高レベル廃液ガラス固化設備のアクティブ試験の状況

公開日:
カテゴリ: 第11回
1.はじめに
高レベル廃液ガラス固化設備のアクティブ試験については、モックアップ試験装置を用いたコールド 試験を2年間実施し、その成果を実機に反映することで、ガラス溶融炉の設備・運転方法の改善を図 った。さらに、使用前検査の検査前条件としてガラス固化試験を実施し、ガラス溶融炉の安定運転と 性能が確認できたことから、操業後の長期安定運転の見通しを得た。 六ヶ所再処理工場は、試験運転の最終段階となるアク ティブ試験(使用済燃料を用いた試験)を2006年3月か ら開始し、主要工程であるせん断、溶解、抽出等の性能 確認は終了し、ガラス固化設備に関する試験を残すのみ となっている。ガラス固化設備は、通水作動試験、化学試験の試 を経て、アクティブ試験の最終段階にある。 特に、モックアップ試験装置を用いたコールド試験を 2年間実施し、その成果を実機に反映することで、ガラ ス溶融炉の設備・運転方法の改善を図った。 これら改善の効果を確認すると共に、モックアップ試 験装置と実機の相違を確認するため、事前確認試験を行 い、改善効果と安定運転の見通しを得た。 さらに、使用前検査の検査前条件としてガラス固化試 験を実施し、ガラス溶融炉の安定運転と性能(廃液供給 速度70L/h)が確認できたことから、操業後の長期安定運 転の見通しを得た。
本報告では、ガラス固化設備におけるアクティブ試験 状況について報告する。 2004.9 ▼ 運転課題に遭遇したが、その都度、原因究明と対策を図 ることにより、再発を防止してきた(Fig.2 参照)。 Fig.2 ガラス固化設備におけるアクティブ試験の経緯
2.設備概要
2.1 高レベル廃液ガラス固化施設の概要 高レベル廃液ガラス固化施設は、高レベル廃液(高レ ベル濃縮廃液、アルカリ濃縮廃液、不溶解残渣廃液)と 原料ビーズを溶融し、ガラス固化体を製造・検査する施 設である。特に、ガラス溶融炉、廃ガス処理設備、溶接 機等は、ステンレス鋼でライニングされた固化セル内 (Fig.3 参照)に設置されており、クレーンやパワーマニ ピュレータによる遠隔操作で保守・点検を実施する。 Fig.3 固化セル(主要機器が設置された大型セル) 2.2 ガラス溶融炉の概要 ガラス溶融炉は、高レベル廃液をガラス原料とともに ガラス溶融炉に連続供給し、直接通電加熱(ジュール加 熱)によって 1200°C程度で溶融した後、間欠的に固化体 容器に抜き出すことによりガラス固化体を製造する装置 である。ガラス溶融炉の構造は、耐火物を金属製のケー シングで囲った構造であり、溶融槽には、対向する壁面 に主電極及び補助電極が設置されている(Fig.4参照)。 炉底部には、溶融したガラスをガラス固化体容器に注 入するために、溶融ガラス抜き出し用の流下ノズルが設 置されており、流下ノズルを高周波加熱・空気冷却する ことでガラスの抜き出し、停止を行うことができる。 Fig.4 ガラス溶融炉の概念図 仮焼層:ガラス溶融炉上部から投入されるガラス原料と廃液の 混合物が加熱されることにより、溶融ガラス表面において、廃 液の水分の蒸発、脱硝等の反応が起こるとともに、ガラス原料 が溶融し廃棄物成分と混ざり合う過程の層であり、溶融ガラス からの放熱を抑制する働きも有する。 - 6 - Fig.6 モックアップ試験における仮焼層 (2)白金族元素管理 高レベル廃液には、白金族元素(Ru、Rh、Pd)が存在 する。白金族元素は、1ガラスへの溶融性が悪い(Fig.7 参照)、2密度が大きく沈降しやすい、3濃度増加により 溶融ガラスの粘性が増加する、4濃度増加により溶融ガ ラスの電気抵抗が低下する、などの特徴を有する。 このため、白金族元素は、ガラス溶融炉内で沈降・堆 積することで、溶融ガラスの粘性上昇や電気抵抗を低下 させ、流下性低下や炉底加熱性低下に繋がることが確認 されている。 2.3 ガラス溶融炉の運転ポイント (1)炉内温度管理 ガラス溶融炉運転は、ガラス温度と気相温度を目標範 囲内に制御する必要があり、1主電極間電力(ジュール 加熱)と2間接加熱電力によって調整する(Fig.5 参照)。 これまでの経験から、これら温度制御には仮焼層(Fig.6 参照)のコントロールが重要であることが分かっている。 仮焼層形成の状態は、高レベル廃液の性状(廃液濃度、 廃液組成)や電力バランス(主電極間電力と間接加熱電 力)等によって変化するため、高レベル廃液の性状等に 応じた電力バランスの設定が必要となる。 ガラス温度4 21ガラス温度3 炉底温度2 ??? ??? ?? ???? ???Ψ?????? ???? ?????? ??????? ??????? ???? ??ь??щ ????щ ?? ?я?????? Fig.5 ガラス溶融炉の運転 ガラス温度1 ガラス温度2 そこで、炉底部温度を低くし、溶融ガラスの粘性を上 昇させることで、白金族元素の沈降・堆積を抑制し、ガ ラスを抜き出す(流下)時のみ炉底温度を上昇させる運 転(炉底低温運転)を実施している。また、白金族元素 を含まない模擬廃液で定期的に洗浄運転を行い、流下性 低下時に金属製の棒を挿入する等の対策も採用している。 白金族元素管理に係る運転指標は、KMOC試験の知見 に基づき、白金族元素の沈降・堆積が促進した場合に大 きく影響する炉底加熱性と流下性を監視している(Fig.8 参照)。 間接加熱装置 主電極 流下ノズル 3 4 ??ь???????? ?????? e???????????lj?????? ???????? e???????????????????? ???Ψ?????????lj????? ????????? ????? MI JП??? ????? MI JП??? e???????????Lj??????? ???П???????? Fig.8 白金族元素管理に係る運転指標 Fig.7 模擬ガラス中の白金族元素 1高レベル廃液及びガラス原料 (ビーズ形状)(連続供給) ????????? ??????????2 3.アクティブ試験状況 3.1 当初の試験状況 アクティブ試験開始当初である2007年(A系第4ステッ プ)と2008年(A系第5ステップ)における炉内温度と白金 族元素管理指標の推移をFig.9、10に示す。これら試験で は、廃液組成に応じた温度管理ができなかった等の理由 により、白金族元素管理に係る運転指標が試験経過と共 に低下する傾向にあった。 3.2 運転方法および設備の改善 上記の原因究明と対策(改善)のため、2年間のモック アップ試験を実施し、実機の運転方法および設備改善を 行った。 (1) 炉内温度管理 以下に炉内温度管理に関わる改善内容を示す。 1 実廃液組成での安定運転範囲が把握できていなか ったことから、実廃液と模擬廃液の相違を踏まえ、 モックアップ試験により、安定運転範囲(廃液条 件、廃液供給条件)を確認した。 2 ガラス温度監視に必要な温度計が少なかったこと から、モックアップ試験により追加位置を確認し、 実機に温度計を追加した。 3 電力制御が経験に頼るところが多く、未知の廃液 に対して対応できなかったことから、モックアッ プ試験を通じ、運転習熟を行うと共に、電力調整 の計算コードを導入した。 (2) 白金族元素管理 以下に白金族元素管理に関わる改善内容を示す。 1 白金族元素管理の観点から、ガラス温度、炉底温 度の運転管理目標が明確でなかったため、モック アップ試験の結果を踏まえ、温度管理目標を設定 した。 2 運転に伴い、流下ノズルの加熱性が低下していた ため、流下ノズルの加熱性向上のための設備改善 を実施した。 3 遠隔操作を想定した回復運転操作等になっておら ず、回復操作までに時間を要すると共に、回復が 十分でなかったため、定期的に回復運転を実施す ると共に、回復運転、保持運転等のマニュアルを 詳細に整備した。 - 7 - 3.3 改善後の運転結果 (1)炉内温度管理 設備改善やモックアップ試験による運転習熟などの効 果として、改善後の運転(B系事前確認試験およびガラ ス固化試験)の炉内温度は非常に安定した。(Fig.11 参照) (2)白金族元素管理 上記炉内温度管理、設備改善、定期的な洗浄運転等の 改善効果として、改善後の運転(B系事前確認試験およ びガラス固化試験)では白金族元素管理に係る運転指標 類が非常に安定しており、定期的な洗浄運転によって炉 内運転状態を低下させることなく、運転継続できること を確認した(Fig.12参照)。 4.まとめ 数々のトラブルを経験したものの、モックアップ試験 による運転方法の確立、設備改造等により、技術課題を 克服した。今後、操業運転で現行炉の運転実績を積みつ つ、次世代炉等の技術開発を通して、より安全で、安定 したガラス溶融炉の運転を目指す予定である。 Fig.11 改善後の炉内温度推移 90分 B系事前確認試験 B系ガラス固化試験 洗浄運転 洗浄運転 洗浄運転 洗浄運転 洗浄運転 洗浄運転 洗浄運転 洗浄運転 80分 200A到達時主底抵抗 100kg/h到達時間 50kg/h到達時間 00分 Fig.12 改善後の白金族元素管理指標の推移 Fig.10 当初の白金族元素管理指標の推移 - 8 - 70分 Fig.9 当初の炉内温度推移 60分 50分 40分 白金族元素堆積指標 30分 20分 10分 参考文献 [1] (一財)エネルギー総合工学研究所、”核燃料サイク ル技術の安定性に関する検討 第一ステップ再処理 工場におけるガラス固化設備の安定運転 実現に向 けた見通しの技術的評価 報告書”、 IAE-1323715-1 (2013年5月) [2] 日本原子力学会、” テキスト「核燃料サイクル」7-1. 「高レベル廃棄物処理」” [3] 濵田 隆、”六ヶ所再処理工場の現状「ガラス固化試験 の状況」”、日本原子力学会、第 9 回 再処理・リサ イクル部会セミナ(平成25年6月)“ “高レベル廃液ガラス固化設備のアクティブ試験の状況 “ “山崎 淳司,Atsushi Yamazaki,福井 寿樹,Toshiki Fukui
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)