炉内構造物等点検評価ガイドラインの整備について

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カテゴリ: 第10回
1.はじめに
原子力発電所の安全・安定運転を確保していく上で,損傷の可能性を有する炉内構造物等の健全性を確認し維持していくことが重要課題である。今日に至るまで「炉内構造物等点検評価ガイドライン」は,損傷発生の可能性のある構造物について,点検・評価・補修等に関する要領を提案してきた。ここではガイドライン整備活動の経緯,制定されたガイドラインの概要について報告する。
2.ガイドラインの整備活動の経緯
BWRでは運転初期からの応力腐食割れ(SCC)対策の歴史の中で,圧力容器ノズル・配管系の対策が1990年代後半頃には一段落した。一方で,構造上の問題から点検・補修が困難であった炉心シュラウドなど炉内構造物は,水中カメラ小型化や点検装置開発により,遠隔目視検査や超音波探傷検査の精度が向上したこともあって,SCC不具合事例が散見されていた。 米国では,BWR VIP(BWR Vessel Internals Project)がEPRIに結成され,点検評価等の指針を作成するともに,合理的な点検評価の在り方をNRCと議論できる風土があった。 このような状況のもと「炉内構造物等点検評価ガイドライン検討会」は2000年に火力原子力発電技術協会に発足した。 SCC点検データの不適切な扱いが2002年に発覚し,その後に維持規格策定のための体制が国をあげて構築されることになるが,その以前から本検討会では技術知見をガイドラインに纏め公表する役割を担っていた。 PWRにおいても,バッフルフォーマボルトの照射誘起型応力腐食割れ(IASCC)や制御棒クラスタ案内管の接触摩耗といった経年変化事象への対応が検討され,ガイドラインに纏められた。 技術基準(省令62号)が性能規定化され,JSME維持規格に基づく新たな規制体系の流れが定着した後は,ガイドラインを素案として維持規格を整備促進していくとの共通認識のもと,各種ガイドラインの制定とその体系化が進められてきた。本検討会では,実機データに基づく実質的な議論を行うことによって,構造健全性と安全性確保の仕組みを機動的に議論できるメリットがある。 検討会が日本原子力技術協会に継承された2007年頃には,個別炉内構造物の点検評価ガイドライン整備が一段落したことから,補修工法/予防保全工法のガイドライン整備が勢力的に進められた。2012年の日本原子力技術協会改組に伴い,検討会は原子力安全推進協会に発展的に継承され,活動を継続している。 3.ガイドラインの全体構成と考え方の概要 3.1 BWR/PWR点検評価ガイドライン 炉内構造物は,接近性の制約から点検,補修が困難な部位があるため,構造機能,安全上の重要度等を勘案し,技術的合理性に基づいた点検の在り方をガイドラインに纏めている。 基本的考え方として,原子炉安全の確保を大前提に,対象機器の構造強度・機能が合理的に確保されるように,点検範囲,点検方法,点検時期,欠陥評価方法等を検討する。併せて,適用可能と考えられる検査技術,補修工法及び予防保全工法を整理している。 また,検討対象とする炉内構造物に検討順位をつけ,優先度の高いものから検討を進めてきた。具体的には,原子炉圧力容器の耐圧機能に影響を及ぼす可能性のあるもの,炉心支持機能を担う機器,接近性の問題から点検が困難な部位,損傷が発見された場合の対策工法が確立されていない機器,実損傷事例の発生有無を考慮した。 炉内構造物の具体的な経年変化事象としては,疲労,SCC,照射脆化,摩耗などを想定した。 図1,2にBWR,PWRの炉内構造物の例を,図3に点検の考え方を示す。さらに表1にこれまでに制定され現在公表されている各種ガイドラインの一覧を示す。 図1 BWRの炉内構造物例 図2 PWRの炉内構造物例 3.2 補修工法・予防保全工法ガイドライン 国内の原子力関連技術のなかでも,炉内構造物関連の補修工法・予防保全工法は,プラントメーカの保有する遠隔補修技術,検査技術,溶接技術と原子力発電所での適用実績,官民の研究と技術開発成果の蓄積により,世界的に最高水準の技術力を有する分野といえる。 一方で当該分野での新技術が開発された後,規格策定から規制要求への適合性確認までの審議プロセスに時間がかかり,実機適用までに多くの年月を要している事例も多い。その一因として,性能規定化された技術基準への適合性の具体的要件を考える際に,規制当局が適合性判断において解釈していた従来の具体的要件が活用できず,新たな解釈に不明確な部分が残されていることが,関係者の判断を困難にしているものと思われる。 保全技術の実機適用を円滑に推進するためには,その適用プロセスについてもガイドラインに取り纏めたが,関係者が共通認識のもとに一層の改善を図る必要がある。 4.おわりに 今後も原子力発電所の保全活動のPDCAを回すなかで,点検実績を適宜反映して点検頻度を合理的に見直すことなど,ガイドラインの改定整備に主体的に取り組むこととしたい。 また,昨今の原子力安全全般に係る状況変化を踏まえつつ,原子力の安全性・信頼性向上に繋がる活動を継続するとともに,国内外への情報発信に努めることとする。 なお,個別ガイドラインの概要と,原技協会移管以降に制定されたガイドラインは原安進HPに掲載しているので参照願いたい。 http://www.genanshin.jp/archive/coreinternals/ 参考文献 [1] 炉内構造物点検評価ガイドラインについて(第3版) JANTI-VIP-06 H20年3月 日本原子力技術協会 ● 点検方法:VT,UT又はET● 初回点検:・ 運転開始時からのき裂進展を考慮しても機能維持が可能と評価される範囲内に点検を実施・ 次回点検までのき裂進展を考慮した上で,機能維持に必要な範囲以上を点検● 再点検・ 運転再開からのき裂進展を考慮した上で,機能維持が可能と評価される範囲内に点検を実施・ 次回点検までのき裂進展を考慮した上で,機能維持に必要な範囲以上を点検● 点検方法:VT-3● 点検周期:原則10年ただし,先行プラントの運転経験を反映して,点検時期を延期することが可能個別点検● 想定される経年変化事象の発生・進展を考慮して点検範囲、点検方法、点検開始時期及び点検頻度を規定した点検● 経年変化事象が発生するかもしれない部位を経年変化事象が検知できる方法で詳細に点検。一般点検● 個別点検の実施のみで機器の安全機能が常に維持されていることを確認できるので問題ないと考えられるが,深層防護の観点から、念のため、個別点検を補足する点検として規定● 炉内構造物を構成する全ての機器を対象とし、それらの代表部位全体にわたって、異常のないことを確認する点検。全ての炉内構造物安全機能を有する炉内構造物*PWRにおいてはショック アブソーバ等を除く 図3.炉内構造物点検評価ガイドラインにおける点検の考え方 “ “炉内構造物等点検評価ガイドラインの整備について “ “関 弘明,Hiroaki SEKI,堂崎 浩二,Koji DOZAKI,平野 伸朗,Shinro HIRANO,村井 荘太郎,Soutatou MURAI,野本 敏治,Toshiharu NOMOTO“ “炉内構造物等点検評価ガイドラインの整備について “ “関 弘明,Hiroaki SEKI,堂崎 浩二,Koji DOZAKI,平野 伸朗,Shinro HIRANO,村井 荘太郎,Soutatou MURAI,野本 敏治,Toshiharu NOMOTO
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