浜岡原子力発電所における建屋内浸水防止対策について

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カテゴリ: 第10回
1.はじめに
東北地方太平洋沖地震(平成 23 年 3 月 11 日)を起因 とした福島第一原子力発電所事故の原因のひとつには、 想定を大きく上回る津波により建屋内が浸水し、安全上 重要な電源系や海水冷却系の設備が複数同時故障したこ とにある。 浜岡原子力発電所では、津波に対する浸水防止対策と して、防波壁の設置等による発電所敷地内への浸水防止 を図り、さらに、仮に津波が防波壁を越流し、発電所敷 地内が浸水したとしても、建屋内及び重要な設備が設置 される部屋への浸水を防止するため、建屋内浸水防止対 策を講じている。 本稿では、建屋内浸水防止対策のうち、貫通部への止 水対策方法およびモックアップによる性能確認試験の結 果について説明する。また、空調系の建屋開口部への浸 水防止対策として実施を予定している開口部自動閉止装 置について説明する。
2.貫通部止水対策
仮に津波が防波壁を越流し、発電所敷地内が浸水した 場合、建屋の壁貫通部から水が流入し、重要な設備が設 置される部屋が浸水する恐れがある。したがって、この ような建屋内への浸水を防止するため、耐水圧性や耐震 性を考慮して貫通部へシール材を注入することにより、 貫通部の止水対策を図る。 対象となる貫通部には、配管貫通部、電線管貫通部及 びケーブルトレイ貫通部があり、それぞれの貫通部に対 して、モックアップによる性能確認試験を実施した。
(left: conduit, right: cable tray) Fig.1 Test equipment of pipe Reinforcing plate Sleeve Pressured Seal material Backup material 2.1 貫通部止水対策性能確認試験(耐圧試験) 各貫通部の形状を模擬した試験装置を用いて、シール 材の一方を加圧し、逆側からの漏えいの有無を確認する 耐圧試験を実施した。試験圧力はステップ状に上昇させ、 圧力安定後に 10 分間保持し漏えいの有無を確認した。 配管貫通部については、配管とスリーブの芯ずれ(偏 心)を模擬した試験装置も作成し試験を実施した。また、 地震による配管とスリーブ(建屋壁)の相対変位を考慮 し、繰り返し変位を負荷させた後に試験を実施した。 また、ケーブルトレイ貫通部については、止水確保が より難しくなる、トレイサイズに対するケーブル占積率 が小さい条件で試験を実施した。 2.2 試験結果 配管貫通部についての試験結果を表1に示す。試験結 果から、50 m 水頭程度の圧力に対して、シール材による 止水性能が確保できることを確認した。 また、電線管貫通部及びケーブルトレイ貫通部につい ては、表2及び表3に示す通り、45 m 水頭程度の圧力に 対して、シール材による止水性能が確保できることを確 認した。 3.開口部自動閉止装置 空調系の建屋開口部への浸水防止対策として、フラッ プゲートを適用した開口部自動閉止装置の設置を計画し ている。このフラップゲートの基本原理は、水流の強さ によらずに水に対する浮力を利用して開口部の浮体構造 の扉を水位の上昇、下降に追従させて開閉させるもので ある。なお、津波に対してこのフラップゲートが確実に 動作するかを確認するため、二次元造波水路を用いた水 理模型実験を実施しており、急激な水位上昇にも追従し て確実に閉鎖できることを確認している。(京都大学、名 古屋大学、日立造船(株)、東京電力(株)と共同で実施) フラップゲートは、原理的に浸水を全く無くすことは できないが、津波による海水の浸入を大幅に制限するこ とができる。適用においては、空調系を津波襲来時の一 定時間停止させる必要があるものの、浸入した一部の水 については、換気空調系の開口部付近のダクトに水を流 すドレン受けを設ける等の対応により、津波の浸水に対 して建屋内の重要な設備の機能確保に十分に寄与できる ものと考えている。 4.まとめ 浜岡原子力発電所では、平成23年7月に建屋内浸水 防止対策をはじめとした津波対策を公表して以来、防波 壁の嵩上げ等による浸水防水対策の強化やフィルタベン ト設備の設置をはじめとするシビアアクシデント対策の 実施、さらには取水槽他の溢水対策の実施など、引き続 き対策を積み重ねることで安全性をより一層高めている。 今後とも、発電所の安全性のより一層の向上に全力で取 り組んでいく。 最後に、貫通部止水対策性能確認試験は、(株)東芝で 実施したものである。 (平成 25 年 6 月 21 日) Pipe bore Sleeves bore Reinforcing plate Bending test Maximum pressure 50 A 100 A without done 0.5 MPa 100 A 250 A with done 0.6 MPa 500 A 650 A with - 0.5 MPa 900 A 1200 A with - 0.5 MPa Table 1 Results of pipe penetration Fig.3Automatic closure system Conduit size Maximum pressure G22 (i.d. 21.9 mm) 0.45 MPa G54 (i.d. 54.0 mm) 0.48 MPa G104 (i.d. 106.4 mm) 0.45 MPa Table 2 Results of conduit penetration Tray size Maximum pressure 600W x 100H 0.45 MPa Table 3 Results of cable tray penetration “ “浜岡原子力発電所における建屋内浸水防止対策について “ “可児 直也,Naoya KANI,涌永 隆夫,Takao WAKUNAGA,石田 卓久,Takahisa ISHIDA,安田 光博,Mitsuhiro YASUDA,川端 樹生,Tatsuo KAWABATA“ “浜岡原子力発電所における建屋内浸水防止対策について “ “可児 直也,Naoya KANI,涌永 隆夫,Takao WAKUNAGA,石田 卓久,Takahisa ISHIDA,安田 光博,Mitsuhiro YASUDA,川端 樹生,Tatsuo KAWABATA
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