電磁超音波を用いた減肉モニタリングシステムの 福島第一原子力発電所4号機使用済燃料プール冷却配管への適用

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カテゴリ: 第14回
1.緒言
福島第一原子力発電所(1F)の廃止措置において,燃料および燃料デブリの再臨界を防止し放射能の外部放出を抑制するため,冷却システムにより原子炉および全シ ステムの熱的安定を確保することが重要である.冷却システムの配管では流れによる腐食減肉の加速が可能性として懸念されるため,システムの安全性を維持するには,配管減肉の管理が必要となる.現在,超音波 厚さ計(UT)による配管肉厚測定を実施しているが,測定員の被ばくが増大する要因となっている.腐食減肉を合理的に管理する方法として,システム全体の腐食減肉状態を予測評価するため腐食減肉が予想される代表点での減肉モニタリングがある.我々は減肉モニタリングの技術として電磁超音波探触子(EMAT, electromagnetic acoustic transducer)による配管減肉評価を提案している.EMATを用いた電磁超音波共鳴法とN周期加算法による信号処理を組み合わせた肉厚測定法による減肉モニタリングは,配管減肉の初期段階では高精度の肉厚評価が可能であることを示した[1]. 本研究では,廃止措置段階の原子炉建屋内の配管減肉モニタリングにEMATシステムを導入するために,比較的放射線量の少ない1Fの4号機使用済燃料プール循環冷却装置一次系配管においてモニタリング性能を評価する.EMAT による配管肉厚測定に遠隔操作機能を付加し,配管の減肉傾向を放射線の影響のない遠方より連続モニタリングすることが可能なシステムを構築する. 2.EMAT 減肉モニタリングシステムの概要
EMAT 減肉モニタリングシステムは,アルミケースでシールドしたEMAT プローブ,プリアンプを内蔵し最大 10ch のプローブ切替機,バースト波を発信するパルサーレシーバー(RPR-400,RITEC社製),受信信号をFFT 解析するFFT 計測用A/D変換ユニット(IDMSユニット, インサイト社製),システムを制御する制御用PC および 遠隔操作するモニタ用PCから構成される.パルサーレシ ーバー,FFT 計測用A/D変換ユニット,プローブ切替機, 標準試験配管および制御用PCはプローブから約2m離れ た防湿庫に収納する. LANケーブルで繋がれた発電所内の管理建屋に設置し たモニタ用PCにより,測定現場の制御用PCを遠隔操作 する.プログラムによりプローブ切替機で自動的に送受 信プローブを切替え,パルサーレシーバーからバースト 波を発信し,FFT 計測用A/D 変換ユニットで受信信号に 含まれるFFT スペクトル強度を求める. Fig.1 に示すように,EMAT プローブは黒い樹脂バンド で固定されている.測定箇所は発電用原子力設備規格 JSME S NH1-2006 により減肉が予想されるオリフィス下 流側配管(No.1~4プローブ)と,その比較としてオリフ ィス上流側配管(No.5~8プローブ)とし,配管周方向に それぞれ4ケのEMAT プローブを設置する.また,標準 試験片として新品の配管の肉厚(No.9 プローブ)を測定 してシステムの異常を感知することとする. 肉厚測定は一日一回としプログラムで指定した時間に 自動で実施され,測定データからN周期加算法[1]により 肉厚を求める. 3.減肉モニタリング測定経過 Fig.2 にオリフィス下流側配管の 2017 年 2 月 14 日~4 月 4 日までの No.1~4 プローブの減肉モニタリングの経 過を示す.測定期間中の減肉による肉厚の変化は認めら れない.モニタリング開始後の2月22日~27日にオリフ ィス配管内の掃除及び弁点検のため水抜き作業を実施し ている.この作業実施期間中に No.2 と No.3 プローブの 受信信号にノイズ信号が発生して測定肉厚が変化したた め,プローブの取付け直しを実施した.その後,測定期 間中に測定値に変化が見られていない. オリフィス下流側の腐食減肉が予想される No.1~4 の 肉厚測定値は,それぞれ 6.37mm,6.10mm,6.65mm, 6.63mm であり測定配管の公称肉厚 7.1mm に対して薄く 評価されている.また,オリフィス上流側の No.5~8 の 肉厚測定値は,それぞれ 6.42mm,6.39mm,6.72mm, 6.47mmであり,期間中の肉厚変化はなかった. オリフィス下流側では上流側と比較して,底面の形状 変化の指標になる正規化SNCピーク値[1]が低く,内面に 減肉による凹凸若しくは傾斜があると推測される. Ψ??Ρη?????Δ?????? Fig.2 Results of wall thickness evaluation of piping at downstream of orifice 4.まとめ EMAT減肉モニタリングシステムを1Fの4号機使用済 燃料プール循環冷却装置配管に適用してモニタリング性 能を評価した.長期のモニタリングを実施し,システム の測定精度やシステムの長期計測安定性などを評価する. 謝辞本研究の一部は,「文部科学省英知を結集した原子力科 学技術・人材育成推進事業」により実施された「廃止措 置のための格納容器・建屋等信頼性維持と廃棄物処理・処 分に関する基盤研究および中核人材育成プログラム」の 成果である.本研究の一部は,独立行政法人日本学術振 興会の研究拠点形成事業(A.先端拠点形成型)「省エネル ギーのための知的層材料・層構造国際研究拠点」の助成を 得た.また, プローブ設置にあたりウツエバルブサービス 株式会社にご尽力を頂きました.ここに感謝の意を表す. 参考文献 [1] T. Takagi, R. Urayama, T. Uchimoto, T. Ohira and T. Kikuchi, “Pipewall thinning inspection using EMAT”, Nuclear Engineering International, August 2013, pp.18-21. Fig.1 Installation of probes - 490 -“ “電磁超音波を用いた減肉モニタリングシステムの 福島第一原子力発電所4号機使用済燃料プール冷却配管への適用“ “高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI,内一 哲哉,Tetsuya UCHIMOTO,浦山 良一,Ryoichi URAYAMA,鈴木 聡則,Akinori SUZUKI
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