水管ボイラの水浸式超音波探傷検査(UT)による保守
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カテゴリ: 第11回
1.諸言
核燃料サイクル工学研究所には、所内各施設がプロセス用及び空調用として使用する蒸気を製造している水管ボイラが4 基設置されている。 水管ボイラは、設置後、約20 年経過しており、燃焼室内の清掃、熱交換器及び制御機器の整備等の定期保守に加え、ドラム及び水管の肉厚測定など経年劣化に伴う損傷等を考慮した保守管理がますます重要となってきている。その中でも、ボイラの水管については、複雑かつ狭隘な構造であるため、管外面からの限られた領域しか保守が実施できない状況である。また、平成23 年12 月には、ボイラ水の漏えいが発生し、水管を調査したところ、腐食による貫通孔が発見された。 そこで、各水管の減肉状況を確認するため、非破壊検査を実施した。本報告では、水管ボイラにおける非破壊検査による保守内容について報告する。 2.ボイラ概要 ボイラの仕様は、実際蒸発量25t/h、伝熱面積353 .、最高使用圧力1.96MPa、常用圧力1.47MPa であり、燃料はA重油(JIS1 種1 号)、薬品は清缶剤+脱酸素剤(水酸化カリウム・食品素材系有機酸・アクリル酸系ポリマー) 及び防食剤(中和性アミン)を使用している[1]。 また、ボイラは自然対流式の水管を採用しており、構造を図1、外観を図2 に示す。ボイラ本体は、蒸気ドラム、水ドラム及び両ドラム間を結ぶ水管からなる。 水管(1,528 本)は大別して対流蒸発管と燃焼室周壁管 (右側壁蒸発管・隔壁蒸発管・左側壁蒸発管・後壁蒸発管)及び外側に設けたD字形の水管壁で構成されている。 図1 水管ボイラ構造及び検査対象範囲
図2 水管ボイラ外観 3.ボイラ保守管理 ボイラ及びその付帯設備は、労働安全衛生法(ボイラー及び圧力容器安全規則)及び原子炉等規制法等に基づき運転時及び定期点検において設備の健全性を確認している。日常点検では、1 日に1 回以上、蒸気圧力、蒸気流量、ボイラ水位等の記録、各制御機器の動作状況の確認、配管等からの漏えいの有無などを確認している。年次点検は、メーカ等によるボイラ及び付帯設備類の分解整備、その他、消防法に基づく危険物施設の巡視点検を実施している。また、労働安全衛生法に基づく定期自主検査の実施及び性能検査を受検しており、その他、原子炉等規制法に基づく施設定期自主検査等が義務付けられている。 さらに、ボイラを安全かつ効率的に運転するために最も重要視されている水質管理については、ボイラ給水中の不純物等に対応した化学物質(薬品)を注入し、ボイラ給水中の酸素の除去を行っており、またボイラ水の排出等により不純物の希釈を行い、ドラム及び水管等の腐食抑制を図っている。 このように日頃から保守点検を実施し、ボイラ設備における異常やトラブルの未然防止及び早期発見に努めているところである。しかしながら、対流蒸発管等の水管については、複雑かつ狭隘な構造であるため、管外面からの限られた領域しか保守ができていない状況であった。 平成23 年12 月にはボイラ水の漏えいが発生し、水管を調査したところ、対流蒸発管の1 本に腐食による貫通孔が発見され、部分抜管により交換した。貫通孔が発見された対流蒸発管を図3 に示す。その際、隣接する対流蒸発管2 本に貫通までは至らないものの、同様なピットがあることを確認し、同時に交換を実施した。また、平成25 年6 月にも同ボイラにおいて漏えいが発生し、右側壁蒸発管の1 本に腐食による貫通孔が発見され、施栓処置を実施した。貫通孔及びピット状損傷の原因は、ボイラの燃焼過程中においてA 重油に由来する硫黄分及びボイラ材料に由来する酸化鉄等を含む燃焼灰が沈降し、水ドラム上部に堆積した燃焼灰に水分が含まれることで発生する腐食性の水溶液による硫酸腐食(局部腐食)であると推定した[2]。以上のことから、硫酸腐食(局部腐食) による減肉の有無について確認するため、水管の非破壊検査を実施することとした。 図3 貫通孔が発見された対流蒸発管 4.非破壊検査 4.1 非破壊検査の概要 ボイラ水管の保守は、定期的に管外表面から目視検査や超音波による肉厚測定を実施していたが、検査対象箇所が広範囲かつ狭隘なために定点測定にならざるを得なかった。そこで、水管の全面検査が可能で短期間で実施できること、孔食を検知できる高精度な検査であることを考慮し、水浸式超音波探傷検査(UT)を行うこととした。 4.2 水浸式超音波探傷検査(UT) 4.2.1 測定装置の仕様及び構成 測定装置は、測定プローブ、距離検出器及び計測器から構成されている。仕様を表1、構成図を図4*1に示す。 - 34 -表1 測定装置の仕様 用途 伝熱管及び配管の肉厚測定 適用管サイズ 外径φ38.1~76.1mm 測定可能な ベント管サイズ 外径φ63.5mm以上:R200 以上 外径φ57.1mm以下:R150 以上 検査速度 4500~8000mm/min 軸方向測定ピッチ 0.5mmピッチ 測定精度 直管部:±0.1mm 曲げ部:±0.2mm 出力データ Cスキャン(全面展開図) ユーティリティ 水 図4 測定装置構成図 4.2.2 測定原理及び方法 測定プローブには、超音波センサが設置されており、管周方向に12ch または16ch 配列している。測定方法は、測定プローブを水張りした水管に蒸気ドラム側から挿入し、送り込みながら各々のセンサにより超音波を送受信して管内面エコーと管外面エコーの時間差で肉厚を測定する。また、計測器(モニター)に測定管の周方向及び長手方向の残肉厚状況を色別したC スキャン(残肉厚展開図)が表示され、減肉位置の特定及び残肉厚をリアルタイムで確認することができる。 4.3 検査対象 検査対象ボイラは、運転頻度の多い3 台(1 号・2 号・3 号)とした。次に、検査対象部位を選定するため、各ボイラの燃焼灰等が堆積している箇所を工業用内視鏡(ファイバースコープ)により調査した。その結果、堆積物は、燃焼室側の対流蒸発管2 列の下部及び煙道側の対流蒸発管1 列の下部に広く分布しており、深さは推定約50mm~60mm であった。また、対流蒸発管表面全体に硫黄分を含有した燃焼灰が付着していることがわかった。堆積物の分布状況を図5 に示す。 よって、検査対象部位は堆積物の多い燃焼室側の隔壁蒸発管及び対流蒸発管、煙道側の右側壁蒸発管及び対流蒸発管とした。検査対象範囲を図1 の太枠内、検査対象水管の仕様を表2 に示す。 また、測定範囲は、燃焼灰が堆積する水ドラム上部を主に、水ドラム側管端から600mm程度(水管全長の1/4) とした。また、検査対象水管のうち、10 本について抜き取りによる全長検査を実施することにした。 図5 堆積物の分布状況 表2 検査対象水管の仕様 管名称仕様 材質 設置数測定数(全長) 対流 蒸発管φ38.1×2.6t (裸管) STB340E (ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管) 1,275 本659 本 (6 本) 隔壁 蒸発管φ50.8×3.5t (メンブレン管) 71 本 71 本 (2 本) 右側壁蒸発管70 本 70 本 (2 本) 4.4 検査状況 測定作業は、蒸気ドラムのマンホールを開放し、蒸気ドラム内に測定装置を設置後、測定プローブを水管に挿入して実施した。検査状況を図6 に示す。 また、超音波センサについては、対流蒸発管が12ch、隔壁蒸発管及び右側壁蒸発管が16ch のセンサを使用した。 *1 出典:バブ日立工業㈱パンフレット引用A A A-A 断面 燃焼灰 堆積物 - 35 -図6 検査状況 4.5 検査結果 UT による肉厚測定を実施した結果、対流蒸発管及び右側壁蒸発管に減肉が確認された。 対流蒸発管の減肉は主に水ドラム側の管端部からベンド部手前までの水平部に発生しており、その多くが水ドラム側の管端部から20mm~40mm 程度の範囲に集中していた。さらに、測定波形及び残肉厚展開図から、減肉は局部的に発生しており、その殆どが水管の下半面に存在していると推定した。一方、右側壁蒸発管の減肉は、水ドラム側の管端部から100mm~250mm 程度の範囲に集中していた。さらに、測定波形及び残肉厚展開図から減肉は孔食の状況を示しており、その殆どが水管の上半面に存在していると推定した。また、隔壁蒸発管、対流蒸発管及び右側壁蒸発管のベンド部から垂直部までについては経年的な減肉傾向は認められたが、顕著な減肉は認められなかった。肉厚測定チャートについて、代表的なものを図7~図9 に示す。 図7 肉厚測定チャート(対流蒸発管) 図8 肉厚測定チャート(右側壁蒸発管) 図9 肉厚測定チャート(隔壁蒸発管) 5.結言 経年劣化に伴う腐食・損傷等を考慮した、より合理的な保守管理として、ボイラ設置後、初めて水管の非破壊検査を実施し、減肉状況を確認した。 UT の結果、対流蒸発管及び右側壁蒸発管に減肉が認められ、減肉部位は水ドラム管端部からベンド部手前までの範囲に集中していることから、燃焼灰などの堆積物による影響が大きいものと推定した。よって、今回実施したUT の結果を基に余寿命評価を行い、腐食の進展状況を観察していくとともに、ボイラ内堆積物の除去作業を実施することで水管の腐食抑制を図っていく。また、堆積物の除去効果の確認を行い、除去作業の頻度等について検討し、水管ボイラの保守に努めていく予定である。 参考文献 [1] 石山道,川崎一男,浅野直紀,「ボイラー給水処理設備における水処理剤の変更」,ボイラ研究No.366, pp.9-15,pp.26-27(2011) [2] 川崎一男,石山道,薄井正弘,「水管ボイラー対流蒸発管における腐食孔の発生とその原因」,ボイラ研究No.382,pp.26-33(2013) (平成26 年6 月26 日) - 36 -
“ “水管ボイラの水浸式超音波探傷検査(UT)による保守 “ “石山 道,Toru ISHIYAMA,川崎 一男,Ichio KAWASAKI,三浦 博人,Hirohito MIURA
核燃料サイクル工学研究所には、所内各施設がプロセス用及び空調用として使用する蒸気を製造している水管ボイラが4 基設置されている。 水管ボイラは、設置後、約20 年経過しており、燃焼室内の清掃、熱交換器及び制御機器の整備等の定期保守に加え、ドラム及び水管の肉厚測定など経年劣化に伴う損傷等を考慮した保守管理がますます重要となってきている。その中でも、ボイラの水管については、複雑かつ狭隘な構造であるため、管外面からの限られた領域しか保守が実施できない状況である。また、平成23 年12 月には、ボイラ水の漏えいが発生し、水管を調査したところ、腐食による貫通孔が発見された。 そこで、各水管の減肉状況を確認するため、非破壊検査を実施した。本報告では、水管ボイラにおける非破壊検査による保守内容について報告する。 2.ボイラ概要 ボイラの仕様は、実際蒸発量25t/h、伝熱面積353 .、最高使用圧力1.96MPa、常用圧力1.47MPa であり、燃料はA重油(JIS1 種1 号)、薬品は清缶剤+脱酸素剤(水酸化カリウム・食品素材系有機酸・アクリル酸系ポリマー) 及び防食剤(中和性アミン)を使用している[1]。 また、ボイラは自然対流式の水管を採用しており、構造を図1、外観を図2 に示す。ボイラ本体は、蒸気ドラム、水ドラム及び両ドラム間を結ぶ水管からなる。 水管(1,528 本)は大別して対流蒸発管と燃焼室周壁管 (右側壁蒸発管・隔壁蒸発管・左側壁蒸発管・後壁蒸発管)及び外側に設けたD字形の水管壁で構成されている。 図1 水管ボイラ構造及び検査対象範囲
図2 水管ボイラ外観 3.ボイラ保守管理 ボイラ及びその付帯設備は、労働安全衛生法(ボイラー及び圧力容器安全規則)及び原子炉等規制法等に基づき運転時及び定期点検において設備の健全性を確認している。日常点検では、1 日に1 回以上、蒸気圧力、蒸気流量、ボイラ水位等の記録、各制御機器の動作状況の確認、配管等からの漏えいの有無などを確認している。年次点検は、メーカ等によるボイラ及び付帯設備類の分解整備、その他、消防法に基づく危険物施設の巡視点検を実施している。また、労働安全衛生法に基づく定期自主検査の実施及び性能検査を受検しており、その他、原子炉等規制法に基づく施設定期自主検査等が義務付けられている。 さらに、ボイラを安全かつ効率的に運転するために最も重要視されている水質管理については、ボイラ給水中の不純物等に対応した化学物質(薬品)を注入し、ボイラ給水中の酸素の除去を行っており、またボイラ水の排出等により不純物の希釈を行い、ドラム及び水管等の腐食抑制を図っている。 このように日頃から保守点検を実施し、ボイラ設備における異常やトラブルの未然防止及び早期発見に努めているところである。しかしながら、対流蒸発管等の水管については、複雑かつ狭隘な構造であるため、管外面からの限られた領域しか保守ができていない状況であった。 平成23 年12 月にはボイラ水の漏えいが発生し、水管を調査したところ、対流蒸発管の1 本に腐食による貫通孔が発見され、部分抜管により交換した。貫通孔が発見された対流蒸発管を図3 に示す。その際、隣接する対流蒸発管2 本に貫通までは至らないものの、同様なピットがあることを確認し、同時に交換を実施した。また、平成25 年6 月にも同ボイラにおいて漏えいが発生し、右側壁蒸発管の1 本に腐食による貫通孔が発見され、施栓処置を実施した。貫通孔及びピット状損傷の原因は、ボイラの燃焼過程中においてA 重油に由来する硫黄分及びボイラ材料に由来する酸化鉄等を含む燃焼灰が沈降し、水ドラム上部に堆積した燃焼灰に水分が含まれることで発生する腐食性の水溶液による硫酸腐食(局部腐食)であると推定した[2]。以上のことから、硫酸腐食(局部腐食) による減肉の有無について確認するため、水管の非破壊検査を実施することとした。 図3 貫通孔が発見された対流蒸発管 4.非破壊検査 4.1 非破壊検査の概要 ボイラ水管の保守は、定期的に管外表面から目視検査や超音波による肉厚測定を実施していたが、検査対象箇所が広範囲かつ狭隘なために定点測定にならざるを得なかった。そこで、水管の全面検査が可能で短期間で実施できること、孔食を検知できる高精度な検査であることを考慮し、水浸式超音波探傷検査(UT)を行うこととした。 4.2 水浸式超音波探傷検査(UT) 4.2.1 測定装置の仕様及び構成 測定装置は、測定プローブ、距離検出器及び計測器から構成されている。仕様を表1、構成図を図4*1に示す。 - 34 -表1 測定装置の仕様 用途 伝熱管及び配管の肉厚測定 適用管サイズ 外径φ38.1~76.1mm 測定可能な ベント管サイズ 外径φ63.5mm以上:R200 以上 外径φ57.1mm以下:R150 以上 検査速度 4500~8000mm/min 軸方向測定ピッチ 0.5mmピッチ 測定精度 直管部:±0.1mm 曲げ部:±0.2mm 出力データ Cスキャン(全面展開図) ユーティリティ 水 図4 測定装置構成図 4.2.2 測定原理及び方法 測定プローブには、超音波センサが設置されており、管周方向に12ch または16ch 配列している。測定方法は、測定プローブを水張りした水管に蒸気ドラム側から挿入し、送り込みながら各々のセンサにより超音波を送受信して管内面エコーと管外面エコーの時間差で肉厚を測定する。また、計測器(モニター)に測定管の周方向及び長手方向の残肉厚状況を色別したC スキャン(残肉厚展開図)が表示され、減肉位置の特定及び残肉厚をリアルタイムで確認することができる。 4.3 検査対象 検査対象ボイラは、運転頻度の多い3 台(1 号・2 号・3 号)とした。次に、検査対象部位を選定するため、各ボイラの燃焼灰等が堆積している箇所を工業用内視鏡(ファイバースコープ)により調査した。その結果、堆積物は、燃焼室側の対流蒸発管2 列の下部及び煙道側の対流蒸発管1 列の下部に広く分布しており、深さは推定約50mm~60mm であった。また、対流蒸発管表面全体に硫黄分を含有した燃焼灰が付着していることがわかった。堆積物の分布状況を図5 に示す。 よって、検査対象部位は堆積物の多い燃焼室側の隔壁蒸発管及び対流蒸発管、煙道側の右側壁蒸発管及び対流蒸発管とした。検査対象範囲を図1 の太枠内、検査対象水管の仕様を表2 に示す。 また、測定範囲は、燃焼灰が堆積する水ドラム上部を主に、水ドラム側管端から600mm程度(水管全長の1/4) とした。また、検査対象水管のうち、10 本について抜き取りによる全長検査を実施することにした。 図5 堆積物の分布状況 表2 検査対象水管の仕様 管名称仕様 材質 設置数測定数(全長) 対流 蒸発管φ38.1×2.6t (裸管) STB340E (ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管) 1,275 本659 本 (6 本) 隔壁 蒸発管φ50.8×3.5t (メンブレン管) 71 本 71 本 (2 本) 右側壁蒸発管70 本 70 本 (2 本) 4.4 検査状況 測定作業は、蒸気ドラムのマンホールを開放し、蒸気ドラム内に測定装置を設置後、測定プローブを水管に挿入して実施した。検査状況を図6 に示す。 また、超音波センサについては、対流蒸発管が12ch、隔壁蒸発管及び右側壁蒸発管が16ch のセンサを使用した。 *1 出典:バブ日立工業㈱パンフレット引用A A A-A 断面 燃焼灰 堆積物 - 35 -図6 検査状況 4.5 検査結果 UT による肉厚測定を実施した結果、対流蒸発管及び右側壁蒸発管に減肉が確認された。 対流蒸発管の減肉は主に水ドラム側の管端部からベンド部手前までの水平部に発生しており、その多くが水ドラム側の管端部から20mm~40mm 程度の範囲に集中していた。さらに、測定波形及び残肉厚展開図から、減肉は局部的に発生しており、その殆どが水管の下半面に存在していると推定した。一方、右側壁蒸発管の減肉は、水ドラム側の管端部から100mm~250mm 程度の範囲に集中していた。さらに、測定波形及び残肉厚展開図から減肉は孔食の状況を示しており、その殆どが水管の上半面に存在していると推定した。また、隔壁蒸発管、対流蒸発管及び右側壁蒸発管のベンド部から垂直部までについては経年的な減肉傾向は認められたが、顕著な減肉は認められなかった。肉厚測定チャートについて、代表的なものを図7~図9 に示す。 図7 肉厚測定チャート(対流蒸発管) 図8 肉厚測定チャート(右側壁蒸発管) 図9 肉厚測定チャート(隔壁蒸発管) 5.結言 経年劣化に伴う腐食・損傷等を考慮した、より合理的な保守管理として、ボイラ設置後、初めて水管の非破壊検査を実施し、減肉状況を確認した。 UT の結果、対流蒸発管及び右側壁蒸発管に減肉が認められ、減肉部位は水ドラム管端部からベンド部手前までの範囲に集中していることから、燃焼灰などの堆積物による影響が大きいものと推定した。よって、今回実施したUT の結果を基に余寿命評価を行い、腐食の進展状況を観察していくとともに、ボイラ内堆積物の除去作業を実施することで水管の腐食抑制を図っていく。また、堆積物の除去効果の確認を行い、除去作業の頻度等について検討し、水管ボイラの保守に努めていく予定である。 参考文献 [1] 石山道,川崎一男,浅野直紀,「ボイラー給水処理設備における水処理剤の変更」,ボイラ研究No.366, pp.9-15,pp.26-27(2011) [2] 川崎一男,石山道,薄井正弘,「水管ボイラー対流蒸発管における腐食孔の発生とその原因」,ボイラ研究No.382,pp.26-33(2013) (平成26 年6 月26 日) - 36 -
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