異種金属溶接部の付与欠陥に対する超音波探傷性能の検討
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カテゴリ: 第11回
1.緒言
近年、原子力プラントの耐圧バウンダリで使用されている異種金属溶接部(DMW:Dissimilar metal weld)に、国内外で応力腐食割れ(SCC)き裂による損傷事例が報告されている[1][2]。DMW に相当する部位は、BWR では再循環水入口ノズル等が、また、PWR では原子炉容器管台(RV 管台)、蒸気発生器管台等がある。 一方、原子力発電所の供用期間中検査における超音波探傷試験(UT:Ultrasonic testing)において、DMW は、溶接金属組織の超音波異方性により、超音波散乱・減衰が大きく、また、金属組織からの材料ノイズエコーにより、き裂の検出性が低下する。特に、き裂先端部からの端部エコーの検出が困難な事例があった[3]。そのため、高精度なき裂深さ測定法の確立が要望されている。 このような背景から、わが国では、DMW のUT 検査の信頼性確保を目的として、「PD(Performance Demonstration)認証制度」の構築に向けた検討が開始され、UTによるき裂深さ測定精度およびDMW 試験体への付与き裂が課題として挙げられている。 UTによるき裂深さ測定精度については、DMW試験体に付与したSCC き裂に対して、フェーズドアレイUT による研究が進められている[4][5]。 一方、PD 試験に用いる試験体については、実機で発生するSCC き裂と同様なき裂を模擬し、かつ、き裂深さも板厚の60%程度以上の深いき裂を付与した試験体を準備する必要がある。 ニッケル基合金溶接部に対して、板厚の50%程度の深さのSCC き裂を付与する方法は、すでに報告している[4][5]。しかしながら、板厚の60%程度以上の深いSCC き裂の付与には、試験体製作技術およびコスト面の課題があり、PD 制度の効率的な運用を図るためには、SCC き裂の代替き裂(非SCC き裂) の適用を検討する必要がある。類似のケースとして、ウェルドオーバーレイ施工部に対するPD 試験用試験体の考え方[6]から、非SCC き裂を付与した試験体の適用により、対応した経験がある。 このSCC 代替き裂(非SCC き裂)の適用には、SCC き裂と非SCC き裂の超音波応答の同等性を確認することが必須となる。 本研究では、SCC き裂および非SCC き裂を付与した2 種類のDMW試験体に対してフェーズドアレイUT を適用し、SCC き裂と非SCC き裂の超音波応答の比較、評価を行い、両者の同等性について検討する。
2.超音波応答の評価パラメータ
DMW のUT によるPD 試験として、き裂深さサイジングのPD 試験について検討する。 UT によるき裂深さ測定では、一般に、き裂先端からの端部エコーを検出し、端部エコー法にてき裂深さを測定するため、端部エコーの検出性が極めて重要となる。 超音波応答に関する評価パラメータとしては、種々考えられるが、本研究では、き裂深さサイジングを当面のPD 試験の対象としていることから、端部エコーのSN 比(端部エコーと材料ノイズエコーの比)を評価パラメータとした。端部エコーの探傷模式図と探傷波形におけるSN 比の測定方法に関する模式図を、Fig.1 に示す。 さらに、今後き裂の検出も重要であり、き裂からの反射エコーのSN 比(き裂エコーと材料ノイズエコーの比)を評価パラメータとし、き裂の検出性についても検討した。探傷模式図とSN 比の測定方法の模式図をFig.2 に示す。 3.超音波応答特性 3.1 試験体および試験方法 用いた試験体は、DMW の代表例としてRV 管台溶接部を模擬した2 種類の試験体であり、SCC き裂および非SCC き裂が、溶接金属部(Ni 基合金)に各々付与されている。両試験体ともに、溶接線に対して直交方向に進展するき裂(軸方向き裂)および平行方向に進展するき裂(周方向き裂)の2 種類のき裂が付与されている。 試験に用いた装置は、フェーズドアレイUT 装置(DYNARAY 256/256:ZETEC 社製)である。用いたアレイ探触子は、2 個のマトリクスアレイ探触子を配置したピッチキャッチ探傷用探触子(略号: 2MPC)であり、概略仕様をTable 1 に示す。 DMW 試験体の探傷方法の模式図を、Fig.3 およびFig.4 に示す。両図に示すように、探傷面は、き裂開口面側、探傷方向はき裂を挟んで両側とし、探傷法は直接接触法(ギャップ法:ギャップ寸法0.2mm) で行った。また、UT データの収録はX-Y スキャナを用いた自動UT である。 (b)A-scan Noise Level Signal Level Tip echo Tip echo Crack Array probe Surface DMW specimen Ultrasonic beam (a) Inspection status Fig.1 Inspection status of DMW specimen by phased array UT and schematic illustration of measurement method of SN ratio in crack tip echo. Noise Level Signal Level Crack echo (b) A-scan Crack Array probe Surface DMW specimen Crack echo (a) Inspection status Fig.2 Inspection status of DMW specimen by phased array UT and schematic illustration of measurement method of SN ratio in crack echo. Probe Specification Target 2MPC Type : Dual Matrix Frequency : 2MHz Mode : Longitudinal Element size : 3.1 x 3.1mm No. of channels : 72ch (T/R) Deep Crack Table 1 Specification of phased array probe - 26 -3.2 試験結果および考察 SCC き裂を付与した2 種類のDMW 試験体(軸方向き裂および周方向き裂)に対して、フェーズドアレイUT を適用した。得られた探傷画像の一例をFig.5 およびFig.6 に示す。Fig.5 は、軸方向き裂に対してR 方向から探傷したときの画像である。図より、C-scan 画像から探傷面のき裂位置、概略長さを示す指示が確認され、B-scan 画像から、き裂の深さ方向に、き裂からの指示が認められた。また、B-scan 画像とC-scan 画像とを照合すると、これらの指示が同一のき裂からの指示であることがわかる。次にD-scan 画像からは、き裂形状(輪郭)を示す指示が認められ、B-scan 画像と照合してみると、概略の深さが推定できる。 Fig.6 は、周方向き裂に対してR 方向から探傷したときの画像である。図より、B-scan 画像には、き裂の指示とともに、溶融境界(溶接金属とステンレス鋼の境界)からの指示が明瞭に認められ、き裂が溶接金属部の中央部に位置していることが分かる。また、D-scan 画像には、き裂形状(半楕円に近いき裂の輪郭)が明瞭に認められている。さらにC-scan 画像には、溶融境界の指示とき裂の指示が認められ、概略き裂長さも確認することができる。 次に、非SCC き裂を付与した2 種類のDMW 試験体(軸方向き裂、周方向き裂)に対して、フェーズドアレイUT を適用した。探傷結果は、前記SCC き裂と同様な探傷画像(図示せず)が得られ、同様なき裂指示も確認された。 Fig.3 Inspection status of DMW specimen with circumferential crack by phased array UT Fig.4 Inspection status of DMW specimen with axial crack by phased array UT Y X B-scan C-scan D-scan Surface SCC crack Surface Shape of SCC crack SCC crack C-scan SCC crack B-scan D-scan Y X B-scan D-scan Crack C-scan Y X X Y B-scan C-scan D-scan Surface Interface SCC crack Surface Shape of SCC crack SCC crack Fig.5 Inspection images of DMW specimen with axial SCC crack by phased array UT Fig.6 Inspection images of DMW specimen with circumferential SCC crack by phased array UT L R X Y (0,0) R:Right side inspection L:Left side inspection Weld metal Array probe SUS cladding Buttering Crack L Weld metal Array probe SUS cladding ButteringR:Right side inspection L:Left side inspection R Crack Austenitic stainless steel X (0,0) Y - 27 -次に、前記のUT データから、SCC き裂と非SCC き裂の超音波応答特性について調べた。評価パラメータは、端部エコーのSN 比である(Fig.1)。 SCC き裂と非SCC き裂の各UTデータを用いて、端部エコーのSN 比を測定した結果をFig.7 に示す。図は、両き裂ともに、測定データの平均値で示してある。図より、SCC き裂と非SCC き裂の端部エコーは、ともにSN 比2~3 程度であり、同程度の超音波応答を有していると言える。 次に、き裂からの反射エコーのSN 比を評価パラメータ(Fig.2)として、超音波応答特性を調べた。 SCC き裂と非SCC き裂について、き裂エコーのSN 比を測定し、その結果をFig.8 に示す。図は、測定データの平均値で示してある。図より、非SCC き裂の方が、SCC き裂に比べてSN 比は2 倍程度大きいが、両き裂ともに、き裂エコーは、SN 比5 以上で明瞭に確認できたことから、き裂の検出性は極めて良好であることがわかった。 4.結言 異種金属溶接部(DMW)のPD 制度構築の一環として、SCC き裂代替き裂を付与したDMW試験体が、わが国のPD 用試験体として適用できるかの妥当性を確認するために、SCC き裂と非SCC き裂を付与したDMW 試験体に対して、フェーズドアレイUT を適用し、両き裂の超音波応答の同等性について検討した。その結果を以下に纏める。 (1) き裂先端部からの端部エコーのSN 比を、超音波応答の評価パラメータとし、SCC き裂と非SCC き裂の端部エコーのSN 比を測定した結果、ともにSN 比2~3 程度であり、同程度の超音波応答を有していると言える。 (2) SCC き裂および非SCC き裂に対して、き裂からの反射エコーのSN 比を測定した結果、両き裂ともに、SN 比5 以上で明瞭に検出でき、フェーズドアレイUT は、これらのき裂に対して十分な検出性を有していることがわかった。 参考文献 [1] 原子力安全・保安院:加圧水型軽水炉の一次冷却材圧力バウンダリにおけるNi 基合金使用部位に係る検査等について,NISA-163a05-2(2005) [2](独)原子力安全基盤機構:平成20 年度Ni 基合金応力腐食割れ進展評価技術実証に関する事業報告書,09 原高報-0013,(2009) [3] 関西電力(株)プレスリリース:大飯発電所3号機の定期検査状況について(原子炉容器A ループ出口管台溶接部の傷の原因と対策),(2008.9.26), http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2008/_icsFil es/afielffile/2008/09/26/1_0926_3j_01.pdf [4] 平澤泰治,福冨広幸:フェーズドアレイUT によるニッケル基合金溶接部の欠陥深さ測定法の開発,日本機械学会論文集,Vol.80, No.813, (2014), pp.1-27 [5]平澤泰治,福冨広幸,秀耕一郎:異種金属溶接部の溶接線平行欠陥に対するUT 深さ測定法の検討, 日本保全学会 第10 回学術講演会要旨集,(2013), pp.531-536 [6] 日本非破壊検査協会規格:超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証, NDIS 0603:2013,(2013) 0246810SCC crack non-SCC crack SN Ratio SN ratio of tip echo Fig.7 Results of ultrasonic response of crack tip echo relation between SCC and non-SCC crack in DMW specimen. 05101520SCC crack non-SCC crack SN Ratio SN ratio of crack echo Fig.8 Results of ultrasonic response of crack echo relation between SCC and non-SCC crack in DMW specimen. - 28 -
“ “異種金属溶接部の付与欠陥に対する超音波探傷性能の検討 “ “平澤 泰治,Taiji HIRASAWA,東海林 一,Hajime SHOHJI,秀 耕一郎,Koichiro HIDE
近年、原子力プラントの耐圧バウンダリで使用されている異種金属溶接部(DMW:Dissimilar metal weld)に、国内外で応力腐食割れ(SCC)き裂による損傷事例が報告されている[1][2]。DMW に相当する部位は、BWR では再循環水入口ノズル等が、また、PWR では原子炉容器管台(RV 管台)、蒸気発生器管台等がある。 一方、原子力発電所の供用期間中検査における超音波探傷試験(UT:Ultrasonic testing)において、DMW は、溶接金属組織の超音波異方性により、超音波散乱・減衰が大きく、また、金属組織からの材料ノイズエコーにより、き裂の検出性が低下する。特に、き裂先端部からの端部エコーの検出が困難な事例があった[3]。そのため、高精度なき裂深さ測定法の確立が要望されている。 このような背景から、わが国では、DMW のUT 検査の信頼性確保を目的として、「PD(Performance Demonstration)認証制度」の構築に向けた検討が開始され、UTによるき裂深さ測定精度およびDMW 試験体への付与き裂が課題として挙げられている。 UTによるき裂深さ測定精度については、DMW試験体に付与したSCC き裂に対して、フェーズドアレイUT による研究が進められている[4][5]。 一方、PD 試験に用いる試験体については、実機で発生するSCC き裂と同様なき裂を模擬し、かつ、き裂深さも板厚の60%程度以上の深いき裂を付与した試験体を準備する必要がある。 ニッケル基合金溶接部に対して、板厚の50%程度の深さのSCC き裂を付与する方法は、すでに報告している[4][5]。しかしながら、板厚の60%程度以上の深いSCC き裂の付与には、試験体製作技術およびコスト面の課題があり、PD 制度の効率的な運用を図るためには、SCC き裂の代替き裂(非SCC き裂) の適用を検討する必要がある。類似のケースとして、ウェルドオーバーレイ施工部に対するPD 試験用試験体の考え方[6]から、非SCC き裂を付与した試験体の適用により、対応した経験がある。 このSCC 代替き裂(非SCC き裂)の適用には、SCC き裂と非SCC き裂の超音波応答の同等性を確認することが必須となる。 本研究では、SCC き裂および非SCC き裂を付与した2 種類のDMW試験体に対してフェーズドアレイUT を適用し、SCC き裂と非SCC き裂の超音波応答の比較、評価を行い、両者の同等性について検討する。
2.超音波応答の評価パラメータ
DMW のUT によるPD 試験として、き裂深さサイジングのPD 試験について検討する。 UT によるき裂深さ測定では、一般に、き裂先端からの端部エコーを検出し、端部エコー法にてき裂深さを測定するため、端部エコーの検出性が極めて重要となる。 超音波応答に関する評価パラメータとしては、種々考えられるが、本研究では、き裂深さサイジングを当面のPD 試験の対象としていることから、端部エコーのSN 比(端部エコーと材料ノイズエコーの比)を評価パラメータとした。端部エコーの探傷模式図と探傷波形におけるSN 比の測定方法に関する模式図を、Fig.1 に示す。 さらに、今後き裂の検出も重要であり、き裂からの反射エコーのSN 比(き裂エコーと材料ノイズエコーの比)を評価パラメータとし、き裂の検出性についても検討した。探傷模式図とSN 比の測定方法の模式図をFig.2 に示す。 3.超音波応答特性 3.1 試験体および試験方法 用いた試験体は、DMW の代表例としてRV 管台溶接部を模擬した2 種類の試験体であり、SCC き裂および非SCC き裂が、溶接金属部(Ni 基合金)に各々付与されている。両試験体ともに、溶接線に対して直交方向に進展するき裂(軸方向き裂)および平行方向に進展するき裂(周方向き裂)の2 種類のき裂が付与されている。 試験に用いた装置は、フェーズドアレイUT 装置(DYNARAY 256/256:ZETEC 社製)である。用いたアレイ探触子は、2 個のマトリクスアレイ探触子を配置したピッチキャッチ探傷用探触子(略号: 2MPC)であり、概略仕様をTable 1 に示す。 DMW 試験体の探傷方法の模式図を、Fig.3 およびFig.4 に示す。両図に示すように、探傷面は、き裂開口面側、探傷方向はき裂を挟んで両側とし、探傷法は直接接触法(ギャップ法:ギャップ寸法0.2mm) で行った。また、UT データの収録はX-Y スキャナを用いた自動UT である。 (b)A-scan Noise Level Signal Level Tip echo Tip echo Crack Array probe Surface DMW specimen Ultrasonic beam (a) Inspection status Fig.1 Inspection status of DMW specimen by phased array UT and schematic illustration of measurement method of SN ratio in crack tip echo. Noise Level Signal Level Crack echo (b) A-scan Crack Array probe Surface DMW specimen Crack echo (a) Inspection status Fig.2 Inspection status of DMW specimen by phased array UT and schematic illustration of measurement method of SN ratio in crack echo. Probe Specification Target 2MPC Type : Dual Matrix Frequency : 2MHz Mode : Longitudinal Element size : 3.1 x 3.1mm No. of channels : 72ch (T/R) Deep Crack Table 1 Specification of phased array probe - 26 -3.2 試験結果および考察 SCC き裂を付与した2 種類のDMW 試験体(軸方向き裂および周方向き裂)に対して、フェーズドアレイUT を適用した。得られた探傷画像の一例をFig.5 およびFig.6 に示す。Fig.5 は、軸方向き裂に対してR 方向から探傷したときの画像である。図より、C-scan 画像から探傷面のき裂位置、概略長さを示す指示が確認され、B-scan 画像から、き裂の深さ方向に、き裂からの指示が認められた。また、B-scan 画像とC-scan 画像とを照合すると、これらの指示が同一のき裂からの指示であることがわかる。次にD-scan 画像からは、き裂形状(輪郭)を示す指示が認められ、B-scan 画像と照合してみると、概略の深さが推定できる。 Fig.6 は、周方向き裂に対してR 方向から探傷したときの画像である。図より、B-scan 画像には、き裂の指示とともに、溶融境界(溶接金属とステンレス鋼の境界)からの指示が明瞭に認められ、き裂が溶接金属部の中央部に位置していることが分かる。また、D-scan 画像には、き裂形状(半楕円に近いき裂の輪郭)が明瞭に認められている。さらにC-scan 画像には、溶融境界の指示とき裂の指示が認められ、概略き裂長さも確認することができる。 次に、非SCC き裂を付与した2 種類のDMW 試験体(軸方向き裂、周方向き裂)に対して、フェーズドアレイUT を適用した。探傷結果は、前記SCC き裂と同様な探傷画像(図示せず)が得られ、同様なき裂指示も確認された。 Fig.3 Inspection status of DMW specimen with circumferential crack by phased array UT Fig.4 Inspection status of DMW specimen with axial crack by phased array UT Y X B-scan C-scan D-scan Surface SCC crack Surface Shape of SCC crack SCC crack C-scan SCC crack B-scan D-scan Y X B-scan D-scan Crack C-scan Y X X Y B-scan C-scan D-scan Surface Interface SCC crack Surface Shape of SCC crack SCC crack Fig.5 Inspection images of DMW specimen with axial SCC crack by phased array UT Fig.6 Inspection images of DMW specimen with circumferential SCC crack by phased array UT L R X Y (0,0) R:Right side inspection L:Left side inspection Weld metal Array probe SUS cladding Buttering Crack L Weld metal Array probe SUS cladding ButteringR:Right side inspection L:Left side inspection R Crack Austenitic stainless steel X (0,0) Y - 27 -次に、前記のUT データから、SCC き裂と非SCC き裂の超音波応答特性について調べた。評価パラメータは、端部エコーのSN 比である(Fig.1)。 SCC き裂と非SCC き裂の各UTデータを用いて、端部エコーのSN 比を測定した結果をFig.7 に示す。図は、両き裂ともに、測定データの平均値で示してある。図より、SCC き裂と非SCC き裂の端部エコーは、ともにSN 比2~3 程度であり、同程度の超音波応答を有していると言える。 次に、き裂からの反射エコーのSN 比を評価パラメータ(Fig.2)として、超音波応答特性を調べた。 SCC き裂と非SCC き裂について、き裂エコーのSN 比を測定し、その結果をFig.8 に示す。図は、測定データの平均値で示してある。図より、非SCC き裂の方が、SCC き裂に比べてSN 比は2 倍程度大きいが、両き裂ともに、き裂エコーは、SN 比5 以上で明瞭に確認できたことから、き裂の検出性は極めて良好であることがわかった。 4.結言 異種金属溶接部(DMW)のPD 制度構築の一環として、SCC き裂代替き裂を付与したDMW試験体が、わが国のPD 用試験体として適用できるかの妥当性を確認するために、SCC き裂と非SCC き裂を付与したDMW 試験体に対して、フェーズドアレイUT を適用し、両き裂の超音波応答の同等性について検討した。その結果を以下に纏める。 (1) き裂先端部からの端部エコーのSN 比を、超音波応答の評価パラメータとし、SCC き裂と非SCC き裂の端部エコーのSN 比を測定した結果、ともにSN 比2~3 程度であり、同程度の超音波応答を有していると言える。 (2) SCC き裂および非SCC き裂に対して、き裂からの反射エコーのSN 比を測定した結果、両き裂ともに、SN 比5 以上で明瞭に検出でき、フェーズドアレイUT は、これらのき裂に対して十分な検出性を有していることがわかった。 参考文献 [1] 原子力安全・保安院:加圧水型軽水炉の一次冷却材圧力バウンダリにおけるNi 基合金使用部位に係る検査等について,NISA-163a05-2(2005) [2](独)原子力安全基盤機構:平成20 年度Ni 基合金応力腐食割れ進展評価技術実証に関する事業報告書,09 原高報-0013,(2009) [3] 関西電力(株)プレスリリース:大飯発電所3号機の定期検査状況について(原子炉容器A ループ出口管台溶接部の傷の原因と対策),(2008.9.26), http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2008/_icsFil es/afielffile/2008/09/26/1_0926_3j_01.pdf [4] 平澤泰治,福冨広幸:フェーズドアレイUT によるニッケル基合金溶接部の欠陥深さ測定法の開発,日本機械学会論文集,Vol.80, No.813, (2014), pp.1-27 [5]平澤泰治,福冨広幸,秀耕一郎:異種金属溶接部の溶接線平行欠陥に対するUT 深さ測定法の検討, 日本保全学会 第10 回学術講演会要旨集,(2013), pp.531-536 [6] 日本非破壊検査協会規格:超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証, NDIS 0603:2013,(2013) 0246810SCC crack non-SCC crack SN Ratio SN ratio of tip echo Fig.7 Results of ultrasonic response of crack tip echo relation between SCC and non-SCC crack in DMW specimen. 05101520SCC crack non-SCC crack SN Ratio SN ratio of crack echo Fig.8 Results of ultrasonic response of crack echo relation between SCC and non-SCC crack in DMW specimen. - 28 -
“ “異種金属溶接部の付与欠陥に対する超音波探傷性能の検討 “ “平澤 泰治,Taiji HIRASAWA,東海林 一,Hajime SHOHJI,秀 耕一郎,Koichiro HIDE