAもしくは大LOCA発生後、0~24 これは、時間の経過と共に炉心の崩壊熱が減衰していく 時間経過後に安全設備が機能喪失する場合を条件とし、0 こと、及び安全設備が機能喪失するまでの間の再循環冷 ~2時間及び2時間~24時間の解析結果を直線内挿する 却によりCV内のエネルギーが一定の割合で除去される ことで時間を予測できる見通しを得た。 ことによるものであり、妥当な結果と思われる。一部の 今後は特異点の原因究明、予測精度の向上、解析条件 解析結果は一次式による直線内挿から外れているが、こ の精緻化及びLOCA事象以外の解析を実施し、SA発生 れはMAAP コードによる不確かさであると考えられ、t 時における対応能力の向上を継続的に行っていく。 を変更することで予測時間が特異的に変化することは考 えにくいことから直線内挿のデータとしては除くことと 参考文献 する。 [1] 「三菱PWR重大事故等対策の有効性評価に係るシ また、t=0~2時間においては、一部特異な点があるが、 ビアアクシデント解析コードについて」 t=0からt=2にかけて各々の予測時間は一律に増加する MHI-NES-1064 改1,三菱重工業,平成28年 傾向となっている。従って、安全設備の機能喪失時間t - 447 -“ “シビアアクシデント時のプラント挙動予測について “ “坂本 浩之,Hiroyuki SAKAMOTO,青木 彦太,Genta AOKI
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)