四国電力の安全対策強化の取り組み
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カテゴリ: 第10回
1.はじめに
東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、四国電力では、事故発生直後から、国の指示に基づく「緊急安全対策」や「シビアアクシデント対策」を実施することに加え、安全上重要な機器の耐震裕度の確保などの独自の対策も継続的に実施し、伊方発電所の安全性・信頼性の向上に取り組んでいる。 現在、継続して更なる安全性・信頼性向上対策を進めており、今回、伊方発電所3 号機における安全対策の概要について紹介する。
2.安全対策
2.1 原子炉停止対策および原子炉冷却対策 Fig.1 に原子炉停止対策および原子炉冷却対策を示す。 2.1.1 原子炉自動停止失敗時の影響緩和 原子炉で異常が発生し原子炉自動停止が必要となった時に、制御棒が原子炉に自動挿入されなかった場合でも、これを検知して自動的に補助給水ポンプを起動させることなどにより、原子炉を自動的に継続して冷却を行い、原子炉自動停止失敗の影響を緩和する装置を設置する。 2.1.2 代替注水ポンプの設置 補助給水ポンプが使用できなくなった場合にも、蒸気発生器に給水し原子炉の冷却ができるよう、電源車から
の給電により駆動できる、補助給水ポンプとは位置的分散を図ったポンプを設置する。 2.1.3 安全上重要なポンプの信頼性向上 原子炉に注水する充てんポンプ、格納容器に注水する格納容器スプレイポンプについて、冷却水が喪失した場合でもポンプの運転が継続できるよう、ポンプ出口から冷却水を確保する配管を設置する。(格納容器破損防止対策を兼ねる) 2.1.4 原子炉等の冷却水源の多様化 事故時において原子炉および格納容器の冷却に必要な冷却水については、燃料取替用水タンクに十分な容量を確保するとともに、再利用して長期間冷却ができるようにしている。 冷却水が再利用できなくて、燃料取替用水タンクの水が枯渇した場合でも、原子炉および格納容器の注水に用いる水源として、補助給水タンクも使用できるよう、補助給水タンクから燃料取替用水タンクへの補給配管を設置する。 (格納容器破損防止対策を兼ねる) Fig.1 Safety measures for Reactor 22.2 格納容器破損防止および破損時の緩和対策 Fig.2 に格納容器破損防止および破損時の緩和対策を示す。 2.2.1 格納容器冷却水源の多様化 事故時に格納容器の冷却に失敗した場合には、格納容器内の空調用熱交換器に冷却水を通水して冷却する手段を整備している。 空調用熱交換器の冷却水が喪失した場合でも、冷却用に海水を使用できるよう、海水供給配管を追加設置する。2.2.2 フィルタ付ベント設備の設置 万一、炉心が損傷し格納容器の内圧が大幅に上昇した際に、格納容器の内圧を低減し損傷を防止するとともに、放射性物質の放出量を低減するフィルタ付ベント設備を設置する。 2.2.3 放射性物質の放出抑制 格納容器が破損し、放射性物質が外部に放出されるような場合でも、破損部からの放射性物質の放出を抑制するために、格納容器の破損部に向けて放水できる、可搬型の海水放水設備(放水砲)、およびそれに給水する大型ポンプ車を配備する。 Fig.2 Safety measures for Containment Vessel 2.3 電源確保対策 Fig.3 に電源確保対策を示す。 2.3.1 非常用外部電源受電設備の設置 事故時に既設の開閉設備、変圧器が使用できなくなった場合に、発電所外から受電するため、耐震性に優れた受電設備(ガス絶縁開閉装置、変圧器等)を鉄筋コンクリート製の基礎上(標高15m以上)に設置する。 2.3.2 恒設非常用発電機等の設置 非常用電源に関する更なる信頼性向上のため、既設非常用ディーゼル発電機(水冷式)に加え、新たに空冷式の恒設非常用発電機を高所に設置する。 また、新たに設置する恒設非常用発電機から給電するための非常用給電設備(遮断器、変圧器等)を、既設の給電設備から離れた高所に設置する。 2.3.3 非常用直流電源の増強 非常時に原子炉の計測・制御等に使用する直流電源を長時間供給できるよう、非常用直流電源を増強する。 Fig.3 Securing Power Source 2.4 その他の対策 2.4.1 安全上重要な主要機器の耐震裕度2倍確保 独自の対策として、安全上重要な主要機器について、基準地震動(570 ガル)に対し2 倍程度の耐震裕度があるかを確認し、必要な対策を実施している。 2.4.2 免震構造事務所の建設 新潟県中越沖地震対応として免震構造の事務所を建設し、運用を開始しており、この事務所の中に、被ばくを低減でき、事故時に従業員が長期間活動できる機能を備えた緊急時対策所を設置している(Fig.4, Table1)。 Fig.4 Office building with seismically isolated structure Table1 Outline o f Office building Number of stories 7-story office building (Height: about 32m) Total floor area about 6,770m2 Building area about 1,000m2 Underground Seismic Isolation Structure 3.おわりに 東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、伊方発電所では、継続的に安全性・信頼性の向上に取り組んでいる。 今後とも「原子力の安全性向上への取り組みに終わりはない」との強い思いのもと、新たな知見が得られた場合には迅速に対応を検討するとともに、原子力規制委員会が策定している新規制基準に対しても適切に対応し、伊方発電所の安全性・信頼性の向上に努めていきたいと考えている。 “ “四国電力の安全対策強化の取り組み “ “吉田 幸司,Koji YOSHIDA“ “四国電力の安全対策強化の取り組み “ “吉田 幸司,Koji YOSHIDA
東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、四国電力では、事故発生直後から、国の指示に基づく「緊急安全対策」や「シビアアクシデント対策」を実施することに加え、安全上重要な機器の耐震裕度の確保などの独自の対策も継続的に実施し、伊方発電所の安全性・信頼性の向上に取り組んでいる。 現在、継続して更なる安全性・信頼性向上対策を進めており、今回、伊方発電所3 号機における安全対策の概要について紹介する。
2.安全対策
2.1 原子炉停止対策および原子炉冷却対策 Fig.1 に原子炉停止対策および原子炉冷却対策を示す。 2.1.1 原子炉自動停止失敗時の影響緩和 原子炉で異常が発生し原子炉自動停止が必要となった時に、制御棒が原子炉に自動挿入されなかった場合でも、これを検知して自動的に補助給水ポンプを起動させることなどにより、原子炉を自動的に継続して冷却を行い、原子炉自動停止失敗の影響を緩和する装置を設置する。 2.1.2 代替注水ポンプの設置 補助給水ポンプが使用できなくなった場合にも、蒸気発生器に給水し原子炉の冷却ができるよう、電源車から
の給電により駆動できる、補助給水ポンプとは位置的分散を図ったポンプを設置する。 2.1.3 安全上重要なポンプの信頼性向上 原子炉に注水する充てんポンプ、格納容器に注水する格納容器スプレイポンプについて、冷却水が喪失した場合でもポンプの運転が継続できるよう、ポンプ出口から冷却水を確保する配管を設置する。(格納容器破損防止対策を兼ねる) 2.1.4 原子炉等の冷却水源の多様化 事故時において原子炉および格納容器の冷却に必要な冷却水については、燃料取替用水タンクに十分な容量を確保するとともに、再利用して長期間冷却ができるようにしている。 冷却水が再利用できなくて、燃料取替用水タンクの水が枯渇した場合でも、原子炉および格納容器の注水に用いる水源として、補助給水タンクも使用できるよう、補助給水タンクから燃料取替用水タンクへの補給配管を設置する。 (格納容器破損防止対策を兼ねる) Fig.1 Safety measures for Reactor 22.2 格納容器破損防止および破損時の緩和対策 Fig.2 に格納容器破損防止および破損時の緩和対策を示す。 2.2.1 格納容器冷却水源の多様化 事故時に格納容器の冷却に失敗した場合には、格納容器内の空調用熱交換器に冷却水を通水して冷却する手段を整備している。 空調用熱交換器の冷却水が喪失した場合でも、冷却用に海水を使用できるよう、海水供給配管を追加設置する。2.2.2 フィルタ付ベント設備の設置 万一、炉心が損傷し格納容器の内圧が大幅に上昇した際に、格納容器の内圧を低減し損傷を防止するとともに、放射性物質の放出量を低減するフィルタ付ベント設備を設置する。 2.2.3 放射性物質の放出抑制 格納容器が破損し、放射性物質が外部に放出されるような場合でも、破損部からの放射性物質の放出を抑制するために、格納容器の破損部に向けて放水できる、可搬型の海水放水設備(放水砲)、およびそれに給水する大型ポンプ車を配備する。 Fig.2 Safety measures for Containment Vessel 2.3 電源確保対策 Fig.3 に電源確保対策を示す。 2.3.1 非常用外部電源受電設備の設置 事故時に既設の開閉設備、変圧器が使用できなくなった場合に、発電所外から受電するため、耐震性に優れた受電設備(ガス絶縁開閉装置、変圧器等)を鉄筋コンクリート製の基礎上(標高15m以上)に設置する。 2.3.2 恒設非常用発電機等の設置 非常用電源に関する更なる信頼性向上のため、既設非常用ディーゼル発電機(水冷式)に加え、新たに空冷式の恒設非常用発電機を高所に設置する。 また、新たに設置する恒設非常用発電機から給電するための非常用給電設備(遮断器、変圧器等)を、既設の給電設備から離れた高所に設置する。 2.3.3 非常用直流電源の増強 非常時に原子炉の計測・制御等に使用する直流電源を長時間供給できるよう、非常用直流電源を増強する。 Fig.3 Securing Power Source 2.4 その他の対策 2.4.1 安全上重要な主要機器の耐震裕度2倍確保 独自の対策として、安全上重要な主要機器について、基準地震動(570 ガル)に対し2 倍程度の耐震裕度があるかを確認し、必要な対策を実施している。 2.4.2 免震構造事務所の建設 新潟県中越沖地震対応として免震構造の事務所を建設し、運用を開始しており、この事務所の中に、被ばくを低減でき、事故時に従業員が長期間活動できる機能を備えた緊急時対策所を設置している(Fig.4, Table1)。 Fig.4 Office building with seismically isolated structure Table1 Outline o f Office building Number of stories 7-story office building (Height: about 32m) Total floor area about 6,770m2 Building area about 1,000m2 Underground Seismic Isolation Structure 3.おわりに 東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、伊方発電所では、継続的に安全性・信頼性の向上に取り組んでいる。 今後とも「原子力の安全性向上への取り組みに終わりはない」との強い思いのもと、新たな知見が得られた場合には迅速に対応を検討するとともに、原子力規制委員会が策定している新規制基準に対しても適切に対応し、伊方発電所の安全性・信頼性の向上に努めていきたいと考えている。 “ “四国電力の安全対策強化の取り組み “ “吉田 幸司,Koji YOSHIDA“ “四国電力の安全対策強化の取り組み “ “吉田 幸司,Koji YOSHIDA