蒸気タービン鋳鋼製車室・弁き裂進展解析手法の開発

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カテゴリ: 第10回
1.緒言
昨今のエネルギー事情から火力発電が主体となり運転時間が増え蒸気タービンも経年化が進んできている。しかし蒸気タービン車室や弁の余寿命診断は,ボイラのように定期事業者検査時期を延長する場合に使用される余寿命診断に関する指針がなく,各電力会社の独自判断にゆだねられている。 大半の判断は,き裂が発生すれば全域削り取るが,この方法では,き裂が発生・成長する部位はほぼ決まっているので肉厚が少しずつ減ってくる。経年化とともに設計最小肉厚(Tsr)に近づき,Tsr に達すると溶接補修が困難なため,一式取り替えているのが現状である。そこで,き裂を削らないで監視のみをする方法に変れば、長寿命化につながると考えられる。そのためき裂進展挙動をより正確に把握する必要があり、試験片の長時間き裂進展試験、蒸気タービン車室・弁形状のレーザ計測、および、計算機による熱流体・構造解析の3つ最先端技術を融合した手法を開発した。また同時にクリープ寄与率という新たな概念を導入して現場で簡易にかつ高精度にき裂進展予測できる方法について考案したので報告する。
2.開発概要
2-1 レーザによる形状計測 蒸気タービンの外観計測には土木工事等で使用される高精度3D レーザー測距器を用い,内部は,ハンデイタイプの3D レーザを使った(図1参照)。外観は2mm程度の誤差を設計図から、また,内部はノギスをレーザで計測して精度比較を行い、0.1mm程度の誤差を確認した。 2-2 実機模擬き裂進展試験 経年化したバルブの廃却材から切り出した1Cr1 Mo0.2V 鋳鋼(累積運転時間186,000hr,起動停止回数440 回)と1Cr1MO 鋳鋼(229,000hr,456 回)を1分,10 分,100 分,1000 分負荷を掛けて保持し,実機の起動停止を模擬した負荷を掛け,き裂進展速度を計測した。 試験片形状は幅20×平行部長さ20×厚み5mmで初期亀裂は2mmを導入した。き裂計測は,20 倍の読み取り顕微鏡による目視観察とした。負荷は140MPA,90Mpa 一定時間保持し,試験温度は、550℃一定とした。 試験結果を縦軸da/dN,横軸ΔJcパラメータで整理したものを図2に示す。Factor of 2 の範囲内にあり 破壊力学パラメータ-として最適である。また100 分保持の中途止め時(t/tr=0.7)のき裂先端は図2のように先端にクリープボイドが連結してき裂になっていることが確認でき,酸化の影響は少ないことが判った。 2-3 有限要素法による熱流動解析,熱応力解析 蒸気タービンの車室と,弁の外表面に熱電対各々10 箇所貼り付け,起動停止時の温度を計測した。また入口と出口の蒸気温度,蒸気圧力および各温度毎の熱伝導率を入力して,蒸気の熱流動解析を行ない,温度分布を算出した。さらに熱応力解析により起動・運転・停止時の内表面の応力・ひずみ分布をもとめた。(図3参照) 2.4 クリープき裂進展解析 き裂周りの応力・ひずみ分布からクリープ破壊力学パラメーターC*(ΔJC)を算出(図4参照)し,図2のda/dN を求め,き裂を進展させ,C*を再計算した(詳細解析法)。連絡先 中国電力(株) 〒733 東広島市鏡山1-3-11 E-mail 455084@pnet.energia.co.jp またクリープ寄与率ごとの弾性破壊力学パラメーター ΔK からda/dN を求め,き裂を進展させ,ΔK を再計算し,さらにき裂を進展させる方法(簡易解析法)も同時に行なった。 弁切り欠き部の詳細解析法によるき裂進展結果を図5 に示す。K1 は切欠き部のうち比較的滑らかなR 部表面を,K2 は切欠き部のうち急勾配な表面を進むき裂,K3 は切欠き部の肉厚内部に進むき裂であり,K3 については, 詳細解析法と簡易解析法の2種類の結果を併記した。実機のき裂深さも同時に表示した。 上記の詳細解析法と簡易解析法を弁のR 部や車室に適用して,実機のき裂深さと比較した結果,ほぼ一致していることを確認した。 3.結言と今後の予定 実機のレーザによる形状計測,実機を模擬したき裂進展試験,有限要素法による熱流動解析,熱応力解析,C* を使ったクリープき裂進展解析(詳細解析)およびクリープ寄与率を導入したΔK を使ったクリープき裂進展解析(簡易解析)により実機のき裂進展挙動を把握できた。今後はさらに実機のき裂データを集めて精度確認を行っていく予定である。 参考文献[1] 平成17・10・18原院第7号平成17年11月1日経済産業省原子力安全・保安院 NISA-234c-05-7 火力設備における電気事業法施行規則第94条の2第2項第1号に規定する「定期事業者検査の時期変更承認に係る標準的な審査基準例及び申請方法等について別紙3:余寿命診断に関する指針」 (平成25 年6 月21 日) Fig.1 Laserscaning Instrument and measuring Result Short distance Long distance Laser Instrument Fig.1 Measurement of Pipe displacement Fix Point Support σ ε 亀裂開口保持導入起動時停止時0.000000010.00000010.0000010.000010.00010.0010.010.001 0.1 10 1000 ΔJc (kN/m) da/dN (m/cycle) 1分保持10分保持100分保持1000分保持da/dN=1.10×10-5(ΔJc)1.19 材質;Cr-Mo-V鋳鋼温度;550℃ 応力;σ=±220MPa Fig.2 Longtimetest for crackgrowth by testpieces and microstructure Void Crack edge Stress Time from starting 0MPa Fig.3 Heatfluid dynamics analysis by FEM Casing temp. Valve surface Stress Hold Fig.4 Difinition of C* Fig.5 Crack growth at the Valve 020406080100120140起動1回50100200300400500K1R部表面K2切欠部表面K3内部亀裂深さCrack edge Y Derection of driving crack:1 Start-Stop times Crack depth mm K1 K2 K3 ●:Service plants Crack .. . .. . . .. . . .. . . . d xC J W dy T u i c i 1* * . . . ij ij ij W d . . . . . 0* -1-2 “ “蒸気タービン鋳鋼製車室・弁き裂進展解析手法の開発 “ “西田 秀高,Hidetaka NISHIDA“ “蒸気タービン鋳鋼製車室・弁き裂進展解析手法の開発 “ “西田 秀高,Hidetaka NISHIDA
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