高速炉機器の構造信頼性評価法のベンチマーク評価

公開日:
カテゴリ: 第11回
1.諸言
供用期間中検査(ISI)要求はプラントの特徴を考慮し て適切に定められなければならない。しかし、プラント の特徴には、環境、材料、設計、製作、施工、運転管理、 安全評価等、多岐にわたる項目が含まれ、従来、それら を統一的に扱うことは困難であった。そこで我々は、シ ステム化規格概念に基づく ISI 要求の検討を行っている [1]。システム化規格概念とは、関連する全ての技術要求 項目を考慮して原子力プラントの信頼性を最適化するこ とを目指した新しい規格体系に関する概念である[2]。本 概念の具体化に当たっては、信頼性(破損確率)評価手 法の整備が重要であり、現在、日本機械学会のシステム 化規格検討会において、高速増殖炉の静的機器を対象と した信頼性評価ガイドライン(案)の検討が行われてい る[3]。さらに、信頼性評価の計算コードが適切に作成さ れていることも重要である。そこで、本研究では、高速 増殖炉における代表的な劣化損傷機構であるクリープ疲 労に関して、既存の設計評価法等を参考にき裂発生及び 進展に関する評価手法を整理するとともに原子炉容器を 対象として入力条件の検討を行った。さらに整理した手順に従った評価が可能な独立に開発された二つの計算コ ード](MSS-REAL(原子力機構)、GENPRO/PEPPER(テ プコシステムズ))を用いて、決定論評価およ率論評 価を実施し、両計算コードの妥当性確認を行った。
2.評価方法
2.1 クリープ疲労損傷によるき裂発生・進展評価 「実用高速炉の高温構造設計方針」[5] に基づきクリープ 損傷量(Dc)及び疲労損傷量(Df)を評価し、(1)式を満たす 場合に、深さ 1 mmの全周き裂が発生すると仮定した。 DD c + 7 3f = 1 ( D f ? ;3.0 ) 7 3DD c + f = 1 ( D f > )3.0 (1) また、き裂進展は、「高温構造健全性評価指針(案)」[6]に 基づき、(2)式を用いて評価した。 da dN= JC f ? m f f + JC cc ? mc (2) a : き裂深さ ?Jf,?Jc: 疲労及びクリープに関するJ 積分範囲 Cf,Cc,mf,mc : 材料定数 ―――――――――――――――――――――― 連絡先:髙屋 茂、〒311-1393 大洗町成田町 4002、日 本原子力研究開発機構 高速炉研究開発部門 E-mail: takaya.shigeru@jaea.go.jp 2.2 破損条件 不安定破壊とき裂の貫通を想定した。正味断面応力が 流動応力を上回ったときに不安定破壊が起こるとした。 また、参照応力算出式の適用限界からき裂深さが板厚(40 mm)の0.8倍に達したときに貫通と見なした。 - 353 - 2.3 評価条件 高速増殖炉原子炉容器の液面近傍(316FR 鋼溶接部) を対象に入力条件を検討した。原子炉容器には、起動‐ 停止時に冷却材温度と液位の変化により生じる温度分布 により液面近傍部に比較的大きな熱応力が発生する。よ って、熱荷重の変動因子として温度変化幅を選択し、プ ラントの運用方法を参考に平均値及びばらつきを設定し た。材料強度に関しては、JSME 発電用原子力設備規格 設計・建設規格 第II編 高速炉規格[7]で定められてい る最適値を平均値として採用し、材料試験データに基づ きばらつきを設定した。表1に入力条件のまとめを示す。 ベンチマークは、ばらつきを考慮しない決定論評価と、 考慮した確率論評価を実施した。確率論評価には直接モ Table 1 Input data Parameter PD Value Number of cycles LN Mean 150 SD 0.388 Axial stress due to inner pressure, MPa Normal Mean 8.9 COV 0.130 Axial stress due to dead weight, MPa Normal Mean 15.8 COV 0.022 Thermal stress for fatigue, MPa Normal Mean 239.3 COV 0.065 Thermal stress for creep, MPa Normal Mean 128.5 COV 0.051 secondary stress, MPa bending Normal Mean COV 171.1 0.065 Cf in eq. (2) LN Median 6.34E-5 [5] SD 0.421 mf in eq. (2) Const. - 1.3742 Cc in eq. (2) LN Median 7.41E-3 [5] SD 0.421 mc in eq. (2) Const. - 0.88 Fatigue life normalized by fatigue failure eq. in JSME code [6] ンテカルロ法を用い、サンプル数は105とした。但し、表 1の条件では破損サンプルが生じないため、クリープ疲労 損傷値とき裂進展速度をそれぞれ100倍して評価した。 3.評価結果 結果を表 2 に示す。破損年数(決定論評価)は非常に 良く一致していた。破損確率(確率論評価)も 1 割弱の 差が認められるが、ほぼ一致していた。ISI 要求の検討を 行う際には、有効数字 1 桁程度で判断すると考えられる ことから十分な結果である。但し、損傷値とき裂進展速 度に対する加速係数がない場合には差が若干変化する可 能性があるため確認が必要である。なお、決定論評価で GENPRO/PEPPER が寿命を短めに評価していることが、 確率論評価結果の差にも影響していると予想される。 Table 2 Evaluation results Failure time Failure [year] probability* MSS-REAL (A) 13634.8 5.7E-2 GENPRO/PEPPER (B) 13567.6 6.2E-2 (A)-(B)/(A) [%] 0.5 -8.8 *: 100 times larger damages and crack propagation rates were assumed. 4.結言 本例題では、コードによる破損確率評価結果の差は 1 割弱であった。ISI要求の検討を行う上で十分許容される と考えられるが、コードの妥当性確認のため加速係数無 の場合や他の例題に関する検討を引き続き実施していく。 参考文献 [1] S. Takaya et al., J. Power and Energy Systems, Vol. 5, 2011, pp.60-68. [2] Y. Asada et al, Proc. of ICONE 10, 2002, #22730. [3] S. Takaya et al., Proc. of ICONE22, 2014, #30570. Median 1 [4] 吉村, 関東編, リスク活用のための確率論的破壊力 SD 1.44 学技術‐基礎と応用‐, 日本溶接協会, 2012. [5] 日本原電, 平成16 年度経済産業省委託研究「発電用 Creep rupture time 新型炉技術確証試験」事業報告書 その1 設計手 normalized by rupture 法高度化確証試験 別冊, 2005. eq. in JSME code [6] [6] 電中研, 高温構造健全性評価指針(案), 2001. [7] 日本機械学会, 発電用原子力設備規格 設計・建設 規格 第II編 高速炉規格 2012年版, 2012. - 354 - LN Median 1 LN SD 0.645 PD: Probability distribution, LN: Lognormal, COV: Coefficient of variation, SD: Standard deviation“ “高速炉機器の構造信頼性評価法のベンチマーク評価 “ “髙屋 茂,Shigeru TAKAYA,浅山 泰,Tai ASAYAMA,町田 秀夫,Hideo MACHIDA,神島 吉郎,Yoshio KAMISHIMA
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)