東通原子力発電所1号機 中央制御室換気空調系ダクトの腐食について

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カテゴリ: 第11回
1.緒言
東通原子力発電所1号機は,2005年12月に 運転を開始した比較的新しいプラントである。これ まで空調ダクト・ダンパについて計画的に保全を行 っていなかったが,他プラントで空調ダクトの腐食 等による不が発生したことを踏まえ,2013 年11月から,今後計画的な点検を行うための基礎 データ採取を目的とした代表箇所の点検を行った ところ,中央制御室換気空調系ダクトの一部に腐食 による孔が確認された。本稿では,当該ダクトの腐食孔発生に係る原因調 査結果等について紹介する。
2.腐食孔の発生状況
空調ダクトの今後の点検計画策定のための基礎 データ採取を目的とした点検を実施中のところ,2 014年1月,中央制御室換気空調系の外気取入ダ ンパ下流側ダクトの底板部に直径約30mmの腐 食孔が確認された。(Fig.1,2) 当該ダクトは保温材に覆われているため,通常の パトロールにおける外観確認では腐食状況を確認 できなかった。なお,腐食孔発見まで運転状態に異 常は確認されていなかった。 中央制御室換気空調系とは,発電所の運転操作を 行う部屋である中央制御室の換気を行う目的で設 置されている。通常時は一部外気を取入れながら室 内からの空気を再循環し送風する。また,事故時 には外気取入および排気ラインを隔離し,室内空 気の全量を再循環する。このとき,一部の空気を 再循環フィルタ装置にて処理し,給気ラインに戻 す。 Fig.1 Duct and Corrosion pitting
Fig.2 System schematic 東通原子力発電所 機械保修課 E-mail: yamada.kohei.ud@tohoku-epco.co.jp
Diameter:approx. 30mm 3.腐食孔の発生原因の調査 比較的新しいプラントで,こうした急激な腐食の 進展が見られた原因を特定し,今後の空調ダクト・ ダンパの保守管理に反映することを目的として,詳 細調査を行った。 3.1ダクト外面および内面の外観確認 腐食孔があったダクト外面は,底部が全体的に腐 食していた。(Fig.3) また内面についても,底部は腐食しており上側 (下流側)に向かうにつれて腐食部分は減少してい た。また,接続フランジ部やハゼ折り部に腐食があ った。 flow Fig.3 Appearance of the duct 3.2ダクト材サンプル片分析調査 当該ダクトから切り出したサンプル片を成分分 析したところ,ダクト内面部全般に NaCl(塩)の付 着が多く,ダクト外面部の一部にも NaCl が付着し ていた。また,ガルバニウム鋼板表面のメッキ成分 である Zn(亜鉛),Al(アルミニウム)の成分がダ クト内面部からはほぼ確認出来なかった。(Fig. 4,5) また、断面調査を行ったところ、成分分析結果同 様にメッキ成分が確認出来ず、ダクト内側から腐食 している状況が確認出来た。(Fig.6) There is NaCl, but there is no Al and Zn. Na Cl - 328 - Fig.4 Ultimate analysis (Outer surface of the side plate) Zn Al Na Cl Na Cl Fig.5 Ultimate analysis (Inner surface of the side plate) There is Al NaCl, and Zn. Fig.6 Cross-sectional study results (Side plate portions) 3.3環境確認 東通原子力発電所において,東通特有の環境に最 適なダクト材を選定するための基礎作りとして,東 通の環境を把握するために平成24年4月から1 年間かけてデータ採取を行った。 これらの測定データから,東通サイトは以下の環 境特性があることがわかった。 1代表的な塩害地とされる,沖縄宮古島(屋外) の自然環境と比較したところ,海塩粒子飛来量 が高い。(Fig.7) 2やませや風雪の影響により,年間を通して高湿 度である。(Fig.8) 3ACMセンサによる腐食電流測定を実施した ところ,外気取入口付近のダクト底面が,年間 の約9割の期間にわたって湿った状態になっ ている。(Fig.9,10) また,海塩粒子と湿度の関係については以下のと おりである。 ダクト表面の物質の付着状況により一般的に限 界湿度が存在する。清浄な表面における限界湿度は 100%であるが,塩が表面に付着している場合の 限界湿度は75%と言われている。そのため,湿度 が高くない状況でも限界湿度を超えた場合は表面 に付着した塩が吸水し,水滴が発生する可能性があ る。 Inside Steel plate Outside - 329 - Fig.7 Amount of sea salt intake Fig.8 Temperature and humidity Fig.9 ACM sensor Fig.10 Measurement results of the ACM sensor 4.推定原因 こうした調査結果から,当該ダクトの腐食が急激 に進展し,腐食孔が発生した原因は以下のとおり推 定した。 ・やませや風雪といった地域特有の環境条件によ り,年間を通じてダクト内への水分持込みが多 い。 ・海塩粒子がダクト内に大量に持ち込まれること で結露が促進され,通常は結露しない温湿度条 件下においても結露するような状態となった。 ・こうした状況のため,ダクト内面の,特に底部 が一年中湿っているような状態で,腐食進行に 必要な湿分と塩分の供給が定常的になされた ため,ダクト内面底部から腐食が急激に進展し, 腐食孔が発生した。 5.今後の対策 今回の原因調査結果から明らかになった東通サ イト特有の環境要因を踏まえ,これに見合った適切 な点検頻度の設定を行う。 また,中長期的な対策としてダクト材質の変更に ついても合わせて検討していく。 6.結言 東通原子力発電所における空調ダクト腐食孔に 係る原因調査および今後の対策について紹介した。 - 330 -“ “東通原子力発電所1号機 中央制御室換気空調系ダクトの腐食について “ “山田 康平,Kohei YAMADA,小林 隆,Takashi KOBAYASHI,南 明子,Akiko MINAMI,福場 一司,Kazushi FUKUBA
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