制御棒クラスタ案内管における保全活動向上への取り組み

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カテゴリ: 第10回
1.緒言
加圧水型原子力発電所(PWR)の制御棒クラスタ案内管(以降GTと称する)は、制御棒を炉心へ案内する機能を有しており、その案内板はプラント運転中における制御棒の流動振動により図1に示すリガメント部が摩耗する懸念がある。この摩耗事象に対し、合理的な点検・評価のあり方を示すことを目的として、平成14年3月に火力原子力発電技術協会から「炉内構造物点検評価ガイドライン」が刊行された。その後、本ガイドラインに従って国内PWRプラントのGT案内板点検を実施し、平成16年1月には各プラントグループの点検時期を示した第2版が刊行されている。 今般、第2版刊行以降、現在までのGT案内板点検結果や最新条件での評価結果等を盛り込んだ第3版が原子力安全推進協会から発行された。ここでは、これら最新の情報をガイドラインへフィードバックしてGT案内板保全活動の向上を図る取り組みの概要を紹介する。 案内板 内側リガメント 制御棒クラスタ案内管 図1. GT案内板の摩耗
2.ガイドラインの概要
ガイドラインではGTに要求される機能が維持できるよう、管理基準や合理的な点検範囲、点検周期を規定している。これらに基づいたGTの点検・評価・保全のフローを図2に示す。 予防保全措置 制御棒クラスタ案内管一部もしくは全数取替または炉内構造物取替 制御棒クラスタ案内管取替(補修) 詳細評価で次回点検周期設定可能か? Yes* No 点検 初回点検実施 Yes* 制御棒クラスタ案内管一部もしくは全数取替または炉内構造物取替及び点検周期の設定 管理摩耗長さに達するまでの期間の1/2までに次回点検時期の設定が可能か? No* * :予防保全措置を選択することも可能 ** :制御棒の摩耗を考慮して設定 管理摩耗長さの設定** 点検 摩耗進行予測 図2. GT案内板の点検・評価・保全のフロー 図2に示すGTの点検・評価・保全について、具体的な手法を以下に記す。 GT案内板摩耗の評価においては、リガメント部の摩耗を評価するために、摩耗無しの状態を0%、制御棒が形状的に抜け出るまで摩耗した状態を100%とした「摩耗長さ」を定義している。初回点検を実施したプラントの次回点検時期は、図3に示すように初回点検で得られた摩耗長さとその時点までのプラント運転時間を基に摩耗進行予測を行い、摩耗が管理摩耗長さ(別途算出している摩耗長さの管理基準)に達するまでの期間の1/2となる時期を目処にしている。このように設定した次回点検時期に点検を実施し、摩耗が管理摩耗長さに達する前に余裕を持って保全する(GT取替や炉内構造物取替)こととしている。 当該プラントの 初回点検データ 管理摩耗長さ 運転時間 管理摩耗長さに至るまで の期間の1/2時点 図3. 次回点検時期 3.点検時期へのフィードバック GT案内板の摩耗事象に対して、第2版刊行以降の摩耗点検データや最新条件での評価結果等が蓄積されてきていることから、これらを盛り込んでGT案内板保全活動のPDCAサイクルを確実に行うことが重要となってくる。これらを反映した第3版の概要を以下に記す。 3.1 グループ化の見直し ガイドラインでは国内PWRプラントのGT摩耗事象を適切かつ合理的に点検・評価していくため、評価対象であるGT案内板形状や上部炉心構造物の型式等を基に、類似の摩耗速度を示すと考えられるプラント毎にグループ化を行っている。第3版では第2版刊行以降の新設プラントや炉内構造物取替を実施したプラントを踏まえ、グループ化の見直しを行っている。 3.2管理摩耗長さの見直し 摩耗長さの管理基準として定めている管理摩耗長さは、地震時においても制御棒がGT案内板から抜け出さないよう設定されており、制御棒の地震による慣性力と案内板が制御棒を保持しようとする力とのつり合いから算出している。第3版では、近年の地震条件の見直しを反映して管理摩耗長さの見直しを行っている。 3.3点検時期の見直し 第2版刊行以降に点検を実施したプラントについて、点検結果を基に摩耗進行予測を実施している。未点検プラントの点検時期については同グループ内で先行して点検したプラントの結果を基に設定することとしており、この点検時期についても見直しを行っている。 3.1~3.3項に示すように、第3版では点検データの蓄積による点検時期の見直しや、最新条件での評価結果の反映等を実施しており、プラントの安全性を維持しながら、より実態に沿って合理的なGTの保全活動を行うことができるものとなっている。 4.結言 炉内構造物点検評価ガイドラインでは、GT案内板の摩耗事象に対する合理的な点検・評価のあり方を示しており、国内PWRプラントはこれに従って点検を実施してきている。これによって得られた点検結果や最新条件での評価結果等を取り入れることで、プラントの安全性を維持しながら、より実態に沿って合理的なGT保全活動を行うことができる。プラントの安全性・信頼性を向上するためには、このように点検結果や最新条件での評価結果等を取り込んでデータを更新しながら、保全活動のPDCAサイクルを確実に行うことが重要であり、今後もこのような取り組みを継続していくこととする。 謝辞 GTの保全方針について協議、アドバイス頂いたガイドライン検討会の皆様、電力会社の皆様に感謝致します。 参考文献 [1] 一般社団法人 原子力安全推進協会 PWR炉内構造物点検評価ガイドライン 制御棒クラスタ案内管 “ “制御棒クラスタ案内管における保全活動向上への取り組み “ “小村 聡,Akira KOMURA“ “制御棒クラスタ案内管における保全活動向上への取り組み “ “小村 聡,Akira KOMURA
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