改良型PWR初号機設計への保全の知見・経験の反映

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カテゴリ: 第10回
1.敦賀発電所3,4号機増設計画
敦賀発電所3,4号機は,産官学共同で行った第3次軽水炉改良標準化計画の下で安全性,信頼性,稼働率等の向上を目指して開発された成果を取り入れ,さらにそれ以降の国内外の運転・保守経験や最新技術知見を反映した改良型加圧水型軽水炉(改良型PWR)の初号機である。電気出力はそれぞれ153.8万kWで国内最大級の発電所である。 現在(2010年7月),国の安全審査を受けており,今後,プラントの詳細設計の段階に入っていくところである。 敦賀発電所3,4号機の主要仕様をTable1-1に示す。開発の経緯や設計の特徴等については,既に他で紹介されているためここでは参考文献[1] [2] [3] [4]を紹介することのみとし,本稿では,敦賀発電所3,4号機設計段階における将来の保全のための取組み状況を紹介する。
2.プラント設計段階における将来の保全への配慮 2.1 トラブル経験の反映
国内外の原子力発電所で発生したトラブルの経験については,機器・設備の詳細設計前の基本設計段階から必要に応じ適切に反映していくことが,トラブルの発生防止の観点から重要である。 敦賀発電所3,4号機の基本設計段階(~2004年設置変更許可申請)において,国内プラントで発生したトラブルとしては当時の資源エネルギー庁「トラ
Table1.1.1 Main Specifications of Tsuruga Unit 3&4 Tsuruga-Electric Power Output 1,538MW Reactor Thermal Power Output 4,466MW Core Fuel Type / Number 17×17 / Uranium Loading 121t Linear Power Density 17.6kW/Active Core Length Effective Core Diameter 3.7m 3.9m Number of RCC 69 Number of Loop 4 RCS Operation Pressure 15.4MPa[Coolant Temp. Tcold/Thot 289℃/RV ID/IH 5.2m/Design Flow 25,800m3/RCP Motor Power 6,000kW/SG Heat Transfer Area 6,500m2/MS Pressure/Temp. 6.03MPa[gage]/Steam Generation 2,200t/Output 1,538MW Steam Turbine LP Final Blade Length 1,375mm(Generator Capacity Approx.1,700,000kVA ブル等情報データベース」等を用いて約1,900件,また,海外プラントで発生したトラブルについては米国NRC指示文書(Generic Letter)の他,各種データベースを用いて約3,400件を調査し,そのうち設計段階で反映すべき事例約330件(類似のトラブルを含む)を抽出し,設計の各段階で反映してきている。 さらにその後の詳細設計に向けての社内設計レビュー会においては,日本原子力技術協会の原子力施設情報公開ライブラリー(NUCIA:NUClear Information Archives)等のより充実したデータベースを用いて,基本設計段階で確認したトラブルも含め,改めて対応に抜けがないことを確認することとしている。 過去のトラブル対策を反映した主なものは以下の通りである。 a. 蒸気発生器伝熱管の損傷 蒸気発生器(SG:Steam Generator)伝熱管についてはこれまで応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)や最上段管支持板部での流力弾性振動による高サイクル疲労割れ等の事例が認められている。敦賀発電所3,4号機のSGにおいては,これまでの予防保全の知見は基本的に全て反映している。 SCC対策としては,伝熱管材料に耐食性に優れたインコネルTT690合金製を採用し,管板への取付けには管板部のクレビスを極力小さくし,残留応力をより低減できる管板全厚液圧拡管+1ステップローラ拡管を採用することとした。また,小曲げU字管については曲げ加工に伴う残留応力を低減させるため,曲げ加工後の応力除去焼鈍を実施する計画である。 流力弾性振動に対しては,最外周伝熱管の支持点数を6点から9点に増加させ,SG中央部の最小曲げ半径の伝熱管を含む全ての伝熱管を支持できるようにした伝熱管振止め金具(AVB:Anti-Vibration Bar)を開発し,伝熱管の流動振動を確実に抑制できるようにした。AVBの先行プラントとの比較をFig.2.1.1に示す。 Fig.2.1.1 Improvement of SG anti-vibration bars b. 炉内構造物バッフルフォーマ・ボルト損傷 1980年代末海外プラントにおいて,バッフルフォーマ・ボルトに照射誘起型応力腐食割れ(IASCC:Irradiation Assisted SCC)が認められた。 敦賀発電所3,4号機では,従来炉のバッフル構造に代えて,中性子反射体を採用する計画である。 バッフルは約2,000本のボルトで接合された構造であるが,中性子反射体はステンレス製リングブロックを8段積み重ねた簡素な構造であり,構成するボルト類の総数は約50本で,かつ,これらのボルト類は炉心領域に存在しない。その結果,当該損傷の発生の可能性は排除された設計となっている。炉内構造物について先行プラントとの比較をFig.2.1.2に示す。 c. 原子炉容器上蓋管台部の損傷 国内外の原子炉容器(RV:Reactor Vessel)上蓋管台部の600系インコネル溶接部において,1次冷却水中の環境におけるSCC(PWSCC:Primary Fig.2.1.2 Improvement of Core Structure Water SCC)事例が多数報告されている。一般的にSCCは材料,応力,環境の3つの条件の重畳により発生するとされているが,敦賀発電所3,4号機では,以下のように,材料,応力,環境の全ての面で予防措置を図る計画である。 材料にはPWSCC感受性の低いインコネル690系を使用し,また,表面残留応力の低減を図るため製造時に溶接部にピーニング等を実施する。環境面からの対策としては,PWSCCの発生・進展が温度依存性を有していることから,RV上蓋管台部の温度がRV入口側1次冷却材温度(T-Cold)と同程度になるように,1次冷却材入口からRV蓋部へ向かう1次冷却材の流量を設定し,可能な限り上蓋管台部の温度を下げる計画である。 敦賀発電所3,4号機のRV上蓋管台のPWSCCに対する対策の概要をFig.2.1.3に示す。 ① Material : Inconel690 ②Residual Stress: Improvement by peening ③Temperature inside vessel head: Designed equal to inlet coolant temperature. (T-cold) Fig.2.1.3 Countermeasures for PWSCC at Penetration of Reactor Vessel Head d. 燃料集合体のバッフルジェットによる損傷 国内プラントにおいて,バッフル板間隙をバッフル外側から炉心内側に向かう横流れ(噴流)が当たる位置の燃料集合体に損傷が認められた。原因は,噴流により燃料棒に異常な振動が発生し摩耗したものと推定される。 敦賀発電所3,4号機では,バッフル構造に代わり中性子反射体を採用するが,中性子反射体リン グブロックを積み重ねた構造であるため間隙が存在する。 中性子反射体には,運転中の中性子照射によるガンマ発熱を除去する目的で,中性子反射体下部から上部に向けて1次冷却材を流す流路が設けられている。流路入口に設けたオリフィスにより流路内部の圧力が低減されるため,同一高さでは常に流路内部の圧力が炉心内の圧力より低くなる。これにより,リングブロック間隙に生じる流れは炉心内側から外側に向かうこととなり,燃料集合体に噴流が当たることが避けられる設計としている。 敦賀発電所3,4号機のバッフルジェットに対する対策の概要をFig.2.1.4に示す。 No Baffle Jet Problem Bypass flow between ring blocks is always from core to neutron reflector. Coolant pressure in the neutron reflector cooling path is designed lower than that of core region at the same elevation.(P2>P1) Fig.2.1.4 Improvement against Baffle Jet Problem f. 配管の高サイクル疲労による損傷 配管の高サイクル疲労対応については,これまでのトラブル経験を踏まえ,日本機械学会で評価指針類が策定されている。 温度計ウェルやサンプリングノズル等の配管内円柱状構造物の疲労損傷については「配管内円柱状構造物の流力振動評価指針」,高温水と低温水が合流する部位やキャビティフロー型熱疲労が懸念される部位については「配管の高サイクル疲労に関する評価指針」に基づき,今後の詳細設計段階にて検討を行う予定である。 また,これまで小口径配管の疲労損傷についてもしばしば経験している。これは主に小口径配管のソケット溶接部(すみ肉溶接部)に発生しており,不完全な溶接による応力集中部の形成と配管の振動が重畳したことが原因である。敦賀発電所3,4号機の1次系主要系統の小口径管は,突合せ溶接構造として疲労強度を向上させた設計とすると同時に,ポンプ等の振動成分の伝播に対して十分に配慮したサポート設計を実施する計画である。なお,2次系の小口径管では,一部ソケット溶接を適用する可能性もあるため,信頼性の高い溶接施工を可能とする技術開発も並行して実施している。 g. 流れによる配管等の減肉事象 流れによる配管等の内面の減肉事象は,国内外のプラントで発生している。敦賀発電所3,4号機では,実機プラントの減肉データを収集,分析した結果を踏まえ策定された日本機械学会「加圧水型原子力発電所配管減肉管理に関する技術規格」に基づき,適切な減肉管理を行う計画であるが,設計段階においても,これまでの知見や運転経験を踏まえ,機器や配管の配置,配管内流速等を考慮し,適切な材料を選定する等の取り組みをしている。特に,温度条件等,減肉のポテンシャルの高い環境となっている主給水管については,低合金鋼を全面的に採用する計画である。 2.2 既設発電所の運転・保守経験の反映 当社は,1966年に国内初の商業用原子力発電所(東海発電所:GCR)の営業運転を開始した後,国内初の軽水炉(敦賀発電所1号機:BWR),国内初の110万kW級原子力発電所(東海第二発電所:BWR),そして初の国産改良標準型原子力発電所(敦賀発電所2号機:PWR)の建設・運転・保守を行ってきた。 これらの建設・運転・保守等で蓄えられた経験については,これまでも適宜新規発電所の設計に反映してきたが,敦賀発電所3,4号機の設計においては,当社の経験に加え,さらに他社の原子力部門や火力部門,運転保守管理の助勢を実施している協力会社等にも協力を仰ぎ,その結果,運転関係約320件,保守関係約1,400件の情報を収集し,データベース化(情報共有化)を行った。データベースの一例をFig.2.2.1に示す。 Fig.2.2.1 Database Sample of JAPC requirement for Tsuruga Unit 3&4 基本設計段階においては,これらの情報から検討すべき事項として約390件を抽出し,設備の配置設計や機器設計そのものへ反映してきている。 これらの情報は,いわばプラントユーザーとしての要求事項を集約したものであり,今後の詳細設計に向け,再度このデータベースを社内関係者でレビ ューし,必要な要求事項をプラント購入仕様書等に反映することとしている。運転・保守経験のプラント設計への反映手順の概要をFig.2.2.2に示す。 東海(GCR)敦賀1号(BWR)東海第二(BWR)敦賀2号(PWR)運転・保守経験情報他電力原子力プラント他電力火力プラント協力会社データベース構築・関係者閲覧可能(情報共有化)・適宜追加入力・更新可能情報の収集敦賀3,4号機への反映要否検討購入仕様書等への取り込み敦賀3,4号設計への反映データベースの活用敦賀3,4号運用への反映(運転開始後) Fig.2.2.2 Reflection Procedure of Operation and Maintenance Experience to Tsuruga Unit 3&4 敦賀発電所3,4号機の設計においては,このような“ユーザーズ・エンジニアリング”を推進し,将来にわたり,使いやすいプラントの実現を目指している。いくつかの例について紹介する。 a. 資機材等物品の運搬を考慮した配置 発電所では,足場材等の資機材,配管等の部品等,多くの物品を運搬する必要がある。多くの場合,台車を用いて水平移動,クレーン・ホイストを用いて上下移動を行っている。 しかし,通路が狭い,床に配管や電線管が敷設されている等の理由でその都度台車から物品を降ろし,手で運搬せざるを得なかったり,エレベータが無い,クレーン・ホイストの数が少ない等の理由で階段を使って人が運搬せざるを得なかったりするケースが多く見られる。いずれも,作業員に負担を掛けるだけでなく,安全上も好ましいものではない。また,物品を計器等に接触させる等品質管理上の問題も発生している。 敦賀発電所3,4号機では,建屋間の床レベルはできる限り合わせ,物品類は基本的に台車による運搬が可能なように計画している。現在詳細配置図の検討を実施しているところであるが,十分な通路幅を確保し,床面には配管等干渉物を設置しないようにしている。今後3次元CADにより運搬性の確認を行う予定である。 定検中運搬頻度が多いものの一つに足場材があるが,長尺のため既設プラントではエレベータに載せることができないことが多い。このため敦賀発電所3,4号機では4mの長尺足場も運搬できる大型エレベータを配置する計画としている。また,原子炉格納容器内にもエレベータを設置し,資機材の運搬性の向上等を図る計画である。 b. 検査要求の少ない機器設計 1次冷却設備等クラス1機器の供用期間中検査(ISI:In-Service Inspection)は,通常,高線量下での作業となるため,社内保守関係者,協力会社の両者から主に被ばく低減のニーズが出ている。 そのため,敦賀発電所3,4号機では,溶接線数をできるだけ低減できるような設計を志向し,検査要求を低減する取り組みを行っている。これらの取り組みは,被ばく低減だけでなく,機器の信頼性向上にも寄与するものである。 例えば,加圧器には,下鏡部にサージ管台(1箇所),上鏡部に安全弁管台(4箇所),逃がし弁管台(1箇所),スプレイ管台(1箇所),マンホール(1箇所)が設置され,これらは溶接で鏡に取りつけられていた。敦賀発電所3,4号機では,これらの管台等は,全て鏡部と一体で鍛造化することにより溶接線自体を削除する計画である。敦賀発電所3,4号機と既設炉の加圧器の比較をFig.2.2.3に示す。 Fig.2.2.3 Configuration of Pressurizer また,1次冷却材管にも多くの管台が設置されるが,このうち ISIとして超音波探傷試験が要求される呼び径4B以上の管台についても,加圧器鏡部と同様に1次冷却材管と一体で鍛造化する計画である。 c. 電源盤の保守性・安全性向上 敦賀発電所3,4号機では,電源盤の点検時に,点検中も運転が要求される負荷が停電しないよう電源の二重化を図ることとしている。電源二重化対応としては、電源盤遮断器二次側を接続する方式が最も経済的であるが、電源盤の点検停止時に充電部が残り,感電事故を起こすおそれがある。 敦賀発電所3,4号機では電源盤近傍に電源切り替えを目的とした逆圧対策盤(点検する電源盤と負荷との間に直列に断路器を設け,電源盤に負荷側からの逆圧が加わらないようにする装置)を設置して、経済的な影響を最小限にしつつ、保守性を向上させる設計としている。 d. ジャンパー・リフト作業の信頼性向上 発電所の各種試験条件の確立や保守作業の際の盤内配線のジャンパーやリフト作業において、クリップ留めのジャンパー線が外れたり、配線リ フト時に端子が落下したりすることがある。 このため、敦賀発電所3,4号機では、端子が抜け落ちない端子台(ジャンパー・リフト端子台)を積極的に採用して、盤内配線のジャンパーやリフト作業の信頼性向上や制御盤の保守性向上を図ることとしている。 2.3 高経年化技術評価等の知見の反映 高経年化技術評価等で得られた知見については,基本的に敦賀発電所3,4号機の設計に取り込まれている。PWRプラントの高経年化対策上着目すべき経年劣化事象及び通常保全で管理すべき経年劣化事象の中から一次系設備に考慮すべき主な経年劣化事象に対する設計上の配慮について,特筆すべき点は以下のとおりである。 a. 原子炉容器胴部の照射脆化 敦賀発電所3,4号機では,中性子反射体の採用により,RV内表面から肉厚の1/4の位置における中性子量は従来炉の1/3程度に低減されるため,照射脆化に対して大きな余裕を有している。また,RVの設計では,胴部の炉心領域に溶接線を作らない構造とするとともに,材料化学成分(主にCu,Ni,P)を従来プラントと同程度以上に厳しく要求することとしている。 b. 高ニッケル基合金の応力腐食割れ 高ニッケル基合金は,低合金鋼製である1次系主要機器(RV,SG,加圧器)管台とステンレス製セーフエンドの異材溶接部等に使用されている。敦賀発電所3,4号機では,インコネル690系の材料を使用し,また,残留応力低減のため製作時にピーニング等の対策を実施する計画である。(2.1 c. 参照) c. ステンレス鋼の応力腐食割れ 一般的にPWRの1次系水質条件下においてステンレス鋼はSCCの感受性を示さないが,特殊な条件下ではSCC発生事例が報告されており,以下の通り対応する計画である。 通常運転中に使用されず閉塞滞留部となり溶存酸素濃度が高くなる可能があり,かつ,1次冷却材の流れの影響等で高温となる部位については,SCCが懸念される。そのため,既設炉での対策と同様にSUS304系ではなく,SUS316系の材料を使用する計画である。 また,建設時等に使用したビニールテープに含まれていた塩素に起因したSCCについては,塩素の含まれていないビニールテープ等を使用することはもちろんのこと,建設時の塩分管理を十分に実施する。 d. 炉内構造物の照射誘起型応力腐食割れ 敦賀発電所3,4号機では,中性子反射体を採用することで,IASCCのポテンシャルは十分低減されている。(2.1 b. 参照) e. 低サイクル疲労 各機器の疲労については,設計寿命60年を前提に今後,詳細評価を実施する計画である。なお,先行プラントと同様に原子炉容器のスタッドボルト等は60年を想定すると厳しいものと思われるが,これらは容易に取替え可能である。 また,環境疲労については,プラント運転開始後,実過渡を管理し,既設プラントと同様に適切な対応を図っていく計画である。 なお,これまでの高経年技術評価では,建設時点でのデータが不足していたため,長期間運転を行った時点での技術的な評価において,過度に保守的な仮定を想定して評価せざるを得ない場合があった。そのため,敦賀発電所3,4号機では,敦賀発電所1号機や東海第二発電所の高経年技術評価での経験を踏まえて,極力初期データを採取できるよう,これから各メーカ等に発注する仕様書に必要な項目を記載していく計画である。 2.4 今後の保全プログラム導入へ抜けた準備 平成21年1月から施行された改正電気事業法施行規則により,保安規程に保全計画書を定めることが必要となった。既設の発電所では,各設備各部位の構造,材料等を整理し,それぞれについて想定される劣化メカニズムを抽出し,保全タスクを決定していくことになっている。さらに,それらの保全タスクに基づき実施した保全の結果(検査結果等)をきちんと記録することとしている。 敦賀発電所3,4号機では,将来の保全に備え,建設段階より設計データの整理,保全プログラムシステムへの入力等を推進すべく,具体的,効率的な方法を,メーカ等の協力会社と検討している。 配管等の初期肉厚や摺動部の間隙など各種寸法記録や,据付時点の状況写真(表面の荒れ,光沢,腐食状況等)等を,単なる「建設記録」としてとらえるのではなく,将来の保全データの「初期データ」として活用できるよう,既設発電所管理部門と協調して準備を進めている。 2.5 将来の運転保守要員への設計・建設経験の伝承 敦賀発電所3,4号機の次のプロジェクトについては,現時点では全くの白紙の状態であるが,将来にわたり,社員の幅広い世代で建設を経験し,次の世代に伝承していくことが重要であると考えている。 また,建設プロジェクトの経験は,将来の運転・保守要員にとって貴重なものであることは疑いの余地はなく,敦賀発電所3,4号機プロジェクトの機会をできるだけ多くの者に与えていくことを志向している。 当社の機械・電気技術者のうち,建設部門(設計,工事)及び保守部門に携わっている社員は,2009年度末で本店,東海,敦賀の3事業所合計で約200名 であるが,今後プロジェクトの進捗に伴い,新規・中途採用等により徐々に社員数を増やしていき,営業運転開始後は約240~250名規模になると見込んでいる。 これら新規・中途採用者は建設部門のみに補充していくのではなく,保守部門の各世代からも適切に異動させていくことで,若手社員から管理職まで幅広く多くの社員に建設プロジェクトを経験させ,営業運転開始時に円滑に建設体制から保守体制に移行できるように配慮していく必要がある。 そのため,建設中は,発電所の保守業務に支障を与えず,また,社員の人材育成を考慮し,さらに,営業運転開始後の保守体制も想定したリソースの有効活用を,社内人事部門はもちろんのこと本店保守管理部門とも協力して進めている。 一方,運転部門については,運転員が所定の期間訓練を受ける必要があるため,一層早い時期からの綿密な要員計画が求められている。敦賀発電所3,4号機の運転員も基本的には新規採用者と運転部門からの異動により確保することとしている。 しかし,当社の場合,敦賀発電所3,4号機と同じ炉型(PWR)のプラントは敦賀発電所2号機の1基のみであり,敦賀発電所1号機及び東海第二発電所は炉型の異なるBWRである。一般的にBWRの運転員をPWRの運転員に転向させる場合は,PWRの運転員から転向させるよりも育成に時間を要する。また,現在,既設の発電所の運転員を一度に敦賀発電所3,4号機の運転員として教育,訓練することは,既設発電所の運転に支障を与えてしまうことから難しい。 そのため,BWR運転員を敦賀発電所3,4号機の運転員に転向させる場合は,必ず敦賀発電所2号機の運転直又は本店の敦賀発電所3,4号機設計部門で所定の期間の経験を踏まえてから配属させるなどの配慮をする必要がある。現在,このような基本方針の下,人事部門,本店発電管理部門と協力し,運転開始(燃料装荷開始)までの詳細な要員計画,教育・訓練計画を策定し,実行している。 3.まとめ 改良型PWRプラント初号機である敦賀発電所3,4号機は,これまでのトラブル経験,運転保守経験を設計段階から積極的に反映するとともに,既設発電所の高経年技術評価等で得られた知見等も予め取り入れる取り組みを行っている。 また,保全プログラム等への建設段階からのデータ整備や人材育成を含めた綿密な要員計画の策定など,建設終了後の運転,保守部門への業務移管を想定した準備を着々と進めている。 参考文献 [1] H. Yamaguchi, T. Ichikawa, C. Kurimura and M. Nakajima, “Design Verification of Reactor Internal Structures for APWR”, Proceedings of the 8th International Conference on Nuclear Engineering, (2000). [2] 鈴木英昭, “敦賀発電所3,4号機の増設計画について”, 原子力工業, Vol49, No.4. [3] Taiki Ichimura, Susumu Ueda, Shiro Saito, Takafumi Ogino, “Design Verification of the Advanced Accumulator for the APWR in Japan”, 8th International Conference on Nuclear Engineering, (2000). [4] Hirokatsu Yamaguchi, Yoichi Aeba, E. H. Weiss, “Design Features of APWR in Japan”, International Symposium on Evolutionary Water Cooled Reactors, IAEA-SM-353-24, 1998.11.Seoul.
“ “改良型PWR初号機設計への保全の知見・経験の反映 “ “星野 知彦,Tomohiko HOSHINO,竹内 公人,Kimihito TAKEUCHI“ “改良型PWR初号機設計への保全の知見・経験の反映 “ “星野 知彦,Tomohiko HOSHINO,竹内 公人,Kimihito TAKEUCHI
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