BWR 炉内構造物等点検評価ガイドライン 炉心シュラウドの改訂方針
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カテゴリ: 第11回
2.ガイドラインの概要
本ガイドラインは、点検対象(基本的な考え方及び点 検対象部位)、点検(点検方法及び点検周期)、評価で構 成されている。本項では、各構成について第 4 版での記 載内容の概要を報告する。炉内構造物等点検評価ガイド ライン[炉心シュラウド]は、平成 13 年 11 月に初版が 発行された後、平成 16 年 9 月に第 2 版が、平成 19 年 4 月に第3版が、平成20年6月に第4版が発行された。 初版では、炉心シュラウドの点検方法、点検周期、評 価の考えが示された。第 2 版では、点検周期の設定根拠 を、炉心シュラウドの形状(リングの有無)毎のき裂進 展評価結果を用いることが追加された。第 3 版では、炉 心シュラウド支持ロッドによる補修を行った場合の補修 後の点検範囲、点検周期及びその設定根拠が追加された。 第 4 版では、これまでの炉心シュラウドの点検状況を踏 まえて、未点検範囲の欠陥想定法の検討を加え、さらに 未点検範囲の取扱いに関する記載を見直した。現在、第5 版の発行に向け、「炉内構造物等点検評価ガイドライン検 討会」において議論が進められている。 2.1 点検対象 本ガイドラインの制定時からの考え方として、点検対 象の選定にあたっては、原子炉の安全確保を基本とする ことが明記されている。即ち、炉心シュラウドに要求さ れる安全上重要な機能である「炉心の支持機能」と「炉 心冷却機能」を確保することが評価条件とされている。 また、炉心シュラウドに想定される経年変化事象として、 応力腐食割れを想定することとしている。点検対象部位 は、炉心シュラウドの機能維持に有意な影響を及ぼさな 連絡先: 三橋 忠浩、〒235-8523 神奈川県横浜市磯子 いと評価される縦方向溶接部は点検対象外とし、構造強 区新杉田町 8 株式会社 東芝 磯子エンジニアリング センター 原子力システム設計部 原子炉設計担当 度上重要な周方向溶接部を点検対象としている。
2.2 点検 点検において適用する非破壊試験は、目視試験(VT)、 超音波探傷試験(UT)または渦流探傷試験(ET)とする ことが明記されている。目視試験においては、表面に開 口しているき裂の検出を目的としたMVT-1試験、機器の 変形、芯合わせ不良、傾き、隙間の異常等を検出するた めに実施するVT-3を実施することが定められている。実 機の点検では、炉心シュラウドの溶接部に対して MVT-1 試験を実施し、き裂が確認された場合には超音波探傷試 験(UT)を実施し、き裂の深さを測定する。 炉心シュラウドに対して実施する初回点検は、そのシ ュラウドの形状により決定される。初回点検後に実施す る再点検は、評価のために想定したき裂を用いたき裂進 展評価を実施し、残存断面積が許容残存断面積を満足す るよう点検時期を定めることとなっている。なお、前回 の点検において欠陥指示が検出された部位については、 再点検時に点検を実施することが定められている。 2.3 評価 2.3.1 判定基準 目視試験(VT)及び超音波探傷試験(UT)の結果、確 認されたき裂が炉心シュラウドの健全性を損うき裂に該 当するかどうかについて、以下の判定基準に基づき評価 を実施する。 (1)健全な範囲が点検必要範囲以上である場合は継続使 用できる。 (2)健全な範囲が点検必要範囲未満である場合は、 1点検範囲を拡大することにより、健全な範囲が点 検必要範囲以上となれば、継続使用できる。 2点検範囲を拡大しても健全な範囲が点検必要範 囲未満の場合は、健全な範囲が許容残存断面積以 上であれば、点検周期を見直すことにより、継続 使用できる。 3上記2項を満足しない場合は、2.3.2 項に示す詳細 評価を実施し、残存断面積が許容残存断面積以上 となれば、点検周期を見直すことにより、継続使 用できる。 (3)上記(1)(2)に適合しない場合は、補修等の措置を行う。 2.3.2 詳細評価 2.3.1 項の判定基準において、健全な範囲が許容残存断 面積以下である場合は、下記の詳細評価を実施し、継続 - 307 2 - 使用の評価を行うこととなる。 (1)残存断面積の詳細評価 検出されたき裂のサイジング結果等に基づいてき 裂をモデル化し、構造強度を詳細評価することによ って、残存断面積を求めることができる。 (2)許容残存断面積の詳細評価 点検結果及びき裂の詳細評価結果に基づいて、炉 心シュラウドをモデル化し、構造強度を詳細評価す ることによって、許容残存断面積を求めることがで きる。 2.3.1項から2.3.2項にしたがった炉心シュラウドの点検 フローを図1に示す。 図1 炉心シュラウド点検フロー 3.ガイドライン改訂の考え方 3.1 改訂の概要 現在、炉内構造物等点検評価ガイドライン検討会で議 論が進められている炉心シュラウド第 5 版では、第4 版 の全体構成や適用する基準等を見直すとともに、特に炉 心シュラウドの崩壊評価法の安全裕度の適正化の結果を 記載する方針である。本項では、本方針をガイドライン に反映することとなった経緯及びその概要を報告する。 3.2 許容残存断面積の算出方法 図 1 に示した炉心シュラウドの点検フローにおいて、 許容残存断面積の設定は図 2 に示すフローに基づき算出 することとなる。 図2 許容残存断面積の設定手順 図2の通り、炉心シュラウドの座屈・崩壊荷重の算出 は、日本機械学会 設計・建設規格(CSS-3160)に基づ き実施し、解析により求めた座屈・崩壊荷重に対して、 安全係数 1.5 を考慮することが規定されている。この一 連の評価では、図3に示すように、二倍勾配法の裕度、 材料モデルの裕度、安全係数 1.5 の裕度という多重の安 全裕度が見込まれており、過度に保守的な評価法となっ ている可能性が考えらえる。そのため、現行評価法の安 全裕度を定量的に評価した上で安全裕度を適正化するこ とが望まれている。 図3 設計における安全裕度 - 308 3 - なお、設計・建設規格においては、炉内構造物の炉心 シュラウドの設計時における、1次応力評価の代替評価 法である CSS-3160 極限解析による評価では、崩壊荷重 を算出し、その 0.9 倍を許容応力としている(安全係数 1.11=1/0.9)。設計・建設規格と本ガイドラインの安全 係数を表1に示す。 表1 炉心シュラウドの評価条件の比較 設計・建設規格 炉内構造物点検評価ガイドライン (及び維持規格) 降伏点 2.3Sm 2.3Sm 安全係数 1.11(=1/0.9) 1.5 3.3 安全裕度の適正化に向け実施した試験 炉心シュラウドを模擬した試験体の破壊試験を実施し 破壊に至るまでの挙動を確認した。炉心シュラウドを摸 擬した試験体に水平方向荷重を負荷する静的荷重試験を 実施した。試験条件は以下の通りである。 ・炉心シュラウドを模擬した1/5 スケールの試験体 ・材料はSUS316L ・模擬き裂をEDM スリットで全周に付与 ・き裂深さは75%、67%、50%(残存面積25%、33%、 50%) 油圧アクチュエータ 油圧アクチュエータ ロードセル ロードセル 試験装置支柱 試験装置支柱 き裂 き裂 架台 架台 試験体 試験体 アダプタ アダプタ 図4 試験装置の概要 上述した試験により得られた荷重変位関係のうち、一 例としてき裂深さ 50%の場合の試験結果を図5に示す。 本試験により、試験体の崩壊モードとしては、き裂近傍 の延性に基づく塑性崩壊モードであることが確認された。 また、その他のき裂深さにおいても、同様であることが 確認された。 き裂部の急速な進展による破壊ではなく、残存断面積が 3000 2500き裂深さ:50% (試験No.5) 大きく塑性変形した後に崩壊に至ることを確認した。こ れは、き裂がない場合の挙動と同等である。したがって、 2000設計・建設規格と同等に崩壊荷重の0.9 倍(安全率1/0.9 1500==1.11)を許容値とした評価が可能であること判断した。 10004.おわりに 500炉内構造物等点検評価ガイドライン[炉心シュラウド] 0において、現状、崩壊荷重を安全係数 1.5 で除した値を 0 5 10 15 20 25 30 35 変 位 (mm) 許容値としている点について、炉心シュラウドの破壊モ 図5 き裂深さ50%の場合の試験結果 ードを明らかにすることにより安全裕度を適正化する方 針を立案した。炉内構造物等点検評価ガイドライン検討 さらに、同一なき裂を付与したシュラウド模擬試験体4 会での改訂審議を経て、今年度は本評価結果を反映した 体用いて破壊試験を実施し、崩壊荷重のばらつきの程度 ガイドラインの改訂を予定している。 を確認した。試験条件は以下の通りである。 ・炉心シュラウドを模擬した1/5スケールの試験体 謝辞 ・材料はSUS316L 本報告は、原子力安全推進協会の「炉内構造物等点検 ・模擬き裂をEDM スリットで全周に付与 評価ガイドライン検討会」で検討、審議した内容を紹介 ・き裂深さは67%(残存面積33%) したものです。ガイドラインの策定にあたり、ご協力い ただきましたガイドライン検討会委員、BWR 電力各社、 試験結果及び再現解析の結果を図6に示す。本試験に メーカ各社、原子力安全推進協会、関係各位に深く感謝 より、崩壊荷重及び破壊荷重のばらつきが小さいことを します。 確認した。また、実際の応力ひずみ関係を用いたFEM 解 析結果が破壊試験で得られた荷重変位挙動と一致した。 参考文献 したがって、残存断面積に対する崩壊荷重を評価するこ [1] 炉内構造物等点検評価ガイドライン[炉心シュラウ とにより、き裂を有する炉心シュラウドの健全性の評価 ド]第4 版、一般社団法人日本原子力技術協会 が可能であることを確認した。 [2] 発電用原子力設備規格 維持規格、日本機械学会 2000試験体 No.1 [3] 発電用原子力設備規格 設計建設規格、日本機械学会 試験体 No.2 試験体 No.3 試験体 No.4 [4] 三橋他「き裂を有するシュラウドの合理的な健全性評 1500再現解析 再現解析 2倍勾配 価法の構築(1.模擬試験体の破壊試験)」、日本機械学会 M&M2013 材料力学カンファレンス 1000 [5] 江波戸他「き裂を有するシュラウドの合理的な健全性 500評価法の構築(2.実験計画法とモンテカルロ法を組合せ た統計的構造信頼性評価法の開発)」、日本機械学会 00 2 4 6 8 10 12 14 16 M&M2013 材料力学カンファレンス 変位 δ ( mm ) [6]藤野他「き裂を有するシュラウドの合理的な健全性評 図6 試験及び再現解析により得られた荷重変位関係 価法の構築(3.現行評価法が有する裕度の定量化に基づ く健全性評価基準の検討)」、日本機械学会M&M2013 3.4 安全裕度の適正化案 材料力学カンファレンス き裂を有する炉心シュラウドは、安全係数 1.5 を採用 [7] Dozaki, K., et al., “Evaluation Method of Structural してきたが、これは破壊に至るまでのき裂部の挙動の詳 Integrity for Cylindrical Internal Structure with 細が不明であったため、安全側に設定されたものである。 Cracks”, 3rd Annual Conference, Japan Society of しかしながら、3.3 項に示した通り、炉心シュラウドは、 Maintenology,(2006), pp380-pp384 - 309 4 -“ “BWR 炉内構造物等点検評価ガイドライン 炉心シュラウドの改訂方針 “ “三橋 忠浩,Tadahiro MITSUHASHI,江波戸 翔一,Shoichi EBATO,藤野 拓史,Takushi FUJINO,吉田 伸司,Shinji YOSHIDA
本ガイドラインは、点検対象(基本的な考え方及び点 検対象部位)、点検(点検方法及び点検周期)、評価で構 成されている。本項では、各構成について第 4 版での記 載内容の概要を報告する。炉内構造物等点検評価ガイド ライン[炉心シュラウド]は、平成 13 年 11 月に初版が 発行された後、平成 16 年 9 月に第 2 版が、平成 19 年 4 月に第3版が、平成20年6月に第4版が発行された。 初版では、炉心シュラウドの点検方法、点検周期、評 価の考えが示された。第 2 版では、点検周期の設定根拠 を、炉心シュラウドの形状(リングの有無)毎のき裂進 展評価結果を用いることが追加された。第 3 版では、炉 心シュラウド支持ロッドによる補修を行った場合の補修 後の点検範囲、点検周期及びその設定根拠が追加された。 第 4 版では、これまでの炉心シュラウドの点検状況を踏 まえて、未点検範囲の欠陥想定法の検討を加え、さらに 未点検範囲の取扱いに関する記載を見直した。現在、第5 版の発行に向け、「炉内構造物等点検評価ガイドライン検 討会」において議論が進められている。 2.1 点検対象 本ガイドラインの制定時からの考え方として、点検対 象の選定にあたっては、原子炉の安全確保を基本とする ことが明記されている。即ち、炉心シュラウドに要求さ れる安全上重要な機能である「炉心の支持機能」と「炉 心冷却機能」を確保することが評価条件とされている。 また、炉心シュラウドに想定される経年変化事象として、 応力腐食割れを想定することとしている。点検対象部位 は、炉心シュラウドの機能維持に有意な影響を及ぼさな 連絡先: 三橋 忠浩、〒235-8523 神奈川県横浜市磯子 いと評価される縦方向溶接部は点検対象外とし、構造強 区新杉田町 8 株式会社 東芝 磯子エンジニアリング センター 原子力システム設計部 原子炉設計担当 度上重要な周方向溶接部を点検対象としている。
2.2 点検 点検において適用する非破壊試験は、目視試験(VT)、 超音波探傷試験(UT)または渦流探傷試験(ET)とする ことが明記されている。目視試験においては、表面に開 口しているき裂の検出を目的としたMVT-1試験、機器の 変形、芯合わせ不良、傾き、隙間の異常等を検出するた めに実施するVT-3を実施することが定められている。実 機の点検では、炉心シュラウドの溶接部に対して MVT-1 試験を実施し、き裂が確認された場合には超音波探傷試 験(UT)を実施し、き裂の深さを測定する。 炉心シュラウドに対して実施する初回点検は、そのシ ュラウドの形状により決定される。初回点検後に実施す る再点検は、評価のために想定したき裂を用いたき裂進 展評価を実施し、残存断面積が許容残存断面積を満足す るよう点検時期を定めることとなっている。なお、前回 の点検において欠陥指示が検出された部位については、 再点検時に点検を実施することが定められている。 2.3 評価 2.3.1 判定基準 目視試験(VT)及び超音波探傷試験(UT)の結果、確 認されたき裂が炉心シュラウドの健全性を損うき裂に該 当するかどうかについて、以下の判定基準に基づき評価 を実施する。 (1)健全な範囲が点検必要範囲以上である場合は継続使 用できる。 (2)健全な範囲が点検必要範囲未満である場合は、 1点検範囲を拡大することにより、健全な範囲が点 検必要範囲以上となれば、継続使用できる。 2点検範囲を拡大しても健全な範囲が点検必要範 囲未満の場合は、健全な範囲が許容残存断面積以 上であれば、点検周期を見直すことにより、継続 使用できる。 3上記2項を満足しない場合は、2.3.2 項に示す詳細 評価を実施し、残存断面積が許容残存断面積以上 となれば、点検周期を見直すことにより、継続使 用できる。 (3)上記(1)(2)に適合しない場合は、補修等の措置を行う。 2.3.2 詳細評価 2.3.1 項の判定基準において、健全な範囲が許容残存断 面積以下である場合は、下記の詳細評価を実施し、継続 - 307 2 - 使用の評価を行うこととなる。 (1)残存断面積の詳細評価 検出されたき裂のサイジング結果等に基づいてき 裂をモデル化し、構造強度を詳細評価することによ って、残存断面積を求めることができる。 (2)許容残存断面積の詳細評価 点検結果及びき裂の詳細評価結果に基づいて、炉 心シュラウドをモデル化し、構造強度を詳細評価す ることによって、許容残存断面積を求めることがで きる。 2.3.1項から2.3.2項にしたがった炉心シュラウドの点検 フローを図1に示す。 図1 炉心シュラウド点検フロー 3.ガイドライン改訂の考え方 3.1 改訂の概要 現在、炉内構造物等点検評価ガイドライン検討会で議 論が進められている炉心シュラウド第 5 版では、第4 版 の全体構成や適用する基準等を見直すとともに、特に炉 心シュラウドの崩壊評価法の安全裕度の適正化の結果を 記載する方針である。本項では、本方針をガイドライン に反映することとなった経緯及びその概要を報告する。 3.2 許容残存断面積の算出方法 図 1 に示した炉心シュラウドの点検フローにおいて、 許容残存断面積の設定は図 2 に示すフローに基づき算出 することとなる。 図2 許容残存断面積の設定手順 図2の通り、炉心シュラウドの座屈・崩壊荷重の算出 は、日本機械学会 設計・建設規格(CSS-3160)に基づ き実施し、解析により求めた座屈・崩壊荷重に対して、 安全係数 1.5 を考慮することが規定されている。この一 連の評価では、図3に示すように、二倍勾配法の裕度、 材料モデルの裕度、安全係数 1.5 の裕度という多重の安 全裕度が見込まれており、過度に保守的な評価法となっ ている可能性が考えらえる。そのため、現行評価法の安 全裕度を定量的に評価した上で安全裕度を適正化するこ とが望まれている。 図3 設計における安全裕度 - 308 3 - なお、設計・建設規格においては、炉内構造物の炉心 シュラウドの設計時における、1次応力評価の代替評価 法である CSS-3160 極限解析による評価では、崩壊荷重 を算出し、その 0.9 倍を許容応力としている(安全係数 1.11=1/0.9)。設計・建設規格と本ガイドラインの安全 係数を表1に示す。 表1 炉心シュラウドの評価条件の比較 設計・建設規格 炉内構造物点検評価ガイドライン (及び維持規格) 降伏点 2.3Sm 2.3Sm 安全係数 1.11(=1/0.9) 1.5 3.3 安全裕度の適正化に向け実施した試験 炉心シュラウドを模擬した試験体の破壊試験を実施し 破壊に至るまでの挙動を確認した。炉心シュラウドを摸 擬した試験体に水平方向荷重を負荷する静的荷重試験を 実施した。試験条件は以下の通りである。 ・炉心シュラウドを模擬した1/5 スケールの試験体 ・材料はSUS316L ・模擬き裂をEDM スリットで全周に付与 ・き裂深さは75%、67%、50%(残存面積25%、33%、 50%) 油圧アクチュエータ 油圧アクチュエータ ロードセル ロードセル 試験装置支柱 試験装置支柱 き裂 き裂 架台 架台 試験体 試験体 アダプタ アダプタ 図4 試験装置の概要 上述した試験により得られた荷重変位関係のうち、一 例としてき裂深さ 50%の場合の試験結果を図5に示す。 本試験により、試験体の崩壊モードとしては、き裂近傍 の延性に基づく塑性崩壊モードであることが確認された。 また、その他のき裂深さにおいても、同様であることが 確認された。 き裂部の急速な進展による破壊ではなく、残存断面積が 3000 2500き裂深さ:50% (試験No.5) 大きく塑性変形した後に崩壊に至ることを確認した。こ れは、き裂がない場合の挙動と同等である。したがって、 2000設計・建設規格と同等に崩壊荷重の0.9 倍(安全率1/0.9 1500==1.11)を許容値とした評価が可能であること判断した。 10004.おわりに 500炉内構造物等点検評価ガイドライン[炉心シュラウド] 0において、現状、崩壊荷重を安全係数 1.5 で除した値を 0 5 10 15 20 25 30 35 変 位 (mm) 許容値としている点について、炉心シュラウドの破壊モ 図5 き裂深さ50%の場合の試験結果 ードを明らかにすることにより安全裕度を適正化する方 針を立案した。炉内構造物等点検評価ガイドライン検討 さらに、同一なき裂を付与したシュラウド模擬試験体4 会での改訂審議を経て、今年度は本評価結果を反映した 体用いて破壊試験を実施し、崩壊荷重のばらつきの程度 ガイドラインの改訂を予定している。 を確認した。試験条件は以下の通りである。 ・炉心シュラウドを模擬した1/5スケールの試験体 謝辞 ・材料はSUS316L 本報告は、原子力安全推進協会の「炉内構造物等点検 ・模擬き裂をEDM スリットで全周に付与 評価ガイドライン検討会」で検討、審議した内容を紹介 ・き裂深さは67%(残存面積33%) したものです。ガイドラインの策定にあたり、ご協力い ただきましたガイドライン検討会委員、BWR 電力各社、 試験結果及び再現解析の結果を図6に示す。本試験に メーカ各社、原子力安全推進協会、関係各位に深く感謝 より、崩壊荷重及び破壊荷重のばらつきが小さいことを します。 確認した。また、実際の応力ひずみ関係を用いたFEM 解 析結果が破壊試験で得られた荷重変位挙動と一致した。 参考文献 したがって、残存断面積に対する崩壊荷重を評価するこ [1] 炉内構造物等点検評価ガイドライン[炉心シュラウ とにより、き裂を有する炉心シュラウドの健全性の評価 ド]第4 版、一般社団法人日本原子力技術協会 が可能であることを確認した。 [2] 発電用原子力設備規格 維持規格、日本機械学会 2000試験体 No.1 [3] 発電用原子力設備規格 設計建設規格、日本機械学会 試験体 No.2 試験体 No.3 試験体 No.4 [4] 三橋他「き裂を有するシュラウドの合理的な健全性評 1500再現解析 再現解析 2倍勾配 価法の構築(1.模擬試験体の破壊試験)」、日本機械学会 M&M2013 材料力学カンファレンス 1000 [5] 江波戸他「き裂を有するシュラウドの合理的な健全性 500評価法の構築(2.実験計画法とモンテカルロ法を組合せ た統計的構造信頼性評価法の開発)」、日本機械学会 00 2 4 6 8 10 12 14 16 M&M2013 材料力学カンファレンス 変位 δ ( mm ) [6]藤野他「き裂を有するシュラウドの合理的な健全性評 図6 試験及び再現解析により得られた荷重変位関係 価法の構築(3.現行評価法が有する裕度の定量化に基づ く健全性評価基準の検討)」、日本機械学会M&M2013 3.4 安全裕度の適正化案 材料力学カンファレンス き裂を有する炉心シュラウドは、安全係数 1.5 を採用 [7] Dozaki, K., et al., “Evaluation Method of Structural してきたが、これは破壊に至るまでのき裂部の挙動の詳 Integrity for Cylindrical Internal Structure with 細が不明であったため、安全側に設定されたものである。 Cracks”, 3rd Annual Conference, Japan Society of しかしながら、3.3 項に示した通り、炉心シュラウドは、 Maintenology,(2006), pp380-pp384 - 309 4 -“ “BWR 炉内構造物等点検評価ガイドライン 炉心シュラウドの改訂方針 “ “三橋 忠浩,Tadahiro MITSUHASHI,江波戸 翔一,Shoichi EBATO,藤野 拓史,Takushi FUJINO,吉田 伸司,Shinji YOSHIDA