東日本大震災による女川原子力発電所の被害状況の概要 および安全性向上に向けた取り組み

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カテゴリ: 第10回
1.緒言
2011年3月11日14時46分,三陸沖約130kmを震源とするマグニチュード9.0の国内観測史上最大の巨大地震が発生した。地震後には大津波が襲来し,太平洋沿岸部の広範囲にわたり甚大な被害をもたらしたが,女川原子力発電所は地震により全号機が設計どおり自動停止した。津波は敷地高さを越えて発電所構内の主要建屋に到達せず,原子炉は冷温停止(100℃未満)となり,使用済燃料プールを冷却する機能も健全であった。このことは原子力発電所の安全確保の大原則である,「止める,冷やす,閉じ込める」について健全に機能したといえる。 ここでは,東日本大震災の震源に最も近い原子力発電所である,女川原子力発電所における地震および地震後の大津波による被害状況を紹介する。また,東日本大震災の際に女川発電所で得られた知見と福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた緊急安全対策やこれまでも実施してきた耐震性向上工事等,東北電力の安全性向上に対する取り組みの概要を紹介する。
2.東日本大震災およびプラント対応状況
女川発電所は,三陸海岸の南端にある牡鹿半島の中ほどの女川町と石巻市にまたがる敷地に立地 しており,1号機,2号機および3号機(全て沸騰水型軽水炉(BWR))からなる。巨大地震により,女 川発電所では震度6弱,地震加速度567.5ガルを記 録し,過去最大の地震加速度を記録した。また,地震後の津波最大波は,地震発生から43分後に到達し,津波高さは約13mであった。敷地は地震により約1m地盤沈下したが,敷地高さを超えての津波浸水はなかった。地震発生時のプラント状況は,1号機および3号機が通常運転中,2号機は定期検査中で原子炉起動操作中であった。地震後には,各号機において,止める(原子炉自動停止),冷やす(冷温停止(100℃未満)),閉じ込める(排気筒モニタ・各区域の放射線モニタの指示値異常なし)が健全に機能した(Table 1)。 Table 1 Earthquake, Tsunami and Plant Response 3.東日本大震災によるプラント被害状況 地震および津波による設備被害はあったが,安全上重要な機能を損なう設備損傷はなかった。3.1 地震による高圧電源盤の焼損 1号機高圧電源盤内のしゃ断器が、地震による振動で大きく揺れたため、しゃ断器の断路部が破損し、高圧電源盤内で周囲の構造物と接触して短絡等が生じた。対策として,横置き型で固定する機構(駆動ピンによりしゃ断器を固定)の高圧電源盤に更新した(Fig.1)。
MBBを前方から見る MBB前方 Suspended Breaker Probable Cause: - Breakers shaken by earthquake in HVMCS - Short circuit with surrounding structure - Spark melted cable covers and generated smoke Short-circuited by earthquake ↓ Spark generated ↓ Metal Clad Switchgear burnt 【before】母線制御母線しゃ断器Breaker Fix Pin Breaker Non-emergency (A) Breaker HVMCS Non-emergency (A) HVMCS 【after】High Seismic Capability Type Fig.1 High Voltage Metal Clad Switchgear(Non-Safety) 3.2 津波による重油貯蔵タンク倒壊 1 号機重油貯蔵タンクは、発電所構内の主要設備が設置されている敷地高さより低く,基準海面から高さ2.5m(地盤沈下後)の場所に設置してあったため,津波の影響により倒壊した(Fig.2)。Capacity: 960kL Oil Quantity: about 600kL Oil fence Usage : Fuel for auxiliary boiler in unit 1 (steam for HVAC and liquid radioactive waste treatment system) Fig.2 Heavy Oil Storage Tank 3.3 原子炉建屋付属棟への海水流入 津波による水位上昇の影響で2 号機海水ポンプ室に設置してある水位計設置箱の上蓋が押し上げられ、そこから流入した海水がケーブルトレイおよび配管の貫通部を通じて原子炉補機冷却系熱交換器室等に浸水した(Fig.3)。浸水対策として水位計を安全上重要な機器が設置されていないエリアに移設し,開口部に閉止板の取り付けを行い、水位が上昇した場合の流入防止措置を図った。さらに、ケーブルトレイおよび配管貫通部の補修を行った。 Onagawa NPS Unit 2 Estimated Tsunami : 9.1m Reactor Auxiliary Building (Non-radiation area) Reactor Building Sea water intake structure Siiiitttte llllevellll:::: 13....8m Hiiiighest Tsunamiiii :::: about 13m Trench for Pipes and Cables Heat exchanger RCW-B and HPCW Level transmitters Flllloodiiiing Path Pit Sea water pumps RCW Heat exchanger-B Flooded up to 2.5m high Pumped up by 8 temporary pumps Broken Sea water level transmitter box Installed steel structures Fig.3 Emergency Diesel Generator Cooling Systems Flooded 4.安全性向上に向けた取り組み 交流電源を供給する設備,海水を使用して原子炉施設を冷却する設備および使用済燃料貯蔵プールを冷却する設備に対して,地震および津波により機能が喪失する事象(電源機能等喪失時)を想定して安全対策を行っている。主な安全対策を以下に示す。 ・建屋の浸水防止(防潮堤および防潮壁設置,建屋外扉および貫通部防水性向上) ・電源強化(電源車および大容量電源装置の配備) ・燃料の冷却機能強化(代替注水車による注水および水源確保) ・海水による冷却機能強化(非常用海水系ポンプモータ予備品配備,代替海水ポンプ配備) ・ベント機能の強化(原子炉建屋ベント装置設置, 格納容器ベント方法強化) ・がれき撤去対策(ホイールローダ配備) ◎:IIIImmmmpppplllleeeemmmmeeeennnntttteeeedddd ○:WWWWoooorrrrkkkkiiiinnnngggg □:PPPPllllaaaannnnnnnniiiinnnngggg 【LLLLeeeeggggeeeennnndddd】 【Reactor Bui lding】Spen t Fue l Storage Pool Battery Emerge nc y Powe r Bo ard Eme rgen c y Die se l Gen erator ◎ ◎ □ ④FFFFiiiinnnnaaaallll Heeeeaaaatttt Siiiinnnnkkkk ◎ ③Fuel Cooling Function Reinforcement ・Substi tute Injection & Water Reservoi r Atta ch Rubber Sea ls Firmer Doors Replace ◎Fi l l-up Sealant Doors Penetration Gaps ①Buuuuiiiillllddddiiiinnnngggg LLLLeeeeaaaakkkk Tiiiigggghhhhttttnnnneeeessssssss 強化◎ Building Outer Boundary Doors ◎ Seismic Proof Emergency Generators Motor Washing & Drying Device, for Emergency Sea-water Systems Substitute Emergency Sea-water Pump Motor ○ ◎ Dosimeter Full Face Mask Tungsten Vest ⑤Reeeedddduuuucccceeee Exxxxppppoooossssuuuurrrreeee Doooosssseeee ◎ Wheel Loader ⑥Reeeemoooovvvveeee Deeeebbbbrrrriiiissss ◎ Embankment & Wall preventing Tsunami ○ ②Elllleeeeccccttttrrrriiiicccc Pooooweeeerrrr Suuuuppppppppllllyyyy Reeeeiiiinnnnffffoooorrrrcccceeeemeeeennnntttt Power Supply Truck Large Capacity Power Supply Equipment 【Turbine Bui lding】Primary Containme nt Ve sse l Fig.4 Safety Improvement Measures 5.耐震裕度向上工事の取り組み 女川原子力発電所では,東日本大震災前から耐震裕度向上工事を自主的に実施してきており,安全上重要な配管,電路類等について,支持構造物(サポート)の追加・改造等を実施してきている(Fig.5)。 また,国際原子力機関(IAEA)による女川原子力発電所の現地調査が2012 年7 月30 日から8 月9 日にかけて行われ,2013 年4 月8 日に公開された最終報告書においては、「女川原子力発電所の施設は、地震の規模、揺れの大きさ、長い継続時間にかかわらず“驚くほど損傷を受けていない」と報告されており,このことは耐震設計された設備が過酷な地震の揺れに対しても頑健性があることを証明しているといえる。 Before After Additional support structure Additional support structure Fig.5 Performance of Seismic Resistance Improvement 6.結言 東日本大震災の震源に最も近い原子力発電所である,女川原子力発電所において大地震および地震後の大津波による影響を受けたが,原子力発電所の安全確保の大原則である,「止める,冷やす,閉じ込める」について健全に機能した。今後も,東日本大震災の際に女川発電所で得られた知見と福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ,安全対策向上を継続して行っていく。 “ “東日本大震災による女川原子力発電所の被害状況の概要 および安全性向上に向けた取り組み “ “佐藤 徹,Toru SATO“ “東日本大震災による女川原子力発電所の被害状況の概要 および安全性向上に向けた取り組み “ “佐藤 徹,Toru SATO
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