高速増殖原型炉「もんじゅ」の保全の在り方 ‐高速増殖炉劣化メカニズムの整理‐

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カテゴリ: 第11回
1.はじめに
高速炉は冷却材としてナトリウムを用いていることか ら高速炉特有の設備を有していること及び劣化に影響を 与える要因が軽水炉と異なることから、その特徴を考慮 した保全が必要である。軽水炉においては、高経年化技術 評価結果を踏まえ多くのプラントの保全データを基にプ ラントを構成する機器ごとに各部位に想定される劣化事 象を抽出している。高速炉においても、海外高速炉の事例 を含め、軽水炉と同様な手法を用いて、3段階に分けて高 速炉固有の劣化メカニズムを抽出した。 軽水炉を持つ電気事業者、プラントメーカの技術者、学識 経験者が参画した保全学会もんじゅ保全検討分科会にお いて、抽出手法、劣化事象等を検討し、高速炉特有の劣化 事象としてまとめた。
2. 劣化事象の観点からの「もんじゅ」の特徴 2.1ナトリウムの特徴
ナトリウムを冷却材として用いる「もんじゅ」あるいは 高速炉の特徴から劣化事象を抽出する上で、冷却材とし て使用する上でのナトリウムの主たる特徴を下記に示す。 1 常圧での高い沸点 沸点が高く低圧で使用されるため,構造部材の薄肉化が 可能でかつ冷却材のバウンダリーの損傷時にも減圧沸騰 がない。高温での使用が容易なため材料のクリープ特性 を考慮する必要がある。 2 小さい比熱、高い熱伝導 原子炉出入口温度差が大きくなり,定常時の2次応力(熱 応力)が大きい。また、熱伝導度が大きいこととあいま って熱過渡条件が厳しくなる。
3 高い凝固点
予熱、保温設備が必要となる。一方,冷却材を凝固させてその漏洩を防止することが可能である。(弁等のフリーズシール)
- 排気筒 外部しゃへい建物 原子炉格納容器 制御棒駆動機構 液面計 中間熱交換器 流量計 1次主循環 ポンプ 流量計 アニュラス循環排気装置 発電機 制御棒 炉心燃料 ブランケット 燃料 蒸気発生器入口止弁 過熱器 出口止弁 過熱器 入口弁空気冷却器 2次主循環 ポンプ 蒸発器 蒸気発生器出口止弁 主蒸気止?ービ呉バイパ吐弁 弁 過タービン 熱器 気水復水器 分離器 循環水ポンプ 空気冷却器 出口止弁 脱気器 取水口 放水口 給水ポンプ 高圧給水加熱器 熱交換器 原子炉補機冷却海水系配管 Fig.1 Schematic of Monju 交換して約12.4MPa、約483°Cの過熱蒸気が作られ発電機 に直結するタービンに送られる。表-1に「もんじゅ」 とPWRの原子炉容器主要仕様を示す。 Table 1 Comparison of major specifications between Monju and PWR reactor vessel 「もんじゅ」 PWR 機器区分 クラス1容器 クラス1容器 安全機能の 重要度分類 - 424 - PS-1:耐圧機能(構造) 同左 型式 底部鏡板付円筒たて型容器 同左 個数 1 1 最高使用圧力 0.98Mpa(下部) 0.20Mpa(上部) 17.15MPa 最高使用温度 420°C(下部) 550°C(上部) 343°C 運転圧力 RV入口:約0.78MPa RV出口:約0.10MPa 約15.4MPa 運転温度 RV入口:約397°C RV出口:約529°C RV入口:289.2°C RV出口:324.9°C 流 体 液体ナトリウム アルゴンガス 4 化学的に活性 冷却材の自由波面は不活性なアルゴンガスでカバーさ れ、カバーガスバウンダリーの気密維持と圧力制御が必 要である。空気中で燃焼するため,放射性ナトリウムを 内包する系統機器は不活性ガス(窒素ガス)雰囲気に設 置する必要がある。蒸気発生器においてはナトリウムと 水との間で熱交換が行われるため水が漏えいした場合そ の検出とその影響を緩和することが必要である。 5 不透明 冷却材中の機器を目視操作、目視点検する事が困難で、 遠隔操作や超音波を利用した透視装置が必要である。 6 電気の良導体 電磁流体としての特性を生かした電磁ポンプ、電磁流量 計、液面計、漏えい検出器等が使用できる。 2.2 高速炉の系統構成 図1に「もんじゅ」の概略系統構成を示す。「もんじ 加圧水 ゅ」の原子炉で発生する熱は、独立した3系統のナトリ ウム冷却系により冷却され、1次ナトリウム系、2次ナト 設置環境 主要材料 窒素 SUS304 空気 低合金鋼(ステン リウム系更に水・蒸気系と熱を伝達する。 レス鋼肉盛) 1次系ナトリウムは約397°Cで原子炉容器の下方胴部か ら導入され、原子炉で加熱された後、529°Cで原子炉容 内径 約7.1m 寸法 全高 約17.8m 約4.4m 約29m 器の上方胴部から流出する。2次系ナトリウムは中間熱 胴部肉厚 約50mm 約230mm 交換器において1次系ナトリウムと熱交換し、約325°Cか 冷却材であるナトリウムは沸点が高いため軽水炉のよ ら約505°Cに上昇する。更に、ヘリカルコイル伝熱管を うに加圧を必要とせず、大気圧に近い圧力で原子炉が運 有する蒸気発生器において2次ナトリウムと水蒸気が熱 転される。また、機器を連絡する1次系ナトリウム配管 は大部分を高所に設置し、原子炉容器、主循環ポンプ及 び中間熱交換器並びにそれら接続部分の配管にはガード ベッセルと称する容器を設けることにより、万一冷却材 の漏えいがあった場合にも、炉心冷却に必要な1次系ナ トリウムの循環が可能なように十分な冷却材を確保する 設計としている。ナトリウムが化学的に活性であること から、機器の内部の液面上をアルゴンガス雰囲気とし、 また放射性ナトリウムを保有する系統を収納する部屋は 室内を窒素雰囲気としている。 これらの主冷却系以外に燃料交換等の炉停止時及び緊 急時に炉心の崩壊熱を除去するため、補助冷却設備が設 けられる。この補助冷却設備は、2次ナトリウム系より 分岐し、蒸気発生器と並列して空気冷却器を備えてい る。補助冷却設備運転時には、1次系及び2次系主ポンプ のポニーモータを作動させて冷却材を循環させる。 原子炉系統において、高速炉特有の設備あるいは冷却 材としてナトリウムを使用することによる劣化事象が軽 水炉と異なる系統は、原子炉、1次及び2次ナトリウム 系及びアルゴンガス系統である。また、高速炉の燃料取 扱設備は、「冷却材としてナトリウムを使用するこ と」、「燃焼度の高い燃料等を取扱うこと」という大き な特徴を有しており、軽水炉と異なる高速炉特有の構造 となっている。 3.劣化メカニズムの抽出プロセス 3.1 全体のプロセス 軽水炉における劣化メカニズムの抽出は、日本原子力 学会標準「原子力発電所の高経年化対策実施基準: 2008」【1】にて実施されている。「もんじゅ」の劣化メカ ニズム抽出プロセスもこれを踏襲し、高速炉特有の劣化 事象等が確実に反映されるように、国内外【2、3】の情報を 取り込むこととした(図2)。具体的な手順を次に示す。 社内経験の反映 ・常陽の定検及び定期的な安全評価 (「原子炉施設の定期的な評価」:試験 炉規則に基づき10年毎に実施) ・もんじゅの設計根拠 ・もんじゅの経験 軽水炉と同一 社外経験の反映 ・海外FBRの情報 (協力協定等に基づき得られ たフェニックス、スーパーフェ ニックス等の情報) 材料に関する学術図書からの 経年変化事象の洗い出し 国内外の他産業も含めた過去の不具 合事象から得られた経年変化事象 ・不具合報告書 ・原子力発電所事象報告等 FBRのR&Dの知見を反映 ・平成19年以降の情報収集、スク リーニングを継続して実施し、得ら れた情報の反映 過去の不具合事例から得ら れた経年変化事象の把握 Fig.2 Flow chart for the extraction of aging phenomena - 425 - 最近の知見を踏まえた経 年変化事象の把握 設計上の知見、最近の研究成 果、他産業の動向等から考慮 すべき経年変化事象 工業用材料で想定される経年変化事象 原子力プラントが置かれた環境を考慮 した絞り込み原子力プラントで想定される経年変化事象 使用材料が置かれた環境条件 ・原子力プラントの置かれた環境に於いて損傷モードの 要因となる物質が存在しない場合 (ex)溶融塩腐食、ハロゲン化腐食等 ・原子力プラントの環境に於いて、損傷モードの起因事 象となるような状態が存在しない場合。 (ex)シグマ相脆化(高温:565°C~930°C) 材料が使用条件を考慮した試験データが存在し、経 年変化を考慮する必要のないことが明確な場合は、 想定不要として絞り込みを行う。 第1段階スクリーニング 第2段階スクリーニング ・水質(溶存酸素、PH、不純物等) ・応力場(高サイクル、低サイクル) ・温度 ・圧力 ・流速 ・中性子照射場 ・振動 ・窒素雰囲気(1次系) 第3段階スクリーニング 上記のスクリーニングで絞り込まれた経年変化事 個々の材料の使用条件を考慮して、材料 象を評価対象機器の主要な部品に対してマトリック 試験データとの比較により工学的に問題 ス展開し評価・検討を行う。 ないと明らかに言えるものは除外する。 高速炉で使用環境上の考慮 (ナトリウム、アルゴンガス環境) 3第1段階:工業用材料に想定される経年劣化事象のう ち、原子炉施設が置かれている環境を考慮 し、想定される劣化事象を抽出する。 第2段階:材料の置かれている環境条件を考慮し、発 生が想定される経年劣化事象を抽出する。 第3段階:対象機器個別の条件を考慮し、要求される 機能の維持に必要な項目に関連する主要な部 位に展開した上で、部位を縦軸、経年劣化事 象を横軸としたマトリックス形式により部位 と経年劣化事象の組み合わせを抽出する。 第1 段階及び第2段階の抽出においては、軽水炉機器 と「もんじゅ」機器の違いを考慮して整理した。軽水炉 機器、「もんじゅ」機器が同じ材料を使用し、機器が置 かれている環境条件が同じであれば、発生する劣化事象 は同じである。また、冷却材のナトリウムを内包する設 備、その表面を覆う不活性カバーガスを内包する設備及 び燃料を取扱う機器については、「もんじゅ」特有機器 であり、劣化を抽出する際にはその特徴に留意した。 軽水炉同様設備及び「もんじゅ」特有機器の第1段 階、第2段階の劣化事象抽出結果の例として、割れの損 傷モードのうち、疲労について整理した結果を表‐2に 示す。 3.2 「もんじゅ」特有設備の劣化メカニズムの 抽出プロセス(第3段階) 軽水炉同様の設備については、劣化メカニズムも同じ であることから、第3段階の抽出においては、「もんじ ゅ」特有機器を中心に系統設計仕様書、機器設計仕様書 などにより機器に要求される機能を抽出し、その維持に 必要な項目に関連する主要な部位は、構造図などから抽 出している。 なお、「もんじゅ」特有の設備のうち、ナトリウム、 アルゴンガス雰囲気の機器については、これらを動的機 器(ポンプ、弁)、静的機器(容器、配管、熱交換器、 炉内構造物)、その他機械設備からそれぞれ表-3の通り 選定した。また、その他の軽水炉にはない特有設備は設 置環境毎に選定した。 この選定の考え方を以下に示す。 ・ 作動流体(環境条件)として「もんじゅ」特有であるナ トリウム、アルゴンガスを選定 ・ 同環境において、「もんじゅ」機器を動的機器、静的機 器、「もんじゅ」特有の設備に分類 ・ 動的機器に関し、ポンプは機械式と電磁式の2 種、弁 は型式により抽出 ・ 容器は外部雰囲気(窒素、空気、流動の有無)及び材料 で分類。 ・ 熱交換器は、1 次流体としてナトリウム、2 次側流体 (ナトリウム、水・蒸気、蒸気、空気) 及び材料(ステ ンレスと低合金鋼)で分類 ・ 「もんじゅ」特有で軽水炉と概念が異なる機器を抽出 ・ 冷媒を作動流体とする機器に関しては、軽水炉の劣化 メカニズムをまとめた原子力学会標準を用いるが、 「もんじゅ」特有の設備は抽出 なお、電気設備のケーブルは窒素あるいは空気雰囲気に あることを確認するとともに、軽水炉と同様な環境(温度、 雰囲気、γ線照射)であることを確認した。 3.3設計上の考慮(劣化事象と保全対象) ナトリウム、アルゴンガス雰囲気の機器は、使用して いる材料がステンレス鋼であり、第1、第2段階の結果 から想定される劣化事象が限定される。表-4に設計での 考慮事項の例として、腐食、疲労、中性子照射劣化を示 す。なお、設計時の考慮事項として表-4はその概略を示 したものであり、個別の劣化事象については、第3段階 のスクリーニングに記載している。 設計で考慮しているが、保全の対象としている劣化事 象は、疲労のように過去に損傷例を有している事象、中 性子照射劣化で示すように、加速照射による試験データ に基づき設計しておりその妥当性を確認する必要がある 事象である。また、設計での前提条件を満足しているこ とを確認するため、疲労やクリープの発生応力を算出す る前提となる配管支持構造の機能確認や配管熱変位、高 サイクル熱疲労の損傷の前提となる異なる温度が合流す る配管部での温度、腐食量算出の前提となるナトリウム 中不純物濃度等については、プロセス値の監視を含め、 保全対象となる。 さらに、本格運転においては計測が困難な部位につい ては、例えば、過渡時における炉容器内の温度分布等につ いて、性能試験において、各機器の詳細な特性を確認する。 - 426 - などにより機器に要求される機能を抽出し、その維 - 427 5 - Table 3 Identification of the components unique to Monju 設備区分 計測制御 設備 作動流体 (環境) 動的設備 静的設備 ・その他機械設備(空気圧縮 機 タービン設備,、空調設備 、電気設備) ・コンクリート構造物及び鉄 骨構造物 ナトリウムアルゴンガス ポンプ 弁 容器 配管 熱交換器 炉内構造物 計測制御 設備 1次系主循環 ポンプ SS 逆止弁 SS 炉容器 SS (外面は窒素) 配管SS IHX(Na/Na熱 交換器) SS 炉内構造物 電磁ポンプ SS 炭素鋼 略称 CT:コールドトラップ(ナトリウム中の 不純物を捕獲) OF/T:オーバーフロータンク D/T:ダンプタンク(ナトリウムを貯留) V/T:ベーパートラップ(ガス中のナト リウム上記を捕獲) ACS:補助冷却系(崩壊熱除去) IHX:中間熱交換器(1次/2次ナトリ ウムの熱交換機) EV(蒸発器) SH:過熱器 CRDM:制御棒駆動機構 GV:ガードベッセル(ナトリウム漏え い時に冷却系の液位確保のため ナトリウムを貯留、EVST外容器含 む) IVTM:炉内中継装置(燃料を炉内 から出し入れするための装置) FHM:燃料交換装置 Na:ナトリウム SS:ステンレス鋼 SCC CTSS (外面は流動 窒素 EV(Na/水・ 蒸気熱交換 器) 低合金鋼 炉心上部機 構(Na、ア ルゴン) CRDM SS他(Na、ア ルゴン、空気) アングル弁 SS OF/T SS(1次系は窒 素、2次系は 空気) SH(Na/蒸気 熱交換器) SS FHM、 IVTM(Na、ア ルゴン、空気、 水・蒸気環境) 玉型弁 SS バタフライ 弁SS D/T 炭素鋼 空気冷却器 (Na/空気熱 交換器) SS 玉型弁 SS 遮へいプラグ 配管SS 逆止弁 V/T SS 減圧弁 サージタンク SS 安全弁 減衰タンク 炭素鋼 冷媒 窒素ガス GVSS 支持構造物 Na漏えい 検出器 空気 Na漏えい 検出器 水・蒸気 海水 注 1)斜線のセルは該当機器無 2)網掛けのセルは原子力学会標準を使用 Table 4 Aging phenomena identified in the Monju design stage 損傷 経年劣化事 モード 象 設計での考慮事項 減肉腐食 割れ 劣化(中性 子照射劣 化) 純度管理されたナトリウム(Na)中では、金属と金属の反応すなわち配管表面の金属がわずかにNa中 に溶出すること、さらにNa中の酸素がそれを加速することが腐食の要因である。 このため、Na中の酸素濃度を管理することによりNa環境下のステンレス鋼の腐食食はごくわずかで あり、劣化事象として考慮する必要はない。 また、実験炉「常陽」の高経年化評価で測定した配管の腐食が有意でないことを確認しており、保 全対象の劣化事象として考慮する必要はない。 高速増殖炉での劣化事象として、起動/停止に伴う温度変化により生じる熱応力による疲労あるいは 疲労 高温部におけるクリープ、クリープ疲労によるき裂があげられる。高速炉設計・建設規格【4】に基 づき、設計がなされ、プラント寿命中の累積クリープ・疲労損傷を評価し許容範囲内としている。 一方、各国における初期の高速炉において損傷例もあることから保全対象の劣化事象とする。 純度管理されたNa中においては、SCCの環境要因が存在しないこと、過去の損傷事例もないことから 保全対象の劣化事象ではない。(Na接液部あるいはアルゴンガス部以外については、個別に劣化事 象の判定を行う) 中性子照射を受ける炉内構造物で想定される劣化事象であり、先行炉の照射試験により劣化を評価 材料変化 し、設計を行っている。照射量の累積により劣化は進行すること、実炉条件と完全に同一条件での 照射ではないことから保全対象の劣化事象である。 注:高速増殖炉における中性子照射劣化は、材料の延性の低下として生じるため、炉内監視試験片 で破断伸びを確認する。 - 428 - 3.4「もんじゅ」特有設備の劣化メカニズム 3段階の抽出結果を部位と経年劣化事象の組み合わせ として整理した結果として、原子炉容器と1次主冷却系 配管の例を表‐5 に示す。なお、この結果を用いて、同 じ区分の機器については、同様に展開できると考える。 第1 段階及び第2段階の抽出においては、「もんじ ゅ」特有機器の劣化事象を検討した結果、下記のような 特徴が上げられる。なお、「もんじゅ」の保全情報は、 建設が終了した平成3年から平成20年までの設備の点 検記録等であり、その間に行った安全性総点検における 設備改善等(過去に設備改善を行った経緯)の情報及び 長期停止プラントである「もんじゅ」が再起動するにあ たり、使用前検査を受検した当時の状態維持しているこ とを確認するために行った「長期停止プラントの設備健 全性確認」の情報を反映している。【3】 以下にもんじゅ」特有の劣化事象を例示する。 ・ 第1段階のスクリーニングで軽水炉と異なる劣化事 象として、構造材料の脱炭、浸炭が摘出された。こ れらの劣化は、ナトリウムループを用いたバイメタ リックループでの実機環境を模擬した条件での材料 試験によりデータを取得し、同データに基づき設計 を行っていることから、第3 段階で保全の劣化とし ては想定不要とした。 ・ 電気・計装関係では、過去のトラブル事例として、 リレーの接点溶着が摘出されまた、電磁流体である ナトリウムの特徴から永久磁石を使用している機器 についての減磁が摘出され、これらは、保全におい て考慮すべき事象とした。 ・ 軽水炉で想定されている炉容器内での照射誘起応力 腐食割れはナトリウム環境では生じないこと、蒸気 発生器でのデンティングはナトリウム環境では腐食 生成物が極めて少なく想定不要とした。 ・ ナトリウム及びアルゴンガス系設備において、内面 はSΣΣを保全対象の劣化として考慮する必要はない が、外面におけるSΣΣについては、使用条件(運転停 止時に常温となる場合)、環境(海塩及び湿分の流 入)、塩素の持ち込み等で発生することに留意する必 要がある。 4. おわりに 保全計画の作成において、点検内容、点検頻度設定 の基礎となるナトリウム冷却高速増殖炉の劣化事象に 関し、軽水炉における劣化事象の整理プロセスと同じ く、3段階に分けて整理した。劣化事象と第1段階か ら第2段階の抽出作業において、「もんじゅ」で想定さ れる劣化事象を整理した。この結果と軽水炉機器おけ る劣化事象を比較し、違いを明確にすることにより、 「もんじゅ」機器に特有の劣化事象を整理した。これ らの結果を各機器の部品レベルに展開し、各部に生じ る劣化事象とそれを検知するために必要な点検内容を 第3段階にて整理した。 ナトリウム冷却高速増殖炉としての保全経験は十分 とは言えず、特に、第3 段階における部品レベルの劣 化とその保全に関しては、今後の実機でのデータによ る充実が必要である。「もんじゅ」特有の機器の点検計 画には本結果を、軽水炉と同様な仕様及び設置環境の 機器に関しては、軽水炉の劣化メカニズムを活用した 保全計画に基づく保全、保全データの採取、評価及び 保全内容や方式の見直しと劣化メカニズム反映を行う ことにより、保全の充実が可能である。 参考文献 [1] 日本原子力学会標準「原子力発電所の高経年化対策 実施基準:2008」 [2] 礒崎他「高速実験炉「常陽」の定期的な評価-高経 年化に関する評価-」日本原子力研究開発機構 [3] 高速増殖原型炉もんじゅ安全性総点検に係る対処及 び報告について [4] 日本機械学会「発電用原子力設備規格 設計・建設 規格 第II編 高速炉規格(JSME S NC2)」 - 429 7 - - 430 -“ “高速増殖原型炉「もんじゅ」の保全の在り方 ‐高速増殖炉劣化メカニズムの整理‐ “ “山下 裕宣,Hironobu YAMASHITA,山口 篤憲,Atsunori YAMAGUCHI,青木 孝行,Takayuki AOKI
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