光ファイバ型AEセンサによる状態監視/スクリーニング法の研究(続報)

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カテゴリ: 第10回
1. 緒言
原子力プラントにおける保全方式が、時間基準保全(TBM)から状態基準保全(CBM)へと移行が進められている。TBMでは主に人手による検査が主体となっており、検査員個人の技量や検査体制・管理が重要となるが、CBMではセンサを利用した状態監視評価システムが重要な要素である。 光ファイバセンサを用いた構造ヘルスモニタリングは、航空機、船舶や橋梁の他、様々な構造物やプラントに適用されるようになっている。光ファイバセンサは従来の電気原理のセンサに比べ、 ①信号減衰が少なく長距離伝送が可能 ②電磁気ノイズの影響を受けにくい ③光ファイバは耐水性に優れており、多少の水分混入があっても機能は持続する ④本質的に防爆である 等の利点を有している。 一方、アコースティックエミッション(AE)とは、材料内で発生した微視的な亀裂や剥離等に伴って、内部で蓄積された応力が開放されることにより放出される微小弾性波であり、古くより金属・セラミック・コンクリー ト・岩盤・強化プラスチック等の材料強度の評価手法としての利用法が確立されている。近年ではコンピュータ技術の発展により、ノイズ処理を始めとする高速解析技術も大きく進展し、様々なノイズが混在する稼働中の実機でも損傷現象をリアルタイムに把握できることから、定期的な(機器によっては常態的な)状態監視によって、「当該機器を稼動停止させ、精密検査や緊急補修が必要であるか」を割り出すための「スクリーニング技術」として注目を集めている。 本稿では当学会誌2010年9月号での第一報の続報として、光ファイバ型AEセンサによる断熱材下腐食(Corrosion under Insulation)検出に関する現場適用事例を報告する。
2. 光ファイバ型AEセンサ
2.1 光ファイバ型AEセンサの測定原理〔1〕 測定に際しては、光ファイバ線の一部を被計測物に固着する。この固着部がセンサ部になり、被計測物が振動するとセンサ部の光ファイバもその振動に併せて微小に伸縮する。そして、固着部の一端から周波数f0の光波を入力している場合、入力端から出力端までの経路内に存在するある瞬間のレーザ光の波数は一定であることから、経路長が伸縮すれば波長が伸縮する、すなわち、伝播速度は一定であるから周波数がfd だけ変化する。これを レーザドップラ効果と呼び、他端から出力される光波の周波数はf0-fd となる。この周波数変調量fd は光ファイバの伸縮、すなわち被計測物の変位(ひずみ)速度に比例する。 光ファイバが伸縮する際の、光ファイバ内のドップラ効果により生じる周波数変調は式(1)で示される。fdはセンサ部で生じる周波数変調、λは光波の波長、は光ファイバの変位速度である。ここで負号は、変位速度の増大により光の周波数が低下することを意味している。 dtdL/-1dtdLfd.1..周波数変調を検知するための光学回路をFig.1に示す。システムはセンサ回路と計測回路から構成されている。計測回路はヘテロダイン干渉法を用いて周波数変調量を検出する回路である。同図より、光源(Light source)から入射された周波数f0のレーザ光は、センサ回路と計測回路に分波される。センサ回路では、計測対象物の振動によってファイバ部が微小伸縮すると、それに伴いファイバの光路長が時間的に変動する。その結果、レーザ光には光路長の時間的変化であるに比例した周波数変調fdが生じ、センサから出力されるレーザ光はf0-fdとなる。一方、計測回路ではAOM(周波数変調器)により周波数fM (80MHz)の基準光を加え、f0+fM に変調される。そして、センサ回路からのレーザ光と計測回路からのレーザ光の周波数の差fM+fd が導かれ、検知器(Detector)でfd が検出され、周波数/電圧変換器(FV)で電圧値に変換される。 dtdL/以降、この光ファイバAEセンサの名称を「光ファイバドップラセンサ」とし、略してFOD (Fiber Optical Doppler) センサと呼ぶ。式(1)より、このFODセンサには大きく2つの特徴がある。 Ⅰ. dLのL、すなわちセンサ部の光ファイバ長を長くすればするほど、感度(fd )が向上すること Ⅱ. dtのt、すなわち変化時間が短ければ短いほど、言い換えれば、周波数が高ければ高いほど、感度(fd )が向上すること Fig.1 FOD optical interferometric flow 2.2 AEセンサとしてのFODの感度 上記Ⅱの特徴を活かす活用方法として、様々な構造材料の微視的な破壊音を捕らえるAEセンサとしての現場利用がすでに始まっている。AEセンサとしての実用感度を実証するために、(社)日本非破壊検査協会が校正規格として定めている「相互校正法によるアコースティックエミッション変換子の絶対感度校正方法」(NDIS 2109-1991;縦波法)に従って校正試験を実施した。校正を行ったFODセンサをFig.2に示す。なお、校正の周波数帯域は、鋼鉄製立方体のサイズ(センサ間の距離400mm)において反射波の影響が出ない60kHzから300kHzまでを対象とした。AE測定に使用しているFODセンサは、センサゲージ長が65mであり、ボビン形状に積層して巻いている。 Fig.2 FOD sensor 結果をFig.3に示す。参考までに、従来よりAEセンサとして使用されている圧電素子のピエゾ型AEセンサ(PZT:40dBアンプ付き)の感度データも併記している。FODセンサはピエゾ型AEセンサと同等の感度を有していることがわかる。 708090100110120130140050100150200250300kHzdB(0dB=1V/m/s)FODセンサピエゾ型AEセンサ(40dBアンプ付き)708090100110120130140050100150200250300kHzdB(0dB=1V/m/s)FODセンサピエゾ型AEセンサ(40dBアンプ付き)Fig.3 Calibration data of FOD and PZT sensors 3. 断熱材下腐食検知への現場適用 3.1 断熱材下腐食 断熱材下腐食(CUI)は化学プラント、石油精製プラ ント、発電所など様々なプラント設備で老朽化、経年化の代表的な事象として問題視されている。しかし、広大なプラント敷地に設置された膨大な設備機器、それらを接続するために張り巡らされた長距離の配管など、対象となる範囲が非常に広大なためにCUIの状況を網羅的に把握して適切なタイミングでメンテナンスすることは難しい。特に、スクリーニング検査手法に求められる要件としてがオンライン検査(OSI; On-Stream Inspection)であり、可燃性ガスや液体を貯蔵する機器では防爆性が必須である。 筆者らは、主に断熱された塔・槽・反応器などの静機器のオンライン検査によるCUI検出を対象として、光ファイバAE法を用いたCUI検出技術の開発に取り組んでいる。実験室内で人口的にCUIを発生させて光ファイバAE法で腐食進展に伴って発生するAEが検出できることを確認するとともに、実機設備にも適用してCUIの有無によってAE発生状況に差があることが確認された〔2〕。その後、現場実機への適用とデータ積み上げを実施している。 3.2 適用機器 光ファイバAE法を適用した機器は保冷断熱した球形タンクの本体と敷設配管である。いずれも凝縮水や雨水の浸入による腐食の発生が懸念されている。本適用機器の仕様を表1に示す。 Table 1 Spherical Tank Data 3.3 検査範囲 3.3.1 タンク本体 今回の検査では工期と保有するFODセンサ数の関係で、図4に示すように4個のFODセンサを用いて7m×7mの範囲を2回(2日間)に分けてCUIの有無検査を実施した。FODセンサの設置については、図5に示したようにタンク本体にベースプレート(SUS304製)をエポキシ系の接着剤で取り付け、その後、ベースプレートとFODセンサとの間にグリス(音響カップリング材)を塗布してボルトで締め付けて固定している。 Fig.4 Sensor location and Monitored area Fig.5 Sensor attachment . tank surface 3.3.2 敷設配管 タンク敷設配管のAE計測は図6に示したように3個のセンサを使って垂直立ち上がり管と斜めに設置された管に分割して実施した。 Fig.6 Sensor attachment - piping 3.4 検査結果 3.4.1 タンク本体 AE測定結果を表2および図7に示した。全てのFODセンサで腐食AEが検出された。総AE発生数は16~210個であり、1時間あたりの平均AE発生数に換算すると1~11個であった。1時間あたりの平均AE発生数から腐食の活性度を評価した結果、いずれも活性度の低い腐食と推定された。腐食の活性度は1時間あたりの平均AE発生数が100個未満で中、20個未満で低として評価した。これは塩化物イオンを加えた水を炭素鋼試験片に滴下させて腐食させた時の腐食の進展状況とAE発生数との関係(図8)をもとに暫定的に評価した結果である。図9はAEの発生位置を評定した結果である。今回の測定ではAEの発生数が少ないため、腐食位置として位置評定されたポイントは非常に少なかった。 Table 2 AE Data Fig.7 AE Data by hour Fig.8 AE event . Corrosion relation Fig.9 AE source location 3.4.2 敷設配管 敷設配管のAE計測結果を表3および図10に示した。総AE発生数は618~1086個、1時間あたりの平均AE発生数は41~72個であった。AEの発生ピークでみれば1時間あたり250個余りのAEが発生している。また、図11にはAE発生位置を評定した結果を示したが、2日目に計測した斜め配管のS2位置にAEの発生源が集中している。この結果から敷設配管では腐食が発生し、その腐食程度は本体や脚柱と比較して大きく、特に斜め配管のS2位置に集中していると評価した。 Table 3 AE Data Fig.10 AE Data by hour Fig.11 AE source location 3.4.3 確認検査結果との対応 タンク本体、敷設配管についてAE検査を実施した部位あるいはその一部の保冷材を剥がして腐食状況を調査した。その代表的な部位を図12と図13に示す。タンク本体の腐食状況は軽微な腐食痕は認められるが、塗装の劣化も少なく腐食状況は軽微でありAEの発生数と対応していた。敷設配管については、全体的に塗装が劣化して錆びこぶの発生が多く認められる。特にAEの発生位置の評定でAEの発生が集中していた部位(配管サポート部近傍)では顕著な錆びこぶの発生と積層が認められた。光ファイバAE検査を実施し、代表部の腐食状況を検証した結果、腐食の状況(錆びの発生状況)とAEの発生数との間には整合性が確認された。 Fig.12 Corrosion at tank surface Fig.13 Corrosion at piping 4. 結言 光ファイバAEセンサを用いた断熱材下腐食検知の事例を報告した。以下に要点を整理する。 . 活性な腐食の有無を評価できる。 . 防爆性能が必要な実機においても、操業中にスクリーニング検査が実施できる。 . 複数のFODセンサを配置すれば活性な腐食の発生位置を評定できる。 . AEの発生数と腐食状況の間に相関性が認められる。 今後もデータの積み上げを行い、腐食診断への貢献を図っていく所存である。 参考文献 [1] Kazuro Kageyama et.al:Doppler Effect in Flexible and Expandable Light Waveguide and Development of New Fiber-Optic Vibration/Acoustic Sensor, JOURNAL OF LIGHTWACE TECHNOLOGY, vol.24, NO.4, 2006 [2] 多田豊和・末次秀彦・森久和・長秀雄・町島祐一:配管技術,Vol53,No.2(2011.2),p27-35 “ “光ファイバ型AEセンサによる状態監視/スクリーニング法の研究(続報) “ “町島 祐一,Yuichi MACHIJIMA“ “光ファイバ型AEセンサによる状態監視/スクリーニング法の研究(続報) “ “町島 祐一,Yuichi MACHIJIMA
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