東海再処理施設の抽出器用流量調節弁の改良

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カテゴリ: 第11回
1.緒言
東海再処理施設では、使用済燃料の溶解液中からウ ランとプルトニウムの回収を抽出工程で行っている。 この抽出工程では、抽出器としてミキサ・セトラを使 用し、使用済燃料を硝酸溶液で溶解した水溶液とP (リン酸トリブチル)を含む有機溶媒の混合と静置を 繰返し行うことで、ウラン、プルトニウム及び核分裂 生成物の分離を行っている。このミキサ・セトラで水 溶液と有機溶媒を混合させる際、抽出器用流量調節弁 を用いて水溶液の流量を調節している。この抽出器用 流量調節弁は、水溶液の流量を調節することで、ウラ ンとプルトニウムの回収効率を保つ重要な役割を果 たしているが、保守に時間を要す雑な構造である ため、保守性に課題があった。さらに、輸入品である ため納期及び価格にも課題があった。本件では、抽出 器用流量調節弁のこれらの課題解決に向けて取り組 んだ内容について報告する。
2.ミキサ・セトラの概要
抽出工程で使用するミキサ・セトラは、混合槽(ミ キサ)と2相分離槽(セトラ)の一対で1段をなし、交 互に複数段を並べる形で構成されている。図1にミキ サ・セトラの概要を示す。 使用済燃料の溶解液は、ミキサにある攪拌機で有機 溶媒と混合し、セトラに送られ、比重の違いにより水 相(水溶液)と有機相(有機溶媒)に分離される。水 相は、前段のセトラから堰を経てミキサに流入し、 有機相は後段のセトラから流入口を経てミキサに流 入する[1,2]。これを繰返すことで核分裂生成物を分離 し、ウランとプルトニウムを抽出し、回収する。 ウランとプルトニウムを回収する際、回収効率を損 なわないためには、セトラ内の水相と有機相がそれぞ れ同じ高さになるように水相と有機相の境である界 面を制御することが重要である。抽出器用流量調節弁 は、堰を超えてミキサに流入する水相の流量を調節す ることでこの界面の高さを制御している。 前段 後段 1段 図1 ミキサ・セトラの概要 ミキサ 攪拌機 連絡先:野口浩二、〒319-1194茨城県那珂郡東海村村松4-33、 バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 再処理技術開発センター 施設管理部 施設保全第 2 課、 電話029-282-1111、E-mail: noguchi.koji@jaea.go.jp - 220 - セトラ ミキサ 堰 前段からの 水相の流れ 後段からの 有機相の流れ カバー 本体 3.抽出器用流量調節弁の概要 3.1抽出器用流量調節弁による流量調節 図2に抽出器用流量調節弁によるミキサ・セトラの 流量調節の概要を示す。 抽出器用流量調節弁による流量調節は、調節器から の制御圧に従い、堰の上部空間と真空圧配管又は大気 圧配管をつなげることで堰の上部空間の負圧を調整 し、水相を引き上げ、ミキサに流入させる量を変化さ せて行う。 真空圧配管 大気圧配管 図2 抽出器用流量調節弁によるミキサ・セトラの流量調節 3.2抽出器用流量調節弁の構造 図3に抽出器用流量調節弁の構造図を示す。 抽出器用流量調節弁は、幅75×奥行75×高さ75(mm) の箱型であり、本体、カバー、大気圧弁及び真空圧弁 などで構成されている。また、水相の流量調節に伴い、 放射性物質が抽出器用流量調節弁の内部を通ること から、放射性物質による汚染拡大を防止するための隔 離が必要であり、このため内部の気密性を考慮した構 造としている。 ボルト 大気圧弁 接続口 真空圧弁 堰の上部空間との接続口 ベローズ ベース Oリング-1 制御圧配管 制御圧 [抽出器用流量調節弁] 大気圧弁と真空圧弁の 開閉動作により堰の 上部空間の負圧を制御 攪拌機 堰の上部空間(負圧) 界面 堰 弁棒 Oリング-2 ナット 制御圧接続口 受圧部 図3 抽出器用流量調節弁の構造図 - 221 - M 有機相 水相 ミキサ セトラ セル壁 (1)本体の構造 本体の下面には、大気圧、真空圧の接続口があり、 側面に堰の上部空間との接続口がある。また、大気 圧及び真空圧の接続口の上部にはそれぞれの弁座 がある。本体の上面には、円状にガイドがあり、ベ ースとOリング-1が設置できるようになっており、 4角にはカバーを固定するボルト用のネジ穴が設 けられている。 (2)カバーの構造 カバーの上面には、制御圧の接続口と本体に固定 するためのボルト穴が4角にある。また、堰の上部 空間からの放射性物質と隔離させるため、本体とカ バーの間にOリング-1を設置し、ベースと本体の間 はメタルタッチにより気密性を確保できるように している。カバーを本体に4本のボルトで固定する ことにより、制御圧と堰の上部空間から放射性物質 を外部に漏らさない構造となっている。 (3)大気圧弁及び真空圧弁の構造 大気圧弁は、弁棒の下端に球形の弁体を設け、制 御圧が加わることで本体の弁座に着座する構造で ある。また、真空圧弁は、弁棒の下端に逆のテーパ ー形状をした弁体を設け、制御圧が加わることで本 体の弁座に着座した状態から離れる構造である。そ れぞれの弁棒は、円筒形の受圧部の中心軸に下方か らねじ込まれる形で取り付けられ、弁棒の上端にナ ットを取り付けることで固定している。弁棒は、回 転させることで上下し、弁体と弁座の隙間を調整 する構造となっている。 弁棒と受圧部の間には、堰の上部空間からの放射 性物質と制御圧を隔離させるため、Oリング-2が設 けられている。 3.3抽出器用流量調節弁の動作 抽出器用流量調節弁は、0~100kPaの制御圧に応じ て大気圧弁及び真空圧弁が上下することで弁体と弁 座の開度が変化する。制御圧に応じた大気圧弁及び真 空圧弁の開度は、4つの段階に区分できる。 図4に制御圧と弁開度の関係図を示す。 1制御圧が0~P1の範囲では、大気圧弁はP1まで閉 方向に動作し、真空圧弁は全閉のままである。 2制御圧がP1~P2の範囲では、大気圧弁及び真空圧 弁は全閉のままである。 3制御圧がP2~P3の範囲では、大気圧弁は全閉のま な制御圧配管側へと漏れることになる。 まで、真空圧弁はP3まで開方向に動作する。 4制御圧がP3~P4の範囲では、大気圧弁は全閉のま 3 気密性の課題(2) まで、真空圧弁は全開である。 本体とカバーの間に設けられたOリング-1は、抽 弁開度 出器用流量調節弁の内部から外部へ放射性物質が (%) 100 ←大気圧弁 漏れないよう、気密性を確保している。このOリン グ-1は、弁開度の調整作業に伴うカバーの取外し及 真空圧弁→ び取付けの際、ずれが生じるとOリング-1はカバー と本体間に挟まる恐れがある。このため、十分な確 01 2 3 4 認を行いながらカバーと本体の固定を行うことが 0 P1 P2 P3 P4 制御圧(kPa) 求められる。 (41) -47-1004 購入する際の納期及び価格の課題 図4 制御圧と弁開度の関係図 抽出器用流量調節弁は、輸入品であることから、 4.抽出器用流量調節弁の課題 納期までに半年以上を要し、また価格も数百万円と 高価である。 4.1課題 現状の抽出器用流量調節弁は、保守性、気密性及び 購入する際の納期と価格について以下のように課題 を有している。 図5に抽出器用流量調節弁の構造上の課題箇所を 示す。1 弁開度の調整機構に起因する保守性の課題 弁開度の調整は、弁棒上端のナットをゆるめ、弁 棒を回転させて弁体と本体にある弁座の隙間を変 えることにより行う。この作業は、弁棒がカバーの 図5 抽出器用流量調節弁の構造上の課題箇所 内部にあるため、カバーを取外して行うが、調整後 4.2課題解決に向けた取組み の弁開度の確認は、カバーを取付けた状態でなけれ (1)保守性の課題解決に向けた取組み ばできない。このため、適切な弁開度に調整できる カバーの取付け及び取外しを行うことなく弁開 までカバーの取外しと取付けを繰り返し実施する 度の調整作業ができる構造に改良することとした。 ことになる。このように弁開度の調整においては、 (2)気密性の課題解決に向けた取組み 構造上作業の煩雑さを伴い、時間を要する。 ベースと本体、ベースとカバーに分けて気密性が 2 気密性の課題(1) 確保できるよう、メタルタッチからそれぞれにOリ ベース、本体、カバー間の気密性はメタルタッチ ングを設置してシールすることとした。また、弁棒 により確保している。この気密性が失われると堰の のOリング-2は、2重化することとした。 上部空間からの放射性物質が清浄な制御圧配管側 (3)納期及び価格の課題解決に向けた取組み へと漏れることにより、汚染が拡大することになる。 国産化による納期の短縮化と価格の低廉化につ このため、弁開度を調整する際のカバーの取付け及 いて取り組むこととした。 び取外しでは、接触面を損傷させないように慎重な 取り扱いが必要となる。 5.抽出器用流量調節弁の改良点と成果 また、弁開度の調整作業において弁棒を回すと、 5.1抽出器用流量調節弁の改良点 弁棒に取り付けられたOリング-2も回転するとと“ “東海再処理施設の抽出器用流量調節弁の改良 “ “野口 浩二,Kouji NOGUCHI,安尾 清志,Kiyoshi YASUO,瀬戸 信彦,Nobuhiko SETO,綿引 誠一,Seiichi WATAHIKI
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