制御棒駆動系スクラム入口弁グランド部漏えい事象 における原因調査および対策について

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カテゴリ: 第14回
1.緒言
平成28年10月21 日、プラント停止中の東通原子力発電所1号機において、系統保管状態であった制御棒駆動系のスクラム入口弁のグランド部より漏えいが発生した。 本事象における原因調査および対策について概要をご紹介する。2.制御棒駆動系の系統概要 制御棒駆動系(Control Rod Drive System ; CRD 系)は、炉心における核反応を制御するために、 (1)原子炉手動制御系からの信号による制御棒の通常駆動(挿入および引抜) (2)原子炉保護系からのスクラム信号による制御棒の緊急挿入を行う系統であり、制御棒、制御棒駆動機構、制御棒駆 動水圧系から構成される(図1 参照)。 制御棒は、原子炉出力分布の調整、および炉心反応度 の制御を行うためのもので、東通原子力発電所1号機の場合は、原子炉内に185 体設置されている。 制御棒駆動機構は、制御棒を炉心に挿入または引抜き し、適当な位置に固定するためのもので、水圧ピストン 構造となっており、制御棒1 体につき1台ずつ、原子炉 容器下部に設置されている。 制御棒駆動水圧系は、制御棒駆動機構に必要な圧力・ 流量の水を送るためのもので、ポンプ、水圧制御ユニット、計測制御装置などから構成される。 水圧制御ユニットは、制御棒駆動機構1台につき1組設けられており、方向制御弁、スクラム入口弁、スクラム出口弁、アキュムレータおよび窒素容器等で構成され る。原子炉手動制御系の信号により方向制御弁が動作することで駆動水を制御棒駆動機構に送り、制御棒を所定 の位置に移動させたり、原子炉保護系のスクラム信号によりスクラム弁を動作させ、窒素容器に蓄えた圧力で制御棒を急速挿入させるものである(図2,3 参照)。 Fig.1 Outline of Control Rod Drive System Fig.2 Hydraulic Control Unit Fig.3 Scram inlet valve
3.スクラム入口弁グランド部からの漏えい 東通原子力発電所1号機では、プラントの長期停止に 伴い、原子炉内の燃料集合体を全て燃料プール側へ移動 済みであり、CRD 系の機能要求がなくなったことから、 平成26年6月より、月1回の通水運転時以外は系統を停 止していた。 平成28年10月21 日(CRD 系は停止中)、1台のスク ラム入口弁のグランド部(弁棒と弁蓋の間)からの漏え い(床面への滴下)が発見された。現場確認の結果、そ の他のスクラム入口弁グランド部からも漏えい(滴下ま たはにじみ)が確認されたため、全185台のスクラム入 口弁について、前後弁を全閉し隔離した。その結果、漏 えいは停止し、最終的にグランド部からの漏えいが確認 されたスクラム入口弁は7 台で、漏えいした水からは放 射性物質の検出はなかった。 スクラム入口弁のグランドパッキンには、テフロンV パッキンが使用されている。 Vパッキンは断面が「V」の形をしており、内圧が高いほ どパッキンが広がり、面圧が上がることでシール性が高 まるが、内圧が低い状態ではパッキンが広がる力が弱く 面圧が下がり、シール性が低下する(図4参照)。 Fig.4 Sealing characteristics of V packing - 456 - 4.原因調査 4.1 要因分析 本事象の原因を検討するため、要因分析を実施した。 その結果、「グランド締付ボルトのかじりまたは締付不 足」、「温度」、「圧力」、「異物噛み込み」、「腐食による経 年劣化」が推定要因として可能性ありと判定されたため、 4.2 以降に示す調査を実施した。 4.2 グランドパッキン仕様調査 また、当該パッキンの材料であるテフロンPTFE につ いて調査したところ、10~20°C付近において体積変化し やすい特性が確認された。 4.3 温度調査 事象発生当時は、以下の理由から、スクラム入口弁お よびその周囲の温度が通常(24°C設定)より低くなって いたと考えられる。 (1)建屋空調の冷暖切替の時期であったが、暖房に使用 する補助ボイラーの点検の都合から、切替時期が当 初予定より遅れていた。 (2)数日前より急激に冷え込む日が続き、外気温が低下 していた。 事象発生当時のスクラム入口弁およびその周囲の温度 は記録されていないが、外気温および空調の運転状況等 が類似した日の測定結果から、スクラム入口弁温度は16 ~18°C程度、周囲温度は18~19°C程度の低温環境にあっ たと推定された(表1参照)。 Table 1 Result of temperature measurement 4.4 圧力調査 スクラム入口弁グランド部に作用する圧力は、プラン ト運転時には約7MPa 以上、プラント停止時のCRD 系通 水運転時では約0.21MPa 以上である。また、CRD系を停 止する場合、制御棒の誤作動防止等の目的で、通常は各 スクラム入口弁の前後弁を全閉とするため、スクラム入 口弁グランド部にはほとんど圧力がかからない状態とな る。事象発生当時、CRD 系は停止していたが、平成26年 9月より各スクラム入口弁の前後弁を全開とし、185台の 水圧制御ユニットに水を送る元弁を全閉とすることで制 御棒の誤動作を防止する運用としていたため、スクラム 入口弁グランド部には、約0.15MPa の原子炉水の水頭圧 が作用していた(図5参照)。これは上述の運用特有の状 態であり、前後弁を全閉する場合を除き、通常スクラム 入口弁に作用する圧力よりも低い低圧環境にあった。 Fig.5 Section where water head pressure is applied 4.5 漏えい確認試験 事象発生当時漏えいが確認された7台および比較対象 として同日漏えいが確認されなかった1台(以下「比較 対象弁」という。)の計8台について、前後弁を全開にし、 漏えい確認試験を行った。漏えい確認試験時は、建屋空 調が暖房に切替済みであったが、冷却スプレーをスクラ ム入口弁に噴射することにより、グランド部の温度低下 の影響を調査した。 4.6 分解点検 グランド締付ボルトのかじりまたは締付不足、異物噛 み込み、腐食等の有無を確認するため、漏えい確認試験 を実施したスクラム入口弁8 台(事象発生当時漏えいが 確認された7台および比較対象弁1台)について、分解 点検を実施した。 分解点検の結果、スクラム入口弁の部材や組立状態に 異常はなかった。 5.推定原因および対策 5.1 推定原因 原因調査の結果、今回の事象は、以下の要因の重畳に より、複数台からの漏えいに至ったものと推定された。 (1)スクラム入口弁グランド部のVパッキンは、圧力が 低い状態ではシール性が低下する特性があるが、事 - 457 - 漏えい確認試験の結果、いずれのスクラム入口弁につ いても、前後弁を全開後、グランド部の温度が高い状態 (約24°C)においては漏えいは発生せず、グランド部を 冷却(約18°C、比較対象弁は約11°C)したところ、漏え いが発生した。 象発生時は炉水の水頭圧のみがグランド部に加わる 低圧環境であり、漏えいが発生しやすい状態にあっ た。 (2)事象発生日付近は暖房切替前かつ外気温が低い日が 続いたことで、スクラム入口弁周囲が低温環境とな り、それに伴いグランド部の温度が体積変化の大き い温度まで低下してグランドパッキンが収縮しシー ル性が低下した。 5.2 対策 本事象は上述のとおり、低圧環境と低温環境の重畳に より発生したと推定されたことから、対策としては、ス クラム入口弁グランド部に原子炉の水頭圧が作用する低 圧環境を取り除くため、CRD 系停止時は、通常停止時と 同様にスクラム入口弁の前後弁を全閉する運用へ変更す ることとした。 6.結言 東通原子力発電所1号機において発生したスクラム入 口弁グランド部からの漏えい事象について、原因調査お よび対策の概要をご紹介した。 現在は、今回の事象のようにプラント長期停止中の特 殊な系統運用によりグランド部のシール性が低下して漏 えいに繋がる箇所がないか、検討を進めているところで ある。 - 458 -“ “制御棒駆動系スクラム入口弁グランド部漏えい事象 における原因調査および対策について“ “筒井 光男,Mitsuo TSUTSUI,川村 典久,Yoshihisa KAWAMURA
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