BWRプラントにおける 上部格子板の照射誘起応力腐食割れ評価の適正化
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カテゴリ: 第14回
1.概要
原子炉圧力容器内部構造物(炉内構造物)は10年毎に 定期安全レビュー(PSR評価)及び運転開始後30年を迎える際に高経年化技術評価(PLM 評価)を実施することが高経年化技術審査マニュアル[1]に規定されており、原子炉圧力容器や炉内構造物等を評価対象として経年変化に 関する技術評価を実施してきた。この評価では、照射誘起応力腐食割れ(IASCC)に関する評価についても実施し健全性を確認してきた。 BWRにおいてIASCCが想定されるオーステナイト系ステンレス鋼製炉内構造物として、上部格子板、炉心シュラウド、炉心支持板等が挙げられる(Fig.1)。特に、上部格子板は供用期間中の中性子照射量が高いこともあり、 評価条件の適正化を行い合理的な評価手法を確立することが望まれている。 この課題を解決するため、BWR電力各社とプラントメーカは共同研究「実機炉内構造物における照射影響評価手法の高度化研究」を2014年度下半期から2016年度に実施した。ここでは、この研究成果のうち、上部格子板の構造健全性評価の適正化について報告する。 Core Shroud(炉心シュラウド) Core Plate(炉心支持板)
2.PLM 評価の変遷と評価条件の整理
2.1 PLM 評価の変遷
当初、PLM評価における上部格子板の健全性評価では、 亀裂進展評価は行わず、破壊評価のみを実施していた。 その後、原子力安全・保安院「発電用原子力設備におけ る破壊を引き起こす亀裂その他の欠陥の解釈について」[2] (以下「亀裂の解釈」という)が制定されてからは、亀 裂の解釈に示されるシュラウド等の欠陥評価手法と同様 に、亀裂進展評価により求めた亀裂寸法での破壊評価を 実施している。 ここで、亀裂進展評価に用いる亀裂進展速度は、亀裂 の解釈に示されるシュラウド等の評価方法に準じて、鋭 敏化SUS304鋼のSCC進展速度線図を用いていた。しか し、近年のPLM 評価における亀裂進展評価では、維持規 格[3]の「表添付E-2-SA-1 オーステナイト系ステンレス鋼 のBWR 炉内水質環境中のSCC 進展速度(中性子照射量 が5.0×1024n/m2(E>1MeV)を超える場合)」の亀裂進展 速度線図(以下「IASCC 進展速度」という)を用いてき た。 2.2 過去に実施されたPLM評価の条件整理 2.1 項に記載したように現在の上部格子板の健全性評 価は、IASCCを想定した亀裂進展評価及び破壊評価を実 施している。一般的な健全性評価の流れをFig.2 に示す。 Fig.2に示したように、亀裂進展評価では、材料表面に初 期亀裂を想定し、通常運転時の応力による評価期間中の SCC進展量を評価する。また、Fig.3に示したように初期 亀裂の想定箇所は、照射量の高い下側グリッドプレート の下側ノッチ部の下端としており、板厚貫通時に亀裂形 状の置換えを実施している。破壊評価では、亀裂進展評 価により得られた亀裂寸法により地震時の応力拡大係数 を求め、求めた応力拡大係数が対象部の中性子照射量に 応じた破壊靱性値未満であれば、破壊は発生しないと評 価する。 2.3 亀裂進展評価及び破壊評価におけるプラント 間の相違内容と課題 過去に実施されたPLM評価について、代表2プラント の評価条件の調査の結果、以下に示す課題が確認された。 (1) 考慮する応力(亀裂進展評価/破壊評価) 差圧による応力は、下側グリッドプレートの下側ノッ チ部の下端に亀裂を想定した場合、亀裂を閉じる方向に 作用するため、検討する必要がある。 Fig.2 IASCC evaluation flow Fig.3 Model of IASCC development (2) 応力算出位置(亀裂進展評価/破壊評価) 上部格子板は位置により発生する応力が異なる構造で ある。したがって、下側グリッドプレートの下側ノッチ 部の下端に亀裂を想定する場合、応力の算出位置を検討 する必要がある。 (3) 初期亀裂形状(亀裂進展評価) 1/4 楕円亀裂を初期亀裂と想定した形状とした場合と、 下側グリッドプレートの下側ノッチ部を亀裂の一部とし て評価をした場合があるため、適切な評価形状を検討す る必要がある。 (4) 初期亀裂寸法(亀裂進展評価) 初期亀裂寸法は、(3)に記載した評価形状の相違内容と 関連し、どのような亀裂寸法を想定するか検討する必要 がある。初期亀裂寸法は、維持規格において他の炉内構 造物の評価に使用されている亀裂深さ50μm、亀裂長さ 亀裂想定位置 下側ノッチ部 置換え 初期亀裂 - 10 - 500μmに準じているが、その妥当性を確認する必要があ る。 (5) 中性子束(亀裂進展評価) 亀裂進展速度のパラメータである中性子束は、中性子 束が最大となる下側グリッドプレートの下側ノッチ部の 下端の値を用いた保守的な評価や、実機の中性子照射条 件を考慮し亀裂先端位置に応じて中性子束を変動させた 値を用いた評価が考えられる。このため、適用する中性 子束についても適正化する必要がある。 3.上部格子板の評価適正化に向けた検討 2.3 項に記載した各項目に関して試評価を通して、妥当 性を確認した。本項では亀裂進展評価に関する評価を3.1 項に、破壊評価に関する評価を3.2項にて報告する。 3.1 亀裂進展評価 (1) 考慮する応力 通常運転時にグリッドプレートに作用する荷重は、死 荷重と差圧による荷重である。下側グリッドプレート中 央の下端に亀裂を想定した場合、死荷重による応力は想 定亀裂を開く方向に作用し、差圧による応力は想定亀裂 を閉じる方向に作用する。本項では、差圧による応力が、 亀裂進展評価に与える影響について検討した。 上部格子板の亀裂進展評価に用いる死荷重と差圧によ る荷重を、Table 1に示す。Table 1に示すように、死荷重 と差圧による荷重の比率は最大でも8%程度であり、評価 条件として差圧を考慮しなくても結果への影響は小さい ことが確認された。 上部格子板の亀裂進展評価において、差圧を評価条件 として用いることは技術的に妥当であるが、差圧による 応力は想定亀裂を閉じる方向に作用することから、ここ では差圧は考慮しないこととした。 Table 1 Comparison between stress of the differential pressure and the dead load 炉型 [MWe] (d) グリッドプレート全体 (a) 中央部ノッチ 差圧による 死荷重 荷重[N/mm] [N/mm] - 11 - 差圧による荷重と 死荷重の比率 [%] 1100 0~-0.029 0.357~0.375 0~7.8 注:鉛直下向きの荷重を正、鉛直上向きの荷重を負として示す。 (2) 応力算出位置 亀裂進展評価を実施する際には、グリッドプレートの 最大応力を用いる場合や、実機構造の応力状態を考慮し、 亀裂が開口する応力場となるグリッドプレート中央部の 応力を用いる場合がある。そのため、本項では、Fig.4 に 示した位置での応力を算出((a)~(c):公式による算出、 (d):FEM解析による算出)することで、評価すべき部位を 検討した。評価形状は代表的な1100MWe級BWR5をモ デルとした。 Fig.4 Location of stress evaluation (a)~(d)までの計算結果をTable 2に示す。なお、表に記 載された応力は、亀裂が開く方向を正とした。 Table2 Calculationresult 応力算出位置 (b) 端部ノッチ (c) 端部 公式による 応力算出 FEM 解析による 応力算出 一次膜+一次 曲げ応力 (Pm+Pb) 一次膜+一次 曲げ応力 (Pm+Pb) (Pm+Pb+F) 一次膜+一 次曲げ+ピ ーク応力 中央部ノッチ 6.8 6.5 16.3 中央から2つ目 - 5.9 14.8 中央から3つ目 - 4.7 11.7 中央から4つ目 - 2.6 7.2 中央から5つ目 - 0.4 1.0 中央から6つ目 - -2.7 -6.6 中央から7つ目 - -6.4 -15.8 端部ノッチ -10.4 -10.7 -26.5 端部 -13.8 - - (単位:MPa) 位置(b)や(c)は、両端固定梁の支点近傍であるため、ノ ッチ部下端には、圧縮応力が確認された。また、FEM 解 析により各ノッチ下端の応力を評価した結果、グリッド プレート中央部において、応力が最大となることが確認 された。また、グリッドプレート中央部のノッチ部にお いて、公式により算出した一次膜+曲げ応力の計算結果は、 FEMによる一次膜+曲げ応力の計算結果と概ね同等であ ることが確認された。また、FEM 解析の結果から、グリ ッドプレート中央部のノッチ先端には、約2.5 程度の応力 集中によるピーク応力が生じていることが確認された。 以上より、応力算出位置は、上部格子板の中央ノッチ 部とし、FEM解析もしくは公式により応力を算出するこ とが適切であることが確認された。また、ノッチには応 力集中を考慮する必要があることが確認された。 厳密な評価結果を得ることが可能となる。 (3) 初期亀裂形状 初期亀裂形状については、1/4 楕円亀裂形状や板厚方向 3.2 破壊評価 に貫通した亀裂形状がある。(2)で述べた通り、ノッチ部 には応力集中によるピーク応力が発生しているため、こ れを考慮した評価形状を検討する必要がある。初期亀裂 を板厚方向に貫通した亀裂形状(2次元貫通亀裂形状)と した場合、応力拡大係数算出式には、亀裂先端における 応力集中が考慮されることになる。したがって、ノッチ 部を亀裂の一部と見なした初期亀裂形状とした場合、合 理的な評価が可能になる。 (4) 初期亀裂寸法 初期亀裂の形状として、(3)で述べた通り、1/4楕円亀裂 形状や、2次元貫通亀裂形状がある。ここでは、1/4楕円 亀裂形状とした場合の初期亀裂の寸法について検討する。 腐食・防食ハンドブック[4]によれば、試験時間の比較的 初期から形成される深さ50μm 以下の寸法の微小亀裂は 進展性が無く、近接した他の微小亀裂と合体することに よって亀裂として進展を開始する。このことから、進展 性のあるSCC初期亀裂の最小値として、亀裂寸法を50 μm とすることは妥当であると確認できた。また、初期 亀裂のアスペクト比について、腐食・防食ハンドブック[4] に、鋭敏化Type304鋼のCBB試験あるいは定荷重試験で 観察された応力腐食割れのアスペクト比が示されている。 これによれば、深さ50μm 以下の非進展性微小亀裂のア 検討の結果、破壊評価において考慮する応力及び応力 算出位置は下記の通りとした。 (1) 考慮する応力 上部格子板の破壊評価において、下側グリッドプレー ト中央の下端に亀裂を想定した場合、差圧による応力は 亀裂進展評価と同様、想定亀裂を閉じる方向に作用する。 3.1(1)項での検討結果と同様、破壊評価においても、差圧 による応力を評価条件として考慮する方が合理的な評価 となるといえる。ただし、ここでは、差圧による応力は 想定亀裂を閉じる方向に作用することから、考慮しない こととした。 (2) 応力算出位置 応力の算出について、考慮する荷重のうち死荷重及び 鉛直方向地震荷重以外の荷重は、いずれのノッチ部でも 同様な荷重として作用する。死荷重による応力は、3.1(2) 項で報告したようにグリッドプレート中央部において最 大となること、グリッドプレートは両端固定梁の構造で あるため、地震荷重による応力はグリッドプレート端部 で引張にならないことから、応力算出位置として、グリ ッドプレート中央部のノッチの応力を考慮することとし た。 スペクト比はほぼ1であり、これより大きいものについ 3.3 評価手法の統一と適正化 てはほぼ1/3 となることが確認できる。以上のことから、 3.1 項及び3.2項に示した検討を通して、各項目が評価 進展性のあるSCC 初期亀裂の最小値は、亀裂深さを50 結果にどのような影響があるかを確認した。検討から得 μm でアスペクト比1/3とし、深さ50μm、長さ150μm られた適正化された評価手法をTable 3に示す。この結果 となる。現状の初期亀裂の形状としては、ガイドライン[5] を踏まえ、代表プラントでの評価を実施することとした。 等を参考に深さ50μm、長さ500μmとしており、長さ を大きく設定していることから、保守的であり妥当であ Table 3 Matrix of optimizing evaluation method ることが確認できた。 (5) 中性子束 No. 評価条件 主要項目 評価方針 評価 ケース 評価に使用する中性子束は、解析により求められたも 3.1 亀裂進展評価 のを使用する。PSR/PLM 評価は最新の知見を反映するこ 3.1(1) 考慮する応力 死荷重のみを考慮 1 とが望ましいため、最新の解析手法で求められた中性子 束を使用することが妥当である。中性子束は、炉心から 3.1(2) 応力算出位置 グリッドプレート中央部 3.1(3) 初期亀裂形状 貫通亀裂 1/4 楕円亀裂 遠ざかるに従い減衰するため、上部格子板においてもグ リッドプレート下部が最も高く、上部に向かうに従って 減衰する。前述したように従来の評価では亀裂が進展し 3.1(4) 初期亀裂寸法 貫通亀裂 1/4 楕円亀裂 3.1(5) 中性子束 最大値を用いた評価 変動を考慮した評価 1 2 1900/01/01てもグリッドプレート下端位置の中性子束を使用してい 3.2 破壊評価 た。そのため、中性子束分布解析の結果得られる中性子 3.2(1) 考慮する応力 死荷重のみを考慮 1 束の減衰を考慮した亀裂進展評価を実施することにより、 3.2(2) 応力算出位置 グリッドプレート中央部 1 - 12 - 4.代表プラントにおける上部格子板の試評価 4.1 適正化した評価条件での健全性評価方針 3項に示した上部格子板の健全性評価手法の適正化の 検討結果を踏まえ、今後のPSR/PLM 評価における上部格 子板の健全性評価で推奨する評価条件を代表プラントに おける試評価を通して決定する。 (1) 初期亀裂形状及び寸法を変化させた評価 ノッチを亀裂の一部とし初期亀裂の形状を貫通亀裂と した評価と、ノッチを亀裂の一部とせずに1/4楕円とした 場合の評価を実施した。なお、ノッチを亀裂の一部とせ ずに評価を実施する場合、ノッチ形状による応力集中を 考慮する必要がある。応力集中は形状に依存することか ら、プラント毎のグリッドプレート形状の調査結果を踏 まえ、応力集中係数3.0を考慮することとした。 初期亀裂形状を変化させた場合の評価結果をTable 4及 びFig.5に示す。また、参考として、応力集中を考慮しな い場合の1/4 楕円亀裂の評価結果を示す。 Table 4 Result of the different shapes of primary crack No. 初期 亀裂形状 グリッド プレート 破壊時点*1 [EFPY] ケース1-2 に対する 比率 [%] ケース 1-1 ケース4 1/4 楕円亀裂 (応力集中未考慮) 46.54 111.2 ケース 1-2 - 13 - ケース2 ケース1 1/4 楕円亀裂 (応力集中考慮) 41.85 - ケース 2 板厚貫通亀裂 41.55 99.3 ケース3 *1:地震時の応力拡大係数が、破壊靱性値を上回る時点を示す。 なお、破壊評価において、安全率1.5 を考慮した。 ケース1-1 ケース1-2 ケース2 Fig.5 Stress intensity factor of the failure evaluation 評価の結果、Fig.5に示したように1/4楕円亀裂から板 厚貫通亀裂に置き換える際に、応力拡大係数の不連続が 生じていることが確認された。これは、板厚貫通時に亀 裂の置き換えを実施しているためである。ここでは説明 性の観点より、以降の評価を亀裂進展及び応力拡大係数 の増加に連続性がみられるグリッドプレート板厚貫通亀 裂を初期亀裂形状として実施する。 (2) 中性子束の減衰を考慮した評価 中性子束の最大値を用いた場合の評価及び中性子束を 段階的に減衰させた場合の評価を実施した。中性子束を 段階的に減衰させる手法としては、中性子束分布解析の 結果に対して、ステップ状、二次曲線及び線形補間とし た評価を実施し、この差分についての影響を検討した。 評価に用いた中性子束の条件をFig.6に示す。Fig.6に示 した各中性子束を評価条件として評価を実施した結果を Table 5 及びFig.7に示す。 Table 5に示したように実機の中性子照射条件を考慮し て亀裂先端位置に応じて中性子束を変動させた値を用い た評価では、保守的な最大値を用いた評価と比較して、 グリッドプレートが破壊に至るまでの期間が大きく延び ることが確認された。 Fig.6 Evaluation condition of the neutron flux Table 5 Result of the different neutron fluxes No. 中性子束分布 グリッド プレート 破壊時点*1 [EFPY] ケース1 に対する 比率 [%] ケース1 ノッチ下端固定 41.55 - ケース2 ステップ状変化 57.39 138.1 ケース3 二次曲線近似 61.34 147.6 ケース4 線形補間 61.44 147.9 *1:地震時の応力拡大係数が、破壊靱性値を上回る時点を示す。 なお、破壊評価において、安全率1.5 を考慮した。 Fig.7 Stress intensity factor of the failure evaluation 健全性評価を実施する場合、中性子束のインプット条 件が解析値に対して非保守側とならないよう考慮が必要 であるため、ここでは解析値を基準に解析値と同等の評 価結果を得ることができる線形補間手法を推奨とした。 4.2上部格子板のIASCC評価のまとめ 3.3 項に示した評価条件を適用することにより、これま でプラント間で相違があった上部格子板のIASCC評価に おいて、評価の適正化を実施することができた。この結 果を踏まえ、PSR/PLM 評価における上部格子板のIASCC 評価において推奨する評価条件を Table 6 に示す。また、 Table 6に示した評価条件に基づいた評価結果を、従来の 評価条件による評価結果と比較してTable 7及びFig.8に 示す。 5.まとめ BWR においてIACCC が想定されるオーステナイトス テンレス鋼製炉内構造物として供用期間中に想定される 中性子照射量が高い上部格子板において、評価条件の適 正化を行い合理的な評価手法を技術的な検討に基づき確 立した。今後、本研究の成果を基に PSR 評価及び PLM 評価を実施していく計画である。 謝辞本研究は電力共通研究として実施いたしました。東北 電力(株)、中部電力(株)、北陸電力(株)、中国電力(株)、 日本原子力発電(株)、電源開発(株)、(財)電力中央研 究所及び日本核燃料開発(株)の研究関係各位に感謝の 意を表します。 ケース1 ケース2 ケース3 ケース4 - 14 - Table 6 Result of the optimized evaluation method 評価条件主要項目 適正化案 亀裂進展評価 考慮する応力 死荷重(差圧未考慮) 応力算出位置 グリッドプレート中央部 初期亀裂形状 貫通亀裂を初期形状とした評価 初期亀裂寸法 (1/4楕円亀裂も使用可能である) 中性子束 中性子束の変動を近似した評価 破壊評価 考慮する応力 死荷重及び地震荷重(差圧未考慮) 応力算出位置 中央部での評価 Table 7 Comparisonbetweentheexisting evaluation method and the optimized evaluation method 評価手法 破壊時点の 応力拡大係数 [MPa√m] グリッド 従来手法 プレート 破壊時点*1 [EFPY] に対する 比率 [%] 従来手法 43.2 33.50 - 適正化手法 43.2 61.44 183.4 Fig.8Comparison between theexisting evaluation method and the optimized evaluation method 参考文献 [1] 独立行政法人 原子力安全基盤機構,高経年化技術評 価審査マニュアル、平成25年9月 [2] 原子力安全・保安院,平成15・11・14原院第10号、 発電用原子力設備における破壊を引き起こす亀裂そ の他の欠陥の解釈について、平成15年12月 [3] 一般財団法人 日本機械学会 発電用原子力設備規格 維持規格(2008年版) 、JSME NA1-2008 [4] 社団法人 腐食防食協会 腐食・防食ハンドブック、 平成12年2月29日 [5] JANSI 炉内構造物等点検評価ガイドライン 炉心 シュラウド、JANSI-VIP-06、平成27年3月“ “BWRプラントにおける 上部格子板の照射誘起応力腐食割れ評価の適正化“ “三橋 忠浩,Tadahiro MITSUHASHI,服部 泰大,Yasuhiro HATTORI,大木 俊,Suguru OOKI,神長 貴幸,Takayuki KAMINAGA,渡辺 義雄,Yoshio WATANABE,内山 好司,Koji UCHIYAMA
原子炉圧力容器内部構造物(炉内構造物)は10年毎に 定期安全レビュー(PSR評価)及び運転開始後30年を迎える際に高経年化技術評価(PLM 評価)を実施することが高経年化技術審査マニュアル[1]に規定されており、原子炉圧力容器や炉内構造物等を評価対象として経年変化に 関する技術評価を実施してきた。この評価では、照射誘起応力腐食割れ(IASCC)に関する評価についても実施し健全性を確認してきた。 BWRにおいてIASCCが想定されるオーステナイト系ステンレス鋼製炉内構造物として、上部格子板、炉心シュラウド、炉心支持板等が挙げられる(Fig.1)。特に、上部格子板は供用期間中の中性子照射量が高いこともあり、 評価条件の適正化を行い合理的な評価手法を確立することが望まれている。 この課題を解決するため、BWR電力各社とプラントメーカは共同研究「実機炉内構造物における照射影響評価手法の高度化研究」を2014年度下半期から2016年度に実施した。ここでは、この研究成果のうち、上部格子板の構造健全性評価の適正化について報告する。 Core Shroud(炉心シュラウド) Core Plate(炉心支持板)
2.PLM 評価の変遷と評価条件の整理
2.1 PLM 評価の変遷
当初、PLM評価における上部格子板の健全性評価では、 亀裂進展評価は行わず、破壊評価のみを実施していた。 その後、原子力安全・保安院「発電用原子力設備におけ る破壊を引き起こす亀裂その他の欠陥の解釈について」[2] (以下「亀裂の解釈」という)が制定されてからは、亀 裂の解釈に示されるシュラウド等の欠陥評価手法と同様 に、亀裂進展評価により求めた亀裂寸法での破壊評価を 実施している。 ここで、亀裂進展評価に用いる亀裂進展速度は、亀裂 の解釈に示されるシュラウド等の評価方法に準じて、鋭 敏化SUS304鋼のSCC進展速度線図を用いていた。しか し、近年のPLM 評価における亀裂進展評価では、維持規 格[3]の「表添付E-2-SA-1 オーステナイト系ステンレス鋼 のBWR 炉内水質環境中のSCC 進展速度(中性子照射量 が5.0×1024n/m2(E>1MeV)を超える場合)」の亀裂進展 速度線図(以下「IASCC 進展速度」という)を用いてき た。 2.2 過去に実施されたPLM評価の条件整理 2.1 項に記載したように現在の上部格子板の健全性評 価は、IASCCを想定した亀裂進展評価及び破壊評価を実 施している。一般的な健全性評価の流れをFig.2 に示す。 Fig.2に示したように、亀裂進展評価では、材料表面に初 期亀裂を想定し、通常運転時の応力による評価期間中の SCC進展量を評価する。また、Fig.3に示したように初期 亀裂の想定箇所は、照射量の高い下側グリッドプレート の下側ノッチ部の下端としており、板厚貫通時に亀裂形 状の置換えを実施している。破壊評価では、亀裂進展評 価により得られた亀裂寸法により地震時の応力拡大係数 を求め、求めた応力拡大係数が対象部の中性子照射量に 応じた破壊靱性値未満であれば、破壊は発生しないと評 価する。 2.3 亀裂進展評価及び破壊評価におけるプラント 間の相違内容と課題 過去に実施されたPLM評価について、代表2プラント の評価条件の調査の結果、以下に示す課題が確認された。 (1) 考慮する応力(亀裂進展評価/破壊評価) 差圧による応力は、下側グリッドプレートの下側ノッ チ部の下端に亀裂を想定した場合、亀裂を閉じる方向に 作用するため、検討する必要がある。 Fig.2 IASCC evaluation flow Fig.3 Model of IASCC development (2) 応力算出位置(亀裂進展評価/破壊評価) 上部格子板は位置により発生する応力が異なる構造で ある。したがって、下側グリッドプレートの下側ノッチ 部の下端に亀裂を想定する場合、応力の算出位置を検討 する必要がある。 (3) 初期亀裂形状(亀裂進展評価) 1/4 楕円亀裂を初期亀裂と想定した形状とした場合と、 下側グリッドプレートの下側ノッチ部を亀裂の一部とし て評価をした場合があるため、適切な評価形状を検討す る必要がある。 (4) 初期亀裂寸法(亀裂進展評価) 初期亀裂寸法は、(3)に記載した評価形状の相違内容と 関連し、どのような亀裂寸法を想定するか検討する必要 がある。初期亀裂寸法は、維持規格において他の炉内構 造物の評価に使用されている亀裂深さ50μm、亀裂長さ 亀裂想定位置 下側ノッチ部 置換え 初期亀裂 - 10 - 500μmに準じているが、その妥当性を確認する必要があ る。 (5) 中性子束(亀裂進展評価) 亀裂進展速度のパラメータである中性子束は、中性子 束が最大となる下側グリッドプレートの下側ノッチ部の 下端の値を用いた保守的な評価や、実機の中性子照射条 件を考慮し亀裂先端位置に応じて中性子束を変動させた 値を用いた評価が考えられる。このため、適用する中性 子束についても適正化する必要がある。 3.上部格子板の評価適正化に向けた検討 2.3 項に記載した各項目に関して試評価を通して、妥当 性を確認した。本項では亀裂進展評価に関する評価を3.1 項に、破壊評価に関する評価を3.2項にて報告する。 3.1 亀裂進展評価 (1) 考慮する応力 通常運転時にグリッドプレートに作用する荷重は、死 荷重と差圧による荷重である。下側グリッドプレート中 央の下端に亀裂を想定した場合、死荷重による応力は想 定亀裂を開く方向に作用し、差圧による応力は想定亀裂 を閉じる方向に作用する。本項では、差圧による応力が、 亀裂進展評価に与える影響について検討した。 上部格子板の亀裂進展評価に用いる死荷重と差圧によ る荷重を、Table 1に示す。Table 1に示すように、死荷重 と差圧による荷重の比率は最大でも8%程度であり、評価 条件として差圧を考慮しなくても結果への影響は小さい ことが確認された。 上部格子板の亀裂進展評価において、差圧を評価条件 として用いることは技術的に妥当であるが、差圧による 応力は想定亀裂を閉じる方向に作用することから、ここ では差圧は考慮しないこととした。 Table 1 Comparison between stress of the differential pressure and the dead load 炉型 [MWe] (d) グリッドプレート全体 (a) 中央部ノッチ 差圧による 死荷重 荷重[N/mm] [N/mm] - 11 - 差圧による荷重と 死荷重の比率 [%] 1100 0~-0.029 0.357~0.375 0~7.8 注:鉛直下向きの荷重を正、鉛直上向きの荷重を負として示す。 (2) 応力算出位置 亀裂進展評価を実施する際には、グリッドプレートの 最大応力を用いる場合や、実機構造の応力状態を考慮し、 亀裂が開口する応力場となるグリッドプレート中央部の 応力を用いる場合がある。そのため、本項では、Fig.4 に 示した位置での応力を算出((a)~(c):公式による算出、 (d):FEM解析による算出)することで、評価すべき部位を 検討した。評価形状は代表的な1100MWe級BWR5をモ デルとした。 Fig.4 Location of stress evaluation (a)~(d)までの計算結果をTable 2に示す。なお、表に記 載された応力は、亀裂が開く方向を正とした。 Table2 Calculationresult 応力算出位置 (b) 端部ノッチ (c) 端部 公式による 応力算出 FEM 解析による 応力算出 一次膜+一次 曲げ応力 (Pm+Pb) 一次膜+一次 曲げ応力 (Pm+Pb) (Pm+Pb+F) 一次膜+一 次曲げ+ピ ーク応力 中央部ノッチ 6.8 6.5 16.3 中央から2つ目 - 5.9 14.8 中央から3つ目 - 4.7 11.7 中央から4つ目 - 2.6 7.2 中央から5つ目 - 0.4 1.0 中央から6つ目 - -2.7 -6.6 中央から7つ目 - -6.4 -15.8 端部ノッチ -10.4 -10.7 -26.5 端部 -13.8 - - (単位:MPa) 位置(b)や(c)は、両端固定梁の支点近傍であるため、ノ ッチ部下端には、圧縮応力が確認された。また、FEM 解 析により各ノッチ下端の応力を評価した結果、グリッド プレート中央部において、応力が最大となることが確認 された。また、グリッドプレート中央部のノッチ部にお いて、公式により算出した一次膜+曲げ応力の計算結果は、 FEMによる一次膜+曲げ応力の計算結果と概ね同等であ ることが確認された。また、FEM 解析の結果から、グリ ッドプレート中央部のノッチ先端には、約2.5 程度の応力 集中によるピーク応力が生じていることが確認された。 以上より、応力算出位置は、上部格子板の中央ノッチ 部とし、FEM解析もしくは公式により応力を算出するこ とが適切であることが確認された。また、ノッチには応 力集中を考慮する必要があることが確認された。 厳密な評価結果を得ることが可能となる。 (3) 初期亀裂形状 初期亀裂形状については、1/4 楕円亀裂形状や板厚方向 3.2 破壊評価 に貫通した亀裂形状がある。(2)で述べた通り、ノッチ部 には応力集中によるピーク応力が発生しているため、こ れを考慮した評価形状を検討する必要がある。初期亀裂 を板厚方向に貫通した亀裂形状(2次元貫通亀裂形状)と した場合、応力拡大係数算出式には、亀裂先端における 応力集中が考慮されることになる。したがって、ノッチ 部を亀裂の一部と見なした初期亀裂形状とした場合、合 理的な評価が可能になる。 (4) 初期亀裂寸法 初期亀裂の形状として、(3)で述べた通り、1/4楕円亀裂 形状や、2次元貫通亀裂形状がある。ここでは、1/4楕円 亀裂形状とした場合の初期亀裂の寸法について検討する。 腐食・防食ハンドブック[4]によれば、試験時間の比較的 初期から形成される深さ50μm 以下の寸法の微小亀裂は 進展性が無く、近接した他の微小亀裂と合体することに よって亀裂として進展を開始する。このことから、進展 性のあるSCC初期亀裂の最小値として、亀裂寸法を50 μm とすることは妥当であると確認できた。また、初期 亀裂のアスペクト比について、腐食・防食ハンドブック[4] に、鋭敏化Type304鋼のCBB試験あるいは定荷重試験で 観察された応力腐食割れのアスペクト比が示されている。 これによれば、深さ50μm 以下の非進展性微小亀裂のア 検討の結果、破壊評価において考慮する応力及び応力 算出位置は下記の通りとした。 (1) 考慮する応力 上部格子板の破壊評価において、下側グリッドプレー ト中央の下端に亀裂を想定した場合、差圧による応力は 亀裂進展評価と同様、想定亀裂を閉じる方向に作用する。 3.1(1)項での検討結果と同様、破壊評価においても、差圧 による応力を評価条件として考慮する方が合理的な評価 となるといえる。ただし、ここでは、差圧による応力は 想定亀裂を閉じる方向に作用することから、考慮しない こととした。 (2) 応力算出位置 応力の算出について、考慮する荷重のうち死荷重及び 鉛直方向地震荷重以外の荷重は、いずれのノッチ部でも 同様な荷重として作用する。死荷重による応力は、3.1(2) 項で報告したようにグリッドプレート中央部において最 大となること、グリッドプレートは両端固定梁の構造で あるため、地震荷重による応力はグリッドプレート端部 で引張にならないことから、応力算出位置として、グリ ッドプレート中央部のノッチの応力を考慮することとし た。 スペクト比はほぼ1であり、これより大きいものについ 3.3 評価手法の統一と適正化 てはほぼ1/3 となることが確認できる。以上のことから、 3.1 項及び3.2項に示した検討を通して、各項目が評価 進展性のあるSCC 初期亀裂の最小値は、亀裂深さを50 結果にどのような影響があるかを確認した。検討から得 μm でアスペクト比1/3とし、深さ50μm、長さ150μm られた適正化された評価手法をTable 3に示す。この結果 となる。現状の初期亀裂の形状としては、ガイドライン[5] を踏まえ、代表プラントでの評価を実施することとした。 等を参考に深さ50μm、長さ500μmとしており、長さ を大きく設定していることから、保守的であり妥当であ Table 3 Matrix of optimizing evaluation method ることが確認できた。 (5) 中性子束 No. 評価条件 主要項目 評価方針 評価 ケース 評価に使用する中性子束は、解析により求められたも 3.1 亀裂進展評価 のを使用する。PSR/PLM 評価は最新の知見を反映するこ 3.1(1) 考慮する応力 死荷重のみを考慮 1 とが望ましいため、最新の解析手法で求められた中性子 束を使用することが妥当である。中性子束は、炉心から 3.1(2) 応力算出位置 グリッドプレート中央部 3.1(3) 初期亀裂形状 貫通亀裂 1/4 楕円亀裂 遠ざかるに従い減衰するため、上部格子板においてもグ リッドプレート下部が最も高く、上部に向かうに従って 減衰する。前述したように従来の評価では亀裂が進展し 3.1(4) 初期亀裂寸法 貫通亀裂 1/4 楕円亀裂 3.1(5) 中性子束 最大値を用いた評価 変動を考慮した評価 1 2 1900/01/01てもグリッドプレート下端位置の中性子束を使用してい 3.2 破壊評価 た。そのため、中性子束分布解析の結果得られる中性子 3.2(1) 考慮する応力 死荷重のみを考慮 1 束の減衰を考慮した亀裂進展評価を実施することにより、 3.2(2) 応力算出位置 グリッドプレート中央部 1 - 12 - 4.代表プラントにおける上部格子板の試評価 4.1 適正化した評価条件での健全性評価方針 3項に示した上部格子板の健全性評価手法の適正化の 検討結果を踏まえ、今後のPSR/PLM 評価における上部格 子板の健全性評価で推奨する評価条件を代表プラントに おける試評価を通して決定する。 (1) 初期亀裂形状及び寸法を変化させた評価 ノッチを亀裂の一部とし初期亀裂の形状を貫通亀裂と した評価と、ノッチを亀裂の一部とせずに1/4楕円とした 場合の評価を実施した。なお、ノッチを亀裂の一部とせ ずに評価を実施する場合、ノッチ形状による応力集中を 考慮する必要がある。応力集中は形状に依存することか ら、プラント毎のグリッドプレート形状の調査結果を踏 まえ、応力集中係数3.0を考慮することとした。 初期亀裂形状を変化させた場合の評価結果をTable 4及 びFig.5に示す。また、参考として、応力集中を考慮しな い場合の1/4 楕円亀裂の評価結果を示す。 Table 4 Result of the different shapes of primary crack No. 初期 亀裂形状 グリッド プレート 破壊時点*1 [EFPY] ケース1-2 に対する 比率 [%] ケース 1-1 ケース4 1/4 楕円亀裂 (応力集中未考慮) 46.54 111.2 ケース 1-2 - 13 - ケース2 ケース1 1/4 楕円亀裂 (応力集中考慮) 41.85 - ケース 2 板厚貫通亀裂 41.55 99.3 ケース3 *1:地震時の応力拡大係数が、破壊靱性値を上回る時点を示す。 なお、破壊評価において、安全率1.5 を考慮した。 ケース1-1 ケース1-2 ケース2 Fig.5 Stress intensity factor of the failure evaluation 評価の結果、Fig.5に示したように1/4楕円亀裂から板 厚貫通亀裂に置き換える際に、応力拡大係数の不連続が 生じていることが確認された。これは、板厚貫通時に亀 裂の置き換えを実施しているためである。ここでは説明 性の観点より、以降の評価を亀裂進展及び応力拡大係数 の増加に連続性がみられるグリッドプレート板厚貫通亀 裂を初期亀裂形状として実施する。 (2) 中性子束の減衰を考慮した評価 中性子束の最大値を用いた場合の評価及び中性子束を 段階的に減衰させた場合の評価を実施した。中性子束を 段階的に減衰させる手法としては、中性子束分布解析の 結果に対して、ステップ状、二次曲線及び線形補間とし た評価を実施し、この差分についての影響を検討した。 評価に用いた中性子束の条件をFig.6に示す。Fig.6に示 した各中性子束を評価条件として評価を実施した結果を Table 5 及びFig.7に示す。 Table 5に示したように実機の中性子照射条件を考慮し て亀裂先端位置に応じて中性子束を変動させた値を用い た評価では、保守的な最大値を用いた評価と比較して、 グリッドプレートが破壊に至るまでの期間が大きく延び ることが確認された。 Fig.6 Evaluation condition of the neutron flux Table 5 Result of the different neutron fluxes No. 中性子束分布 グリッド プレート 破壊時点*1 [EFPY] ケース1 に対する 比率 [%] ケース1 ノッチ下端固定 41.55 - ケース2 ステップ状変化 57.39 138.1 ケース3 二次曲線近似 61.34 147.6 ケース4 線形補間 61.44 147.9 *1:地震時の応力拡大係数が、破壊靱性値を上回る時点を示す。 なお、破壊評価において、安全率1.5 を考慮した。 Fig.7 Stress intensity factor of the failure evaluation 健全性評価を実施する場合、中性子束のインプット条 件が解析値に対して非保守側とならないよう考慮が必要 であるため、ここでは解析値を基準に解析値と同等の評 価結果を得ることができる線形補間手法を推奨とした。 4.2上部格子板のIASCC評価のまとめ 3.3 項に示した評価条件を適用することにより、これま でプラント間で相違があった上部格子板のIASCC評価に おいて、評価の適正化を実施することができた。この結 果を踏まえ、PSR/PLM 評価における上部格子板のIASCC 評価において推奨する評価条件を Table 6 に示す。また、 Table 6に示した評価条件に基づいた評価結果を、従来の 評価条件による評価結果と比較してTable 7及びFig.8に 示す。 5.まとめ BWR においてIACCC が想定されるオーステナイトス テンレス鋼製炉内構造物として供用期間中に想定される 中性子照射量が高い上部格子板において、評価条件の適 正化を行い合理的な評価手法を技術的な検討に基づき確 立した。今後、本研究の成果を基に PSR 評価及び PLM 評価を実施していく計画である。 謝辞本研究は電力共通研究として実施いたしました。東北 電力(株)、中部電力(株)、北陸電力(株)、中国電力(株)、 日本原子力発電(株)、電源開発(株)、(財)電力中央研 究所及び日本核燃料開発(株)の研究関係各位に感謝の 意を表します。 ケース1 ケース2 ケース3 ケース4 - 14 - Table 6 Result of the optimized evaluation method 評価条件主要項目 適正化案 亀裂進展評価 考慮する応力 死荷重(差圧未考慮) 応力算出位置 グリッドプレート中央部 初期亀裂形状 貫通亀裂を初期形状とした評価 初期亀裂寸法 (1/4楕円亀裂も使用可能である) 中性子束 中性子束の変動を近似した評価 破壊評価 考慮する応力 死荷重及び地震荷重(差圧未考慮) 応力算出位置 中央部での評価 Table 7 Comparisonbetweentheexisting evaluation method and the optimized evaluation method 評価手法 破壊時点の 応力拡大係数 [MPa√m] グリッド 従来手法 プレート 破壊時点*1 [EFPY] に対する 比率 [%] 従来手法 43.2 33.50 - 適正化手法 43.2 61.44 183.4 Fig.8Comparison between theexisting evaluation method and the optimized evaluation method 参考文献 [1] 独立行政法人 原子力安全基盤機構,高経年化技術評 価審査マニュアル、平成25年9月 [2] 原子力安全・保安院,平成15・11・14原院第10号、 発電用原子力設備における破壊を引き起こす亀裂そ の他の欠陥の解釈について、平成15年12月 [3] 一般財団法人 日本機械学会 発電用原子力設備規格 維持規格(2008年版) 、JSME NA1-2008 [4] 社団法人 腐食防食協会 腐食・防食ハンドブック、 平成12年2月29日 [5] JANSI 炉内構造物等点検評価ガイドライン 炉心 シュラウド、JANSI-VIP-06、平成27年3月“ “BWRプラントにおける 上部格子板の照射誘起応力腐食割れ評価の適正化“ “三橋 忠浩,Tadahiro MITSUHASHI,服部 泰大,Yasuhiro HATTORI,大木 俊,Suguru OOKI,神長 貴幸,Takayuki KAMINAGA,渡辺 義雄,Yoshio WATANABE,内山 好司,Koji UCHIYAMA