六ヶ所再処理工場における回転機器の設備診断 -振動解析による設備診断-
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カテゴリ: 第11回
2.設備診断の概要
2.1 設備診断業務の進め方 設備診断業務の概要を図1に示す。 計画段階では、測定対象機器の選定および対象機 器毎の判定基準値の設定を行う。 実行段階では、簡易測定による振動値(振動速度 値・振動加速度値)の計測を実施し、異常判定の超過 や著しいトレンド変化の有無を確認する。異常判定 超過および著しいトレンド変化が確認された際は、 精密測定(周波数データ採取)を実施し、振動解析に よる異常原因の診断を行う。診断の結果に応じ、グ リスアップや分解点検等の処置推奨、測定周期の短 縮による監視強化を行う。 評価段階では、軸受分解検証や点検記録の確認に よる診断結果の妥当性評価を必要に応じて行う。改 善段階では、新たな知見について診断事例資料を作 成し、診断ノウハウを蓄積する。 改善段階で作成された判定基準値の改訂案を判定 基準値に設定し運用する。また、診断事例資料につ 連絡先:佐々木 一人 いては、機器の管理箇所へ展開するとともに、現場 調査および振動解析時のノウハウとして活用する。 2.2 診断結果の検証 診断結果の検証作業として、分解点検記録の確認や 軸受分解検証等を実施し、振動診断結果の妥当性を評 1
3.異常事象と振動解析事例 回転機器の振動診断において検知できる異常事象と して、「潤滑不良」、「軸受キズ」、「基礎剛性に関与する 振動増加」等が挙げられる。本稿では、上記の異常事 象と振動解析のポイント、異常事象の振動解析事例に ついて紹介する。 3.1 価する。検証作業の対象は、下記に該当する機器と 潤滑不良 している。 「潤滑不良」はグリースや潤滑油の給脂不足および 1振動診断で著しい異常と診断し、分解点検を推 消耗に伴う油膜形成の悪化により、軸受内部の摺動面 奨した機器(TBM ,CBM,BM 問わず) でシビアな接触が発生する事象である。 2定期点検機器(TBM)の内、振動診断で振動値の 潤滑不良発生時の周波数成分は図 2 の通り現れる。 上昇傾向等の異常兆候を確認した機器 ・振動加速度スペクトル 軸受分解検証では、「軸受の分解」、「外観観察調査」、 高周波数帯域(約 1kHz 以上)が隆起する。 「封入グリース回収と鉄粉濃度測定」、「各部品の寸 ・振動加速度波形 法計測による規格値、公差との比較」等を実施する。 実効値が増加してピーク値との差が少なくなる。 診断結果の検証は 2010 年度から開始している。 周期性を伴う衝撃波や振幅が確認されない。 2014 年時点で、20 件(内、113 件、27 件)の作業を 実施し、振動解析結果との整合性を確認した。 振動加速度スヘ?クトル(0~15kHz) 図1 設備診断業務フロー 高周波数帯域の隆起 振動加速度波形 実効値の増加、周期性を伴う衝撃波や振幅なし - 440 - 図2 潤滑不良発生時の振動データの特徴 事例.1 グリース不足による断続的な異音 横型遠心ポンプのモータ部において、断続的な異 音と振動加速度の急激な上昇(図 3)を確認した。異音 発生時においては、不規則な触振動を確認した。 異音発生時の振動データを採取して周波数解析を 実施した結果、図 4 の通り、異音発生時に振動加速 度スペクトルから「高周波数帯域(1kHz~)の隆起」、 振動速度スペクトルから「内輪キズ成分(fi±fr: 286.2Hz)の卓越」、振動加速度波形から「周期性を伴 わない振幅の増加」を確認した。また、当該モータ は、過去の分解点検の実績が約 5 年前であり、以降、 グリース封入式軸受を交換していなかった。 以上の確認結果から、「グリース封入軸受の経年使 用に伴う潤滑不良」と診断した。潤滑不良の度合に ついては、異音発生時の触振動や、軸受の使用が5 年以上に及んでいることを考慮し、重度の潤滑不良 に進展しているものと評価した。 内輪キズ成分の卓越については、潤滑不良の進展 に伴い、転動体と内輪転走面の接触圧が増加して発 生したものと推測した。 軸受分解検証の結果、外観観察調査において「封 入グリースの枯渇と残渣の残留(図 5)」、「内外輪転走 面の接触痕の周回(図 6,7)」、「転動体キズおよびテン 2パーカラー(図 8)」を確認した。グリースの残渣が転 動体と転走面の間に噛み込み、手回しによる回転が できない状態となっていた。 寸法計測の結果、全ての部品において著しい摩耗 量は確認されなかった。ただし、外観観察調査にお いて、各部品の接触圧増加を示す痕跡(接触痕、キズ、 テンパーカラー)が確認されていることから、本事 象を検知したタイミングは、摩耗の初期段階であっ たと考えられる。 封入グリースの枯渇が確認されたことで、周波数 解析による「潤滑不良」の診断結果の妥当性を確認 することができた。また、軸受の各部品に生じた痕 跡から、潤滑不良の度合に関する評価の妥当性を得 ることができた。 異音が断続的に発生した要因については、軸受分 解検証の結果から、「部分的な油膜切れ」、「グリース 残渣の噛み込みによる回転の阻害」が考えられる。 「部分的な油膜切れ」については、ペースト状の グリースが枯渇していたことから、図 9 のように部 分的に油膜が切れて転動体と内外輪の転走面が直 接接触した可能性が考えられる。 「グリース残渣の噛み込みによる回転の阻害」に ついては、グリース残渣が噛み込み、軸受の手回し ができない状態になっていたことから、図 10 のよう に転動体の回転が断続的に止められ、静止した状態 で油膜の無い転走面上を摺動することで異音が発生 した可能性が考えられる。 上記の推定原因については、同時に発生している ことも考えられる。いずれにせよ、転動体のテンパ ーカラーと内外輪転走面の接触痕が確認されている ことから、転動体と転走面が無潤滑状態で転走また は摺動していたことは明確である。 振動加速度スヘ?クトル 振動加速度スヘ?クトル 振動加速度スヘ?クトル 振動速度スヘ?クトル 振動速度波形(異音なし) 振動速度波形(異音発生時) 異音なし 高周波数帯域の隆起 異音あり 異音あり 振動速度スヘ?クトル 振動速度スヘ?クトル 異音なし 異音あり fi±fr:286.2Hz 周期性を伴う衝撃波なし 図 5 封入グリース残留状態 図 6 外輪転走面の接触痕 図 7 内輪転走面の接触痕 図 8 転動体テンハ?ーカラー 図 4 異音発生時の振動データ 図 3 事象発生機器の振動加速度トレンド ●:振動加速度実効値 ▲:振動加速度ピーク値 (m/s2) 繰り返し 繰り返し 振動加速度限界判定 287 図 10 グリース残渣の噛み込みによる回転の阻害 異音発生に伴う振動加速度上昇 図 9 部分的な油膜切れ 2114繰り返し 振動加速度注意判定 3- 441 - 事例.2 転動体と保持器の接触による異音 横型遠心ポンプのモータ部において、異音を伴う 振動加速度の増加を確認した。(図 11) 異音発生時の振動測定データについて周波数解析 を実施した結果、図 12 の通り、振動加速度スペクト ルから「3k~12kHz の高周波数帯域の隆起」、「保持 器キズ成分(fc:18.3Hz)および転動体キズ成分(fb: 97.8Hz,6fb:587.1Hz)の卓越」を確認した。 保持器と転動体の損傷を示す欠陥周波数が確認さ れたが、振動加速度波形からは周期性を伴う衝撃波 や振幅は確認されなかった。よって、振動加速度増 加の原因を「潤滑不良」と診断した。転動体および 保持器のキズ成分の卓越および異音の発生について は、潤滑不良に伴う転動体と保持器の接触によるも のであり、損傷程度は軽微であると評価した。 軸受分解検証の結果、外観観察調査において「内 輪および外輪の転走面における転動体接触痕の中心 外れ(図 13)」、「転動体における不均等な保持器接触 痕(図 14)」、「軸受内部の摺動部における封入グリー スの著しい減少(図 15)」を確認した。 軸受部品の寸法計測においては、転動体において 約 6~7μm の摩耗を確認した。周波数解析で確認 された転動体キズ成分の卓越は、転動体の摩耗を示 す成分であったと判断できる。その他の部位の寸法 は規格値および公差の範囲内であり、異常は確認さ れなかった。軸受の損傷程度はごく軽微であること が分かった。 封入グリースの残留状態から、グリース不足によ って潤滑不良が発生した証拠を得られた。また、外 観観察調査で確認された痕跡は、潤滑不良の影響に よる軸受部品同士の接触圧の増加やラジアル隙間の 狭小状態を示すものと判断できる。 以上のことから、本事象の発生原因は「潤滑不良」 と確定することができ、周波数解析による診断結果 が妥当であると評価した。 振動加速度スヘ?クトル(0~15kHz) 異音発生前 異音発生時 振動加速度スヘ?クトル(0~600Hz) 異音発生前 異音発生時 異音発生前 異音発生時 図 13 内輪および外輪の転走面 図 11 事象発生機器の振動加速度トレンド fc:18.3Hz ※6fb:587.1Hz 間隔の卓越 fb:97.8Hz 外輪(接触痕の中心はずれ) 内輪(接触痕の中心はずれ) 保持器接触痕(多) 保持器接触痕(少) (m/s2) ● :振動加速度実効値 ▲ :振動加速度ピーク値 振動加速度限界判定 28本事象の軸受 〈参考〉新品軸受 21異音発生に伴う振動加速度上昇 14振動加速度注意判定 7 4 - 442 - 振動加速度スヘ?クトル(0~15kHz) 振動加速度スヘ?クトル(0~600Hz) 接触痕 高周波数帯域の隆起 振動加速度波形 振動加速度波形 図 12 異音発生時の振動加速度データ 図 14 転動体の不均等な保持器接触痕 図 15 封入グリースの残留状態 3.2 軸受キズ 軸受の各部品(内輪、外輪、転動体、保持器)にキズ 等の損傷が生じた場合、周波数成分は図 16 の通り現れ る。 ・振動加速度スペクトル 高周波数帯域(約 1kHz 以上)が隆起する。 損傷部位の固有振動数(欠陥周波数)が卓越する。 ・振動加速度波形 周期性を伴う衝撃波が発生する。 軸受が重度な損傷に至ると、振動速度の増加が確認 され、振動速度スペクトルにおいても損傷部位の欠陥 周波数の卓越が確認される。振動加速度波形において は、実効値とピーク値が全体的に増加して、潤滑不良 に酷似した波形となる。 事例.3 外輪転走面のフレーキング ルーツ式送排風機のモータ部において、振動加速 度および振動速度の上昇(図 17)と、モータブラケ ット接合部からのグリース基油漏洩が確認された。 周波数解析の結果、図 18 の通り、振動加速度ス ペクトルおよび振動速度スペクトルから「外輪キズ の周波数成分(fo:75.8Hz)の卓越」、振動加速度波形 から「外輪キズの周期性を伴う振幅」を確認した。 振動速度値の急激な上昇および振動速度スペクト ルにおける外輪キズ周波数成分の卓越に着目し、以 上の確認結果から、「重度な外輪の損傷」と診断し、 分解点検を推奨した。 軸受分解検証の結果、外観観察調査において「外 輪転走面から 10 mm大のフレーキングと不均等な摩 耗痕の周回(図 19)」、「内輪転走面の中心から外れた 摩耗痕の周回(図 20)」、「転動体のテンパーカラー (図 21)」を確認した。 軸受内に残留したグリースの鉄粉濃度を測定した 結果、1.435%wt を計測した。この値は鉄粉濃度計(出 光興産株式会社 OM-810)の参考基準値における異常 判定値(0.1%wt 以上)を大きく上回る値である。 寸法計測の結果、ラジアル隙間の公差範囲超過が 確認された。この結果は、内外輪の転走面が摩耗し てラジアル隙間が拡がったことを示しており、外観 観察調査で確認した内外輪の摩耗痕と符合する。転 動体においては、摩耗を示す値は確認されなかった。 以上の結果から、周波数解析の診断結果および損 傷程度の評価の妥当性を確認することができた。 分解点検記録から点検前のモータの状態を確認し た結果、モータブラケットのハウジング内径が公差 を超過していた。軸受嵌め合い部に摩耗が生じて隙 間が拡がっていたことが考えられる。 軸受分解検証の結果と分解点検記録の確認結果か 振動加速度スヘ?クトル(0~15kHz) 振動加速度スヘ?クトル(0~600Hz) ら、本事象の発生メカニズムについて以下の通り評 欠陥周波数 価した。(図 22) 高周波数帯域の隆起 1ハウジングの軸受嵌め合い部に隙間が生じた 状態でプーリと主軸が駆動ベルトに引っ張ら れることで軸受が偏角し、ラジアル荷重が不 振動加速度波形 均等となる。 2転動体が走面の中心を外れた位置で転走し、 転走面に中心を外した接触痕が生じる。 衝撃波〈周期性あり〉 3不均等なラジアル荷重によって、外輪転走面 図 16 損傷発生時の振動データ に不均等な摩耗痕が生じる。無負荷状態とな る箇所では接触痕や摩耗痕が発生しない。 4接触圧の著しい増加と摩耗痕とのシビアな接 触によってグリースがせん断される。せん断 されたグリースは基油と分離し、基油がモー タ外に漏洩する。 5グリースの性能低下で無潤滑に近い状態とな り、外輪のフレーキングおよび転動体のテン パーカラーを引き起こす。 本事象は、前述の事例.1 に類似するものであり、 事例.1 の事象が進展して過酷な状態に至った場合、 本事象のような損傷に至ることが推測される。 ● :振動加速度実効値 ▲ :振動加速度ピーク値 振動速度注意判定 振動加速度注意判定 (mm/s) (m/s2) ● :振動速度 8 286 214 142 7 - 443 - 振動加速度限界判定 5事象発生に伴う振動加速度上昇 事象発生に伴う振動速度上昇 図 17 事象発生機器の振動トレンド 振動加速度スヘ?クトル 事象発生前 事象発生時 振動速度スヘ?クトル 事象発生前 事象発生時 振動加速度波形 事象発生前 事象発生時 フレーキング・摩耗痕あり 転動体テンパーカラー 摩耗痕の中心外れ 図 18 フレーキング発生時の振動加速度データ 図 19 外輪転走面のフレーキングと摩耗分布 図 20 内輪転走面摩耗痕 図 21 転動体テンハ?ーカラー 摩耗痕なし 図 22 軸受の偏角よるラジアル隙間狭小事象 振動加速度スヘ?クトル 振動速度スヘ?クトル 振動加速度波形 ※外輪キズ fo 周期 fo:75.8Hz fo の倍数成分 fo:75.8Hz fo の倍数成分 - 444 - ベルトの引?張り 63.3 基礎剛性に関与する振動増加 回転機器において発生する異常は、軸受の異常を起 因とする事象の他、機器を据え付ける基礎部の構造的 影響によっても引き起こされる事象が確認されている。 基礎やフレームは回転機器が発生する回転モーメン トを受け止める働きを有する。その一方で、基礎の剛 性低下や歪みは共振や揺動、回転不釣り合い等を発生 させ、既存の振動を増大させる原因ともなる。 事例.4 コンクリート基礎の剛性変化に伴う共振現象 横型遠心ポンプの本体部において、振動速度の急 激な上昇が確認された。(図 23) 周波数解析の結果、図 24 の通り、振動速度スペク トルにおいて 199.6Hz の成長が確認された。 199.6Hz の周波数成分は、運転中の当該機器にお いて定常的に確認されており、図 25 の通り、同系列 同型機器でも確認されている。また、軸受の各部 品の欠陥周波数との近似は確認されない。 同系列同型機3台の固有振動数調査を実施した結 果、図 26 の通り、当該機器(機器A)の本体部におい て、運転中に確認される周波数成分 199.6Hz と近 似する固有振動数 190.8Hz が確認された。 以上の確認結果から、運転中に発生する周波数成 分と本体部の固有振動数が共振点となって振動速度 が上昇したものと診断した。 当該機器の本体部はベースフレームのサポートで 固定されている。ベースフレームの内側にはコンク リートが充填されているが、現場調査において、ベ ースフレームとコンクリートに隙間が生じているこ とを確認している。 ベースフレームの補強を施すことで固有振動数を 変化させられるものと推定し、図 27 の要領でベー スフレームに鋼材を固定させて固有振動数を移動さ せる実験を行った。実験の結果、図 28 の通り、鋼 材の枚数を増やす毎に固有振動数が変化することを 確認した。また、図 29 の通り、固有振動数の変化 に伴って、運転時の振動速度が低下することを確認 した。 このことから、運転時の振動伝播によってベース フレームと充填コンクリートの付着力が低下して経 時的に隙間が拡がり、基礎の剛性低下および固有振 動数の変化(運転時の周波数成分 199.6Hz との近似) に繋がったものと考えられる。 (mm/s) ●:振動速度 86 4 2 機器 A※事象発生機器 190.8Hz 機器 B 機器 C 本事象においては、鋼材を用いた補強を施すこと で、固有振動数の移動および振動速度の低減が可能 であることを確認することができた。 本事例は、類似事象が発生した際の振動低減処置 を検討する上で有効な事例となる。 事象発生に伴う振動速度上昇 199.6Hz 199.6Hz 振動速度限界判定 振動速度注意判定 図 23 事象発生時の振動速度トレンド 振動速度スヘ?クトル 振動速度スヘ?クトル 事象発生前 事象発生時 図 26 同系列同型機の固有振動数スヘ?クトル比較 図 24 事象発生時の振動速度スペクトル 振動速度スヘ?クトル 199.6Hz 198.1Hz 図 25 同系列同型機の振動速度スペクトル比較 図 27 鋼材固定による固有振動数移動実験 振動速度スヘ?クトル 198.1Hz 図-29 回転部の振動と基礎剛性の関係 図 28 鋼材補強による固有振動数の変化 機器 A※事象発生機器 190.8Hz 固有振動数スペクトル 運転時の振動速度スペクトル 199.6Hz 179.1Hz 周波数成分が近似(共振点)なし 198.1Hz 240.7Hz 198.1Hz 振動速度スヘ?クトル - 445 - 機器 B 固有振動数スペクトル 運転時の振動速度スペクトル 機器 C 固有振動数スペクトル 周波数成分が近似(共振点)なし 運転時の振動速度スペクトル 7補強用鋼材 なし 補強用鋼材 1枚 187.9Hz 208.4Hz 補強用鋼材 2枚 123.3Hz 補強用鋼材 3枚 補強用鋼材 4枚 123.3Hz 周波数成分の近似(共振点)あり 補強なし 補強1枚 補強2枚 補強3枚 補強4枚 図 29 鋼材固定による振動速度の変化 4. まとめ 本稿で取り上げた振動解析事例については、いず れも異常事象の診断結果をアウトプットするだけに 留まらず、解析結果の妥当性確認や発生原因の究明 など、より踏み込んだ診断を実施した事例となって いる。また、これらの事例は、同様または類似する 事象が発生した際に活用できる有用な経験となる他、 設備管理および保修部門の関係者との情報共有およ び理解を進める際の有効な資料となっている。 今後も振動解析で得られた診断結果や有用な知見 を展開させることで、六ヶ所再処理工場の適正な保 全活動に寄与していく所存である。 参考文献 [1] ISO 基準に基づく機械設備の状態監視と診断(振 動) 振動技術研究会 [2] ISO18436-4 準拠トライボロジーに基づくメンテナ ンス 日本トライボロジー学会編 [3] 図説・設備診断技術シリーズ1回転機械診断の進 め方 豊田利夫著 株式会社 JIPM ソリューション 8- 446 -“ “六ヶ所再処理工場における回転機器の設備診断 -振動解析による設備診断- “ “佐々木 一人,Ichito SASAKI,瀬川 佑太,Yuta SEGAWA,吉村 定志,Sadayuki YOSHIMURA,沢田 悠,Haruka SAWADA,須藤 重輝,Shigeki SUTOH
2.1 設備診断業務の進め方 設備診断業務の概要を図1に示す。 計画段階では、測定対象機器の選定および対象機 器毎の判定基準値の設定を行う。 実行段階では、簡易測定による振動値(振動速度 値・振動加速度値)の計測を実施し、異常判定の超過 や著しいトレンド変化の有無を確認する。異常判定 超過および著しいトレンド変化が確認された際は、 精密測定(周波数データ採取)を実施し、振動解析に よる異常原因の診断を行う。診断の結果に応じ、グ リスアップや分解点検等の処置推奨、測定周期の短 縮による監視強化を行う。 評価段階では、軸受分解検証や点検記録の確認に よる診断結果の妥当性評価を必要に応じて行う。改 善段階では、新たな知見について診断事例資料を作 成し、診断ノウハウを蓄積する。 改善段階で作成された判定基準値の改訂案を判定 基準値に設定し運用する。また、診断事例資料につ 連絡先:佐々木 一人 いては、機器の管理箇所へ展開するとともに、現場 調査および振動解析時のノウハウとして活用する。 2.2 診断結果の検証 診断結果の検証作業として、分解点検記録の確認や 軸受分解検証等を実施し、振動診断結果の妥当性を評 1
3.異常事象と振動解析事例 回転機器の振動診断において検知できる異常事象と して、「潤滑不良」、「軸受キズ」、「基礎剛性に関与する 振動増加」等が挙げられる。本稿では、上記の異常事 象と振動解析のポイント、異常事象の振動解析事例に ついて紹介する。 3.1 価する。検証作業の対象は、下記に該当する機器と 潤滑不良 している。 「潤滑不良」はグリースや潤滑油の給脂不足および 1振動診断で著しい異常と診断し、分解点検を推 消耗に伴う油膜形成の悪化により、軸受内部の摺動面 奨した機器(TBM ,CBM,BM 問わず) でシビアな接触が発生する事象である。 2定期点検機器(TBM)の内、振動診断で振動値の 潤滑不良発生時の周波数成分は図 2 の通り現れる。 上昇傾向等の異常兆候を確認した機器 ・振動加速度スペクトル 軸受分解検証では、「軸受の分解」、「外観観察調査」、 高周波数帯域(約 1kHz 以上)が隆起する。 「封入グリース回収と鉄粉濃度測定」、「各部品の寸 ・振動加速度波形 法計測による規格値、公差との比較」等を実施する。 実効値が増加してピーク値との差が少なくなる。 診断結果の検証は 2010 年度から開始している。 周期性を伴う衝撃波や振幅が確認されない。 2014 年時点で、20 件(内、113 件、27 件)の作業を 実施し、振動解析結果との整合性を確認した。 振動加速度スヘ?クトル(0~15kHz) 図1 設備診断業務フロー 高周波数帯域の隆起 振動加速度波形 実効値の増加、周期性を伴う衝撃波や振幅なし - 440 - 図2 潤滑不良発生時の振動データの特徴 事例.1 グリース不足による断続的な異音 横型遠心ポンプのモータ部において、断続的な異 音と振動加速度の急激な上昇(図 3)を確認した。異音 発生時においては、不規則な触振動を確認した。 異音発生時の振動データを採取して周波数解析を 実施した結果、図 4 の通り、異音発生時に振動加速 度スペクトルから「高周波数帯域(1kHz~)の隆起」、 振動速度スペクトルから「内輪キズ成分(fi±fr: 286.2Hz)の卓越」、振動加速度波形から「周期性を伴 わない振幅の増加」を確認した。また、当該モータ は、過去の分解点検の実績が約 5 年前であり、以降、 グリース封入式軸受を交換していなかった。 以上の確認結果から、「グリース封入軸受の経年使 用に伴う潤滑不良」と診断した。潤滑不良の度合に ついては、異音発生時の触振動や、軸受の使用が5 年以上に及んでいることを考慮し、重度の潤滑不良 に進展しているものと評価した。 内輪キズ成分の卓越については、潤滑不良の進展 に伴い、転動体と内輪転走面の接触圧が増加して発 生したものと推測した。 軸受分解検証の結果、外観観察調査において「封 入グリースの枯渇と残渣の残留(図 5)」、「内外輪転走 面の接触痕の周回(図 6,7)」、「転動体キズおよびテン 2パーカラー(図 8)」を確認した。グリースの残渣が転 動体と転走面の間に噛み込み、手回しによる回転が できない状態となっていた。 寸法計測の結果、全ての部品において著しい摩耗 量は確認されなかった。ただし、外観観察調査にお いて、各部品の接触圧増加を示す痕跡(接触痕、キズ、 テンパーカラー)が確認されていることから、本事 象を検知したタイミングは、摩耗の初期段階であっ たと考えられる。 封入グリースの枯渇が確認されたことで、周波数 解析による「潤滑不良」の診断結果の妥当性を確認 することができた。また、軸受の各部品に生じた痕 跡から、潤滑不良の度合に関する評価の妥当性を得 ることができた。 異音が断続的に発生した要因については、軸受分 解検証の結果から、「部分的な油膜切れ」、「グリース 残渣の噛み込みによる回転の阻害」が考えられる。 「部分的な油膜切れ」については、ペースト状の グリースが枯渇していたことから、図 9 のように部 分的に油膜が切れて転動体と内外輪の転走面が直 接接触した可能性が考えられる。 「グリース残渣の噛み込みによる回転の阻害」に ついては、グリース残渣が噛み込み、軸受の手回し ができない状態になっていたことから、図 10 のよう に転動体の回転が断続的に止められ、静止した状態 で油膜の無い転走面上を摺動することで異音が発生 した可能性が考えられる。 上記の推定原因については、同時に発生している ことも考えられる。いずれにせよ、転動体のテンパ ーカラーと内外輪転走面の接触痕が確認されている ことから、転動体と転走面が無潤滑状態で転走また は摺動していたことは明確である。 振動加速度スヘ?クトル 振動加速度スヘ?クトル 振動加速度スヘ?クトル 振動速度スヘ?クトル 振動速度波形(異音なし) 振動速度波形(異音発生時) 異音なし 高周波数帯域の隆起 異音あり 異音あり 振動速度スヘ?クトル 振動速度スヘ?クトル 異音なし 異音あり fi±fr:286.2Hz 周期性を伴う衝撃波なし 図 5 封入グリース残留状態 図 6 外輪転走面の接触痕 図 7 内輪転走面の接触痕 図 8 転動体テンハ?ーカラー 図 4 異音発生時の振動データ 図 3 事象発生機器の振動加速度トレンド ●:振動加速度実効値 ▲:振動加速度ピーク値 (m/s2) 繰り返し 繰り返し 振動加速度限界判定 287 図 10 グリース残渣の噛み込みによる回転の阻害 異音発生に伴う振動加速度上昇 図 9 部分的な油膜切れ 2114繰り返し 振動加速度注意判定 3- 441 - 事例.2 転動体と保持器の接触による異音 横型遠心ポンプのモータ部において、異音を伴う 振動加速度の増加を確認した。(図 11) 異音発生時の振動測定データについて周波数解析 を実施した結果、図 12 の通り、振動加速度スペクト ルから「3k~12kHz の高周波数帯域の隆起」、「保持 器キズ成分(fc:18.3Hz)および転動体キズ成分(fb: 97.8Hz,6fb:587.1Hz)の卓越」を確認した。 保持器と転動体の損傷を示す欠陥周波数が確認さ れたが、振動加速度波形からは周期性を伴う衝撃波 や振幅は確認されなかった。よって、振動加速度増 加の原因を「潤滑不良」と診断した。転動体および 保持器のキズ成分の卓越および異音の発生について は、潤滑不良に伴う転動体と保持器の接触によるも のであり、損傷程度は軽微であると評価した。 軸受分解検証の結果、外観観察調査において「内 輪および外輪の転走面における転動体接触痕の中心 外れ(図 13)」、「転動体における不均等な保持器接触 痕(図 14)」、「軸受内部の摺動部における封入グリー スの著しい減少(図 15)」を確認した。 軸受部品の寸法計測においては、転動体において 約 6~7μm の摩耗を確認した。周波数解析で確認 された転動体キズ成分の卓越は、転動体の摩耗を示 す成分であったと判断できる。その他の部位の寸法 は規格値および公差の範囲内であり、異常は確認さ れなかった。軸受の損傷程度はごく軽微であること が分かった。 封入グリースの残留状態から、グリース不足によ って潤滑不良が発生した証拠を得られた。また、外 観観察調査で確認された痕跡は、潤滑不良の影響に よる軸受部品同士の接触圧の増加やラジアル隙間の 狭小状態を示すものと判断できる。 以上のことから、本事象の発生原因は「潤滑不良」 と確定することができ、周波数解析による診断結果 が妥当であると評価した。 振動加速度スヘ?クトル(0~15kHz) 異音発生前 異音発生時 振動加速度スヘ?クトル(0~600Hz) 異音発生前 異音発生時 異音発生前 異音発生時 図 13 内輪および外輪の転走面 図 11 事象発生機器の振動加速度トレンド fc:18.3Hz ※6fb:587.1Hz 間隔の卓越 fb:97.8Hz 外輪(接触痕の中心はずれ) 内輪(接触痕の中心はずれ) 保持器接触痕(多) 保持器接触痕(少) (m/s2) ● :振動加速度実効値 ▲ :振動加速度ピーク値 振動加速度限界判定 28本事象の軸受 〈参考〉新品軸受 21異音発生に伴う振動加速度上昇 14振動加速度注意判定 7 4 - 442 - 振動加速度スヘ?クトル(0~15kHz) 振動加速度スヘ?クトル(0~600Hz) 接触痕 高周波数帯域の隆起 振動加速度波形 振動加速度波形 図 12 異音発生時の振動加速度データ 図 14 転動体の不均等な保持器接触痕 図 15 封入グリースの残留状態 3.2 軸受キズ 軸受の各部品(内輪、外輪、転動体、保持器)にキズ 等の損傷が生じた場合、周波数成分は図 16 の通り現れ る。 ・振動加速度スペクトル 高周波数帯域(約 1kHz 以上)が隆起する。 損傷部位の固有振動数(欠陥周波数)が卓越する。 ・振動加速度波形 周期性を伴う衝撃波が発生する。 軸受が重度な損傷に至ると、振動速度の増加が確認 され、振動速度スペクトルにおいても損傷部位の欠陥 周波数の卓越が確認される。振動加速度波形において は、実効値とピーク値が全体的に増加して、潤滑不良 に酷似した波形となる。 事例.3 外輪転走面のフレーキング ルーツ式送排風機のモータ部において、振動加速 度および振動速度の上昇(図 17)と、モータブラケ ット接合部からのグリース基油漏洩が確認された。 周波数解析の結果、図 18 の通り、振動加速度ス ペクトルおよび振動速度スペクトルから「外輪キズ の周波数成分(fo:75.8Hz)の卓越」、振動加速度波形 から「外輪キズの周期性を伴う振幅」を確認した。 振動速度値の急激な上昇および振動速度スペクト ルにおける外輪キズ周波数成分の卓越に着目し、以 上の確認結果から、「重度な外輪の損傷」と診断し、 分解点検を推奨した。 軸受分解検証の結果、外観観察調査において「外 輪転走面から 10 mm大のフレーキングと不均等な摩 耗痕の周回(図 19)」、「内輪転走面の中心から外れた 摩耗痕の周回(図 20)」、「転動体のテンパーカラー (図 21)」を確認した。 軸受内に残留したグリースの鉄粉濃度を測定した 結果、1.435%wt を計測した。この値は鉄粉濃度計(出 光興産株式会社 OM-810)の参考基準値における異常 判定値(0.1%wt 以上)を大きく上回る値である。 寸法計測の結果、ラジアル隙間の公差範囲超過が 確認された。この結果は、内外輪の転走面が摩耗し てラジアル隙間が拡がったことを示しており、外観 観察調査で確認した内外輪の摩耗痕と符合する。転 動体においては、摩耗を示す値は確認されなかった。 以上の結果から、周波数解析の診断結果および損 傷程度の評価の妥当性を確認することができた。 分解点検記録から点検前のモータの状態を確認し た結果、モータブラケットのハウジング内径が公差 を超過していた。軸受嵌め合い部に摩耗が生じて隙 間が拡がっていたことが考えられる。 軸受分解検証の結果と分解点検記録の確認結果か 振動加速度スヘ?クトル(0~15kHz) 振動加速度スヘ?クトル(0~600Hz) ら、本事象の発生メカニズムについて以下の通り評 欠陥周波数 価した。(図 22) 高周波数帯域の隆起 1ハウジングの軸受嵌め合い部に隙間が生じた 状態でプーリと主軸が駆動ベルトに引っ張ら れることで軸受が偏角し、ラジアル荷重が不 振動加速度波形 均等となる。 2転動体が走面の中心を外れた位置で転走し、 転走面に中心を外した接触痕が生じる。 衝撃波〈周期性あり〉 3不均等なラジアル荷重によって、外輪転走面 図 16 損傷発生時の振動データ に不均等な摩耗痕が生じる。無負荷状態とな る箇所では接触痕や摩耗痕が発生しない。 4接触圧の著しい増加と摩耗痕とのシビアな接 触によってグリースがせん断される。せん断 されたグリースは基油と分離し、基油がモー タ外に漏洩する。 5グリースの性能低下で無潤滑に近い状態とな り、外輪のフレーキングおよび転動体のテン パーカラーを引き起こす。 本事象は、前述の事例.1 に類似するものであり、 事例.1 の事象が進展して過酷な状態に至った場合、 本事象のような損傷に至ることが推測される。 ● :振動加速度実効値 ▲ :振動加速度ピーク値 振動速度注意判定 振動加速度注意判定 (mm/s) (m/s2) ● :振動速度 8 286 214 142 7 - 443 - 振動加速度限界判定 5事象発生に伴う振動加速度上昇 事象発生に伴う振動速度上昇 図 17 事象発生機器の振動トレンド 振動加速度スヘ?クトル 事象発生前 事象発生時 振動速度スヘ?クトル 事象発生前 事象発生時 振動加速度波形 事象発生前 事象発生時 フレーキング・摩耗痕あり 転動体テンパーカラー 摩耗痕の中心外れ 図 18 フレーキング発生時の振動加速度データ 図 19 外輪転走面のフレーキングと摩耗分布 図 20 内輪転走面摩耗痕 図 21 転動体テンハ?ーカラー 摩耗痕なし 図 22 軸受の偏角よるラジアル隙間狭小事象 振動加速度スヘ?クトル 振動速度スヘ?クトル 振動加速度波形 ※外輪キズ fo 周期 fo:75.8Hz fo の倍数成分 fo:75.8Hz fo の倍数成分 - 444 - ベルトの引?張り 63.3 基礎剛性に関与する振動増加 回転機器において発生する異常は、軸受の異常を起 因とする事象の他、機器を据え付ける基礎部の構造的 影響によっても引き起こされる事象が確認されている。 基礎やフレームは回転機器が発生する回転モーメン トを受け止める働きを有する。その一方で、基礎の剛 性低下や歪みは共振や揺動、回転不釣り合い等を発生 させ、既存の振動を増大させる原因ともなる。 事例.4 コンクリート基礎の剛性変化に伴う共振現象 横型遠心ポンプの本体部において、振動速度の急 激な上昇が確認された。(図 23) 周波数解析の結果、図 24 の通り、振動速度スペク トルにおいて 199.6Hz の成長が確認された。 199.6Hz の周波数成分は、運転中の当該機器にお いて定常的に確認されており、図 25 の通り、同系列 同型機器でも確認されている。また、軸受の各部 品の欠陥周波数との近似は確認されない。 同系列同型機3台の固有振動数調査を実施した結 果、図 26 の通り、当該機器(機器A)の本体部におい て、運転中に確認される周波数成分 199.6Hz と近 似する固有振動数 190.8Hz が確認された。 以上の確認結果から、運転中に発生する周波数成 分と本体部の固有振動数が共振点となって振動速度 が上昇したものと診断した。 当該機器の本体部はベースフレームのサポートで 固定されている。ベースフレームの内側にはコンク リートが充填されているが、現場調査において、ベ ースフレームとコンクリートに隙間が生じているこ とを確認している。 ベースフレームの補強を施すことで固有振動数を 変化させられるものと推定し、図 27 の要領でベー スフレームに鋼材を固定させて固有振動数を移動さ せる実験を行った。実験の結果、図 28 の通り、鋼 材の枚数を増やす毎に固有振動数が変化することを 確認した。また、図 29 の通り、固有振動数の変化 に伴って、運転時の振動速度が低下することを確認 した。 このことから、運転時の振動伝播によってベース フレームと充填コンクリートの付着力が低下して経 時的に隙間が拡がり、基礎の剛性低下および固有振 動数の変化(運転時の周波数成分 199.6Hz との近似) に繋がったものと考えられる。 (mm/s) ●:振動速度 86 4 2 機器 A※事象発生機器 190.8Hz 機器 B 機器 C 本事象においては、鋼材を用いた補強を施すこと で、固有振動数の移動および振動速度の低減が可能 であることを確認することができた。 本事例は、類似事象が発生した際の振動低減処置 を検討する上で有効な事例となる。 事象発生に伴う振動速度上昇 199.6Hz 199.6Hz 振動速度限界判定 振動速度注意判定 図 23 事象発生時の振動速度トレンド 振動速度スヘ?クトル 振動速度スヘ?クトル 事象発生前 事象発生時 図 26 同系列同型機の固有振動数スヘ?クトル比較 図 24 事象発生時の振動速度スペクトル 振動速度スヘ?クトル 199.6Hz 198.1Hz 図 25 同系列同型機の振動速度スペクトル比較 図 27 鋼材固定による固有振動数移動実験 振動速度スヘ?クトル 198.1Hz 図-29 回転部の振動と基礎剛性の関係 図 28 鋼材補強による固有振動数の変化 機器 A※事象発生機器 190.8Hz 固有振動数スペクトル 運転時の振動速度スペクトル 199.6Hz 179.1Hz 周波数成分が近似(共振点)なし 198.1Hz 240.7Hz 198.1Hz 振動速度スヘ?クトル - 445 - 機器 B 固有振動数スペクトル 運転時の振動速度スペクトル 機器 C 固有振動数スペクトル 周波数成分が近似(共振点)なし 運転時の振動速度スペクトル 7補強用鋼材 なし 補強用鋼材 1枚 187.9Hz 208.4Hz 補強用鋼材 2枚 123.3Hz 補強用鋼材 3枚 補強用鋼材 4枚 123.3Hz 周波数成分の近似(共振点)あり 補強なし 補強1枚 補強2枚 補強3枚 補強4枚 図 29 鋼材固定による振動速度の変化 4. まとめ 本稿で取り上げた振動解析事例については、いず れも異常事象の診断結果をアウトプットするだけに 留まらず、解析結果の妥当性確認や発生原因の究明 など、より踏み込んだ診断を実施した事例となって いる。また、これらの事例は、同様または類似する 事象が発生した際に活用できる有用な経験となる他、 設備管理および保修部門の関係者との情報共有およ び理解を進める際の有効な資料となっている。 今後も振動解析で得られた診断結果や有用な知見 を展開させることで、六ヶ所再処理工場の適正な保 全活動に寄与していく所存である。 参考文献 [1] ISO 基準に基づく機械設備の状態監視と診断(振 動) 振動技術研究会 [2] ISO18436-4 準拠トライボロジーに基づくメンテナ ンス 日本トライボロジー学会編 [3] 図説・設備診断技術シリーズ1回転機械診断の進 め方 豊田利夫著 株式会社 JIPM ソリューション 8- 446 -“ “六ヶ所再処理工場における回転機器の設備診断 -振動解析による設備診断- “ “佐々木 一人,Ichito SASAKI,瀬川 佑太,Yuta SEGAWA,吉村 定志,Sadayuki YOSHIMURA,沢田 悠,Haruka SAWADA,須藤 重輝,Shigeki SUTOH