ACM センサを用いた空調ダクトの予防保全計画
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カテゴリ: 第10回
1.諸言
現状のダクト保全方法は、機能に影響を及ぼすような腐食が発生してから処置を行う事後保全がほとんどである。これは、使用場所の環境が異なれば、ダクトの腐食度合いも異なることから、最適な点検・交換時期を予測することが難しいためである。空調ダクトの腐食は、主に塩分や湿分が与える影響により進行するため、適切に予防保全を行うにはそれぞれの腐食環境に対する金属の腐食量の定量的データが必要となる。これまで、メーカにて実施された金属の腐食に対する評価方法として、平板を用いた曝露試験が一般的に行われてきた。しかしながら、ダクトには底面、側面、天面のダクト本体の他に、フランジ、リベット、はぜ折り部などの加工部から構成され、これらの部位から腐食が発生するダクト特有の事象があるため、平板のみの曝露の調査では、十分な結果が得られない。そこで、一般的に行われている平板と実際に使用するダクト形状に加工したサンプルを合わせて曝露試験した。また、使用場所(東北電力株式会社東通原子力発電所1 号機(以下、東通発電所という。))に最適なダクトを選定するため、一般的に用いられる溶融Znめっき鋼板と5種類の高耐食性鋼板を曝露し腐食状況を確認した。
2.試験方法
2.1 環境因子測定試験 金属の腐食に影響する因子である、海塩粒子飛来量、濡れ時間について測定を行った。海塩粒子飛来量の測定は、ドライガーゼ法(JIS Z 2382) を用いて外気取入ダクトに設置し、月別の日平均のNaCl 量[mdd]を求めた。濡れ時間の測定は、温湿度計、ACMセンサ(基盤の上に絶縁ペーストを介して導電性ペーストを櫛形状に形成されたセンサで、腐食(水膜形成)時に発生する電流を測定することで腐食環境を定量的にモニタリングする) を用いて、測定された値にしきい値を設定して、それ以上の値に達した時間を濡れ時間として算出した。2.2 曝露試験 用いる試験体として、平板にカットした試験片とダクト形状に加工した成形品を曝露させた。試験片は、一般的に用いられる溶融Zn めっき鋼板に加えて、より耐食性が高く、搬送要求機能を満たし、ダクト形状への加工に耐えうることを条件に、溶融55%Al-Zn めっき鋼板、溶融Zn-6%Al-3%Mg めっき鋼板、溶融Al めっき鋼板、SUS304、溶融Al めっきSUS の6 種類とし、設置方向の違いによる腐食速度を確認するため水平・垂直方向に設置した。また、めっき層の腐食の違いを見るためにめっき層で覆われていない切断面をシール処理したもの、切断面からの腐食評価を行うためにシール処理をしていないものを設置した。連絡先:福場一司、〒235-0036 神奈川県横浜市磯子区中原1-1-34、新日本空調株式会社原子力事業部技 術企画部開発課E-mail:fukubak@snk.co.jp ダクト成形品は、ダクト本体とフランジの材料を様々な組み合わせとすることで、ダクト本体、加工部(はぜ折り部、フランジ)からの腐食状況の違いを確認した。用いる材質は、ダクト本体を上記に挙げた6種類の材質、フランジを一般的に使用される鉄アングルと高耐食性鋼板のアングルとした。また、塗装の有効性を確認するため、腐食の発生しやすい加工部に塗布したものと、塗装をしないもの用いた。3.試験結果と考察 3.1 海塩粒子飛来量 Fig.1 にドライガーゼ法による月別の日平均海塩粒子飛来量を示す。測定結果より、9 月が最も多く、4 月、5 月と続き、年間を通して100~300mdd となり、一般的に塩害地で知られる沖縄の屋外の自然環境と比較しても塩分量が多いことが分かった。Fig.1 Sea salt particles flying amount 3.2 温湿度による濡れ時間 Fig.2 に月平均温湿度を示す。温度においては9 月が24.3℃DBと最も高く、最も低い1月が-1.0℃DBとなった。湿度においては、年間を通して66%RH~87%RH と一年を通し高湿度状態であることが確認された。Fig.2 Temperature and humidity ここで、金属の腐食に与える影響を確認するため、ISO にて定められる濡れ時間(目視で確認できる濡れの中から降雨を除く水膜厚み1μm以上の状態で、温度0℃、かつ湿度80%以上の時間を指す)より測定データを分析すると、年間で最も濡れ時間の割合が高いのは8 月の83.4%、最も低いのは1 月の12.7%となり、年間の40%が濡れ時間となる(Fig.3 参照)。Fig.3 Wetting time by thermo-hygrometer 3.3 ACM センサによる濡れ時間 Fig.4 にACM センサによる月平均腐食電流を示す。ACM センサは水膜がセンサ表面に形成されるときの電流を測定しているため、湿度の挙動と似た特性となっていた。Fig.4 Output of ACM-sensor ここで、金属の腐食に与える影響を確認するため、ACMセンサにて定められる濡れ時間(水膜厚みに限らず表面が濡れた状態で、腐食電流1μA以上の時間を指す) より測定データを分析すると、年間の86%が濡れ時間とほとんどが濡れた状態であった(Fig.5 参照)。この結果は、ISO にて定められる濡れ時間より明らかに長くなった。これは、ACMセンサが温湿度以外に付着塩分の潮解による濡れも含んだ値として測定されることから、腐食に対してはより正しく評価が可能である。Fig.5 Wetting time by ACM-sensor 3.4 試験片の腐食 曝露した6種類の試験片について、腐食速度を求める。一般にACM センサの腐食電流から求められる日平均電気量(腐食電流を電気量として積算し、一日当たりに直0200400600800100012004 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month Wetting time(h) 020406080100120Percentage(%) Wetting time Percentage of wetting time 0200400600800100012004 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month Wetting time(h) 020406080100120Percentage(%) Wetting time Percentage of wetting time 0501001502002503004 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month NaCl(mdd) Air intake duct Outdoor Okinawa 0.00010.0010.010.111010010004 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month Current(μA) Air intake duct -1010305070901104 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month Temperature(℃)/Humidity(%) Temperature Humidityしたもの)と金属の腐食速度は相関性があることが知られており、ACMセンサの測定データと曝露試験の腐食量の測定結果から腐食速度を求めた。ただし、試験片はめっき層と母材の異なる金属が合わさって構成されており、腐食速度が異なることからそれぞれ確認した。3.4.1 めっき層の腐食速度 Fig.6 Corrosion speed of molten Zn-coated Fig.7 Corrosion speed of molten 55%Al-Zn-coated Fig.8 Corrosion speed of molten Zn-6%Al-3%Mg-coated Fig.9 Corrosion speed of molten Al-coated Fig.6~9 に各めっき層の日平均電気量と腐食量の関係を示す。Fig.6 は試験値とメーカ社内試験値をプロットした。Fig.7,8 のメーカデータは、Fig.6 の亜鉛めっきの試験値を基準に耐食性能の違いから求めた。Fig.9 の試験値とメーカデータは、溶融アルミめっきの腐食があまり進行しておらず求められなかったため、メーカ社内試験の溶融55%Al-Zn めっきを基準とした耐食性能の違いから求めた。これらの結果より、各めっき層の腐食速度の直線式を求めた。ACMセンサの年間の日平均電気量より、腐食速度は以下に示すTable 1 の通りとなった。Table 1 Corrosion speed of the test pieces 3.4.2 母材の腐食速度 曝露試験の腐食状況として全試験片とも母材まで腐食が達していなかったため、母材である鉄の腐食速度を文献[1]に示される直線式を用いて算出した(Fig.10 参照)。SUS においては、孔食などの腐食が年数と共に進行しないため対象サンプルから除いた。Fig.10 Corrosion speed of Steel めっき層同様に日平均電気量を用いて鉄の腐食速度を算出すると0.31mm/y となった。3.5 ダクト成形品の腐食 実際に現場にてダクトを使用する場合、金属を加工する。そのため、試験片のような平板を用いた曝露試験ではわかり得ない、ダクト特有の腐食が発生する事象がある。そこで、ダクト成形品を設置して曝露試験を行った腐食状況について確認した。Fig.11 に各ダクト成形品の腐食状況を示す。0.111010010000.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 Per day average quantity of electricity(C/day) Corrosion content(g/m2/y)Test value The manufacturer's data 0.111010010000.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 Per day average quantity of electricity(C/day) Corrosion content(g/m2/y)Test value The manufacturer's data 0.111010010000.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 Per day average quantity of electricity(C/day) Corrosion content(g/m2/y)Test value The manufacturer's data 0.111010010000.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 Per day average quantity of electricity(C/day) Corrosion content(g/m2/y)Test value The manufacturer's data test pieces corrosion speed [g/m2/y] molten Zn-coated steel 72.3 molten 55%Al-Zn-coated steel 24.6 molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel 26.4 molten Al-coated steel 6.9 Fig.11 Corrosion status of the duct molded article 塗装無しのダクト成形品において、フランジに鉄アングルを使用したものはフランジとダクト本体間に異種金属接触腐食が発生し、さらにフランジの材質として鉄を用いたことにより、フランジの腐食が著しく進行した。フランジに高耐食性鋼板のアングルを使用したものは、フランジとダクト本体が同種金属で、鉄より耐食性の強い材質を用いたことにより、あまり腐食が進行しなかった。また、Zn 系めっきのダクト、Al 系めっきのダクトに分けて確認すると、後者の方が腐食しており、3.4.1 項の結果とは異なる結果となった。これは、Al 系めっきが硬く、塩素イオンに触れることで溶解するため、ダクト加工時に表面の皮膜やめっきが壊れ、そこに海塩粒子に含まれる塩素イオンが侵入したことでZn 系めっきよりも腐食したと考えられる。したがって、試験片とダクト成形品の試験結果から、東通発電所の外気取入ダクトではフランジとダクト本体に溶融Zn-6%Al-3%Mgめっき鋼板を用いた同種金属のダクトが最適な組み合わせの結果となった。また、塗装有りのダクト成形品より、加工部に塗装をすることで、腐食の著しかったフランジやはぜ折り部からの腐食の発生を遅らせていた。これより、ダクト本体のような耐食性の強いめっきで保護されている部分以外のダクト特有の加工部、壊れた皮膜やめっきの表面に塗装することでダクトの寿命を長く出来ることを確認した。4.結言 本研究では、東通発電所の外気取入ダクトを対象として、腐食に影響を与える環境因子の測定をするとともに、様々な試験片とダクト成形品を曝露させた。その結果、東通発電所特有の腐食環境、最適なダクト材料の組み合わせを定量的、かつ相対的に把握した。これより、今回得られた試験片の腐食速度をもとに、寿命に合わせた管理を実施していくことで、機能に影響を及ぼすような腐食が起こる前に補修・取替えの処置を行い、設備の安定・安全運転に繋げられる。謝辞本研究を行うにあたり、日新製鋼株式会社の方々には大変有益なご助言を賜りましたことに感謝の意を表します。参考文献 [1] 篠原正、元田慎一、押川渡、“ACM センサによる環境腐食性評価”、材料と環境、 No.54、375-382(2005). [2] 国土開発技術研究センター建築物耐久性向上技術普及委員会編、“鉄骨造建築物の耐久性向上技術”、77-78(1986). [3] 独立行政法人物質・材料研究機構、“近未来の鉄鋼材料を知る耐候性鋼・腐食解析版”、 No.5、9-14(2004). molten Zn-coated steel molten 55%Al-Zn-coated steel molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel angle steel no coating angle steel no coating angle steel no coating molten Al-coated steel SUS306 molten Al-coated SUS angle steel no coating angle steel no coating angle steel no coating molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel SUS306 molten Al-coated SUS angle molten Zn-6%Al-3%Mgcoated no coating angle SUS no coating angle SUS no coating molten Al-coated steel molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel angle steel coating angle steel coating angle molten Zn-6%Al-3%Mgcoated coating“ “ACM センサを用いた空調ダクトの予防保全計画 “ “福場 一司,Kazushi FUKUBA,藤 孝信,Takanobu ITO,島 明子,Akiko KOJIMA,丹治 和宏,Kazuhiro TANJI,佐藤 優樹,Yuki SATO“ “ACM センサを用いた空調ダクトの予防保全計画 “ “福場 一司,Kazushi FUKUBA,藤 孝信,Takanobu ITO,島 明子,Akiko KOJIMA,丹治 和宏,Kazuhiro TANJI,佐藤 優樹,Yuki SATO
現状のダクト保全方法は、機能に影響を及ぼすような腐食が発生してから処置を行う事後保全がほとんどである。これは、使用場所の環境が異なれば、ダクトの腐食度合いも異なることから、最適な点検・交換時期を予測することが難しいためである。空調ダクトの腐食は、主に塩分や湿分が与える影響により進行するため、適切に予防保全を行うにはそれぞれの腐食環境に対する金属の腐食量の定量的データが必要となる。これまで、メーカにて実施された金属の腐食に対する評価方法として、平板を用いた曝露試験が一般的に行われてきた。しかしながら、ダクトには底面、側面、天面のダクト本体の他に、フランジ、リベット、はぜ折り部などの加工部から構成され、これらの部位から腐食が発生するダクト特有の事象があるため、平板のみの曝露の調査では、十分な結果が得られない。そこで、一般的に行われている平板と実際に使用するダクト形状に加工したサンプルを合わせて曝露試験した。また、使用場所(東北電力株式会社東通原子力発電所1 号機(以下、東通発電所という。))に最適なダクトを選定するため、一般的に用いられる溶融Znめっき鋼板と5種類の高耐食性鋼板を曝露し腐食状況を確認した。
2.試験方法
2.1 環境因子測定試験 金属の腐食に影響する因子である、海塩粒子飛来量、濡れ時間について測定を行った。海塩粒子飛来量の測定は、ドライガーゼ法(JIS Z 2382) を用いて外気取入ダクトに設置し、月別の日平均のNaCl 量[mdd]を求めた。濡れ時間の測定は、温湿度計、ACMセンサ(基盤の上に絶縁ペーストを介して導電性ペーストを櫛形状に形成されたセンサで、腐食(水膜形成)時に発生する電流を測定することで腐食環境を定量的にモニタリングする) を用いて、測定された値にしきい値を設定して、それ以上の値に達した時間を濡れ時間として算出した。2.2 曝露試験 用いる試験体として、平板にカットした試験片とダクト形状に加工した成形品を曝露させた。試験片は、一般的に用いられる溶融Zn めっき鋼板に加えて、より耐食性が高く、搬送要求機能を満たし、ダクト形状への加工に耐えうることを条件に、溶融55%Al-Zn めっき鋼板、溶融Zn-6%Al-3%Mg めっき鋼板、溶融Al めっき鋼板、SUS304、溶融Al めっきSUS の6 種類とし、設置方向の違いによる腐食速度を確認するため水平・垂直方向に設置した。また、めっき層の腐食の違いを見るためにめっき層で覆われていない切断面をシール処理したもの、切断面からの腐食評価を行うためにシール処理をしていないものを設置した。連絡先:福場一司、〒235-0036 神奈川県横浜市磯子区中原1-1-34、新日本空調株式会社原子力事業部技 術企画部開発課E-mail:fukubak@snk.co.jp ダクト成形品は、ダクト本体とフランジの材料を様々な組み合わせとすることで、ダクト本体、加工部(はぜ折り部、フランジ)からの腐食状況の違いを確認した。用いる材質は、ダクト本体を上記に挙げた6種類の材質、フランジを一般的に使用される鉄アングルと高耐食性鋼板のアングルとした。また、塗装の有効性を確認するため、腐食の発生しやすい加工部に塗布したものと、塗装をしないもの用いた。3.試験結果と考察 3.1 海塩粒子飛来量 Fig.1 にドライガーゼ法による月別の日平均海塩粒子飛来量を示す。測定結果より、9 月が最も多く、4 月、5 月と続き、年間を通して100~300mdd となり、一般的に塩害地で知られる沖縄の屋外の自然環境と比較しても塩分量が多いことが分かった。Fig.1 Sea salt particles flying amount 3.2 温湿度による濡れ時間 Fig.2 に月平均温湿度を示す。温度においては9 月が24.3℃DBと最も高く、最も低い1月が-1.0℃DBとなった。湿度においては、年間を通して66%RH~87%RH と一年を通し高湿度状態であることが確認された。Fig.2 Temperature and humidity ここで、金属の腐食に与える影響を確認するため、ISO にて定められる濡れ時間(目視で確認できる濡れの中から降雨を除く水膜厚み1μm以上の状態で、温度0℃、かつ湿度80%以上の時間を指す)より測定データを分析すると、年間で最も濡れ時間の割合が高いのは8 月の83.4%、最も低いのは1 月の12.7%となり、年間の40%が濡れ時間となる(Fig.3 参照)。Fig.3 Wetting time by thermo-hygrometer 3.3 ACM センサによる濡れ時間 Fig.4 にACM センサによる月平均腐食電流を示す。ACM センサは水膜がセンサ表面に形成されるときの電流を測定しているため、湿度の挙動と似た特性となっていた。Fig.4 Output of ACM-sensor ここで、金属の腐食に与える影響を確認するため、ACMセンサにて定められる濡れ時間(水膜厚みに限らず表面が濡れた状態で、腐食電流1μA以上の時間を指す) より測定データを分析すると、年間の86%が濡れ時間とほとんどが濡れた状態であった(Fig.5 参照)。この結果は、ISO にて定められる濡れ時間より明らかに長くなった。これは、ACMセンサが温湿度以外に付着塩分の潮解による濡れも含んだ値として測定されることから、腐食に対してはより正しく評価が可能である。Fig.5 Wetting time by ACM-sensor 3.4 試験片の腐食 曝露した6種類の試験片について、腐食速度を求める。一般にACM センサの腐食電流から求められる日平均電気量(腐食電流を電気量として積算し、一日当たりに直0200400600800100012004 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month Wetting time(h) 020406080100120Percentage(%) Wetting time Percentage of wetting time 0200400600800100012004 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month Wetting time(h) 020406080100120Percentage(%) Wetting time Percentage of wetting time 0501001502002503004 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month NaCl(mdd) Air intake duct Outdoor Okinawa 0.00010.0010.010.111010010004 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month Current(μA) Air intake duct -1010305070901104 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 Month Temperature(℃)/Humidity(%) Temperature Humidityしたもの)と金属の腐食速度は相関性があることが知られており、ACMセンサの測定データと曝露試験の腐食量の測定結果から腐食速度を求めた。ただし、試験片はめっき層と母材の異なる金属が合わさって構成されており、腐食速度が異なることからそれぞれ確認した。3.4.1 めっき層の腐食速度 Fig.6 Corrosion speed of molten Zn-coated Fig.7 Corrosion speed of molten 55%Al-Zn-coated Fig.8 Corrosion speed of molten Zn-6%Al-3%Mg-coated Fig.9 Corrosion speed of molten Al-coated Fig.6~9 に各めっき層の日平均電気量と腐食量の関係を示す。Fig.6 は試験値とメーカ社内試験値をプロットした。Fig.7,8 のメーカデータは、Fig.6 の亜鉛めっきの試験値を基準に耐食性能の違いから求めた。Fig.9 の試験値とメーカデータは、溶融アルミめっきの腐食があまり進行しておらず求められなかったため、メーカ社内試験の溶融55%Al-Zn めっきを基準とした耐食性能の違いから求めた。これらの結果より、各めっき層の腐食速度の直線式を求めた。ACMセンサの年間の日平均電気量より、腐食速度は以下に示すTable 1 の通りとなった。Table 1 Corrosion speed of the test pieces 3.4.2 母材の腐食速度 曝露試験の腐食状況として全試験片とも母材まで腐食が達していなかったため、母材である鉄の腐食速度を文献[1]に示される直線式を用いて算出した(Fig.10 参照)。SUS においては、孔食などの腐食が年数と共に進行しないため対象サンプルから除いた。Fig.10 Corrosion speed of Steel めっき層同様に日平均電気量を用いて鉄の腐食速度を算出すると0.31mm/y となった。3.5 ダクト成形品の腐食 実際に現場にてダクトを使用する場合、金属を加工する。そのため、試験片のような平板を用いた曝露試験ではわかり得ない、ダクト特有の腐食が発生する事象がある。そこで、ダクト成形品を設置して曝露試験を行った腐食状況について確認した。Fig.11 に各ダクト成形品の腐食状況を示す。0.111010010000.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 Per day average quantity of electricity(C/day) Corrosion content(g/m2/y)Test value The manufacturer's data 0.111010010000.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 Per day average quantity of electricity(C/day) Corrosion content(g/m2/y)Test value The manufacturer's data 0.111010010000.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 Per day average quantity of electricity(C/day) Corrosion content(g/m2/y)Test value The manufacturer's data 0.111010010000.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 Per day average quantity of electricity(C/day) Corrosion content(g/m2/y)Test value The manufacturer's data test pieces corrosion speed [g/m2/y] molten Zn-coated steel 72.3 molten 55%Al-Zn-coated steel 24.6 molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel 26.4 molten Al-coated steel 6.9 Fig.11 Corrosion status of the duct molded article 塗装無しのダクト成形品において、フランジに鉄アングルを使用したものはフランジとダクト本体間に異種金属接触腐食が発生し、さらにフランジの材質として鉄を用いたことにより、フランジの腐食が著しく進行した。フランジに高耐食性鋼板のアングルを使用したものは、フランジとダクト本体が同種金属で、鉄より耐食性の強い材質を用いたことにより、あまり腐食が進行しなかった。また、Zn 系めっきのダクト、Al 系めっきのダクトに分けて確認すると、後者の方が腐食しており、3.4.1 項の結果とは異なる結果となった。これは、Al 系めっきが硬く、塩素イオンに触れることで溶解するため、ダクト加工時に表面の皮膜やめっきが壊れ、そこに海塩粒子に含まれる塩素イオンが侵入したことでZn 系めっきよりも腐食したと考えられる。したがって、試験片とダクト成形品の試験結果から、東通発電所の外気取入ダクトではフランジとダクト本体に溶融Zn-6%Al-3%Mgめっき鋼板を用いた同種金属のダクトが最適な組み合わせの結果となった。また、塗装有りのダクト成形品より、加工部に塗装をすることで、腐食の著しかったフランジやはぜ折り部からの腐食の発生を遅らせていた。これより、ダクト本体のような耐食性の強いめっきで保護されている部分以外のダクト特有の加工部、壊れた皮膜やめっきの表面に塗装することでダクトの寿命を長く出来ることを確認した。4.結言 本研究では、東通発電所の外気取入ダクトを対象として、腐食に影響を与える環境因子の測定をするとともに、様々な試験片とダクト成形品を曝露させた。その結果、東通発電所特有の腐食環境、最適なダクト材料の組み合わせを定量的、かつ相対的に把握した。これより、今回得られた試験片の腐食速度をもとに、寿命に合わせた管理を実施していくことで、機能に影響を及ぼすような腐食が起こる前に補修・取替えの処置を行い、設備の安定・安全運転に繋げられる。謝辞本研究を行うにあたり、日新製鋼株式会社の方々には大変有益なご助言を賜りましたことに感謝の意を表します。参考文献 [1] 篠原正、元田慎一、押川渡、“ACM センサによる環境腐食性評価”、材料と環境、 No.54、375-382(2005). [2] 国土開発技術研究センター建築物耐久性向上技術普及委員会編、“鉄骨造建築物の耐久性向上技術”、77-78(1986). [3] 独立行政法人物質・材料研究機構、“近未来の鉄鋼材料を知る耐候性鋼・腐食解析版”、 No.5、9-14(2004). molten Zn-coated steel molten 55%Al-Zn-coated steel molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel angle steel no coating angle steel no coating angle steel no coating molten Al-coated steel SUS306 molten Al-coated SUS angle steel no coating angle steel no coating angle steel no coating molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel SUS306 molten Al-coated SUS angle molten Zn-6%Al-3%Mgcoated no coating angle SUS no coating angle SUS no coating molten Al-coated steel molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel molten Zn-6%Al-3%Mg-coated steel angle steel coating angle steel coating angle molten Zn-6%Al-3%Mgcoated coating“ “ACM センサを用いた空調ダクトの予防保全計画 “ “福場 一司,Kazushi FUKUBA,藤 孝信,Takanobu ITO,島 明子,Akiko KOJIMA,丹治 和宏,Kazuhiro TANJI,佐藤 優樹,Yuki SATO“ “ACM センサを用いた空調ダクトの予防保全計画 “ “福場 一司,Kazushi FUKUBA,藤 孝信,Takanobu ITO,島 明子,Akiko KOJIMA,丹治 和宏,Kazuhiro TANJI,佐藤 優樹,Yuki SATO