ねじりモードガイド波を用いた複数のエルボ越え探傷の数値解析
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カテゴリ: 第10回
1.はじめに
配管の減肉検査において、ガイド波を用いた探傷は広い範囲を一括して探傷可能という特長があるため、ガイド波に関する基礎的な研究から応用研究が盛んに行われている[1][2]。しかし、形状が変化する部位に対してはまだ課題が多い。配管を伝搬するガイド波には、多数の伝搬モードが存在することに加え、各モードの速度が異なる性質を示すため、ガイド波の伝搬時間から反射源の位置を推定する際に、どのモードで伝搬しているかを把握しておくことが重要となる。エルボ部を通過する際には特に複雑なモード変換が生じる[3][4]ため、エルボ部及びエルボ部を超えた探傷が課題の一つとなっている。 本研究ではガイド波を用いた探傷において事前に探傷結果を予測したり、探傷結果の解釈に活用できるようなシミュレータの検討を行っており、エルボ部を通過したガイド波の波形が実験結果を再現することを確認してきた[5]。本報は、エルボ部を越えた位置にある模擬欠陥からの反射波の波形をシミュレーション解析し、実験結果と比較した妥当性検証を行うとともに、シミュレーションによるガイド波の伝搬状況の可視化結果を踏まえ、エルボ越え探傷に関する可能性を考察した。
2.解析条件及び実験条件 図1は解析モデルの形状及び寸法であり実験に用いた試験体の寸法を基にモデル化した。管の外径と肉厚は各々114mmと4.5mmであり、長さ1,000 mmの2本の鋼管を90°エルボと長さ500 mmの垂直管を介して接合したものである。解析モデルでは溶接部の余盛形状は省略し、またエルボ管の肉厚も一定でモデル化した。図中に示したaからiの位置に反射源を設置して、これら反射源からの受信波形をシミュレーション解析した。 反射源のモデルは、幅24 mm、厚さ1 mmで外径を増肉させた形状で、全周に設置した全周増肉モデルと1/4周のみに設置した局部増肉モデルとした。局部増肉モデルはその中心が0°(-45°から45°)、90°(45°から135°)及び180°(135°から225°)に各々設置した。実験ではニッケル箔を貼付けた反射源を増肉モデルとし、設置方法は解析モデルと同様とした。実験では270°(225°から315°)にも増肉モデルを設置したが、解析では90°に設置した結果と270°に設置した結果がほぼ同じであることを代表位置で確認したため、270°の解析を割愛し90°の結果を示した。 ガイド波の送受信方法は、解析ではセンサから発生していると考えられる振動を初期変位として与え、受信位置で変位の時間変化を出力する方法でモデル化した。本送信の方向a.i:反射源の設定位置反射源の形状:・全周「増肉」,幅24 mm鋼管モデルΦ114mm×t4.5 mmねじりモード(T(0,1))周波数36 kHzT:送信部の位置R:受信部の位置報ではT(ねじり)モードのガイド波を伝搬させる条件としており、外周上に設置した送信部に円周方向の初期変位を与えた。受信方法は、特定の位置のFEM要素の変位を時系列で出力するモデルとしており外周上に等間隔で8箇所受信部を設置した。今回はねじりの基本モードを選択して受信するため円周方向の成分を合成して受信波形を出力した。作成した解析モデルの例を図2に示す。図2(a)はモデルの全体像、送信部及び受信部の拡大図であり、図2(b)は局部増肉モデルの例である。解析コードは三次元有限要素コード(伊藤忠テクノソリューションズ社製 ComWAVE Ver.4)を用いた。 ガイド波の送信条件はシミュレーション解析及び実験ともに中心周波数36 kHzのトーンバースト波であり、シミュレーションでは前述のモデルで送受信し、実験ではニッケルの磁わいによる送受信方法[6]を用いた。主要な解析条を表1に示す。 図1解析モデルの形状及び寸法 (a)解析モデルの全体像と送受信部の拡大図 (b)局部増肉モデルの例(位置g, 90°) 図2 解析モデルの例 表1 主な解析条件 項 目 条 件 音速、密度 鋼 Vl=5.9m/sec., Vs=3.23km/sec, .=7.9x103kg/m3 Ni Vl=5.2m/sec., Vs=3.1km/sec, .=8.2x103kg/m3 口径、肉厚 呼び径100A (外径114.0 mm)、肉厚4.5 mm 周波数 36kHz-トーンバースト2.5波 要素寸法 0.5mm x 0.5mm x 0.5mm 3.解析結果及び考察 図3に反射源を設定しないモデル(無欠陥モデルと呼ぶ)での解析結果の例を示す。各々ガイド波を送信後図中に示した伝搬時間における波面のスナップショットであり、ガイド波が伝搬する様子を示している。これらのスナップショットは、解析モデルを真横から見た図であり表面の変位の絶対値を色合いで示した。図3(a)に示す様に送信部から直管を伝搬するガイド波は、円周上に均一な強度であるが、エルボ部では図3(b)の様に強度に偏りが生じることが確認できる。この条件ではエルボの背側の強度が大きい結果である。エルボ部通過後も偏った強度分布で強度の大きい位置が移動しながら伝搬し、図3(c)から(d)に示す様に2個目のエルボ部を通過した後も強度分布が偏って伝搬していることが確認できる。この様な波面の乱れや強度分布の偏りはあるものの、無欠陥モデルにおいて2つのエルボ部を越えてガイド波が伝搬する様子が確認された。 (a) 送信後10μ秒の波面 (b)送信後30μ秒の波面 (c) 送信後56μ秒の波面 (d)送信後73μ秒の波面 図3 波面の伝搬状況のシミュレーション解析結果 次に、図1に示したaからiの各位置に反射源を設置し反射波形を解析した結果を示す。図4はaからi位置に全周増肉モデルを設置した時の解析結果であり、無欠陥モデルでの波形との差分を示す。図中に示した矢印位置の波形が増肉モデルからの反射波である。また、約1.8から1.9 msに現れている波形はモデル端からの反射波の差分で除去しきれないものである。体積波を用いた通常の超音波パルス反射法では、一般に反射源が遠くなる程エコーの振幅は低下するが、エルボ越えのガイド波では図4に示す様に、振幅の変化が距離以外にも依存していることが確認できる。また、送信部から同じ距離であっても、円周上の位置の違いによっても振幅が変動した。図5は、増肉モデルの設置位置ごとの反射波形の振幅を示したグラフである。解析結果の妥当性を検証するため、実験結果も図中に示した。横軸は設置位置であり縦軸は反射波形の振幅である。各位置の振幅は位置aでの振幅値で正規化して整理した。前述の通り設置位置によって振幅は異なるものの、位置ごとの振幅の大小関係に着目すると解析結果は実験結果と同様の傾向であることが確認できる。 図4 全周増肉モデルからの反射波形 図5 全周増肉モデルからの反射信号の振幅 図6は位置gにおける部分増肉モデルからの反射波形の解析結果である。1/4周分の局部増肉モデルを各々0°、90°、180°に設置した結果であり、比較のために同位置での全周増肉モデルの反射波形と並べて示す。局部増肉モデルからの反射波形の伝搬時間はほぼ同じであるが、円周上の位置によって振幅が異なる結果であった。図7は局部増肉モデルにおける反射波形の振幅を設置位置ごとに示したグラフであり、実験結果も図中に示した。横軸は設置位置(軸方向の位置及び円周上の位置)であり、縦軸は反射波形の振幅である。各位置の振幅は位置aの全周増肉モデルでの振幅値で正規化して整理した。局部増肉モデルに対しても設置位置によって振幅は異なるものの、位置ごとの振幅の大小関係に着目すると解析結果は実験結果と同様の傾向であることが確認でき、解析モデル及び解析結果の妥当性が検証された。 図6 局部増肉モデルからの反射波形の例(位置g) 図7 局部増肉モデルからの反射信号の振幅 エルボ通過後の反射源からの波形の振幅が変動する主な原因は、図3に示す様にガイド波の強度に偏りが生じるためと考えられる。この様に反射源の位置によって振幅が変化する影響は、探傷において振幅に基づく評価が困難であるだけでなく、欠陥の位置によっては検出が困難な場合があることが考えられる。しかし、実験結果を再現できる解析手法を活用することで、エルボ越え探傷の可能性が得られるのではないかと考えられる。 図8はシミュレーション解析結果から算出した受信波の伝搬時間と各反射原までの伝搬距離をプロットしたグラフである。伝搬距離は管の中心軸上の値であり、伝搬時間は各反射波の振幅の最大値を計測した。グラフの傾きが音速に相当し、図中の直線は送信したガイド波(T(0,1)モード)の設定音速である。直管部の反射源aからの受信波については直線上にプロットされており、送信波と同じ音速である。それに対してエルボ部及びエルボ通過後の反射源からの受信波では、音速が遅くなることが解析結果より予測された。この音速の遅延は、最も遠い位置iにおいてで約700mmの位置誤差となる。今後この現象を実験で確認するとともに、原因分析等を行う予定である。 4.まとめ ガイド波の探傷シミュレーション解析においてエルボ管通過後の反射源からの波形を解析した結果、実験結果を再現する結果が得られ、解析モデル及び解析方法の妥当性が確認された。一方で、エルボ越え探傷において振幅に基づく評価が難しいこと、音速の遅延による反射源位置の誤差を生じることなども再確認された。今後シミュレーション解析を基に、これらの原因分析、対策方法の検討、探傷条件の最適化や探傷結果の解釈へ展開する予定である。 参考文献 [1] 川嶋編:特集 ガイド波による探傷、非破壊検査 Vol.52, No.12, pp.653-682, 2003 [2] 西野編:特集 ガイド波による探傷II、非破壊検査 Vol.54, No.11, pp.585-611, 2005 [3] Takahiro Hayashi and Joseph L. Rose: Guided wave Simulation and Visualization by a Semianalytical Finite Element Method, Materials Evaluation Vol.61, No.1, pp.75-79, 2003 [4] Hideo Nishino, et al.: Experimental Investigation of Mode Conversions of the T(0,1) Mode Guided Wave Propagating in an Elbow Pipe, JJAP Vol.50, p.046601-1, 2011[5] 古川、古村:エルボ部におけるねじりモードガイド波伝搬の数値シミュレーション、平成22年春季講演大会講演概要集、pp.71-72、平成22年5月 [6] 池田、金原 他:プラント配管の検査実務におけるガイド波技術の展開、非破壊検査Vol.54, No.11, pp.595-600, 2005 (平成25年#月##日)“ “ねじりモードガイド波を用いた複数のエルボ越え探傷の数値解析 “ “古川 敬,Takashi FURUKAWA,山本 敏弘,Toshihiro YAMAMOTO,金原 了二,Ryouji KANEHARA,池田 隆,Takashi IKEDA“ “ねじりモードガイド波を用いた複数のエルボ越え探傷の数値解析 “ “古川 敬,Takashi FURUKAWA,山本 敏弘,Toshihiro YAMAMOTO,金原 了二,Ryouji KANEHARA,池田 隆,Takashi IKEDA
配管の減肉検査において、ガイド波を用いた探傷は広い範囲を一括して探傷可能という特長があるため、ガイド波に関する基礎的な研究から応用研究が盛んに行われている[1][2]。しかし、形状が変化する部位に対してはまだ課題が多い。配管を伝搬するガイド波には、多数の伝搬モードが存在することに加え、各モードの速度が異なる性質を示すため、ガイド波の伝搬時間から反射源の位置を推定する際に、どのモードで伝搬しているかを把握しておくことが重要となる。エルボ部を通過する際には特に複雑なモード変換が生じる[3][4]ため、エルボ部及びエルボ部を超えた探傷が課題の一つとなっている。 本研究ではガイド波を用いた探傷において事前に探傷結果を予測したり、探傷結果の解釈に活用できるようなシミュレータの検討を行っており、エルボ部を通過したガイド波の波形が実験結果を再現することを確認してきた[5]。本報は、エルボ部を越えた位置にある模擬欠陥からの反射波の波形をシミュレーション解析し、実験結果と比較した妥当性検証を行うとともに、シミュレーションによるガイド波の伝搬状況の可視化結果を踏まえ、エルボ越え探傷に関する可能性を考察した。
2.解析条件及び実験条件 図1は解析モデルの形状及び寸法であり実験に用いた試験体の寸法を基にモデル化した。管の外径と肉厚は各々114mmと4.5mmであり、長さ1,000 mmの2本の鋼管を90°エルボと長さ500 mmの垂直管を介して接合したものである。解析モデルでは溶接部の余盛形状は省略し、またエルボ管の肉厚も一定でモデル化した。図中に示したaからiの位置に反射源を設置して、これら反射源からの受信波形をシミュレーション解析した。 反射源のモデルは、幅24 mm、厚さ1 mmで外径を増肉させた形状で、全周に設置した全周増肉モデルと1/4周のみに設置した局部増肉モデルとした。局部増肉モデルはその中心が0°(-45°から45°)、90°(45°から135°)及び180°(135°から225°)に各々設置した。実験ではニッケル箔を貼付けた反射源を増肉モデルとし、設置方法は解析モデルと同様とした。実験では270°(225°から315°)にも増肉モデルを設置したが、解析では90°に設置した結果と270°に設置した結果がほぼ同じであることを代表位置で確認したため、270°の解析を割愛し90°の結果を示した。 ガイド波の送受信方法は、解析ではセンサから発生していると考えられる振動を初期変位として与え、受信位置で変位の時間変化を出力する方法でモデル化した。本送信の方向a.i:反射源の設定位置反射源の形状:・全周「増肉」,幅24 mm鋼管モデルΦ114mm×t4.5 mmねじりモード(T(0,1))周波数36 kHzT:送信部の位置R:受信部の位置報ではT(ねじり)モードのガイド波を伝搬させる条件としており、外周上に設置した送信部に円周方向の初期変位を与えた。受信方法は、特定の位置のFEM要素の変位を時系列で出力するモデルとしており外周上に等間隔で8箇所受信部を設置した。今回はねじりの基本モードを選択して受信するため円周方向の成分を合成して受信波形を出力した。作成した解析モデルの例を図2に示す。図2(a)はモデルの全体像、送信部及び受信部の拡大図であり、図2(b)は局部増肉モデルの例である。解析コードは三次元有限要素コード(伊藤忠テクノソリューションズ社製 ComWAVE Ver.4)を用いた。 ガイド波の送信条件はシミュレーション解析及び実験ともに中心周波数36 kHzのトーンバースト波であり、シミュレーションでは前述のモデルで送受信し、実験ではニッケルの磁わいによる送受信方法[6]を用いた。主要な解析条を表1に示す。 図1解析モデルの形状及び寸法 (a)解析モデルの全体像と送受信部の拡大図 (b)局部増肉モデルの例(位置g, 90°) 図2 解析モデルの例 表1 主な解析条件 項 目 条 件 音速、密度 鋼 Vl=5.9m/sec., Vs=3.23km/sec, .=7.9x103kg/m3 Ni Vl=5.2m/sec., Vs=3.1km/sec, .=8.2x103kg/m3 口径、肉厚 呼び径100A (外径114.0 mm)、肉厚4.5 mm 周波数 36kHz-トーンバースト2.5波 要素寸法 0.5mm x 0.5mm x 0.5mm 3.解析結果及び考察 図3に反射源を設定しないモデル(無欠陥モデルと呼ぶ)での解析結果の例を示す。各々ガイド波を送信後図中に示した伝搬時間における波面のスナップショットであり、ガイド波が伝搬する様子を示している。これらのスナップショットは、解析モデルを真横から見た図であり表面の変位の絶対値を色合いで示した。図3(a)に示す様に送信部から直管を伝搬するガイド波は、円周上に均一な強度であるが、エルボ部では図3(b)の様に強度に偏りが生じることが確認できる。この条件ではエルボの背側の強度が大きい結果である。エルボ部通過後も偏った強度分布で強度の大きい位置が移動しながら伝搬し、図3(c)から(d)に示す様に2個目のエルボ部を通過した後も強度分布が偏って伝搬していることが確認できる。この様な波面の乱れや強度分布の偏りはあるものの、無欠陥モデルにおいて2つのエルボ部を越えてガイド波が伝搬する様子が確認された。 (a) 送信後10μ秒の波面 (b)送信後30μ秒の波面 (c) 送信後56μ秒の波面 (d)送信後73μ秒の波面 図3 波面の伝搬状況のシミュレーション解析結果 次に、図1に示したaからiの各位置に反射源を設置し反射波形を解析した結果を示す。図4はaからi位置に全周増肉モデルを設置した時の解析結果であり、無欠陥モデルでの波形との差分を示す。図中に示した矢印位置の波形が増肉モデルからの反射波である。また、約1.8から1.9 msに現れている波形はモデル端からの反射波の差分で除去しきれないものである。体積波を用いた通常の超音波パルス反射法では、一般に反射源が遠くなる程エコーの振幅は低下するが、エルボ越えのガイド波では図4に示す様に、振幅の変化が距離以外にも依存していることが確認できる。また、送信部から同じ距離であっても、円周上の位置の違いによっても振幅が変動した。図5は、増肉モデルの設置位置ごとの反射波形の振幅を示したグラフである。解析結果の妥当性を検証するため、実験結果も図中に示した。横軸は設置位置であり縦軸は反射波形の振幅である。各位置の振幅は位置aでの振幅値で正規化して整理した。前述の通り設置位置によって振幅は異なるものの、位置ごとの振幅の大小関係に着目すると解析結果は実験結果と同様の傾向であることが確認できる。 図4 全周増肉モデルからの反射波形 図5 全周増肉モデルからの反射信号の振幅 図6は位置gにおける部分増肉モデルからの反射波形の解析結果である。1/4周分の局部増肉モデルを各々0°、90°、180°に設置した結果であり、比較のために同位置での全周増肉モデルの反射波形と並べて示す。局部増肉モデルからの反射波形の伝搬時間はほぼ同じであるが、円周上の位置によって振幅が異なる結果であった。図7は局部増肉モデルにおける反射波形の振幅を設置位置ごとに示したグラフであり、実験結果も図中に示した。横軸は設置位置(軸方向の位置及び円周上の位置)であり、縦軸は反射波形の振幅である。各位置の振幅は位置aの全周増肉モデルでの振幅値で正規化して整理した。局部増肉モデルに対しても設置位置によって振幅は異なるものの、位置ごとの振幅の大小関係に着目すると解析結果は実験結果と同様の傾向であることが確認でき、解析モデル及び解析結果の妥当性が検証された。 図6 局部増肉モデルからの反射波形の例(位置g) 図7 局部増肉モデルからの反射信号の振幅 エルボ通過後の反射源からの波形の振幅が変動する主な原因は、図3に示す様にガイド波の強度に偏りが生じるためと考えられる。この様に反射源の位置によって振幅が変化する影響は、探傷において振幅に基づく評価が困難であるだけでなく、欠陥の位置によっては検出が困難な場合があることが考えられる。しかし、実験結果を再現できる解析手法を活用することで、エルボ越え探傷の可能性が得られるのではないかと考えられる。 図8はシミュレーション解析結果から算出した受信波の伝搬時間と各反射原までの伝搬距離をプロットしたグラフである。伝搬距離は管の中心軸上の値であり、伝搬時間は各反射波の振幅の最大値を計測した。グラフの傾きが音速に相当し、図中の直線は送信したガイド波(T(0,1)モード)の設定音速である。直管部の反射源aからの受信波については直線上にプロットされており、送信波と同じ音速である。それに対してエルボ部及びエルボ通過後の反射源からの受信波では、音速が遅くなることが解析結果より予測された。この音速の遅延は、最も遠い位置iにおいてで約700mmの位置誤差となる。今後この現象を実験で確認するとともに、原因分析等を行う予定である。 4.まとめ ガイド波の探傷シミュレーション解析においてエルボ管通過後の反射源からの波形を解析した結果、実験結果を再現する結果が得られ、解析モデル及び解析方法の妥当性が確認された。一方で、エルボ越え探傷において振幅に基づく評価が難しいこと、音速の遅延による反射源位置の誤差を生じることなども再確認された。今後シミュレーション解析を基に、これらの原因分析、対策方法の検討、探傷条件の最適化や探傷結果の解釈へ展開する予定である。 参考文献 [1] 川嶋編:特集 ガイド波による探傷、非破壊検査 Vol.52, No.12, pp.653-682, 2003 [2] 西野編:特集 ガイド波による探傷II、非破壊検査 Vol.54, No.11, pp.585-611, 2005 [3] Takahiro Hayashi and Joseph L. Rose: Guided wave Simulation and Visualization by a Semianalytical Finite Element Method, Materials Evaluation Vol.61, No.1, pp.75-79, 2003 [4] Hideo Nishino, et al.: Experimental Investigation of Mode Conversions of the T(0,1) Mode Guided Wave Propagating in an Elbow Pipe, JJAP Vol.50, p.046601-1, 2011[5] 古川、古村:エルボ部におけるねじりモードガイド波伝搬の数値シミュレーション、平成22年春季講演大会講演概要集、pp.71-72、平成22年5月 [6] 池田、金原 他:プラント配管の検査実務におけるガイド波技術の展開、非破壊検査Vol.54, No.11, pp.595-600, 2005 (平成25年#月##日)“ “ねじりモードガイド波を用いた複数のエルボ越え探傷の数値解析 “ “古川 敬,Takashi FURUKAWA,山本 敏弘,Toshihiro YAMAMOTO,金原 了二,Ryouji KANEHARA,池田 隆,Takashi IKEDA“ “ねじりモードガイド波を用いた複数のエルボ越え探傷の数値解析 “ “古川 敬,Takashi FURUKAWA,山本 敏弘,Toshihiro YAMAMOTO,金原 了二,Ryouji KANEHARA,池田 隆,Takashi IKEDA