三次元フェーズドアレイ超音波探傷による 応力腐食割れの可視化とサイジング精度の検討
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カテゴリ: 第10回
1.緒言
フェーズドアレイ(PA)超音波探傷法は単一素子センサによる探傷法に比べ高SN 比で高速な検査が可能であり、様々な産業分野で適用が広がりつつある。現在、一般的に普及している従来PA 法は、リニアアレイセンサによる二次元走査で検査体内部の断面画像を用いて検査を行う方法である。我々はこの方法を拡張し、二次元アレイセンサ(マトリクスアレイセンサ)で生成される集束ビームを三次元的に走査する三次元フェーズドアレイ(3D-PA)法(Fig.1 参照)をこれまで開発してきた[1]。3D-PA 法は探傷結果を三次元画像として一度に確認できるため、複数の断面画像で結果を確認する従来PA 法に比べ、評価を効率良く短時間で行える。
2.3D-PA 法の応力腐食割れへの適用
本研究では3D-PA 法をステンレス母材に人工的に付与した応力腐食割れ(SCC)に適用し、切断調査結果との比較で3D-PA のサイジング精度を定量的に検討した。以下にその結果を述べる。 2.1 SCC試験体 本研究で用いたSCC 試験体をFig.2 に示す。腐食液としてテトラチオン酸溶液を用い、SUS304 母材表面に曲げによる引張応力を発生させ、試験体中央部にSCC 割れを人工的に付与した。SCC 開口面の浸透探傷結果をFig.2(b) に示す。SCC 開口部の長さは約75 mmであった。また、本研究では3D-PA のサイジング精度を検証するために試験体を複数位置(58 ヶ所、1.5mmピッチ)で切断しており、その断面画像の一例をFig.2(c)に示す。SCC は二ヶ所で発生しており(Br1 およびBr2)、一方の先端は二つに枝分かれしている領域があることが分かった。SCC 割れの最深部は11.5 mmである。 Fig.1 Schematic image of 3D-PA with matrix array probe. Matrix array probe 3D scanning Extremely focused ultrasonic beam Scanningregion
2.2 SCCの三次元探傷結果 本研究で用いた三次元走査をFig.3 に示す。センサの向きは固定で遅延時間制御によりセクタの首振り走査(首振り角 約±45°)を行いながら、SCC 割れの長手方向にセンサを移動させてデータを収録した(MRS-scan: Moving Rotational Sectorial-scan)。収録はSCC 割れを挟んで二方向から行い、全収録データ(セクタ総数13,534) から合成した三次元画像をFig.4 に示す。画像には底面を示す平面を重ねて表示してある。SCC 割れ形状に対応してコーナーおよび端部エコーが連続的に表示されており、切断調査結果に示したようにエコーも二つに分離している(Fig.4 破線)。三次元画像から、複数のY位置におけるSCC 割れ深さをサイジングし、切断調査結果と比較したところ、SCC 割れ深さの二乗平均平方根誤差は0.9 mmであった。また、首振り走査を行わなずにSCC 割れとほぼ直交するセクタだけで合成した三次元画像に比べ、確実に端部エコーを検出していることが分かった。 3.結言 3D-PA 法でSCC を探傷し、三次元画像からのサイジング精度を試験体の切断調査結果と比較検討した。三次元走査では反射源に対して様々な角度から超音波を入射させるため、従来PA 法よりもSCC 割れの端部エコーを高SN 比で検出できると考えられる。今回はステンレス母材での評価であるが、今後は溶接部での検出精度も検証していく予定である。 参考文献 [1] 北澤聡、河野尚幸、馬場淳史、安達裕二、小田倉満: “3次元フェーズドアレイ法による超音波探傷技術”、日本保全学会 第7回学術講演会 要旨集、55 (2010). (平成25 年5 月31 日) Fig.2 SCC specimen. (a) specification of specimen, (b) result of penetrant testing, and (c) optical microscopic image of SCC cross section. Material: JIS SUS304 300 SCC-induced region 15030150 150 75 75 10mm (a) (b) (c) 1 mm Br1 Br2 Bottom surface Fig.3 Schematic image of 3D scanning. (a) rotational S-scan and (b) moving rotational S-scan (MRS-scan) for SCC. Y X Z Matrix array probe Acrylic wedge (a) (b) SCC X Y Z Translation SCC specimen Probe Tip and corner echoes of Br2 Inner bottom surface Bottomechoes Tip and corner echoes of Br1 Fig.4 Three-dimensional image synthesized by MRS scannings on both sides of SCC. “ “三次元フェーズドアレイ超音波探傷による 応力腐食割れの可視化とサイジング精度の検討 “ “北澤 聡,So KITAZAWA,河野 尚幸,Naoyuki KONO,工藤 健,Takeshi KUDO,井坂 克己,Katsumi ISAKA“ “三次元フェーズドアレイ超音波探傷による 応力腐食割れの可視化とサイジング精度の検討 “ “北澤 聡,So KITAZAWA,河野 尚幸,Naoyuki KONO,工藤 健,Takeshi KUDO,井坂 克己,Katsumi ISAKA
フェーズドアレイ(PA)超音波探傷法は単一素子センサによる探傷法に比べ高SN 比で高速な検査が可能であり、様々な産業分野で適用が広がりつつある。現在、一般的に普及している従来PA 法は、リニアアレイセンサによる二次元走査で検査体内部の断面画像を用いて検査を行う方法である。我々はこの方法を拡張し、二次元アレイセンサ(マトリクスアレイセンサ)で生成される集束ビームを三次元的に走査する三次元フェーズドアレイ(3D-PA)法(Fig.1 参照)をこれまで開発してきた[1]。3D-PA 法は探傷結果を三次元画像として一度に確認できるため、複数の断面画像で結果を確認する従来PA 法に比べ、評価を効率良く短時間で行える。
2.3D-PA 法の応力腐食割れへの適用
本研究では3D-PA 法をステンレス母材に人工的に付与した応力腐食割れ(SCC)に適用し、切断調査結果との比較で3D-PA のサイジング精度を定量的に検討した。以下にその結果を述べる。 2.1 SCC試験体 本研究で用いたSCC 試験体をFig.2 に示す。腐食液としてテトラチオン酸溶液を用い、SUS304 母材表面に曲げによる引張応力を発生させ、試験体中央部にSCC 割れを人工的に付与した。SCC 開口面の浸透探傷結果をFig.2(b) に示す。SCC 開口部の長さは約75 mmであった。また、本研究では3D-PA のサイジング精度を検証するために試験体を複数位置(58 ヶ所、1.5mmピッチ)で切断しており、その断面画像の一例をFig.2(c)に示す。SCC は二ヶ所で発生しており(Br1 およびBr2)、一方の先端は二つに枝分かれしている領域があることが分かった。SCC 割れの最深部は11.5 mmである。 Fig.1 Schematic image of 3D-PA with matrix array probe. Matrix array probe 3D scanning Extremely focused ultrasonic beam Scanningregion
2.2 SCCの三次元探傷結果 本研究で用いた三次元走査をFig.3 に示す。センサの向きは固定で遅延時間制御によりセクタの首振り走査(首振り角 約±45°)を行いながら、SCC 割れの長手方向にセンサを移動させてデータを収録した(MRS-scan: Moving Rotational Sectorial-scan)。収録はSCC 割れを挟んで二方向から行い、全収録データ(セクタ総数13,534) から合成した三次元画像をFig.4 に示す。画像には底面を示す平面を重ねて表示してある。SCC 割れ形状に対応してコーナーおよび端部エコーが連続的に表示されており、切断調査結果に示したようにエコーも二つに分離している(Fig.4 破線)。三次元画像から、複数のY位置におけるSCC 割れ深さをサイジングし、切断調査結果と比較したところ、SCC 割れ深さの二乗平均平方根誤差は0.9 mmであった。また、首振り走査を行わなずにSCC 割れとほぼ直交するセクタだけで合成した三次元画像に比べ、確実に端部エコーを検出していることが分かった。 3.結言 3D-PA 法でSCC を探傷し、三次元画像からのサイジング精度を試験体の切断調査結果と比較検討した。三次元走査では反射源に対して様々な角度から超音波を入射させるため、従来PA 法よりもSCC 割れの端部エコーを高SN 比で検出できると考えられる。今回はステンレス母材での評価であるが、今後は溶接部での検出精度も検証していく予定である。 参考文献 [1] 北澤聡、河野尚幸、馬場淳史、安達裕二、小田倉満: “3次元フェーズドアレイ法による超音波探傷技術”、日本保全学会 第7回学術講演会 要旨集、55 (2010). (平成25 年5 月31 日) Fig.2 SCC specimen. (a) specification of specimen, (b) result of penetrant testing, and (c) optical microscopic image of SCC cross section. Material: JIS SUS304 300 SCC-induced region 15030150 150 75 75 10mm (a) (b) (c) 1 mm Br1 Br2 Bottom surface Fig.3 Schematic image of 3D scanning. (a) rotational S-scan and (b) moving rotational S-scan (MRS-scan) for SCC. Y X Z Matrix array probe Acrylic wedge (a) (b) SCC X Y Z Translation SCC specimen Probe Tip and corner echoes of Br2 Inner bottom surface Bottomechoes Tip and corner echoes of Br1 Fig.4 Three-dimensional image synthesized by MRS scannings on both sides of SCC. “ “三次元フェーズドアレイ超音波探傷による 応力腐食割れの可視化とサイジング精度の検討 “ “北澤 聡,So KITAZAWA,河野 尚幸,Naoyuki KONO,工藤 健,Takeshi KUDO,井坂 克己,Katsumi ISAKA“ “三次元フェーズドアレイ超音波探傷による 応力腐食割れの可視化とサイジング精度の検討 “ “北澤 聡,So KITAZAWA,河野 尚幸,Naoyuki KONO,工藤 健,Takeshi KUDO,井坂 克己,Katsumi ISAKA