ふげん配管減肉の調査

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カテゴリ: 第10回
1.緒言
経年劣化事象への研究適用性、有用性の検討の一環として、「ふげん」実機材を用い二次冷却系の鋼管の減肉の調査を行った。 「ふげん」では定期検査時に配管の超音波による配管肉厚測定を実施しており、過去17回の定期検査(供用前検査を含め計18回)で約1100箇所の測定が行われている。 過去の定期検査の資料から配管肉厚測定に関するものの調査、整理を行い日本機械学会(JSME)配管減肉管理規格[1] に記載されている方法で減肉速度の算出を行った結果、「0.2mm/1万時間」を越える比較的減肉の多く発生している系統は復水・給水系であり、原子炉給水ポンプ、給水加熱器等の機器の前後の偏流発生が予測されるエルボ部に減肉が多い傾向が見られた。 配管減肉管理規格で定められている管理ランクと比較するとFAC-1 or S(溶存酸素濃度が高く減肉が抑制されるが偏流効果が著しく減肉発生の可能性を否定できない)に該当する箇所が多く見られているが、減肉率の比較的大きい箇所であっても肉厚測定回数の少ない箇所はデータの信頼性が乏しい可能性がある。
廃止措置により解体作業が進められている「ふげん」実機配管の肉厚の詳細測定を行い、検査結果と補充することで減肉率データの信頼性について検討を行った。更に、「ふげん」実機データに基づき、配管減肉予測式精度の向上、配管減肉対策の妥当性検証、配管減肉管理の合理化について検討を行った。 2.配管減肉率及び減肉予測式 2.1 調査方法 「ふげん」タービン系管理範囲をFig.1に示す。JSMEで制定された配管減肉管理規格に準拠して策定されたもので、測定対象箇所は全てFAC(流れ加速度合)及びLDI(液滴衝撃エロージョン)管理範囲、すなわち顕著な配管減肉事象が起こりやすいとされる範囲のエルボ部等とした。 配管減肉状態の調査は、超音波厚さ計による配管肉厚の測定によって行った。測定に際しては、配管減肉状態の空間分布を明らかにし、減肉メカニズムの解明に貢献できるデータとするために以下の方法を採用した。 測定箇所の配管外表面に約100ミリ角の格子を設け、その交点部(以下「測定ポイント」)の配管外表面から超音波厚さ計による配管肉厚の測定を行う。 測定ポイントは、周方向については、呼び径5B以下の場合は4点以上、5Bを越える径のものは8点以上又はピッチ100㎜の小さい方とした。 Fig.1 Schematic diagram of “Fugen”secondary cooling system classified by FAC and LDI categories また、軸方向については、偏流発生対象(エルボ、ティー等)は口径(呼び径)の2倍又はピッチ100㎜の小さい方とし、対象箇所下流側は、対象箇所(配管部品、計装品等)終端を始点として、口径(呼び径)の3倍の範囲までを測定した。 また、著しい減肉又は判定基準厚さを下回る減肉が確認された場合は、その通常測定ポイントを中心として、20㎜ピッチで格子状に減肉が認められる範囲(原則として、減肉が測定された通常測定点の周りの通常測定点で囲まれた範囲)を測定した。 調査対象箇所全148箇所(約28,000ポイント)の調査結果の一例をTable.1に示す。 Table.1 Results of wall thickness measurements 調査結果を総括すると以下の通り。 ① 調査対象箇所全148箇所(約28,000ポイント)で測定配管肉厚が「必要肉厚」を下回る箇所は皆無であった。 ② このことから、プラント供用期間中の「ふげん」の配管減肉管理方法が、保守的で妥当であることが確認された。 2.2 減肉率の信頼性 Fig.2は、各測定箇所に100~200存在する全ての測定ポイントについて減肉率の最大最小範囲と平均値を求め、後述するJAEAの配管減肉解析コード(PASCAL-EC)で用いるKastnerの式[2] によって推算した減肉率と、配管系統ごとの減肉率の平均値及び全148箇所(約28,000ポイント)の減肉率の平均値をプロットしたものである。 Fig.2 Comparison of wall thinning rates from measurements and prediction equation この結果から、減肉率とその信頼性について以下のことが明らかとなった。 ① 調査対象箇所全148箇所(約28,000ポイント)の減肉率の平均は、0.1mm/10,000h以下の低い値を示す。(c.f.FAC(流れ加速型腐食):減肉率0.5~1.0の1/5以下) ② 測定箇所内の個々の測定ポイントの減肉率の値はばらつくが、測定箇所の平均値は系統ごとの平均値や全箇所の測定値とほぼ近い値を示し、すべて0.1mm/10,000h以下の低い値となる。 ③ 減肉率のばらつきが大きな箇所は、減肉率が正(減肉)と負(肉厚増加)に大きく振れる傾向 を示す。 ④ 測定箇所ごとに配管減肉解析コード(PASCAL-EC)によって推算された減肉率は、平均値とほぼ近くやや低めの値となる傾向を示す。 ⑤ 負の値を示すなど減肉率がばらつく箇所について詳細調査を行い、原因について正確な情報を得る必要がある。 環境水の酸素濃度やpHが適正に管理され、鋼材表面の不動態皮膜の性質を著しく損わせる物質を含まない環境水のもとでは、普通鋼でも0.1mm/10,000h未満の腐食速度に抑えることは十分に可能であることは古くから知られており、今回の結果は、この点で合理的な配管減肉状態であると言え、プラント供用期間中の「ふげん」の水質管理が適切であったことが確認されたと言える。 2.3接触式三次元寸法測定装置及びレーザー顕微鏡による詳細測定 接触式三次元寸法測定装置による実機配管の三次元的な肉厚分布の測定や、レーザ顕微鏡等による腐食減肉面の観察などによる詳細調査を行った。詳細測定箇所の選定については、以下を考慮した。 ① 減肉率:FAC、LDI管理範囲内であり、減肉率やそのばらつきが比較的大きい箇所であること ② 熱流動条件:二相流及び単相流の比較が行え、熱流動条件が同じでも減肉率が異なる箇所の比較が行えること ③ 鋼種や溶接部などの非定常部:炭素鋼と低合金鋼の比較が行え、溶接部などの非定常部と定常部の比較が行えること Fig.3 The view of the elbows applied the precise measurement method このように選定した詳細調査対象箇所の位置図をFig.3に示す。 Fig.4に詳細調査方法及び調査結果の一例を示す。 Fig.4にて断面#2とされている部分の超音波厚さ計の測定値が示す通り、曲げの背側で板厚が薄く、曲げの腹側で板厚が厚くなっていることが分かる。 この部分の三次元寸法測定装置による肉厚の分布を求めた結果からも、冷間での曲げ加工によって形成されたと推定される、曲げの背側と腹側との板厚の差異が形成されていることが明らかにされた。 また、100mmピッチの超音波厚さ計での計測では、メッシュが粗いために不明瞭であった板厚のプロ Fig.4 Results of the precise measurement at elbow using three dimensional wall thickness measuring device and laser scanning microscope Fig.5 Results of the precise measurement at welded zone using three dimensional wall thickness measuring device フィールが、三次元寸法測定装置ではより精細に計測されている。その情報に基づき背側の内表面を、更に高精細に観察できるレーザ顕微鏡で観察した結果を同図に併示している。流れとは直行する方向に、曲げ加工による加工皺と見られる凹凸が配管の内表面に存在していることが明らかとなった。 さらに、断面#2、断面#13、断面#16について、同様に、肉厚のプロフィールを測定し、曲げ管の部分の断面#2から断面#13にかけて、曲げの背側が薄く、曲げの腹側が厚いというマクロな偏肉のプロフィールが存在し、直管部の断面#16になると偏肉はほとんど見られないことが確かめられている。 また、曲げ管の部分であっても、断面#13のG点のように曲げ加工の影響を受けていない領域の内面には、加工皺が観察されず、内表面も平坦でほぼ均等な全面腐食面であることも確かめられている。 Fig.5は溶接部近傍について同様の詳細調査を行った結果であり、溶接熱影響部(HAZ)に相当する領域に、薄肉の領域が溶接線に沿って円周状に分布していることが分かる。レーザ顕微鏡等で詳細に観察を行った結果、局部的な腐食は確認されなかったことから、溶接熱によって熱収縮変形した溶接熱影響部が、そのまま残されたものであると推定された。 公称肉厚を用いる初回計測の際に溶接部近傍で減肉率が著しく変化し、公称肉厚ではなく肉厚測定値が用いられる二回目以降に、減肉率の値が平均的な値に戻るのは、こうした局所的な肉厚分布によるものと推定された。また、肉厚が急激に変化する境界部では、肉厚の測定位置が測定回ごとに僅かにずれることによって、減肉率が著しく変化する可能性が高いことも推察できる。 3.配管減肉予測式精度の確認 3.1流動解析 前述の詳細測定箇所についてふげんの通常運転時の状態(定常状態)の流動をANSYS社の流動解析コード(Fluent)を用いて模擬した。解析は3次元的に行い、いずれの解析においても評価の対象とするエルボ/ベンドに加え、その上流側の2つのエルボ/ベンドを含む範囲を対象とした。 Ansys CFX-Post Ansys CFX-Post Fig.6 The synthetic flow velocity distribution on the surface of a wall in the vicinity of FDW-SP-48 elbow Fig.6に流動解析結果の一例を示す。Fluentを用い た流動解析と三次元流動解析コードOpenFOAMの異なる3D-CFDを用いて求めた流動解析結果を比較すると、Fig.7のようになり、乱流エネルギー分布、流速分布共に顕著な差異はみられなかった。 Fig.7 Comparison of flow analysis results between Fluent and OpenFOAM in the vicinity of FDW-SP-6 elbow 3.2減肉解析 Fig.8は、詳細調査箇所(FDW-SP-6)についてOpenFOAMで求めた壁面の乱流エネルギーを基にPASCAL-ECとDRAWTHREE-FAC[3]で算出された減肉率を円柱座標系に変換後、エルボの背側で切って平面上に展開したものである。 流速分布と減肉率分布にある程度の相関があり、DRAWTHREE-FACの推算値の方が、若干実測値に近い値を示す事が確かめられた。 ただし減肉率の実測値と計算値の間には二桁程度の差異が存在している。 Fig.8 Comparison of calculated wall thinning rate distributions with measured one 4.配管減肉対策の妥当性 Fig.9は詳細測定箇所の腐食面の観察結果をまとめたもので、今回測定箇所では、鱗片模様やオレンジピールと呼ばれるFACの腐食組織は全く観察されなかった。局部腐食も観察されず、ほとんどが均等な全面腐食の様相を呈していた。図中に参考までに経済産業省報告書(関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故に関する中間とりまとめ)でみられた典型的なFAC腐食組織を示す。 また、これらの観察結果は、全148箇所(約28,000ポイント)の減肉率の平均値が、0.1mm/10,000h以下の低い値を示すことと整合し、ふげんの配管減肉対策が適切であったことを示す。 Fig.9 Comparison of corrosion surface observations and typical FAC surface 5.配管減肉管理の合理化 「ふげん」全系統の管理対象箇所の配管減肉データ、流動解析(3D-CFD)結果及び温度、平均流速、配管表面近傍流速及び水質などの環境パラメータを考慮した減肉挙動の推定結果等を、配管減肉管理の合理化に資するべくFig.10のようにWebベースのデータベースとして構築し、配管アイソメ図及び減肉測定箇所(エルボー等)の寸法データが利用可能なCAD図の登録と、これまで行った流動・減肉解析結果等の登録を行い、これらのWebでの閲覧・利用を可能にしている。 Fig.10 Overlook of “Fugen” wall thinning database indicating the view of the secondary cooling system 6. 結言 「ふげん」実機データに基づき、配管減肉予測式精度、配管減肉対策の妥当性及び配管減肉管理の合理化について検討を行い、プラント供用期間中の「ふげん」の水質管理が適切であったことなどが確認された。また、「ふげん」の配管減肉状態の結果は、「ふげん」実機材の長期運転状況における減肉発生傾向を十分に代表し得るものであり、実機材の配管減肉事象の正確な把握を行うのに資するものであった。 謝辞 本研究は、(独)原子力安全基盤機構より受託した「平成21~23年度福井県における高経年化調査研究」として実施された。 参考文献 [1] 発電用原子力設備規格 「沸騰水型原子力発電所 配管減肉管理に関する技術規格」(2006年版) JSME S NHI 2006 [2] Kastner W., et al., GB Kraftwerkstechnik 66, 12,(1986) pp. 1023-1029. [3] 経済産業省革新的実用原子力技術開発費補助事業「連成解析による気液二相流中構造物の振動・腐食評価手法の開発」成果報告書、平成19年3月.
“ “ふげん配管減肉の調査 “ “安藤 亮介,Ryosuke ANDO,阿部 輝宜,Teruyoshi ABE,中村 孝久,Takahisa NAKAMURA“ “ふげん配管減肉の調査 “ “安藤 亮介,Ryosuke ANDO,阿部 輝宜,Teruyoshi ABE,中村 孝久,Takahisa NAKAMURA
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