六ヶ所再処理工場の設備の保全

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カテゴリ: 第11回
2.1 六ヶ所再処理工場の工程
六ヶ所再処理工場の主な工程は、以下のとおりである。(Fig.1 参照) ①使用済燃料受入れ・貯蔵建屋 原子力発電所から運ばれてきた使用済燃料を、使用済燃料輸送容器(キャスク)から取り出し、燃料貯蔵プールで冷却・貯蔵する。原子炉取り出し後4 年以上冷却した使用済燃料は、次の前処理建屋せん断工程に移送する。 ②前処理建屋 使用済燃料集合体を燃料横転クレーンで1 体ずつせん断機へ供給しせん断する。燃料せん断片は溶解槽で移送され、高温の硝酸で燃料部分を溶解し、溶解液中高温の硝酸で燃料部分を溶解し、清澄工程へ移送する。 清澄工程では、不溶解残渣を含む溶解液から不溶解残渣を分離除去した後、計量・調整槽で溶解液の計量、調整を行い、分離建屋分離工程に移送する。 ③分離建屋 分離設備では、有機溶媒を用いて溶解液中のウラン及びプルトニウムを抽出する。ウラン及びプルトニウムを含む有機溶媒は硝酸を用いて洗浄し、有機溶媒中に同伴する少量の核分裂生成物を除去した後、分配設備に移送する。 分配設備では、ウラン及びプルトニウムを含む有機溶媒を硝酸溶液を用いて、ウランを含む有機溶媒と硝酸プルトニウム溶液に分離する。 硝酸プルトニウム溶液は、精製建屋プルトニウム精製設備に移送する。ウランを含む有機溶媒は、有機溶媒中の微量のプルトニウムを除去した後、硝酸を用いてウランを逆抽出する。逆抽出によって得られた硝酸ウラン溶液は、ウラン濃縮缶で濃縮し、精製建屋ウラン精製設備に移送する。 ④精製建屋 ウラン精製設備では、硝酸ウラン溶液から残存する微量の核分裂生成物等の除去を行った後、ウラン濃縮缶で濃縮し、ウラン脱硝建屋ウラン脱硝設備及びウラン・プルトニウム混合脱硝建屋ウラン・プルトニウム混合脱硝設備へ移送する。 プルトニウム精製設備では、硝酸プルトニウム溶液から残存する微量の核分裂生成物の除去を行った後、プルトニウム濃縮缶で濃縮し、ウラン・プルトニウム混合脱硝建屋ウラン・プルトニウム混合脱硝設備に移連絡先:尾形 圭司、〒039-3212 青森県上北郡六ヶ所村大字駮字沖付4-108、日本原燃㈱ 再処理事業部再処理工場 運営管理部 生産管理課 E-mail:keiji.ogata@jnfl.co.jp - 1 - 送する。 ⑤ウラン脱硝建屋 ウラン精製設備から受け入れた硝酸ウラニル溶液を濃縮缶で濃縮した後、脱硝塔で熱分解し、ウラン酸化物粉末(UO3)の製品とし、ウラン酸化物貯蔵容器に充填する。 ⑥ウラン・プルトニウム混合脱硝建屋 プルトニウム精製設備から硝酸プルトニウム溶液を、ウラン精製設備から硝酸ウラニル溶液を受入れ、これら両溶液を混合槽で混合調整した後、脱硝装置を用い脱硝処理、焙焼炉及び還元炉にて焙焼・還元処理し、混合酸化物粉末(PuO2+UO2)として、粉末缶に充填する。 ⑦高レベル廃液ガラス固化建屋 高レベル廃液ガラス固化設備では、分離建屋で発生する抽出廃液、アルカリ濃縮廃液、前処理建屋で発生する不溶解残渣を、ガラス溶融炉でガラスと共に溶融し、ガラス固化する。 Fig.1 再処理工場の全体工程 2.2 六ヶ所再処理工場の採用技術 六ヶ所再処理工場は、当初の実績と安全性を考慮し、実用可能な最良技術を国内外から選び構成している。各技術の導入例を以下に示す。 ・せん断、溶解、分離等の再処理工程の主要部分: 再処理工場として実績の多いフランス(AREVA) の技術を採用 ・放射性廃液の減圧蒸発処理技術: フランスの常圧沸騰と比較して腐食環境緩和のメリットがある、蒸発缶内を減圧して溶液の沸騰温度を低くするイギリス(NDA)の技術を採用 ・溶解オフガス中のヨウ素除去技術: フランスの湿式除去方式に比べて廃棄物の発生量等の観点でメリットがある、ドイツ(KEWA)の乾式除去方式を採用 ・ウラン脱硝: 水酸化アンモニウムを添加するADU 法に比べて廃棄物の発生量等の観点でメリットがある、硝酸ウラン溶液を噴霧して熱分解させる東海再処理工場(JAEA)の流動層脱硝方式を採用 海外導入技術については、一般的に基本設計は海外ライセンサが行い、機器の詳細設計、製作、据え付けは国内メーカが行う方法で技術移転を図ってきた。また、いくつかのものは、国内の基準に合致させるために、耐震設計の評価結果に基づく機器内部の構造変更や、安全設計に係るインターロックの設置(最大処理能力超過制限等)等の改良を行っている。 3.再処理工場の設備の保全 3.1 再処理工場の設備構成 再処理工場を構成する設備としては、機械設備として、ポンプ、排風機、攪拌機、熱交換器、ボイラ、弁等に加え、再処理工場特有の特殊機器(せん断機、燃料横転クレーン、遠心清澄機、ミキサセトラ等)があり、計装設備として、検出器、伝送器、記録計、盤等、電気設備として、遮断器、変圧器、電源装置、蓄電池、電動機等がある。 これらの再処理工場を構成する設備の数は、合計約15 万機器になる。 3.2 保全体制 これらの機器、設備の機能を維持するために行う保全については、Fig.2 に示すように、保全計画、作業管理、保全結果の評価等保全の全体管理は日本原燃社員が実施している。また、実際の保全作業は、再処理工場特有の保全作業(セル内機器の遠隔装置による保全、グローブボックス内機器の保全)は、設備の操作上も特殊な技量が必要なため、コア技術として、原則として専門の訓練を受けた日本原燃社員が実施、それ以外の保全作業は原則として協力会社が実施するという体制となっている。 - 2 - Fig.2 保全体制 Fig.3 遠隔保守のイメージ Fig.4 グローブボックス作業のイメージ 3.3 保全業務の管理 再処理工場の保全業務については、ウラン試験開始当初から、点検方法・点検内容・点検時期の点検計画の策定、取替えおよび改造計画の策定による保全の計画、計画に基づく保全の実施結果の確認を行う管理等の管理を行っていたが、設備の劣化状態の評価や過去の点検実績を踏まえて保全内容を見直す仕組みが十分ではなかった。 そのため、2010 年9 月以降、点検手入れ前データの採取、点検手入れ前データや点検・検査等の保全実績の確認を行い、点検結果や不具合情報等の評価を行い、保全計画へ反映にするよう保全業務の管理方法を見直した。 Fig.5 保全業務のPDCA 以下に保全業務の管理方法の具体例を示す。 ①保全の計画 再処理工場には膨大な数の機器が設置されているが、自主点検の対象としては、機器の安全上の重要度や機器が故障した場合の再処理運転への影響度に応じて選定している。 また、設備の点検頻度、点検内容の設定にあたっては、国内外の先行再処理プラントの実績(AREVA ラ・アーグ再処理工場、東海再処理工場) 、国内原子力発電所の実績およびプラントメーカの推奨内容を考慮して点検頻度・点検内容を設定し、運転経験および点検実績を踏まえた適正化を継続的に実施している。 Fig.6 保全対象設備の考え方 ②保全結果の確認、保全計画の評価・改善 保全計画(保全頻度、保全内容)が適切であったかどうかを評価するために、分解点検時に採取した点検手入れ前データをもとに、設備の劣化程度の確認、評価を行い、評価結果をもとに点検頻度等への保全計画に反映している。 点検結果等の評価では、機器の振動診断結果、2 系統あ- 3 - るうちの片系の点検結果等を踏まえ、点検実施要否検討を行うことも経験を積重ねながら実施している。 <点検手入れ前データを採取する対象> 予防保全、事後保全による作業・点検を実施した全ての設備。ただし、手入れを伴わない作業(水張り作業、設備新設など)は除く。 <点検手入れ前データの評価基準> A:劣化がない状態 B:当該点検で保全が必要とならない程度の劣化状態 C:当該点検で保全が必要な程度の劣化状態 D:機能を喪失している状態 Fig.7 点検手入れ前データの評価例 ③保全業務支援ツール これら保全業務のPDCAを支援するために、J-MAINTE. と称するツールを活用している。J-MAINTE.では、保全業務を行う際に必要となる設備情報、点検計画、工事報告書などの保全実績、不適合等処理票などの保全関係情報を一元的に管理している。なお、J-MAINTE.は、エクセルを用いた簡易ツールであるため、機能や操作性が限定されており、現在、本格システム化に向けて検討を実施している。 Fig.8 J-MAINTE.のイメージ 4.今後の取り組み 六ヶ所再処理工場では2.2 項で示した保全業務の管理を行っているが、保全業務の更なる改善のため、今後以下の取り組みを実施していく予定である。 ①各設備の保全内容の最適化 保全業務のPDCA サイクルを確実にまわし、点検手入れ前データの評価や振動診断等の状態監視のデータを蓄積し、設備状態を的確に評価することで、保全内容(点検頻度や点検内容)の最適化を進める。保全の最適化に当たっては、まず、再処理工場の安全性に影響しない「生産系設備」を対象として検討を進め、「生産系設備」での実績が蓄積した段階で「安全系設備」への拡大を検討する。 ②保全業務システムの改修 現在、エクセルを用いた簡易ツールで管理している「保全に関する情報(設備仕様、点検計画表、保修実績管理表)」については、保全業務の厳格な運用管理やシステムによる保全業務への更なる支援を図るため、“ “六ヶ所再処理工場の設備の保全 “ “尾形 圭司,Keiji OGATA,北条 隆志,Takashi HOJO
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