低圧ケーブルの経年劣化測定技術の精度向上研究
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カテゴリ: 第10回
1.緒言
平成25年6月「原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」1)が閣議決定され、発電用原子炉を運転することができる期間は、原子力規制委員会の検査を受け、これに合格した後日から起算して四十年とし、その満了に際し、原子力規制委員会の認可を受けて、一回に限り延長することができることとなった。本研究は、原子力プラント内に敷設されて低圧ケーブの絶縁部の経年劣化をマイクロ波技術を用いて非破壊的に診断する手法の開発を行っている。現在、本手法の実機適用試験を行っており、測定環境(気温、湿度)の変化が本手法に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 2.測定原理 マイクロ波誘電吸収法は、マイクロ波空洞共振器を用いて、マイクロ波電場中における分子構造変化に伴う誘電率や誘電損失変化を高感度に測定する手法である。物質の電磁波に対する誘電特性は式 -1で表されるように、複素数で表される。2) ε = ε’ - iε’’ -1ここで、ε’ は誘電率の実数部、ε’’ は誘電率の虚数部、i2== -1である。対象とする物質の分 子構造に変化が起こるとε’ やε’’が変化するため、本測定では式 -2もしくはFig.1に示すように、ε’ , ε’’ の変化量に比例するマイクロ波空洞共振器の共振周波数変化量ΔB及びQ値の変化量であるΔ1/Qを測定することにより高分子材料内の分子構造変化の情報を得ることを可能としている。 ,,.....fffB''1.................RfffQ -2ここで、f は基準物質に対するマイクロ波共振周波数、f’ は試料物質に対するマイクロ波共振周波数、ΔBは共振周波数の変化量である。 ΔRは共振周波数における電力変化量であり、Δ1/Qに比例する。 Fig.1Schematic representation of the frequency dependence of the reflected power for microwave resonant cavity at close to the resonance frequency. 3
.実験方法 Fig.2にマイクロ波誘電吸収測定回路を示す。に示す。アナログ信号発生器よりマイクロ波(43GHz)を発振させ、サーキュレーターによりマイクロ波空洞共振器へ導き、マイクロ波空洞共振器からの反射波をアンプにより増幅させ、パワーメーターで測定を行った。アナログ信号発生器、パワーメーターの制御はGPIBで行った。 Fig.2Schematic representation of the experimental apparatus. 4マイクロ波空洞共振器 Fig.3に測定に使用したピンホール型マイクロ波空洞共振器を示す。測定に使用したマイクロ波空洞共振器はTE111、Q ≧ 2000、共振周波数 f0== 43.065GHz (21℃において)、測定穴1mm×2.5 mm である。Fig.2①の位置に温湿度計(株式会社佐藤計量器製作所製)を設置し、マイクロ空洞共振器付近の温度と湿度を測定した。 Δ7MHz Fig. 3 A Showing of pin-hole type microwave cavity 5. 結果と考察 Fig.4に気温の変化によるマイクロ波空洞共振器の共振周波数変化の結果を示す。8℃の温度上昇に対して、共振周波数が低周波数側へ7MHz変化した。共振周波数変化は、空洞共振器の中や測定穴近傍の誘電率変化により起こる。本測定条件において8℃の温度変化による空気の誘電率変化は無視できる。湿度は、温度の上昇に対して0.1減少した。湿度の増大により、誘電率は増加し、それに伴い共振周波数は低周波数側へシフトすると予想されるが、本結果は逆の傾向を示している。以上のことから、共振周波数変化の原因は、誘電率変化ではなく、温度変化による空洞共振器母材の膨張、収縮に伴う形状変化によるものであると推測する。詳細は講演時に報告する。 Fig.4Temperature dependence of the resonant frequency for microwave resonant cavity. 参考文献 1) 「原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」 原子力規制庁 平成25年6月 2)H.Shimamori, in J. F. Rabek, ed. Photochemistry and Photophysics. CRC Press, Boca Raton ,p.43 (1992).
“ “低圧ケーブルの経年劣化測定技術の精度向上研究 “ “治部 仁之,Hitoshi JIBU,山本 幸,Miyuki YAMAMOTO,砂川 武義,Takeyosi SUNAGAWA,佐伯 昭紀,Akinori SAEKI,関 修平,Syu SEKI,工藤 久明,Hisaaki KUDOU“ “低圧ケーブルの経年劣化測定技術の精度向上研究 “ “治部 仁之,Hitoshi JIBU,山本 幸,Miyuki YAMAMOTO,砂川 武義,Takeyosi SUNAGAWA,佐伯 昭紀,Akinori SAEKI,関 修平,Syu SEKI,工藤 久明,Hisaaki KUDOU
平成25年6月「原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」1)が閣議決定され、発電用原子炉を運転することができる期間は、原子力規制委員会の検査を受け、これに合格した後日から起算して四十年とし、その満了に際し、原子力規制委員会の認可を受けて、一回に限り延長することができることとなった。本研究は、原子力プラント内に敷設されて低圧ケーブの絶縁部の経年劣化をマイクロ波技術を用いて非破壊的に診断する手法の開発を行っている。現在、本手法の実機適用試験を行っており、測定環境(気温、湿度)の変化が本手法に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 2.測定原理 マイクロ波誘電吸収法は、マイクロ波空洞共振器を用いて、マイクロ波電場中における分子構造変化に伴う誘電率や誘電損失変化を高感度に測定する手法である。物質の電磁波に対する誘電特性は式 -1で表されるように、複素数で表される。2) ε = ε’ - iε’’ -1ここで、ε’ は誘電率の実数部、ε’’ は誘電率の虚数部、i2== -1である。対象とする物質の分 子構造に変化が起こるとε’ やε’’が変化するため、本測定では式 -2もしくはFig.1に示すように、ε’ , ε’’ の変化量に比例するマイクロ波空洞共振器の共振周波数変化量ΔB及びQ値の変化量であるΔ1/Qを測定することにより高分子材料内の分子構造変化の情報を得ることを可能としている。 ,,.....fffB''1.................RfffQ -2ここで、f は基準物質に対するマイクロ波共振周波数、f’ は試料物質に対するマイクロ波共振周波数、ΔBは共振周波数の変化量である。 ΔRは共振周波数における電力変化量であり、Δ1/Qに比例する。 Fig.1Schematic representation of the frequency dependence of the reflected power for microwave resonant cavity at close to the resonance frequency. 3
.実験方法 Fig.2にマイクロ波誘電吸収測定回路を示す。に示す。アナログ信号発生器よりマイクロ波(43GHz)を発振させ、サーキュレーターによりマイクロ波空洞共振器へ導き、マイクロ波空洞共振器からの反射波をアンプにより増幅させ、パワーメーターで測定を行った。アナログ信号発生器、パワーメーターの制御はGPIBで行った。 Fig.2Schematic representation of the experimental apparatus. 4マイクロ波空洞共振器 Fig.3に測定に使用したピンホール型マイクロ波空洞共振器を示す。測定に使用したマイクロ波空洞共振器はTE111、Q ≧ 2000、共振周波数 f0== 43.065GHz (21℃において)、測定穴1mm×2.5 mm である。Fig.2①の位置に温湿度計(株式会社佐藤計量器製作所製)を設置し、マイクロ空洞共振器付近の温度と湿度を測定した。 Δ7MHz Fig. 3 A Showing of pin-hole type microwave cavity 5. 結果と考察 Fig.4に気温の変化によるマイクロ波空洞共振器の共振周波数変化の結果を示す。8℃の温度上昇に対して、共振周波数が低周波数側へ7MHz変化した。共振周波数変化は、空洞共振器の中や測定穴近傍の誘電率変化により起こる。本測定条件において8℃の温度変化による空気の誘電率変化は無視できる。湿度は、温度の上昇に対して0.1減少した。湿度の増大により、誘電率は増加し、それに伴い共振周波数は低周波数側へシフトすると予想されるが、本結果は逆の傾向を示している。以上のことから、共振周波数変化の原因は、誘電率変化ではなく、温度変化による空洞共振器母材の膨張、収縮に伴う形状変化によるものであると推測する。詳細は講演時に報告する。 Fig.4Temperature dependence of the resonant frequency for microwave resonant cavity. 参考文献 1) 「原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」 原子力規制庁 平成25年6月 2)H.Shimamori, in J. F. Rabek, ed. Photochemistry and Photophysics. CRC Press, Boca Raton ,p.43 (1992).
“ “低圧ケーブルの経年劣化測定技術の精度向上研究 “ “治部 仁之,Hitoshi JIBU,山本 幸,Miyuki YAMAMOTO,砂川 武義,Takeyosi SUNAGAWA,佐伯 昭紀,Akinori SAEKI,関 修平,Syu SEKI,工藤 久明,Hisaaki KUDOU“ “低圧ケーブルの経年劣化測定技術の精度向上研究 “ “治部 仁之,Hitoshi JIBU,山本 幸,Miyuki YAMAMOTO,砂川 武義,Takeyosi SUNAGAWA,佐伯 昭紀,Akinori SAEKI,関 修平,Syu SEKI,工藤 久明,Hisaaki KUDOU