高速増殖炉SG伝熱細管のLDIによる急速減肉に関する研究

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カテゴリ: 第10回
1.緒言
ナトリウム(Na)冷却型高速増殖炉の蒸気発生器では、高圧の水または水蒸気が伝熱管内部を、低圧の液体Naがその周囲を流れ、厚さ数mmの伝熱管壁を介して熱交換を行っている。伝熱管壁に何らかの欠陥が発生した場合には内部の水は減圧沸騰を伴って噴出し、周囲のNaと反応することで高温の反応ジェットを形成する。図1に反応ジェットのイメージ図を示す。この伝熱管破損によって発生するNa-水反応現象 は隣接伝熱管の減肉や高温によるラプチャを引き起こし、破損領域を拡大させる恐れがあることから、安全上、また財産保護上重要な事象として認識されている。反応ジェットによる伝熱管減肉をウ ェステージ現象と呼ぶが、その原因はジェットが随伴す る液滴による機械的侵食(エロージョン)と強い腐食環 境による化学的な腐食(流動加速コロージョン)の重畳と考えられるものの、そのメカニズムは十分には解明されていない。従来、ウェステージ現象は、高価且つ長い期間を必要とするモックアップ試験を実施し、破損孔からの水リーク率等により整理され保守的に評価されてきた[1] [2]。このため、今後高速増殖炉が次世代プラントの1つとして開発していく上で、設計の効率化や合理的な安全防護、財産保護を達成するために、機構論に基づく数値解析手法を用いた定量評価が望まれている。そこで、日本原子力研究開発機構(JAEA)では、昨今の計算機性能の飛躍的向上を背景に、反応ジェットの定量評価を目的とした化学反応を含む多成分多相流解析コードSERAPHIM[1]の開発が進められており、コード開発と並行して各種モデルの妥当性検証用の試験データ取得を行っている。本研究では、ウェステージ現象の中でも液滴衝撃エロージョン現象に着目し、破損した伝熱管開口部から隣接伝熱管への反応ジェット噴流を、伝熱管群可視化供試体を用いた水中への水・蒸気ジェット噴出実験で模擬し、ウェステージ現象の定量評価に資することを目的としている。本稿では水中への高温高圧の水・蒸気二相噴流の可視化実験、および予備的に実施したSERAPHIMコードを用いた実験解析について述べる。 Fig.1 Reacting jet of sodium-water reaction
2.実験 本研究では、伝熱管群可視化供試体を用いて水中に高温高圧の水・蒸気を噴出することで、蒸気発生器での伝熱管破損時のNa中への蒸気リークを模擬した[3][4]。図2に実験で用いた伝熱管群可視化供試体を示す。供試体は6本の模擬伝熱管と破損伝熱管を模擬した伝熱管形状のノズルから構成されている。実験は縦170mm横200mm奥行き40mmの供試体を水で満たし、ボイラーで生成した0.3MPaの飽和蒸気を、破損伝熱管の亀裂部を模擬したノズルから水中に噴出し、二次破損に至る前の水漏えい状態を模擬した噴流の形状を可視化した。破損形状を模擬したノズルはスリット形状(スリット幅0.27mm、長さ40mm)、丸状(φ2.0mm)、矩形状(2.2mm×1.5mm、3.3mm×1.0mmの二種類)の合計4種用意し、各ノズルで同様の可視化実験を実施した。スリット状ノズルを用いた可視化実験の様子を図3(a)、(b)に、丸状ノズルを用いた実験の様子を図4(a)、(b)に示す。また、実験中の供試体内の水温を熱電対にて計測した。各実験での周囲水温の推移を図5に示す。周囲水温の初期条件は30℃である。 Fig.2 Test section of steam jet in SG tube array (a) Steam jet in subcooled water at T=50℃ (b) Steam jet in subcooled water at T=95℃ Fig.3 Visualization test results in the test section with slit nozzle (a) Steam jet in subcooled water at T=50℃ (b) Steam jet in subcooled water at T=95℃ Fig.4 Visualization test results in the test section with circle nozzle 0204060801001200100200Temperature[℃]Time[s]circle nozzleslit nozzle Fig.5 Temperature change through the each experiment 3.予備解析 SERAPHIMコードの検証解析のみならず、今後、上記の蒸気噴出実験の解釈にSERAPHIMコードによるパラメータ解析を援用していくことを踏まえ、実験体系を二次元で簡易的に模擬したモデルで予備解析を行った。解析は伝熱管群供試体を縦170mm横200mmの長方形とみなし、奥行き方向を考慮しない。また、二次元的現象に近いと考えられる奥行き方向に一様なスリットノズルを用いた実験を解析対象とした。図6に解析メッシュを示す。境界条件は、入口をスリット状ノズルの圧力0.3MPa、蒸気温度133.54℃(飽和温度)とし、出口を供試体の上面200mmに大気圧、その上方に無限量の水を仮定した。また、解析は(ⅰ) 周囲水温度95℃(ⅱ) 周囲水温度50℃ のそれぞれの条件で行った。さらに、SERAPHIMで出力されたデータを0.1秒毎の平均化処理を行い、ボイド率、温度、気相速度、液相速度の平均値の結果を得た。解析結果の一例として図7に周囲水温95℃の液相速度の解析結果を示す。 Fig.6 Mesh geometry using in preliminary analysis [m/s] Fig.7 An example of analysis results 4.考察 伝熱管群可視化供試体を用いた可視化実験では、 スリットノズルを用いた実験、丸状ノズルを用いた実験の両方で、噴流噴出直後から噴流領域が拡がり、蒸気噴流がターゲット伝熱管に衝突した。また、どちらの実験でも周囲水温が100℃近くのものとそれ以下のもので噴流の様相が大きく異なっていた。また、スリットノズルと丸状ノズルとを比較すると、それぞれの実験で噴流の領域が異なっていた。スリットノズルに較べ、丸ノズルは噴流が軸方向に伸長せず、径方向にも拡がらなかった。水温上昇は、丸状ノズルはスリットノズルの約1/3程度となったが、これはノズル断面積の関係から質量流量が丸状ノズルではスリットノズルの約1/3程度であったことに起因する。SERAPHIMコードを用いた予備解析では、直接的ではないものの、図7の周囲水温95℃での液相速度分布と可視化実験結果を比較すると、実験で噴流が軸方向に伸長していく様子と解析の速度分布がよく一致した。二次元体系での簡易的なモデル・境界条件を用いても、おおよその傾向が再現できることがわかった。本解析に向けては、さらにメッシュ依存性や境界条件依存性を確認していく必要がある。 5.結言 高速増殖炉SG伝熱管破損時に発生するウェステージ現象解明と解析コード検証用データ取得の一環として、様々な破損形状を模擬した伝熱管形状ノズルを用いて、蒸気噴流可視化実験を行い、蒸気噴流の気液界面情報を取得した。また、予備解析により簡易モデルの適用性を確認した。本研究はウェステージ現象の定量評価に資す るだけではなく、Na-水反応の影響を受けない水中での高温・高圧蒸気噴流評価を行う上でも有益である。今後は、より実機圧に近い高圧条件での実験や、破損部周辺および伝熱管間の圧力、温度の測定を行い、データベースを構築するとともに、より定量的な解析による現象評価および解析コード妥当性確認を行う予定である。 参考文献 [1]内堀昭寛、大島宏之、Numerical Analysis of Sodium-Water Reaction Phenomena in Sodium Cooled Fast Reactors: Verification of the SERAPHIM Code and Sensitivity Analysis、(2007.9) [2] 工藤秀行、杉山憲一郎、「液体ナトリウム中の単一円管に対する衝突噴流構造とそのエロージョン特性に関する研究( Study on Structure of Impinging Jets and their Erosion Characteristics on a Single Tube in Liquid Sodium) 学位論文、(2013.1) [3] 奈良林直、「高温高圧管路系機器に於ける二相流特性とボイド率計測に関する研究」、学位論文、(1991.2) [4] 加藤慶輔、奈良林直ら、2013春の年会N16、(2013.3) 謝辞 本研究はエネルギー対策特別会計に基づく文部科学省からの受託事業として北大が実施した、平成23年度「蒸気発生器伝熱管破損伝播に係るマルチフィジックス評価システムの開発」の成果を含んでいる。関係各位のご支援に謝意を表す。 Erosion Characteristics on a Single Tube in Liquid Sodium)、学位論文、(2013.1) (平成25年6月21日)Erosion Characteristics on a Single Tube in Liquid Sodium)、学位論文、-2013.1ERAPHIM Code and Sensitivity Analysis、2007.9 謝辞 本研究はエネルギー対策特別会計に基づく文部科学省からの受託事業として北大が実施した、平成23年度「蒸気発生器伝熱管破損伝播に係るマルチフィジックス評価システムの開発」の成果を含んでいる。関係各位のご支援に謝意を表す。 (平成25年6月21日) (平成25年6月21日)
“ “高速増殖炉SG伝熱細管のLDIによる急速減肉に関する研究 “ “加藤 慶輔,Keisuke KATO,奈良林 直,Tadashi NARABAYASHI,辻 雅司,Masashi TSUJI,千葉 豪,Go CHIBA,大島 宏之,Hiroyuki OHSHIMA,栗原 成計,Akikazu KURIHARA,内堀 昭寛,Akihiro UCHIBORI“ “高速増殖炉SG伝熱細管のLDIによる急速減肉に関する研究 “ “加藤 慶輔,Keisuke KATO,奈良林 直,Tadashi NARABAYASHI,辻 雅司,Masashi TSUJI,千葉 豪,Go CHIBA,大島 宏之,Hiroyuki OHSHIMA,栗原 成計,Akikazu KURIHARA,内堀 昭寛,Akihiro UCHIBORI
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