ガイド波によるエルボ部LDI及びFACを最適に検出する方法に関する検討
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カテゴリ: 第10回
1.緒言
これまで筆者らのグループでは,エルボ部の背側・腹側・側面部などに人工欠陥を導入し,T(0,1)モードガイド波で検出することで,その検出感度の評価を行ってきた[1]。その結果,50Aスケジュール40アルミニウム管において,背側では50 kHz,腹側では30 kHzをることで直管部よりも高感度に欠陥検出が出来ることを示してきた。さらに筆者の一人である古川は,FEMシミュレーションによってエルボを伝搬するT(0,1)モードガイド波の振幅分布が,周波数によって異なることを示している[2]。即ち,30 kHzでは腹側で大きな振幅値分布を示し,50 kHzでは背側で大きな振幅値分布を示す様子を確認している。上記のことから,エルボを含む配管の複雑形状部位では,ガイド波の振幅値がその形状と周波数に依存すること。そして,その振幅値が大きな位置では,欠陥検出感度が高いという仮説が立てられる。 本報告,仮説を裏付ける実験結果を初めに示す。また,エルボ部における模擬液滴衝撃エロージョン(LDI)に最適なT(0,1)モードガイド波の周波数を示す。さらに,エルボ下流側直管部位に発生する流れ加速型腐食(FAC)を模擬した欠陥を効果的に検出するためのT(0,1)モード
ガイド波の最適な周波数も,モデル計算から推定したので報告する。
1900/01/01ガイド波の振幅値分布と検出感度
ガイド波の振幅値分布と検出感度の相関関係を検証した。JISロングエルボ両側に直管を溶接した50Aスケジュール40アルミニウム管を以下すべての実験とシミュレーションで用いた。実験では,エルボ管の一方側直管部に圧電式リング型センサーを設置し,他方側直管部で溶接部より125 mmの位置に漸増減肉欠陥を導入し(図1899/12/31参照),断面欠損率(%)の増加に対する欠陥反射率(‰)の増分比を求め検出感度とした。図1899/12/31と図1900/01/01に周波数30 kHz, 1900/01/030kHz, 1900/01/040 kHzにおける腹側と背側の振幅分布図をそれぞれ示す。図1899/12/31に示すように腹側の本欠陥導入位置では,FEM予想値で30 kHz, 50 kHz, 40 kHzの順でガイド波の振幅値が大きい。図1900/01/02に,実験で得られた周波数30 kHz, 40 kHz, 50 kHzでの断面欠損率に対する欠陥反射率を示す。図3に示すように実験で得られた検出感度も,FEM予想値の順に2.4, 4.1, 7.1という結果となり,40 kHzが最も大きな値であった。また,図2に示すように背側の本欠陥導入位置では,FEM予想値で30 kHz, 40 kHz, 50 kHzの順でガイド波の振幅値が大きい。図4に,実験で得られた周波数30 kHz, 40 kHz, 50 kHzでの断面欠損率に対する欠陥反射率を示す。図4に示すように実験で得られた検出感度
も,FEM予値の順に0.69, 1.9, 4.2という結果となり,1900/01/040kHzが最も大きな値であった。
以上の再検証実験により,エルボ等偏流部を伝搬するT(0,1)モードガイド波の振幅分布の大きな領域に存在する欠陥において, T(0,1)モードガイド波の検出感度が大きいことを確認した。
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図1899/12/31エルボ越え部腹側でのガイド波の振幅値分布図
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図2エルボ越え部背側でのガイド波の振幅値分布図
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図3図1899/12/31に示す位置の断面欠損率に対する欠陥反射率
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図4図2に示す位置の断面欠損率に対する欠陥反射率
1900/01/02LDIをガイド波で検出する
3.1実験
図5に,エルボ部における典型的なLDIとFACの発生位置を示す。LDIはエルボ背側に円錐状に発生する欠陥である。一方でFACは,エルボ下流の腹側の溶接線すぎあたりに広く減肉する欠陥である。 エルボ背側に発生するLDIでは,周波数50 kHzの利用により高い検出感度が見込まれる[1,2]。実験は,図5の配置でエルボ背側中央位置に直径6 mmと12 mmのボー
ルエンドミルで深さ4 mmまで漸増させて模擬LDIとし,断面欠損率(%)に対する欠陥反射率(‰)の増加率で評価した。図6と図7に,ボールエンドミル直径6 mmと12 mmを用いた模擬LDIの実験による断面欠損率(%)に対する欠陥反射率(‰)をそれぞれ示した。直径が大きいほど,また周波数が大きくなるにつれ検出感度が高くなる結果となった。表1に,ロングエルボとショートエルボにおける検出感度を周波数別に示した。振幅値分布と検出感度の相関の高い結果が得られた。
図5エルボ部における典型的なLDIとFACの発生位置
表1周波数別欠陥検出感度 (‰/%)
Diameter
of
Ball end mill
30kHz
40kHz
50kHz
Long
elbow
6 mm
0.27
2
4.3
12 mm
1.2
3.6
10
Simulation
12 mm
1.6
4.4
8.7
Short
elbow
6 mm
0.7
1.8
2
12 mm
0.9
2.3
7.1
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図6模擬LDI(6 mm)での断面欠損率に対する欠陥反射率
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図7模擬LDI(12 mm)での断面欠損率に対する欠陥反射率
3.2数値実験
FEMシミュレーションによる数値実験を,12 mmの模擬LDIを施した実験で用いた配管と同様の配置で行った。FEMシミュレーションによって得られた時間波形から周波数ごとの断面欠損率(%)に対する欠陥反射率(‰)の増加
率で評価した。図8に,ボールエンドミル直径12 mmを用いた模擬LDIの数値実験による断面欠損率(%)に対する欠陥反射率(‰)を示した。この結果は,前節の実験結果とよく一致した。表1にも結果を示した。
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図8数値実験による断面欠損率に対する欠陥反射率
4FACをガイド波で検出する
エルボ部下流腹側に発生するFACは,幅広い薄肉減肉が分布する。このような減肉を模擬するため,実験ではR100 mm.のかまぼこ状のヤスリでエルボ溶接部近傍の直管部を漸増減肉させた(図9参照)。実験配置は図5に,得られた実験結果を図10に示す。周波数が大きくなるにつれ検出感度が低くなる結果となった。また,直管にR100 mmの減肉を導入した際のモデル計算[3]の結果を図11に示す。周波数が大きくなるにつれ検出感度が低くなり,また検出感度も実験結果と非常に良く一致する結果が得られた。
かまぼこ状ヤスリ
配管
図9模擬FAC作成の様子
30kHz 40 kHz 50 kHz
図10模擬FACでの断面欠損率に対する欠陥反射率
30kHz 40 kHz 50 kHz
図11モデル計算での断面欠損率に対する欠陥反射率
5.結言
本報告では,まずFEMシミュレーションによってエルボを伝搬するT(0,1)モードガイド波の振幅分布と実験により得られた検出感度が相関関係であることを再確認した。また,この特徴を応用して,エルボに発生する典型的な欠陥であるLDIの検出に応用し,50kHzを用いることで高感度に検出可能であることを実験及び数値実験で示した。エルボ下流直下の直管部に典型的に発生するFACでは,その実験により得られた検出感度がモデル計算と一致することを示し,30 kHzの利用が最適であることを示した。以上より,1つのセンサーで,周波数を変え
謝辞
本研究は,経済産業省原子力安全保安院による平成23年度高経年化技術評価高度化事業によってなされた。
参考文献
[1] 溝渕ら,JSNDI2011 年次大会 p11
[2] 古川ら,第17回UTシンポジウム(2010)p45
[3] Seamら,第19回UTシンポジウム(2012)p65
[4] 斉藤ら,第19回UTシンポジウム-2012
[5] 林ら,JSNDI2011 年次大会
[6] 増田ら,JSNDI209年次大会
ることにより,LDIとFACの効率的な計測が可能である。
“ “ガイド波によるエルボ部LDI及びFACを最適に検出する方法に関する検討 “ “高松 尚平,Shohei TAKAMATSU,西野 秀郎,Hideo NISHINO,古川 敬,Takashi FURUKAWA“ “ガイド波によるエルボ部LDI及びFACを最適に検出する方法に関する検討 “ “高松 尚平,Shohei TAKAMATSU,西野 秀郎,Hideo NISHINO,古川 敬,Takashi FURUKAWA
これまで筆者らのグループでは,エルボ部の背側・腹側・側面部などに人工欠陥を導入し,T(0,1)モードガイド波で検出することで,その検出感度の評価を行ってきた[1]。その結果,50Aスケジュール40アルミニウム管において,背側では50 kHz,腹側では30 kHzをることで直管部よりも高感度に欠陥検出が出来ることを示してきた。さらに筆者の一人である古川は,FEMシミュレーションによってエルボを伝搬するT(0,1)モードガイド波の振幅分布が,周波数によって異なることを示している[2]。即ち,30 kHzでは腹側で大きな振幅値分布を示し,50 kHzでは背側で大きな振幅値分布を示す様子を確認している。上記のことから,エルボを含む配管の複雑形状部位では,ガイド波の振幅値がその形状と周波数に依存すること。そして,その振幅値が大きな位置では,欠陥検出感度が高いという仮説が立てられる。 本報告,仮説を裏付ける実験結果を初めに示す。また,エルボ部における模擬液滴衝撃エロージョン(LDI)に最適なT(0,1)モードガイド波の周波数を示す。さらに,エルボ下流側直管部位に発生する流れ加速型腐食(FAC)を模擬した欠陥を効果的に検出するためのT(0,1)モード
ガイド波の最適な周波数も,モデル計算から推定したので報告する。
1900/01/01ガイド波の振幅値分布と検出感度
ガイド波の振幅値分布と検出感度の相関関係を検証した。JISロングエルボ両側に直管を溶接した50Aスケジュール40アルミニウム管を以下すべての実験とシミュレーションで用いた。実験では,エルボ管の一方側直管部に圧電式リング型センサーを設置し,他方側直管部で溶接部より125 mmの位置に漸増減肉欠陥を導入し(図1899/12/31参照),断面欠損率(%)の増加に対する欠陥反射率(‰)の増分比を求め検出感度とした。図1899/12/31と図1900/01/01に周波数30 kHz, 1900/01/030kHz, 1900/01/040 kHzにおける腹側と背側の振幅分布図をそれぞれ示す。図1899/12/31に示すように腹側の本欠陥導入位置では,FEM予想値で30 kHz, 50 kHz, 40 kHzの順でガイド波の振幅値が大きい。図1900/01/02に,実験で得られた周波数30 kHz, 40 kHz, 50 kHzでの断面欠損率に対する欠陥反射率を示す。図3に示すように実験で得られた検出感度も,FEM予想値の順に2.4, 4.1, 7.1という結果となり,40 kHzが最も大きな値であった。また,図2に示すように背側の本欠陥導入位置では,FEM予想値で30 kHz, 40 kHz, 50 kHzの順でガイド波の振幅値が大きい。図4に,実験で得られた周波数30 kHz, 40 kHz, 50 kHzでの断面欠損率に対する欠陥反射率を示す。図4に示すように実験で得られた検出感度
も,FEM予値の順に0.69, 1.9, 4.2という結果となり,1900/01/040kHzが最も大きな値であった。
以上の再検証実験により,エルボ等偏流部を伝搬するT(0,1)モードガイド波の振幅分布の大きな領域に存在する欠陥において, T(0,1)モードガイド波の検出感度が大きいことを確認した。
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図1899/12/31エルボ越え部腹側でのガイド波の振幅値分布図
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図2エルボ越え部背側でのガイド波の振幅値分布図
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図3図1899/12/31に示す位置の断面欠損率に対する欠陥反射率
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図4図2に示す位置の断面欠損率に対する欠陥反射率
1900/01/02LDIをガイド波で検出する
3.1実験
図5に,エルボ部における典型的なLDIとFACの発生位置を示す。LDIはエルボ背側に円錐状に発生する欠陥である。一方でFACは,エルボ下流の腹側の溶接線すぎあたりに広く減肉する欠陥である。 エルボ背側に発生するLDIでは,周波数50 kHzの利用により高い検出感度が見込まれる[1,2]。実験は,図5の配置でエルボ背側中央位置に直径6 mmと12 mmのボー
ルエンドミルで深さ4 mmまで漸増させて模擬LDIとし,断面欠損率(%)に対する欠陥反射率(‰)の増加率で評価した。図6と図7に,ボールエンドミル直径6 mmと12 mmを用いた模擬LDIの実験による断面欠損率(%)に対する欠陥反射率(‰)をそれぞれ示した。直径が大きいほど,また周波数が大きくなるにつれ検出感度が高くなる結果となった。表1に,ロングエルボとショートエルボにおける検出感度を周波数別に示した。振幅値分布と検出感度の相関の高い結果が得られた。
図5エルボ部における典型的なLDIとFACの発生位置
表1周波数別欠陥検出感度 (‰/%)
Diameter
of
Ball end mill
30kHz
40kHz
50kHz
Long
elbow
6 mm
0.27
2
4.3
12 mm
1.2
3.6
10
Simulation
12 mm
1.6
4.4
8.7
Short
elbow
6 mm
0.7
1.8
2
12 mm
0.9
2.3
7.1
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図6模擬LDI(6 mm)での断面欠損率に対する欠陥反射率
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図7模擬LDI(12 mm)での断面欠損率に対する欠陥反射率
3.2数値実験
FEMシミュレーションによる数値実験を,12 mmの模擬LDIを施した実験で用いた配管と同様の配置で行った。FEMシミュレーションによって得られた時間波形から周波数ごとの断面欠損率(%)に対する欠陥反射率(‰)の増加
率で評価した。図8に,ボールエンドミル直径12 mmを用いた模擬LDIの数値実験による断面欠損率(%)に対する欠陥反射率(‰)を示した。この結果は,前節の実験結果とよく一致した。表1にも結果を示した。
30 kHz 40 kHz 50 kHz
図8数値実験による断面欠損率に対する欠陥反射率
4FACをガイド波で検出する
エルボ部下流腹側に発生するFACは,幅広い薄肉減肉が分布する。このような減肉を模擬するため,実験ではR100 mm.のかまぼこ状のヤスリでエルボ溶接部近傍の直管部を漸増減肉させた(図9参照)。実験配置は図5に,得られた実験結果を図10に示す。周波数が大きくなるにつれ検出感度が低くなる結果となった。また,直管にR100 mmの減肉を導入した際のモデル計算[3]の結果を図11に示す。周波数が大きくなるにつれ検出感度が低くなり,また検出感度も実験結果と非常に良く一致する結果が得られた。
かまぼこ状ヤスリ
配管
図9模擬FAC作成の様子
30kHz 40 kHz 50 kHz
図10模擬FACでの断面欠損率に対する欠陥反射率
30kHz 40 kHz 50 kHz
図11モデル計算での断面欠損率に対する欠陥反射率
5.結言
本報告では,まずFEMシミュレーションによってエルボを伝搬するT(0,1)モードガイド波の振幅分布と実験により得られた検出感度が相関関係であることを再確認した。また,この特徴を応用して,エルボに発生する典型的な欠陥であるLDIの検出に応用し,50kHzを用いることで高感度に検出可能であることを実験及び数値実験で示した。エルボ下流直下の直管部に典型的に発生するFACでは,その実験により得られた検出感度がモデル計算と一致することを示し,30 kHzの利用が最適であることを示した。以上より,1つのセンサーで,周波数を変え
謝辞
本研究は,経済産業省原子力安全保安院による平成23年度高経年化技術評価高度化事業によってなされた。
参考文献
[1] 溝渕ら,JSNDI2011 年次大会 p11
[2] 古川ら,第17回UTシンポジウム(2010)p45
[3] Seamら,第19回UTシンポジウム(2012)p65
[4] 斉藤ら,第19回UTシンポジウム-2012
[5] 林ら,JSNDI2011 年次大会
[6] 増田ら,JSNDI209年次大会
ることにより,LDIとFACの効率的な計測が可能である。
“ “ガイド波によるエルボ部LDI及びFACを最適に検出する方法に関する検討 “ “高松 尚平,Shohei TAKAMATSU,西野 秀郎,Hideo NISHINO,古川 敬,Takashi FURUKAWA“ “ガイド波によるエルボ部LDI及びFACを最適に検出する方法に関する検討 “ “高松 尚平,Shohei TAKAMATSU,西野 秀郎,Hideo NISHINO,古川 敬,Takashi FURUKAWA