オーステナイト系ステンレス鋼の微視的残留応力の回折面依存性
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カテゴリ: 第14回
1. 緒 言
結晶弾性異方性を持つ結晶子の互いの方位差により生ずる微視的応力は粒間応力と言われ、粒間ひずみは格子面(回折面)によるひずみ差、すなわち格子面依存性を持つ。その微視的残留応力としての粒間ひずみは、塑性変形によって発生する。これまで、オーステナイト系ステンレス鋼の塑性変形を伴う応力-ひずみ挙動を中性子を利用したその場観察により、多結晶体の弾性異方性、格子面依存性を研究してきた。これらの一方向引っ張りによる変形挙動の研究では、弾性異方性が相互作用しながら変形することが確かめられている。結晶弾性異方性の挙動をセルフコンシステントモデルにより説明する研究もある。 粒間ひずみの発生が、残留応力の形成にどのように影響しているかを研究するために、著者らは多数の格子面を利用して塑性変形による残留応力を測定し、塑性変形量、ひずみ速度と格子面依存性について研究した。塑性による残留応力は格子面により大小の傾向があり、それはKr¨onerモデルによる回折弾性定数で説明することができる。その格子面依存性は、ウォータージェットピーニングを受けた面においても同様の傾向が認められた。これらのことは、オーステナイト系ステンレス鋼の微視的残留応力は、結晶異方性と塑性変形により発生することを示している。 一方、これまでの塑性変形による微視的残留応力の格子面依存性の研究は、引張方向とその垂直方向における格子面依存性を研究してきた。しかし、粒間応力が多結晶体の中でどのように釣り合っているのか、その全体像を捉えたわけではない。本研究では、単軸塑性変形させた平板試験片を用意して、変形方向に対して方位を変化させながら各格子面ひずみを測定した。その結果、塑性変形による粒間ひずみの挙動がわかったので報告する。
2. 実験方法
[1] M.R. Daymond, C.N. Tome and M.A.M. Bourke, ? Measured and predicted intergranular strains in tex- ture austenitic steel ?, Acta Materialia, Vol. 48, 2000, pp. 553-564.“ “オーステナイト系ステンレス鋼の微視的残留応力の回折面依存性“ “鈴木 賢治,Kenji SUZUKI,菖蒲 隆久,Takahisa SHOBU
結晶弾性異方性を持つ結晶子の互いの方位差により生ずる微視的応力は粒間応力と言われ、粒間ひずみは格子面(回折面)によるひずみ差、すなわち格子面依存性を持つ。その微視的残留応力としての粒間ひずみは、塑性変形によって発生する。これまで、オーステナイト系ステンレス鋼の塑性変形を伴う応力-ひずみ挙動を中性子を利用したその場観察により、多結晶体の弾性異方性、格子面依存性を研究してきた。これらの一方向引っ張りによる変形挙動の研究では、弾性異方性が相互作用しながら変形することが確かめられている。結晶弾性異方性の挙動をセルフコンシステントモデルにより説明する研究もある。 粒間ひずみの発生が、残留応力の形成にどのように影響しているかを研究するために、著者らは多数の格子面を利用して塑性変形による残留応力を測定し、塑性変形量、ひずみ速度と格子面依存性について研究した。塑性による残留応力は格子面により大小の傾向があり、それはKr¨onerモデルによる回折弾性定数で説明することができる。その格子面依存性は、ウォータージェットピーニングを受けた面においても同様の傾向が認められた。これらのことは、オーステナイト系ステンレス鋼の微視的残留応力は、結晶異方性と塑性変形により発生することを示している。 一方、これまでの塑性変形による微視的残留応力の格子面依存性の研究は、引張方向とその垂直方向における格子面依存性を研究してきた。しかし、粒間応力が多結晶体の中でどのように釣り合っているのか、その全体像を捉えたわけではない。本研究では、単軸塑性変形させた平板試験片を用意して、変形方向に対して方位を変化させながら各格子面ひずみを測定した。その結果、塑性変形による粒間ひずみの挙動がわかったので報告する。
2. 実験方法
[1] M.R. Daymond, C.N. Tome and M.A.M. Bourke, ? Measured and predicted intergranular strains in tex- ture austenitic steel ?, Acta Materialia, Vol. 48, 2000, pp. 553-564.“ “オーステナイト系ステンレス鋼の微視的残留応力の回折面依存性“ “鈴木 賢治,Kenji SUZUKI,菖蒲 隆久,Takahisa SHOBU