POD 法による配管減肉検査の信頼性評価法と ハザードレートへの適用

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カテゴリ: 第10回
1.はじめに
配管系統の構成要素,運転履歴,あるいは水化学履歴等のパラメータを用いて減肉進展解析シミュレーションから配管構成要素全体の減肉速度分布の予測をする研究が行われている[1].これらの研究で求められた減肉速度を予測の劣化指標とすることで,従来の膨大な検査箇所の中から重点的に高減肉リスク部位における定点測定の実施が可能となる.定点監視の対象箇所においては,公称肉厚ではなく実測肉厚による将来の減肉予測がより精密に求められ,圧力バウンダリー維持機能の目安となる許容肉厚に対する時間余裕の定量評価が可能となる.この定量評価へ応用するため,我々は超音波厚さ計を用いた配管検査において,POD(Probability of Detection)によってその検査に対する信頼性を定量化してきた.本論文では,POD を配管厚検査結果の信頼性の評価値とし,配管減肉の進展予測と監視の融合を図る.これによりリスクに至る時間を確率的に評価する. 本論文では,まずPOD を用いた検査データの信頼性評価方法と,超音波厚さ計を用いた模擬配管厚検査実験の内容と実施結果について述べ,その検査データから得られる信頼性パラメータを示す.このパラメータを監視側の評価値とし,予測側で得られる減肉速度との融合方法とその結果得られるハザードレートについて述べる.
2.POD による信頼性の定量化
2.1 a. analysis 法によるPOD(a)関数の決定 検査技術の信頼性の評価方法として,米国国防省における航空機機体のき裂検査,スウェーデンの核燃料廃棄物格納容器の欠陥検査において適用事例があるPODを用いる[2].POD の決定方法を次に述べる.配管厚検査における配管厚a とその応答信号値a. の関係から検出確率を示すPOD(a)関数を決定する[3].まず試験体を用いて配管厚検査を実施し,配管厚a とその応答信号値a. を組とする測定データセットを収集する.次に,対数直線回帰により応答信号モデルを作成する.配管厚a に対する応答測定信号値a. の関係を確率密度g .a. a . に従うとすると, 決定閾値dec a. に対するPOD(a)は. . . . . .. . adec a a g a da . POD . . (1) となる.ただし,閾値dec a. は検出したい配管厚として任意に決定可能な値である.一般的に,配管厚a と信号値a. の関係は式(2)で表すことができる. . . ga a. . w a .. (2) 連絡先:中本裕之、〒657-8501 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1、神戸大学大学院システム情報学研究科、E-mail: nakamoto@panda.kobe-u.ac.jp ここでw は応答信号値から配管厚を求める関数, ga . は測定ノイズを表し,. gaの確率密度分布はg (a.) a によって決定される.この配管厚a と信号値a. の関係をモデル化し,式(3)のように両対数を取り直線回帰を可能とする. ln.a.. . . .. ln.a... 0 1 (3) この時,. は平均0 で標準偏差. . の正規分布とする. . . ,. ,. 0 1 の推定値. .. ,.. ,.. 0 1 は最尤推定法によって求める.このときPOD(a)関数は以下の式で与えられる. . . . . ... ... . . .. . . . ln . POD a 1 a (4) . .10. ln . . . . . . . . dec a , 1. . . . . . . . (5) ここで. は標準正規分布の累積分布関数であり,.. と.. はそれぞれ配管厚の平均と標準偏差を示す.また,POD(a) 関数の. %信頼下限は式(6)で表される. POD .a. . 1...z. . h. . (6) . . . . . . ln . . z . a (7) . . . . 0.520 2 1 20 1 0. 1. .. . . .. . . .. . . .. . . . . . k k k k z k nk h . (8) ただし,n は検査回数を表す.. は信頼係数であり,n と設定した信頼下限. %から決定される. 0 1 2 k , k , k は POD(a)関数のパラメータ. . .. ,. .の最尤推定値によっ て決定される. 2.2 POD(a)関数から得られる評価指標 POD(a)関数とその95%信頼下限の例をFig. 1 に示す. Fig. 1 において,POD(a)関数を実線で,95%信頼下限を破Fig. 1 POD(a) function, lower 95% confidence bound and evaluation indicators. 線で表す.POD(a)関数を決定づける変数として.. と.. がある.これらはそれぞれPOD(a)関数の配管厚方向の位置と傾きを決定し,決定閾値dec a. に対応するPOD が50%に近く,傾きが急なほど高い信頼性をもって検査が可能であることを示す.さらに,POD(a)関数の逆数によって定義される50 a , 90 a , 90 / 95 a に着目する. 50 a はPOD(a)関数の検出確率が50%となる配管厚の値であり,決定閾値dec a. に対するPOD(a)関数の平均値である. 90 a はPOD(a) 関数の検出確率が90%となる配管厚の値であり,決定閾値dec a. に対応する信号値によって90%の検出が可能な配管厚を表す. 90 / 95 a はPOD(a)関数の95%信頼下限に対して検出確率が90%となる配管厚を表しており, 90 a よりも保守的な値となっている.すなわち, 90 / 95 a は決定閾値dec a. に基づいて作成したPOD(a)関数の95%信頼下限において,90%の信頼性で検出可能な配管厚を表す. 50 a , 90 a , 90 / 95 a を評価指標とすることで,超音波厚さ計の仕様や検査者の技能などが含まれた信号応答モデルを用いて,検出したい配管厚やそれよりも減肉が進行した配管厚の存在の可能性を評価できる. 3.超音波厚さ計を用いた配管厚模擬検査実験 3.1 実験条件 配管厚検査の結果に対しPOD(a)関数を求めるため,超音波厚さ計を用いて模擬検査実験を実施した.本実験では特に検査者毎の信頼性を評価するため,試験体に係る条件及び検査機器に係る条件は一定にし,検査者を変更して検査結果を収集した.各条件は次の通りとした. 試験体として,直径60.5mm,配管厚5.5mmの2B 配管を母材とし流れ加速型腐食を模擬した切削加工を施した後,流れ方向に半分に切った17 本の配管を用いる.Fig. 3 に試験体の構造を示す.各試験体の4 番は最も配管厚が薄い箇所であり,17 本に対して1.5 から5.5mmの範囲で配管厚を残すよう加工の程度を変化させた.すべての検査位置の配管厚はレーザー距離計で事前に計測し,それを2.1 における配管厚a として用いる. 検査機器には,GE Inspection Tech 社製の超音波厚さ計DM-4 と探触子DA-401 を用いた.接触媒質はソニコートである.超音波厚さ計の出力値は厚さであるため,2.1 における応答信号値a. は計測した配管厚とする. 検査者は日本非破壊検査協会規定の非破壊検査技術者 の資格証明書をもつ配管厚検査の経験の豊富な2 名(技術レベル3 と技術レベル2 をもつ者をそれぞれAとBとする)と無資格者3 名(C,D,E とする)の計5 名とした.技 Fig. 3 Specimen structure. 術レベル3 は非破壊検査の管理者となりうるもので,レベル2 は検査の実施者となりうるものを意味する. 検査はFig.3に示した円形マーキングの中心を順に計測し,それを10 回繰り返した.環境温度は室温である.無資格の検査者に対しては検査機器の使用方法や検査手順について十分な練習と説明をし,模擬検査を実施した. 3.2 実験結果 模擬検査実験にて得られた結果の配管厚を用いて, POD(a)関数を決定した.まず,5 名の検査者ごとのPOD(a) 関数と95%信頼下限をFig. 4 に示す.またこの時のPOD(a)関数のパラメータの推定値と評価指標をTable 1 に示す.Fig. 4 より,各検査者においてPOD(a)関数の傾きが異なっていることがわかる... が小さいほどPOD(a) 関数の傾きが急になっており,検出確率の変化も大きくなる.各検査者の.. について大小関係はA
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