レーザピーニングによる低圧タービン動翼の疲労強度改善
公開日:
カテゴリ: 第10回
1.はじめに
フォーク型植込み部を有する低圧タービン翼(図1)は、低負荷時に発生するランダム振動と負荷急変時に給水加熱器からの逆流によるフラッシュバック振動の影響を受ける。特に、低圧タービン翼とロータを固定するフォーク部は振動応力により損傷が発生した事例も確認されている[1]。材料の疲労強度を改善するための方法としてはショットピーニング処理があるが[2]、ピン孔内面のような細管内面については施工が非常に困難であり、有効な対策がなかった。そこで、東芝では材料疲労強度を向上させる方法としてレーザピーニング(Laser Peening、以下LP) に着目し[3]、低圧タービン翼フォーク部への施工技術を開発した[4]。本研究では、LP 施工した12Cr 鋼について残留応力測定や疲労試験といった材料評価結果について報告するとともに、低圧タービン翼への適用に向けて開発した実用化技術についても紹介する。
2.見出しの数字は一桁全角、二桁半角
Pin Turbine rotor Turbine blade Pinhole Fork (Diameters 10-18mm) Fork type installation portion Fig.1 Schematic diagram of low pressure turbine blades 2.レーザピーニングプロセス概要 LP のプロセス概念図を図2 に示す。レーザのパルス時間幅を数ns まで短パルス化し、数GW/cm2 という高い出力で材料に照射すると、材料の表層がプラズマ化して表面に高圧の金属プラズマが発生する。水中では、水の慣性でプラズマの膨張が妨げられて狭い領域にレーザのエ連絡先:千田 格、〒235-8523 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8、株式会社 東芝、電話: 045-770-2307、e-mail:itaru.chida@toshiba.co.jp ネルギーが集中するため、プラズマの圧力は空気中の10 ~100 倍となり瞬間的に数GPa に達する。この圧力により衝撃波が発生し、材料表面で衝撃波による動的な応力によって塑性変形が生じ、周囲の未変形部から拘束を受けることによって材料の表層に高い圧縮残留応力が形成される。LP の光源には、水に吸収されにくいNd:YAG レーザの第2 高調波(波長532nm)のパルスレーザを用いることで、水中の構造物への適用も可能とした[5]。 LP は、ショットピーニングやウォータジェットピーニング等の他のピーニング技術に比べ、高圧の気体や液体の噴流を伴わないために、装置先端の小型化が容易で光ファイバによるレーザ伝送と組み合わせることで狭隘部への施工性に優れている。また、レーザ光は時間的、空間的な制御性に優れるため、施工範囲すべての応力改善を確実に行うことが可能であり、施工対象部以外の周囲の構造物に対して影響を与えることがない。東芝では、原子炉内構造物の細管部にLP 施工した実績があり[6]、低圧タービン翼フォークについてもLP 施工が可能である。また、LP システムをコンテナ等に搭載して輸送することで、発電所など現地で施工を行うこともできる[6]。 Fig.2 Schematic diagram of laser peening process 3.供試材及び実験方法 3.1 供試材 供試材には12Cr 系ステンレス鍛鋼を用いた。供試材の化学成分を表 1 に示す。疲労試験には図2 に示す形状の試験片を用いた。タービン翼フォーク部のピン孔を模擬するため、平板試験片側面に半円状の半割れ孔を設けた。半割れ孔については、ドリルにより下穴をあけてからリーマ加工により所定の大きさになるように加工した。 Table 1 Chemical composition of 12Cr stainless steel 9 Peened area 40 7 250φ15 (mm) Irradiation spot x y Beam tracking pattern Starting point Reamed hole Fig.3 Shape and dimensions of fatigue specimens 3.2 実験方法 LP 施工条件を表 2 に示す。パルスエネルギーとスポット径は固定条件とし、単位面積あたりの照射密度を変えて施工した。施工部位は、図3 に示すように疲労試験片側面に設けた半割れ孔表面中央部である。 LP 施工後の試験片について、組織観察、硬さ測定、X 線回折装置による残留応力測定、および疲労試験を実施した。疲労試験は、室温・空気雰囲気、平均応力200MPa で応力振幅σa を変えて実施した。 Table 2 Laser peening conditions 4.実験結果 疲労試験片LP 施工部の外観観察結果及び断面組織観察結果を図4 に示す。未施工材と比較して、LP 施工による組織上の変化は特に認められなかった。 LP 施工した試験片の深さ方向の硬さ分布を図5 に示す。施工条件LP1 及びLP2 によりLP 施工した試験片は未施工材と比較して硬化する傾向が認められた。 LP による残留応力への影響を調べるため、X 線回折装置を用いて測定を実施した結果を図6 に示す。図6 Lens Laser pulse λ=532nm Water Plasma 0.14 0.20 0.40 0.02 0.002 0.60 11.9 0.10 C Si Mn P S Ni Cr Mo Pulse Energy 70mJ 70mJ Spot Size φ0.7mm φ0.7mm Pulse Number Density 45 pulse/mm2 27 pulse/mm2 LP1 LP2 より、未施工材においては、測定方向によらず試験片表面において約-400MPa の圧縮残留応力を形成しているものの、試験片内部では概ね0MPa であった。 一方、施工条件LP1、LP2 ではともに残留応力の分布に差が見られ、疲労試験片の長手方向σx の方が板厚方向σy と比較して高い圧縮残留応力を形成しているが、いずれの施工条件においても概ね800μm深さまで圧縮残留応力が付与されていることが確認された。 未施工材及びLP 施工材の疲労試験結果を図7 に示す。未施工材の疲労強度が150MPa であるのに対し、LP1 は210MPa、LP2 は200MPa とLP 施工により約1.4 倍向上することが明らかとなった。これは、LP 施工による表面圧縮残留応力付与と硬さの上昇により、未施工材と比較して表面き裂の発生と進展が抑制されたためと考えられる。疲労試験後の試験片破面観察結果を図8 に示す。未施工材、LP 施工材共にき裂の起点は試験片半割れ孔端部コーナー部であり、試験片内部からき裂の発生は認められなかった。 Fig.3 Appearance and microstructures of the specimens Fig.4 Measurement results of hardness distribution 2.3 図表、写真等の書き方 論文等については、図表中の文書、 説明文(figure caption)を英文とし、下記の要領に従うこと。 Fig.1 Arial 9pt Bold (図下) Table1 Arial 9pt Bold (表上) なお、論文等以外の原稿(例えば解説記事等)についてはこの限りではないが、説明文番は、下記の要領に従うこと。ただし、学術論文と同様、英文でも良い。 図1 MS ゴシック9PT 太字 図下 表1 MS ゴシック9PT 太字 図上 Table 1 A list of the measurement conditions Unpeened LP1 LP2 104 105 106 107 108 5004003002001000Number of cycles to failure Nf (cycles) Stress amplitude σa (MPa) Mean Stress = 200MPa Fig.7 S-N curves for unpeened and peened specimens Table LP1 LP2 50μm 50μm 50μm Unpeened Laser Peened Laser Peened Microstructure Appearance 2002202402602803000 100 200 300 400 500 Depth from surface(μm) Vickers hardness (HV) Unpeened LP1 LP2 -800-600-400-20002000.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Depth from surface(mm) Residual stress(MPa) Unpeened LP1 LP2 (a) σx -800-600-400-20002000.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Depth from surface(mm) Residual stress(MPa) Unpeened LP1 LP2 (b) σy Fig. 6 Residual stress distributions of the specimens Crack initiation Appearance Fracture surface observation Crack initiation Crack initiation LP2 LP1 Unpeened Fig.8 Appearance and fracture surface of the specimens 5.低圧タービン翼への適用 前述の材料試験によりレーザピーニングの効果を確認し、低圧タービン翼向けの施工システムを開発した。システム概念図を図9 に示す。2 つの動翼を連結して水槽内の治具に固定し、図10 に示すような小型のレーザ照射ヘッドをピン孔内に挿入してレーザピーニング施工を行う構成となっている。レーザ発振器から照射されたレーザ光は光ファイバにより伝送され、照射ヘッド内に設けられた非球面ミラーで反射してピン孔表面に照射される。図3 に示した疲労試験片の場合と同じ方法でピン孔表面にレーザ光を照射することで、低圧タービン翼ピン孔表面のレーザピーニング施工を実施する。東芝では、すでに実機低圧タービン翼へ施工実績があり、ピン孔表面への施工を完了している。 Fig.9 Schematic diagram of laser peening system for low pressure turbine blades Aspherical mirror Housing Laser beamOptical fiber Pinhole Water pipe Fig.10 Schematic diagram of laser peening head 6.まとめ 低圧タービン翼ピン孔への適用を目的として、12Cr 鋼向けレーザピーニング技術を開発し、残留応力と疲労強度の改善効果を確認した。特に、疲労についてはピン孔を模擬した試験片を用いて強度が1.4 倍向上することを確認した。東芝ではタービン機器の信頼性向上に向けて、今後もレーザピーニングを適用していく予定である。 参考文献 [1] 河原他、“浜岡原子力発電所5 号機低圧タービン損傷事象の長期対策“、日本保全学会 第5 回学術講演会、2008、 pp.441-442. [2] ショットピーニング技術協会編著、“金属疲労とショットピーニング”、現代工学社、2004 [3] K. Masaki, et al., ”Influence of Laser Peening Treatment on High-Cycle Fatigue Properties of Degassing Processed AC4CH Aluminum Alloy”, Journal of the Society of Materials Science of Japan, Vol. 55, No.7, 2006, pp.706-711. [4] Y. Sano, et al., “Residual stress improvement mechanism on metal material by underwater laser irradiation”, Journal of the Atomic Energy Society of Japan, Vol.42, 2000, p.567. [5] Y. Sano, et al., ”Underwater laser shock processing to introduce residual compressive stress on metal”, Materials Science Research International, Special Technical Publication, 2, 2001, 453. [6] I. Chida, et al., ”Laser based maintenance technology for PWR power plants”, Proc. 13th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE13), Beijing, China, 2005 (平成25 年6 月21 日) “ “レーザピーニングによる低圧タービン動翼の疲労強度改善 “ “千田 格,Itaru CHIDA,佐野 雄二,Yuji SANO,廣田 圭一,Keiichi HIROTA,犬飼 隆夫,Takao INUKAI,角谷 利恵,Rie SUMIYA,佐々木 英寿,Hidekazu SASAKI,野村 光,Hiroshi NOMURA“ “レーザピーニングによる低圧タービン動翼の疲労強度改善 “ “千田 格,Itaru CHIDA,佐野 雄二,Yuji SANO,廣田 圭一,Keiichi HIROTA,犬飼 隆夫,Takao INUKAI,角谷 利恵,Rie SUMIYA,佐々木 英寿,Hidekazu SASAKI,野村 光,Hiroshi NOMURA
フォーク型植込み部を有する低圧タービン翼(図1)は、低負荷時に発生するランダム振動と負荷急変時に給水加熱器からの逆流によるフラッシュバック振動の影響を受ける。特に、低圧タービン翼とロータを固定するフォーク部は振動応力により損傷が発生した事例も確認されている[1]。材料の疲労強度を改善するための方法としてはショットピーニング処理があるが[2]、ピン孔内面のような細管内面については施工が非常に困難であり、有効な対策がなかった。そこで、東芝では材料疲労強度を向上させる方法としてレーザピーニング(Laser Peening、以下LP) に着目し[3]、低圧タービン翼フォーク部への施工技術を開発した[4]。本研究では、LP 施工した12Cr 鋼について残留応力測定や疲労試験といった材料評価結果について報告するとともに、低圧タービン翼への適用に向けて開発した実用化技術についても紹介する。
2.見出しの数字は一桁全角、二桁半角
Pin Turbine rotor Turbine blade Pinhole Fork (Diameters 10-18mm) Fork type installation portion Fig.1 Schematic diagram of low pressure turbine blades 2.レーザピーニングプロセス概要 LP のプロセス概念図を図2 に示す。レーザのパルス時間幅を数ns まで短パルス化し、数GW/cm2 という高い出力で材料に照射すると、材料の表層がプラズマ化して表面に高圧の金属プラズマが発生する。水中では、水の慣性でプラズマの膨張が妨げられて狭い領域にレーザのエ連絡先:千田 格、〒235-8523 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8、株式会社 東芝、電話: 045-770-2307、e-mail:itaru.chida@toshiba.co.jp ネルギーが集中するため、プラズマの圧力は空気中の10 ~100 倍となり瞬間的に数GPa に達する。この圧力により衝撃波が発生し、材料表面で衝撃波による動的な応力によって塑性変形が生じ、周囲の未変形部から拘束を受けることによって材料の表層に高い圧縮残留応力が形成される。LP の光源には、水に吸収されにくいNd:YAG レーザの第2 高調波(波長532nm)のパルスレーザを用いることで、水中の構造物への適用も可能とした[5]。 LP は、ショットピーニングやウォータジェットピーニング等の他のピーニング技術に比べ、高圧の気体や液体の噴流を伴わないために、装置先端の小型化が容易で光ファイバによるレーザ伝送と組み合わせることで狭隘部への施工性に優れている。また、レーザ光は時間的、空間的な制御性に優れるため、施工範囲すべての応力改善を確実に行うことが可能であり、施工対象部以外の周囲の構造物に対して影響を与えることがない。東芝では、原子炉内構造物の細管部にLP 施工した実績があり[6]、低圧タービン翼フォークについてもLP 施工が可能である。また、LP システムをコンテナ等に搭載して輸送することで、発電所など現地で施工を行うこともできる[6]。 Fig.2 Schematic diagram of laser peening process 3.供試材及び実験方法 3.1 供試材 供試材には12Cr 系ステンレス鍛鋼を用いた。供試材の化学成分を表 1 に示す。疲労試験には図2 に示す形状の試験片を用いた。タービン翼フォーク部のピン孔を模擬するため、平板試験片側面に半円状の半割れ孔を設けた。半割れ孔については、ドリルにより下穴をあけてからリーマ加工により所定の大きさになるように加工した。 Table 1 Chemical composition of 12Cr stainless steel 9 Peened area 40 7 250φ15 (mm) Irradiation spot x y Beam tracking pattern Starting point Reamed hole Fig.3 Shape and dimensions of fatigue specimens 3.2 実験方法 LP 施工条件を表 2 に示す。パルスエネルギーとスポット径は固定条件とし、単位面積あたりの照射密度を変えて施工した。施工部位は、図3 に示すように疲労試験片側面に設けた半割れ孔表面中央部である。 LP 施工後の試験片について、組織観察、硬さ測定、X 線回折装置による残留応力測定、および疲労試験を実施した。疲労試験は、室温・空気雰囲気、平均応力200MPa で応力振幅σa を変えて実施した。 Table 2 Laser peening conditions 4.実験結果 疲労試験片LP 施工部の外観観察結果及び断面組織観察結果を図4 に示す。未施工材と比較して、LP 施工による組織上の変化は特に認められなかった。 LP 施工した試験片の深さ方向の硬さ分布を図5 に示す。施工条件LP1 及びLP2 によりLP 施工した試験片は未施工材と比較して硬化する傾向が認められた。 LP による残留応力への影響を調べるため、X 線回折装置を用いて測定を実施した結果を図6 に示す。図6 Lens Laser pulse λ=532nm Water Plasma 0.14 0.20 0.40 0.02 0.002 0.60 11.9 0.10 C Si Mn P S Ni Cr Mo Pulse Energy 70mJ 70mJ Spot Size φ0.7mm φ0.7mm Pulse Number Density 45 pulse/mm2 27 pulse/mm2 LP1 LP2 より、未施工材においては、測定方向によらず試験片表面において約-400MPa の圧縮残留応力を形成しているものの、試験片内部では概ね0MPa であった。 一方、施工条件LP1、LP2 ではともに残留応力の分布に差が見られ、疲労試験片の長手方向σx の方が板厚方向σy と比較して高い圧縮残留応力を形成しているが、いずれの施工条件においても概ね800μm深さまで圧縮残留応力が付与されていることが確認された。 未施工材及びLP 施工材の疲労試験結果を図7 に示す。未施工材の疲労強度が150MPa であるのに対し、LP1 は210MPa、LP2 は200MPa とLP 施工により約1.4 倍向上することが明らかとなった。これは、LP 施工による表面圧縮残留応力付与と硬さの上昇により、未施工材と比較して表面き裂の発生と進展が抑制されたためと考えられる。疲労試験後の試験片破面観察結果を図8 に示す。未施工材、LP 施工材共にき裂の起点は試験片半割れ孔端部コーナー部であり、試験片内部からき裂の発生は認められなかった。 Fig.3 Appearance and microstructures of the specimens Fig.4 Measurement results of hardness distribution 2.3 図表、写真等の書き方 論文等については、図表中の文書、 説明文(figure caption)を英文とし、下記の要領に従うこと。 Fig.1 Arial 9pt Bold (図下) Table1 Arial 9pt Bold (表上) なお、論文等以外の原稿(例えば解説記事等)についてはこの限りではないが、説明文番は、下記の要領に従うこと。ただし、学術論文と同様、英文でも良い。 図1 MS ゴシック9PT 太字 図下 表1 MS ゴシック9PT 太字 図上 Table 1 A list of the measurement conditions Unpeened LP1 LP2 104 105 106 107 108 5004003002001000Number of cycles to failure Nf (cycles) Stress amplitude σa (MPa) Mean Stress = 200MPa Fig.7 S-N curves for unpeened and peened specimens Table LP1 LP2 50μm 50μm 50μm Unpeened Laser Peened Laser Peened Microstructure Appearance 2002202402602803000 100 200 300 400 500 Depth from surface(μm) Vickers hardness (HV) Unpeened LP1 LP2 -800-600-400-20002000.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Depth from surface(mm) Residual stress(MPa) Unpeened LP1 LP2 (a) σx -800-600-400-20002000.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Depth from surface(mm) Residual stress(MPa) Unpeened LP1 LP2 (b) σy Fig. 6 Residual stress distributions of the specimens Crack initiation Appearance Fracture surface observation Crack initiation Crack initiation LP2 LP1 Unpeened Fig.8 Appearance and fracture surface of the specimens 5.低圧タービン翼への適用 前述の材料試験によりレーザピーニングの効果を確認し、低圧タービン翼向けの施工システムを開発した。システム概念図を図9 に示す。2 つの動翼を連結して水槽内の治具に固定し、図10 に示すような小型のレーザ照射ヘッドをピン孔内に挿入してレーザピーニング施工を行う構成となっている。レーザ発振器から照射されたレーザ光は光ファイバにより伝送され、照射ヘッド内に設けられた非球面ミラーで反射してピン孔表面に照射される。図3 に示した疲労試験片の場合と同じ方法でピン孔表面にレーザ光を照射することで、低圧タービン翼ピン孔表面のレーザピーニング施工を実施する。東芝では、すでに実機低圧タービン翼へ施工実績があり、ピン孔表面への施工を完了している。 Fig.9 Schematic diagram of laser peening system for low pressure turbine blades Aspherical mirror Housing Laser beamOptical fiber Pinhole Water pipe Fig.10 Schematic diagram of laser peening head 6.まとめ 低圧タービン翼ピン孔への適用を目的として、12Cr 鋼向けレーザピーニング技術を開発し、残留応力と疲労強度の改善効果を確認した。特に、疲労についてはピン孔を模擬した試験片を用いて強度が1.4 倍向上することを確認した。東芝ではタービン機器の信頼性向上に向けて、今後もレーザピーニングを適用していく予定である。 参考文献 [1] 河原他、“浜岡原子力発電所5 号機低圧タービン損傷事象の長期対策“、日本保全学会 第5 回学術講演会、2008、 pp.441-442. [2] ショットピーニング技術協会編著、“金属疲労とショットピーニング”、現代工学社、2004 [3] K. Masaki, et al., ”Influence of Laser Peening Treatment on High-Cycle Fatigue Properties of Degassing Processed AC4CH Aluminum Alloy”, Journal of the Society of Materials Science of Japan, Vol. 55, No.7, 2006, pp.706-711. [4] Y. Sano, et al., “Residual stress improvement mechanism on metal material by underwater laser irradiation”, Journal of the Atomic Energy Society of Japan, Vol.42, 2000, p.567. [5] Y. Sano, et al., ”Underwater laser shock processing to introduce residual compressive stress on metal”, Materials Science Research International, Special Technical Publication, 2, 2001, 453. [6] I. Chida, et al., ”Laser based maintenance technology for PWR power plants”, Proc. 13th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE13), Beijing, China, 2005 (平成25 年6 月21 日) “ “レーザピーニングによる低圧タービン動翼の疲労強度改善 “ “千田 格,Itaru CHIDA,佐野 雄二,Yuji SANO,廣田 圭一,Keiichi HIROTA,犬飼 隆夫,Takao INUKAI,角谷 利恵,Rie SUMIYA,佐々木 英寿,Hidekazu SASAKI,野村 光,Hiroshi NOMURA“ “レーザピーニングによる低圧タービン動翼の疲労強度改善 “ “千田 格,Itaru CHIDA,佐野 雄二,Yuji SANO,廣田 圭一,Keiichi HIROTA,犬飼 隆夫,Takao INUKAI,角谷 利恵,Rie SUMIYA,佐々木 英寿,Hidekazu SASAKI,野村 光,Hiroshi NOMURA