新規制基準の火災防護に係る対応(非難燃ケーブルの燃焼試験)
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カテゴリ: 第10回
1.はじめに
本年7月から施行予定の原子力発電所に係る新規制基準で要求される火災防護対策では、難燃性ケーブルの使用が要求されており、難燃性ケーブルでない場合も、難燃性ケーブルと同等以上の難燃性能を有していることを示す必要がある。 このため、防火塗料を塗布した非難燃性ケーブルにおける電気学会技術報告(Ⅱ部)第139号「原子力発電所用電線・ケーブルの環境試験方法ならびに耐延焼性試験方法に関する推奨案(昭和57年11月)」のうち耐延焼性試験(以下、「垂直トレイ燃焼試験」という。)やUL1581(UL VW-1)(以下、「UL垂直燃焼試験」という。)を実施し、難燃性ケーブルと同等の難燃性能を有していることを確認した。
2.燃焼実証試験
2.1 垂直トレイ燃焼試験 2.1.1 試験概要 電気学会技術報告(Ⅱ部)第139号に定められている 垂直トレイ燃焼試験は、米国電気学会(IEEE)により開発された試験方法(IEEE383 std-1974)を基礎とし、日本の規格として最適と考えられる燃焼熱量と火炎温度など条件を明確に規定するために作成されたものであり、適用範囲は、原子力発電所に使用する電線・ケーブルの耐延焼性を評価する試験方法について規定されている。 連絡先:吉村源 〒919-1141 福井県三方郡美浜町郷市13号8番 関西電力㈱ 原子力事業本部 電気設備グループ E-mail: yoshimura.gen@a4.kepco.co.jp 試験装置は、Fig.1に示すような、金属製ラダー形オープントレイに適度な間隔をあけてケーブルを取り付け、試験室内にトレイを垂直に設置し、ケーブル下部に対してリボンバーナにより火炎をあてるような装置と定められている。 Fig.1 Outline of test apparatus (Vertical tray flame test) (unit mm) Table 1に示す試験条件にて、試験体の所定の位置に火炎をあて、20分間燃焼を続ける。 Table 1 A list of the test conditions and judging standards 燃焼源 リボンバーナ 口径:10インチ(約25cm) 温度:840℃以上 使用燃料 天然ガスもしくはプロパンガス 加熱時間 20分 20分経過後バーナの燃焼を停止し、そのまま放置してケーブルの燃焼が自然に停止したならば試験を終了する。 試験回数 3回 判定基準 ①ケーブルのシースおよび絶縁体の最大損傷長が1,800mm未満であること (測定データ:損傷長さの実測(mm)) ②バーナ消火後自己消火すること (バーナ消火後、燻ぶり続け①を満たさない場合は不合格) (測定データ(参考):残炎時間(秒)) ③3回の試験いずれにおいても上記①、②を満たすこと 試験体については、Table 2に示すケーブルに防火塗料を塗布したものを用いた。 ケーブルについては、最も延焼しやすい条件で試験を行うため、酸素指数が低く、導体サイズの小さい材料を用いたケーブルとなるようにケーブルを選定した。 また、防火塗料については、メーカ標準値(1.5mm)以上の塗布厚となるよう塗布した。 Table 2 A list of the test cable No 絶縁体材料 シース材料 記号 芯数と太さ 1ポリエチレン ポリエチレン CEE 2c×1.25mm2 25c×2mm2 3ビニル ビニル CVV 2c×1.25mm2 44c×3.5mm2 2.1.2 試験結果及び考察 各試験結果は、Table 3に示すとおりであり、垂直トレイ燃焼試験の判定基準を十分満足する値を示しており、防火塗料を塗布したケーブルは、難燃性ケーブルと同等の難燃性能を有していると考える。 なお、試験時に用いたリボンバーナの温度は、全て840℃以上であった。 Table 3 The test result No.1:CEE 2C×1.25mm2 防火塗料塗布 試験No. 2019/01/012019/01/022019/01/03防火塗料塗布厚さ(平均) 1.93mm 1.87mm 1.86mm 結 果 シース炭化距離 680mm 590mm 470mm (参考)絶縁損傷距離 670mm 610mm 510mm (参考)防火塗料 炭化距離 890mm 770mm 710mm (参考)残炎時間 11分 15秒 4分 18秒 6分 21秒 No.2:CEE 5C×2mm2 防火塗料塗布 試験No. 2019/02/012019/02/022019/02/03防火塗料塗布厚さ(平均) 1.92mm 1.87mm 1.78mm 結 果 シース炭化距離 500mm 520mm 400mm (参考)絶縁損傷距離 650mm 700mm 580mm (参考)防火塗料 炭化距離 840mm 940mm 730mm (参考)残炎時間 15分 29秒 23分 29秒 15分 6秒 No.3:CVV 2C×1.25mm2 防火塗料塗布 試験No. 2019/03/012019/03/022019/03/03防火塗料塗布厚さ(平均) 1.92mm 1.91mm 1.84mm 結 果 シース炭化距離 570mm 570mm 830mm (参考)絶縁損傷距離 690mm 690mm 820mm (参考)防火塗料 炭化距離 780mm 810mm 950mm (参考)残炎時間 1分 45秒 1分 53秒 1分 58秒 No.4:CVV 4C×3.5mm2 防火塗料塗布 試験No. 2019/04/012019/04/022019/04/03防火塗料塗布厚さ(平均) 1.87mm 1.97mm 1.82mm 結 果 シース炭化距離 830mm 900mm 860mm (参考)絶縁損傷距離 850mm 880mm 890mm (参考)防火塗料 炭化距離 1020mm 1070mm 1100mm (参考)残炎時間 2分 42秒 6分 40秒 4分 44秒 2.2 UL垂直燃焼試験 2.2.1 試験概要 UL垂直燃焼試験は、アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.)により定められた試験方法の一つであり、試験体を垂直に保持し、20度の角度でバーナの炎をあて、15秒着火、15秒休止を5回繰り返し、試験体の燃焼の程度を調べる試験である。 Fig.2 Outline of test apparatus (Vertical flame test) (unit mm) Table 4 A list of the test conditions and judging standards 燃焼源 チリルバーナ 口径:Φ10mm 使用燃料 工業用メタンガス 加熱時間 15秒着火、15秒休止×5回 (75秒) 判定基準 ・残炎による燃焼が60秒を超えない ・表示旗が25%以上焼損しない ・落下物により底部の綿が燃焼しない Table 4に示す試験条件にて、試験体の所定の位置に火炎をあて、試験を実施する。 試験体については、Table 5に示すケーブルに防火塗料を塗布したものを用いた。 ケーブルについては、垂直トレイ燃焼試験同様、最も耐延焼性が低いと考えられるケーブルを選定した。 また、防火塗料についても、垂直トレイ燃焼試験同様、メーカ標準値(1.5mm)以上の塗布厚となるよう塗布した。 Table 5 A list of the test cable No 絶縁体材料 シース材料 記号 芯数と太さ 1ポリエチレン ポリエチレン CEE 2c×1.25mm2 2.2.2 試験結果及び考察 試験結果は、Table 6に示すとおりであり、UL垂直燃焼試験の判定基準を十分満足する値を示しており、防火塗料を塗布したケーブルは、難燃性ケーブルと同等の難燃性能を有していると考える。 Table 6 The test result 残炎時間(秒) 表示旗 損傷 綿の 燃焼有無 1回 2回 3回 4回 5回 最大 0000000無 2.3 まとめ 本実証試験により、防火塗料を塗布したケーブルの難燃性能を確認することができ、いずれの実証試験からも防火塗料の有効性を確認することができ、難燃性ケーブルと同等難燃性能を有していることが確認できた。 これにより原子力発電所で用いている非難燃性ケーブルへ防火塗料を塗布することで難燃性ケーブルと同等の難燃性能を期待することができ、原子力発電所の火災防護対策の更なる強化が可能であると考えられる。 参考文献 [1] 原子力発電所用電線・ケーブルの環境試験方法ならびに耐延焼性試験方法に関する推奨案、 電気学会技術報告(Ⅱ部)第139号、社団法人 電気学会、1982、pp.12-17. (平成25年#月##日)
“ “新規制基準の火災防護に係る対応(非難燃ケーブルの燃焼試験) “ “吉村 源,Gen YOSHIMURA,松井 保夫,Yasuo MATSUI,神野 進,Susumu JINNO,磯野 礼治,Reiji ISONO,池田 純也,Junya IKEDA“ “新規制基準の火災防護に係る対応(非難燃ケーブルの燃焼試験) “ “吉村 源,Gen YOSHIMURA,松井 保夫,Yasuo MATSUI,神野 進,Susumu JINNO,磯野 礼治,Reiji ISONO,池田 純也,Junya IKEDA
本年7月から施行予定の原子力発電所に係る新規制基準で要求される火災防護対策では、難燃性ケーブルの使用が要求されており、難燃性ケーブルでない場合も、難燃性ケーブルと同等以上の難燃性能を有していることを示す必要がある。 このため、防火塗料を塗布した非難燃性ケーブルにおける電気学会技術報告(Ⅱ部)第139号「原子力発電所用電線・ケーブルの環境試験方法ならびに耐延焼性試験方法に関する推奨案(昭和57年11月)」のうち耐延焼性試験(以下、「垂直トレイ燃焼試験」という。)やUL1581(UL VW-1)(以下、「UL垂直燃焼試験」という。)を実施し、難燃性ケーブルと同等の難燃性能を有していることを確認した。
2.燃焼実証試験
2.1 垂直トレイ燃焼試験 2.1.1 試験概要 電気学会技術報告(Ⅱ部)第139号に定められている 垂直トレイ燃焼試験は、米国電気学会(IEEE)により開発された試験方法(IEEE383 std-1974)を基礎とし、日本の規格として最適と考えられる燃焼熱量と火炎温度など条件を明確に規定するために作成されたものであり、適用範囲は、原子力発電所に使用する電線・ケーブルの耐延焼性を評価する試験方法について規定されている。 連絡先:吉村源 〒919-1141 福井県三方郡美浜町郷市13号8番 関西電力㈱ 原子力事業本部 電気設備グループ E-mail: yoshimura.gen@a4.kepco.co.jp 試験装置は、Fig.1に示すような、金属製ラダー形オープントレイに適度な間隔をあけてケーブルを取り付け、試験室内にトレイを垂直に設置し、ケーブル下部に対してリボンバーナにより火炎をあてるような装置と定められている。 Fig.1 Outline of test apparatus (Vertical tray flame test) (unit mm) Table 1に示す試験条件にて、試験体の所定の位置に火炎をあて、20分間燃焼を続ける。 Table 1 A list of the test conditions and judging standards 燃焼源 リボンバーナ 口径:10インチ(約25cm) 温度:840℃以上 使用燃料 天然ガスもしくはプロパンガス 加熱時間 20分 20分経過後バーナの燃焼を停止し、そのまま放置してケーブルの燃焼が自然に停止したならば試験を終了する。 試験回数 3回 判定基準 ①ケーブルのシースおよび絶縁体の最大損傷長が1,800mm未満であること (測定データ:損傷長さの実測(mm)) ②バーナ消火後自己消火すること (バーナ消火後、燻ぶり続け①を満たさない場合は不合格) (測定データ(参考):残炎時間(秒)) ③3回の試験いずれにおいても上記①、②を満たすこと 試験体については、Table 2に示すケーブルに防火塗料を塗布したものを用いた。 ケーブルについては、最も延焼しやすい条件で試験を行うため、酸素指数が低く、導体サイズの小さい材料を用いたケーブルとなるようにケーブルを選定した。 また、防火塗料については、メーカ標準値(1.5mm)以上の塗布厚となるよう塗布した。 Table 2 A list of the test cable No 絶縁体材料 シース材料 記号 芯数と太さ 1ポリエチレン ポリエチレン CEE 2c×1.25mm2 25c×2mm2 3ビニル ビニル CVV 2c×1.25mm2 44c×3.5mm2 2.1.2 試験結果及び考察 各試験結果は、Table 3に示すとおりであり、垂直トレイ燃焼試験の判定基準を十分満足する値を示しており、防火塗料を塗布したケーブルは、難燃性ケーブルと同等の難燃性能を有していると考える。 なお、試験時に用いたリボンバーナの温度は、全て840℃以上であった。 Table 3 The test result No.1:CEE 2C×1.25mm2 防火塗料塗布 試験No. 2019/01/012019/01/022019/01/03防火塗料塗布厚さ(平均) 1.93mm 1.87mm 1.86mm 結 果 シース炭化距離 680mm 590mm 470mm (参考)絶縁損傷距離 670mm 610mm 510mm (参考)防火塗料 炭化距離 890mm 770mm 710mm (参考)残炎時間 11分 15秒 4分 18秒 6分 21秒 No.2:CEE 5C×2mm2 防火塗料塗布 試験No. 2019/02/012019/02/022019/02/03防火塗料塗布厚さ(平均) 1.92mm 1.87mm 1.78mm 結 果 シース炭化距離 500mm 520mm 400mm (参考)絶縁損傷距離 650mm 700mm 580mm (参考)防火塗料 炭化距離 840mm 940mm 730mm (参考)残炎時間 15分 29秒 23分 29秒 15分 6秒 No.3:CVV 2C×1.25mm2 防火塗料塗布 試験No. 2019/03/012019/03/022019/03/03防火塗料塗布厚さ(平均) 1.92mm 1.91mm 1.84mm 結 果 シース炭化距離 570mm 570mm 830mm (参考)絶縁損傷距離 690mm 690mm 820mm (参考)防火塗料 炭化距離 780mm 810mm 950mm (参考)残炎時間 1分 45秒 1分 53秒 1分 58秒 No.4:CVV 4C×3.5mm2 防火塗料塗布 試験No. 2019/04/012019/04/022019/04/03防火塗料塗布厚さ(平均) 1.87mm 1.97mm 1.82mm 結 果 シース炭化距離 830mm 900mm 860mm (参考)絶縁損傷距離 850mm 880mm 890mm (参考)防火塗料 炭化距離 1020mm 1070mm 1100mm (参考)残炎時間 2分 42秒 6分 40秒 4分 44秒 2.2 UL垂直燃焼試験 2.2.1 試験概要 UL垂直燃焼試験は、アメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.)により定められた試験方法の一つであり、試験体を垂直に保持し、20度の角度でバーナの炎をあて、15秒着火、15秒休止を5回繰り返し、試験体の燃焼の程度を調べる試験である。 Fig.2 Outline of test apparatus (Vertical flame test) (unit mm) Table 4 A list of the test conditions and judging standards 燃焼源 チリルバーナ 口径:Φ10mm 使用燃料 工業用メタンガス 加熱時間 15秒着火、15秒休止×5回 (75秒) 判定基準 ・残炎による燃焼が60秒を超えない ・表示旗が25%以上焼損しない ・落下物により底部の綿が燃焼しない Table 4に示す試験条件にて、試験体の所定の位置に火炎をあて、試験を実施する。 試験体については、Table 5に示すケーブルに防火塗料を塗布したものを用いた。 ケーブルについては、垂直トレイ燃焼試験同様、最も耐延焼性が低いと考えられるケーブルを選定した。 また、防火塗料についても、垂直トレイ燃焼試験同様、メーカ標準値(1.5mm)以上の塗布厚となるよう塗布した。 Table 5 A list of the test cable No 絶縁体材料 シース材料 記号 芯数と太さ 1ポリエチレン ポリエチレン CEE 2c×1.25mm2 2.2.2 試験結果及び考察 試験結果は、Table 6に示すとおりであり、UL垂直燃焼試験の判定基準を十分満足する値を示しており、防火塗料を塗布したケーブルは、難燃性ケーブルと同等の難燃性能を有していると考える。 Table 6 The test result 残炎時間(秒) 表示旗 損傷 綿の 燃焼有無 1回 2回 3回 4回 5回 最大 0000000無 2.3 まとめ 本実証試験により、防火塗料を塗布したケーブルの難燃性能を確認することができ、いずれの実証試験からも防火塗料の有効性を確認することができ、難燃性ケーブルと同等難燃性能を有していることが確認できた。 これにより原子力発電所で用いている非難燃性ケーブルへ防火塗料を塗布することで難燃性ケーブルと同等の難燃性能を期待することができ、原子力発電所の火災防護対策の更なる強化が可能であると考えられる。 参考文献 [1] 原子力発電所用電線・ケーブルの環境試験方法ならびに耐延焼性試験方法に関する推奨案、 電気学会技術報告(Ⅱ部)第139号、社団法人 電気学会、1982、pp.12-17. (平成25年#月##日)
“ “新規制基準の火災防護に係る対応(非難燃ケーブルの燃焼試験) “ “吉村 源,Gen YOSHIMURA,松井 保夫,Yasuo MATSUI,神野 進,Susumu JINNO,磯野 礼治,Reiji ISONO,池田 純也,Junya IKEDA“ “新規制基準の火災防護に係る対応(非難燃ケーブルの燃焼試験) “ “吉村 源,Gen YOSHIMURA,松井 保夫,Yasuo MATSUI,神野 進,Susumu JINNO,磯野 礼治,Reiji ISONO,池田 純也,Junya IKEDA