福井県における原子力機構によるレーザー研究開発と産業振興

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カテゴリ: 第14回
1.緒言
平成23年3月11日の東日本地震より 6 年半が経過する。この際の福島原子力発電所事故を教訓として、高経年化原子炉の再稼動には保守保全に対する規制の考え方 の改革と保守保全技術の高度化が指摘されている [1]。 高経年化原子炉の保守保全技術の高度化或いは廃止措置の推進の長期的・効果的な推進にとって、地域産業の支援は不可欠である。技術開発を進めるにあたっても、地域産業の活性化が明確に認められることが、長期的プロジェクトにとって必要である。これは原子力が社会科 学の面を強く持つが故の宿命である。 福井県敦賀市を中心として活動するレーザー共同研究所は、レーザーや光学に関する応用技術を原子力分野に活用することを目的としている。その中で、原子力のもつ技術課題を地域の企業の技術やノウハウを最大限取り入れる事業として、平成22年より「技術課題解決促進事業」と称した試みを実施してきた [2]。これは定期的に開催するセミナーの中で、その時の原子力機構の最も旬な課題を提示し、地域の企業と連携して解決に取り組むという公募型の制度である。これまで取り組んだ課題の中で、流れ加速腐食により減肉する熱交換器伝熱管の内壁の肉盛補修装置の開発などは、本事業によるところが大である [3]。 本報では、本事業が取り組む現在の課題を中心に紹介 するとともに、今後の地域産業との連携において重要となる視点について報告する。
2.2017 年度の技術課題
2017 年度の技術課題解決促進事業では、原子炉廃止措置に関する課題とプラントの保守保全に関する課題の計 7 件の技術課題が公募された。ここではその中で、レーザー共同研究所から提案した 4 つの技術課題について紹介する。いずれの課題もレーザーの活用範囲を拡充するための小規模の試作品であり、地域のモノづくりの技術の力を引き出す課題である。
2.1 レーザーを用いた配管肉盛補修用の金属粉体 供給機構の試作 レーザー共同研究所では、レーザーを用いた配管の溶 接補修技術を重要と考え、遠隔操作可能な配管溶接補修 システムの開発を継続している。 Fig.1 A look of laser beam build-up welding using welding wire. The operator has to confirm the matching of the laser focus, end of wire and the surface to be build-up welded. 連絡先:古澤彰憲、〒914-8585 福井県敦賀市木崎 65-20、日本原子力研究開発機構敦賀事業本部レーザ ー共同研究所、E-mail : akinori.furusawa@jaea.go.jp - 479 - レーザー出力やアシストガス流量等を制御する一連の数 これまでの減肉配管内壁の肉盛溶接補修では、配管内 部に溶接用ワイヤを供給する方法により一定の成果を得 値計算スキームである。これまでに静的環境における、 ている[3]。しかしながらこの方法では、レーザー焦点、 同適応制御アルゴリズムの有効性検証を終え、今後は多 ワイヤ先端および減肉部表面の 3 点の位置を一致させる 関節ロボットアームを用いた環境での実行可能性検証を 必要があり、制御が不安定となる(Fig.1)。より安定とな 継続する予定である。 る方法として、金属粉体を用いて減肉部位の溶接補修が ロボットアームを用いて 3 次元的にレーザー溶断を行 可能かを検証するため、垂直にたてた配管内壁の減肉部 う場合、ドロスやスパッタと呼ばれる溶融金属の回収が 位に金属粉体を供給保持可能な機構の検討および試作に 問題となる。そこで、ロボットアーム先端に設置可能で 取り組む(課題1)。 あって、ドロスやスパッタを効率的に回収する治具の試 作および運用方法の検討を行う(課題4)。 2.2 配管への FBG センサ取付板と実証のための小 型熱交換ループの試作 3.まとめと今後の展開 レーザー共同研究所で研究開発している FBG センサは 本報では、日本原子力研究開発機構敦賀地区にて行わ ファイバ内部にパルスを照射して回折格子を設ける仕様 れている「技術課題解決促進事業」における 4 課題につ となっている。この仕様のため高温配管への適用が可能 いて紹介した。同取り組みによって福井県における原子 であり、この FBG センサを配管に貼り付け、高温配管の 力技術、プラント保守保全技術に関連する産業振興と産 温度および歪の常時モニタリングへの適用を目指してい 業界との技術交流を促進しており、本事業から共同研究、 る。しかし、同センサは光ファイバの保護層を剥がして 特許取得、商品開発まで発展した事例もある[2]。 直接コア部を配管に貼り付ける必要があるため、壊れや 平成22年度からの活動実績としては、課題解決事業の すく取り付け作業時の作業性が悪い。金属板を用いた治 総採択件数が 51 件、採択社数がのべ 67 社、そのうちレ 具を試作しこの課題を回避することを検討中である。各 ーザー共同研究所から提案した課題は19件、採択社数は 種配管径に適用可能であって、保護層を除去した光ファ のべ22社である。採択件数に対して採択社数が多いのは、 イバを物理的に保護可能な金属性治具の試作および有効 1つの課題に対して複数社の採用をしているためである。 性検証に取り組む(課題2)。 原子炉の保守保全や廃止措置のような地域密着型の事 加えて前節の FBG センサ取り付け板の実証のために、 業においては地域産業との連携は重要である。本事業の 高温を維持出来る試験用の循環系配管設備が必要である。 企画立案と推進は、敦賀連携推進センター産学連携推進 実験室で容易に操作可能な小型循環系配管を製作し、FBG 室によって実施されてきた。センターでは今後も適切な センサを含めた種々のセンサによるベンチマークが容易 課題を提示することで、地域産業の創出と育成を目指し な形状が望ましい。具体的には、循環系配管の一部をヒ た活動を継続する。 ーターにより加熱し、他の一部は冷却を施し、熱歪によ り変形を生じさせる。配管のエルボ部分には FBG センサ 取り付け板をスポット溶接で取り付ける。配管内部には 参考文献 耐熱オイルや低融点金属を充填することで、自然対流に [1]日本保全学会,“原子力発電所の保全における補修等 よる循環が生じる。配管の一部には流動状態が観察可能 是 正 措 置 技 術 活 用 の た め の 課 題 と 改 善 案 , な光学窓を設ける(課題3)。 (2017.5.31アクセス), http://jsm.or.jp/jsm/images/at/report/jsm_rap_001.pdf 2.3 レーザー溶接時スパッタ回収装置の検討・試 [2]技術課題解決促進事業HP, (2017.5.31アクセス), 作 http://jaeasoudan.jp/technology/promotion/index.html レーザー共同研究所では、レーザー加工適応制御アル [3] 寺田, 西村ら, “レーザー加工トーチを用いた配管表 ゴリズムを開発している。レーザー適応制御アルゴリズ 面肉盛溶接技術の研究”, 保全学, Vol. 13, No. 4, 2015, ムとは、レーザーヘッド周囲に設置した各種センサでレ pp.87-94. ーザー加工状態をリアルタイムにフィードバックさせ、 - 480 -“ “福井県における原子力機構によるレーザー研究開発と産業振興 “ “古澤 彰憲,Akinori FURUSAWA,竹仲 佑介,Yusuke TAKENAKA,西村 昭彦,Akihiko NISHIMURA,水谷 春樹,Haruki MIZUTANI,村松 壽晴,Toshiharu MURAMATSU
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