関西電力における原子力発電所の安全性向上対策について
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カテゴリ: 第11回
1.はじめに
関西電力は2011年3月に発生した福島第一原子力発電 所事故以降、2013 年7 月に原子力規制委員会が制定した 新規制基準も踏まえ、様々な安全性向上対策を実施して いる。 ここでは、安全性向上対策の概要を述べるとともに、 内部溢水対策の一環として実施した高エネルギー配管損 傷による蒸気影響の緩和策に焦点を絞って、その対策の 取り組み内容を説明する。
2.安全性向上対策の取り組みの観点
関西電力は、平成23年3月に発生した福島第一原子力 発電所事故からの教訓として、主に次の3点を反省事項 として認識している。 ・シビアアクシデントへの取り組みが不十分だったの ではないか ・規制の枠組みを超えて自主的に安全性を向上させ続 けるという意識が低かったのではないか ・世界の安全性向上活動に学ぶことが不足していたの ではないか このため、安全性向上対策については、次項の観点に 基づいて実施してきており、今後とも継続的に安全性向 上に取組むこととしている。 ・5層の深層防護への取り組みによる安全確保の強化 ・規制の枠組みにとどまらない安全性向上の推進 ・世界の安全性向上活動に学ぶことの強化 2.1 5層の深層防護への取り組み 深層防護による多段的安全対策は、これまで主に第 1 層から第 3 層の防護レベルについて、設計・運用面に取 り入れていた。 しかしながら、現在はIAEAなどの国際基準にならい、 第 4 層から第5 層の防護レベルも強化した5 層の深層防 護を図っている。 Fig.1 深層防護による対策の強化 連絡先: 上山逸平、〒919-1141 福井県美浜町13-8 関西電力 原子力事業本部 フ?ラント・保全技術グルーフ? E-mail: ippei.ueyama@b4.kepco.co.jp - 238 - 2.2規制の枠組みにとどまらない安全性向上の推進 関西電力では、事故直後から、福島第一原子力発電所 と同じ規模の地震・津波が襲ったとしても原子炉が損傷 しない万全の対策として、代替電源の確保や原子炉/使 用済燃料プールの冷却機能の確保等を実施するとともに、 シビアアクシデント対策として、水素爆発防止対策や瓦 礫撤去用の重機の配備等を実施してきた。 また、新規制基準施行以降は、地震・津波に限らずそ の他の自然現象も考慮のうえ深層防護の観点から、次項 のような対策を実施している。 ・ 竜巻を考慮した飛来物防護対策 ・ 森林火災に伴う火災を考慮した対策 ・ 炉心損傷防止対策 ・ 原子炉格納容器健全性維持対策 ・ 大規模な放射線防止対策 等 今後、原子力規制委員会が新規制基準に適合している ことを認めたプラントから、地元の同意を得て再稼動さ せる計画であるが、今後も規制の枠組みにとどまること なく自主的かつ継続的に安全性向上に取組むこととして いる。 Fig.3森林火災に伴う火災を考慮した対策の例(高浜) 2.3世界の安全性向上活動に学ぶことの強化 関西電力では、事業者としても海外機関と連携して世 界に学び、安全性向上活動を強化することが有効と判断 のうえ、世界原子力発電事業者協会(WANO)など海外 Fig.2竜巻を考慮した飛来物防護対策の例(高浜) Fig.4世界の安全性向上活動に学ぶことの強化 3.内部溢水対策 内部溢水対策は、5層の深層防護のうち第1~3層に おいて、異常の発生防止/拡大防止、炉心損傷防止/格 納容器健全性維持を図るための対策であり、いわゆる設 計基準内の防護対策である。 また、内部溢水は、基本的には発電所内部のタンクや 配管類の損傷等に伴い、津波や洪水に似た事象(安全上 重要な機器の没水、被水)が起きることを指すが、津波 や洪水では発生しない高エネルギー配管損傷により生じ る蒸気漏えいによる熱影響等も、内部溢水には含まれる。 以下に、没水/被水対策の概要を示した後、蒸気漏え いの影響評価と対策について説明する。 内部溢水対策は、安全上重要な機器の損傷による原子 力発電所の異常や事故を防止/緩和するための対策であ り、原子炉の安全停止/維持および使用済燃料ピットの 冷却/給水に必要な機器を内部溢水から防護するもので ある。 評価/対策の概略プロセスとしては、防護すべき機器 の特定を行った後に、機器の設置位置(溢水源であるタ ンク、配管等との位置関係含む)や床からの設置高さ等 を確認のうえ、没水、被水の可能性を評価している。な お、当該評価においては、スプリンクラー等の消火水か らの溢水も考慮している。 機関と連携したトップマネジメントによる安全性向上活 動の実施や、国内外の知見に対する感度向上に向けた取 組み等を実施している。 当該活動を通じて得られた知見等については、設備面 だけでなく運用面も含め、積極的に活用していく計画で ある。 3.1内部溢水による没水/被水対策 - 239 - 評価の結果、対策が必要とした機器については、 ・ 堰/水密シールの設置 ・ 被水防護カバーの設置 等 を実施することにより、内部溢水から防護している。 Fig.6被水防護カバーの設置例 3.2高エネルギー配管損傷による影響評価/対策 高エネルギー配管損傷に伴う蒸気漏えいによる影響評 価/対策のプロセスとしては、溢水源である高エネルギ ー配管と防護対象設備(安全上重要な機器)の位置関係 を特定のうえ、汎用熱流体解析コード(GOTHIC)を用 いた蒸気拡散解析により防護対象設備の設置位置におけ る環境温度等を算出し、耐蒸気性能との対比により健全 性を確認している。 また、現状設備で健全性が確認できない場合は、次項 の影響緩和策を実施し、健全性が確保できることを確認 している。 ・ 蒸気漏えい検知隔離システムの設置 ・ 蒸気漏えい流量を制限するカバーの設置 なお、防護対象設備の耐蒸気性能については、後述す る蒸気暴露試験により、蒸気環境下において機能が健全 Fig.5 水密シールとしての配管ブーツの設置例 溢水源の選定 想定破損(強度評価) 蒸気漏えい影響範囲の設定 Fig.8 蒸気拡散のイメージ であることを確認している。 蒸気拡散解析においては、解析の不確かさによる影響 を排除するために、様々な条件を保守的に設定するとと もに、国内外で実施されたGOTHICコードの検証結果(実 験データと解析データの関係)を再確認し、内部溢水の 評価に適用可能なことを確認している。 具体的には、解析の入力条件を「破損口からの蒸気漏 えいにおいて圧損は生じず、臨界流で漏えいする」、「漏 えい蒸気は壁等の構造物に熱を奪われることなく、空間 に拡散する」とし、実際よりも高い温度を算出するとと もに、区画内に温度分布が生じたとしても、蒸気漏えい 検知用温度センサは天井付近に設置するので、防護対象 設備よりも早期に温度上昇する(安全側に検知できる) ことを確認している。 なお、下図は漏えい蒸気が貫通部等を通じて拡散する イメージ図であるが、本解析では空調の流れを考慮し、 下図よりも細かい区画に分割して解析を行っている。 蒸気拡散解析区画の設定 蒸気拡散解析の実施 影響緩和策の実施 解析結果の確認 耐蒸気性能の確認 評価終了 - 240 - Fig.7 蒸気影響対策のプロセス 3.2.1 蒸気拡散解析 3.2.2 蒸気影響の緩和策 蒸気漏えいによる影響緩和策としては、耐環境性能が 確認された機器を適用する方法があり、格納容器や主蒸 気配管室内については、新規制基準以前から1次冷却材 喪失や主蒸気管破断により生じる環境に対する健全性が 確認された機器(LOCA仕様)を適用している。 一方、原子炉周辺建屋(E/B)内の、補助蒸気配管等か らの蒸気影響に対しては、配管隔離等により環境悪化を 緩和することが可能であることから、蒸気漏えいを検知 して自動隔離するシステムの導入や、漏えい流量そのも のを低減する防護カバーを設置している。 なお、漏えい検知用温度センサの設置場所は、前述の 蒸気拡散解析において、一般的な電気計装設備の最高使 用温度(60°C)を超える区画のうち、早期に漏えい検 知が可能となる蒸気の拡散経路の上流側に設置している。 Fig.11 蒸気拡散解析の結果(温度上昇が大きい例) Fig.10 蒸気漏えい流量を低減する防護カバーの例 Fig.9 蒸気漏えい検知隔離システム概念図 Fig.12 蒸気曝露試験プロファイル、および装置の概観 4.まとめ 当該手法については、学会発表や産業界標準の作成等 を通じて情報共有を行えば、炉型が異なっても幅広く活 用できるとともに、更なる改善にもつながると考える。 参考文献 [1] 原子力規制委員会「原子力発電所の内部溢水影響評 価ガイド」、原規技発第13061913号、平成25年6月 19 日制定 3.2.3 耐蒸気性能の確認 耐蒸気性能は、米国等の例にならい蒸気曝露試験にて 確認している。 蒸気曝露試験では、基本的に蒸気曝露中に設備を駆動 させ、かつ電気信号を取り出すことができるため、蒸気 環境下での健全性を確認することが可能である。 健全性を確認した蒸気環境条件は、下図の時間-温度プ ロファイルであり、影響緩和策を実施した環境における 蒸気拡散解析結果に約20°C程度のマージンを考慮して 設定している。 なお、今回の試験対象設備はLOCA仕様ではない設 備であったが、基本的に全約20型式に対して、健全性 を確認することができた。 今回実施した内部溢水対策としての蒸気影響評価/対 策手法については、新規制基準や産業界標準類にも明確 な規定がなかったものである。 このため、米国の取組みを参考に国内PWR電力各社 および三菱重工業の協力のもと、評価/対策手法を確立 し、原子力規制委員会による公開審査等も通じて改善を 図ったうえで確立したものである。 今後、原子力規制委員会の審査が完了すれば、積極的 に国内外への情報発信を行うとともに、関係者と幅広く 意見交換し、産業界標準の作成等を図っていきたい。 - 241 -“ “関西電力における原子力発電所の安全性向上対策について “ “田中 俊彦,Toshihiko TANAKA,笹川 直樹,Naoki SASAGAWA,小松 邦嘉,Kuniyoshi KOMATSU,辻 義直,Yoshinao TSUJI,上山 逸平,Ippei UEYAMA
関西電力は2011年3月に発生した福島第一原子力発電 所事故以降、2013 年7 月に原子力規制委員会が制定した 新規制基準も踏まえ、様々な安全性向上対策を実施して いる。 ここでは、安全性向上対策の概要を述べるとともに、 内部溢水対策の一環として実施した高エネルギー配管損 傷による蒸気影響の緩和策に焦点を絞って、その対策の 取り組み内容を説明する。
2.安全性向上対策の取り組みの観点
関西電力は、平成23年3月に発生した福島第一原子力 発電所事故からの教訓として、主に次の3点を反省事項 として認識している。 ・シビアアクシデントへの取り組みが不十分だったの ではないか ・規制の枠組みを超えて自主的に安全性を向上させ続 けるという意識が低かったのではないか ・世界の安全性向上活動に学ぶことが不足していたの ではないか このため、安全性向上対策については、次項の観点に 基づいて実施してきており、今後とも継続的に安全性向 上に取組むこととしている。 ・5層の深層防護への取り組みによる安全確保の強化 ・規制の枠組みにとどまらない安全性向上の推進 ・世界の安全性向上活動に学ぶことの強化 2.1 5層の深層防護への取り組み 深層防護による多段的安全対策は、これまで主に第 1 層から第 3 層の防護レベルについて、設計・運用面に取 り入れていた。 しかしながら、現在はIAEAなどの国際基準にならい、 第 4 層から第5 層の防護レベルも強化した5 層の深層防 護を図っている。 Fig.1 深層防護による対策の強化 連絡先: 上山逸平、〒919-1141 福井県美浜町13-8 関西電力 原子力事業本部 フ?ラント・保全技術グルーフ? E-mail: ippei.ueyama@b4.kepco.co.jp - 238 - 2.2規制の枠組みにとどまらない安全性向上の推進 関西電力では、事故直後から、福島第一原子力発電所 と同じ規模の地震・津波が襲ったとしても原子炉が損傷 しない万全の対策として、代替電源の確保や原子炉/使 用済燃料プールの冷却機能の確保等を実施するとともに、 シビアアクシデント対策として、水素爆発防止対策や瓦 礫撤去用の重機の配備等を実施してきた。 また、新規制基準施行以降は、地震・津波に限らずそ の他の自然現象も考慮のうえ深層防護の観点から、次項 のような対策を実施している。 ・ 竜巻を考慮した飛来物防護対策 ・ 森林火災に伴う火災を考慮した対策 ・ 炉心損傷防止対策 ・ 原子炉格納容器健全性維持対策 ・ 大規模な放射線防止対策 等 今後、原子力規制委員会が新規制基準に適合している ことを認めたプラントから、地元の同意を得て再稼動さ せる計画であるが、今後も規制の枠組みにとどまること なく自主的かつ継続的に安全性向上に取組むこととして いる。 Fig.3森林火災に伴う火災を考慮した対策の例(高浜) 2.3世界の安全性向上活動に学ぶことの強化 関西電力では、事業者としても海外機関と連携して世 界に学び、安全性向上活動を強化することが有効と判断 のうえ、世界原子力発電事業者協会(WANO)など海外 Fig.2竜巻を考慮した飛来物防護対策の例(高浜) Fig.4世界の安全性向上活動に学ぶことの強化 3.内部溢水対策 内部溢水対策は、5層の深層防護のうち第1~3層に おいて、異常の発生防止/拡大防止、炉心損傷防止/格 納容器健全性維持を図るための対策であり、いわゆる設 計基準内の防護対策である。 また、内部溢水は、基本的には発電所内部のタンクや 配管類の損傷等に伴い、津波や洪水に似た事象(安全上 重要な機器の没水、被水)が起きることを指すが、津波 や洪水では発生しない高エネルギー配管損傷により生じ る蒸気漏えいによる熱影響等も、内部溢水には含まれる。 以下に、没水/被水対策の概要を示した後、蒸気漏え いの影響評価と対策について説明する。 内部溢水対策は、安全上重要な機器の損傷による原子 力発電所の異常や事故を防止/緩和するための対策であ り、原子炉の安全停止/維持および使用済燃料ピットの 冷却/給水に必要な機器を内部溢水から防護するもので ある。 評価/対策の概略プロセスとしては、防護すべき機器 の特定を行った後に、機器の設置位置(溢水源であるタ ンク、配管等との位置関係含む)や床からの設置高さ等 を確認のうえ、没水、被水の可能性を評価している。な お、当該評価においては、スプリンクラー等の消火水か らの溢水も考慮している。 機関と連携したトップマネジメントによる安全性向上活 動の実施や、国内外の知見に対する感度向上に向けた取 組み等を実施している。 当該活動を通じて得られた知見等については、設備面 だけでなく運用面も含め、積極的に活用していく計画で ある。 3.1内部溢水による没水/被水対策 - 239 - 評価の結果、対策が必要とした機器については、 ・ 堰/水密シールの設置 ・ 被水防護カバーの設置 等 を実施することにより、内部溢水から防護している。 Fig.6被水防護カバーの設置例 3.2高エネルギー配管損傷による影響評価/対策 高エネルギー配管損傷に伴う蒸気漏えいによる影響評 価/対策のプロセスとしては、溢水源である高エネルギ ー配管と防護対象設備(安全上重要な機器)の位置関係 を特定のうえ、汎用熱流体解析コード(GOTHIC)を用 いた蒸気拡散解析により防護対象設備の設置位置におけ る環境温度等を算出し、耐蒸気性能との対比により健全 性を確認している。 また、現状設備で健全性が確認できない場合は、次項 の影響緩和策を実施し、健全性が確保できることを確認 している。 ・ 蒸気漏えい検知隔離システムの設置 ・ 蒸気漏えい流量を制限するカバーの設置 なお、防護対象設備の耐蒸気性能については、後述す る蒸気暴露試験により、蒸気環境下において機能が健全 Fig.5 水密シールとしての配管ブーツの設置例 溢水源の選定 想定破損(強度評価) 蒸気漏えい影響範囲の設定 Fig.8 蒸気拡散のイメージ であることを確認している。 蒸気拡散解析においては、解析の不確かさによる影響 を排除するために、様々な条件を保守的に設定するとと もに、国内外で実施されたGOTHICコードの検証結果(実 験データと解析データの関係)を再確認し、内部溢水の 評価に適用可能なことを確認している。 具体的には、解析の入力条件を「破損口からの蒸気漏 えいにおいて圧損は生じず、臨界流で漏えいする」、「漏 えい蒸気は壁等の構造物に熱を奪われることなく、空間 に拡散する」とし、実際よりも高い温度を算出するとと もに、区画内に温度分布が生じたとしても、蒸気漏えい 検知用温度センサは天井付近に設置するので、防護対象 設備よりも早期に温度上昇する(安全側に検知できる) ことを確認している。 なお、下図は漏えい蒸気が貫通部等を通じて拡散する イメージ図であるが、本解析では空調の流れを考慮し、 下図よりも細かい区画に分割して解析を行っている。 蒸気拡散解析区画の設定 蒸気拡散解析の実施 影響緩和策の実施 解析結果の確認 耐蒸気性能の確認 評価終了 - 240 - Fig.7 蒸気影響対策のプロセス 3.2.1 蒸気拡散解析 3.2.2 蒸気影響の緩和策 蒸気漏えいによる影響緩和策としては、耐環境性能が 確認された機器を適用する方法があり、格納容器や主蒸 気配管室内については、新規制基準以前から1次冷却材 喪失や主蒸気管破断により生じる環境に対する健全性が 確認された機器(LOCA仕様)を適用している。 一方、原子炉周辺建屋(E/B)内の、補助蒸気配管等か らの蒸気影響に対しては、配管隔離等により環境悪化を 緩和することが可能であることから、蒸気漏えいを検知 して自動隔離するシステムの導入や、漏えい流量そのも のを低減する防護カバーを設置している。 なお、漏えい検知用温度センサの設置場所は、前述の 蒸気拡散解析において、一般的な電気計装設備の最高使 用温度(60°C)を超える区画のうち、早期に漏えい検 知が可能となる蒸気の拡散経路の上流側に設置している。 Fig.11 蒸気拡散解析の結果(温度上昇が大きい例) Fig.10 蒸気漏えい流量を低減する防護カバーの例 Fig.9 蒸気漏えい検知隔離システム概念図 Fig.12 蒸気曝露試験プロファイル、および装置の概観 4.まとめ 当該手法については、学会発表や産業界標準の作成等 を通じて情報共有を行えば、炉型が異なっても幅広く活 用できるとともに、更なる改善にもつながると考える。 参考文献 [1] 原子力規制委員会「原子力発電所の内部溢水影響評 価ガイド」、原規技発第13061913号、平成25年6月 19 日制定 3.2.3 耐蒸気性能の確認 耐蒸気性能は、米国等の例にならい蒸気曝露試験にて 確認している。 蒸気曝露試験では、基本的に蒸気曝露中に設備を駆動 させ、かつ電気信号を取り出すことができるため、蒸気 環境下での健全性を確認することが可能である。 健全性を確認した蒸気環境条件は、下図の時間-温度プ ロファイルであり、影響緩和策を実施した環境における 蒸気拡散解析結果に約20°C程度のマージンを考慮して 設定している。 なお、今回の試験対象設備はLOCA仕様ではない設 備であったが、基本的に全約20型式に対して、健全性 を確認することができた。 今回実施した内部溢水対策としての蒸気影響評価/対 策手法については、新規制基準や産業界標準類にも明確 な規定がなかったものである。 このため、米国の取組みを参考に国内PWR電力各社 および三菱重工業の協力のもと、評価/対策手法を確立 し、原子力規制委員会による公開審査等も通じて改善を 図ったうえで確立したものである。 今後、原子力規制委員会の審査が完了すれば、積極的 に国内外への情報発信を行うとともに、関係者と幅広く 意見交換し、産業界標準の作成等を図っていきたい。 - 241 -“ “関西電力における原子力発電所の安全性向上対策について “ “田中 俊彦,Toshihiko TANAKA,笹川 直樹,Naoki SASAGAWA,小松 邦嘉,Kuniyoshi KOMATSU,辻 義直,Yoshinao TSUJI,上山 逸平,Ippei UEYAMA