津波レベル 1PRA を用いた原子力発電所における安全対策の 評価検討
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カテゴリ: 第11回
1.緒論
東日本大震災で発生した津波は、福島第一原子力 発電所の BWR プラントに過酷事故(シビアアクシデ ント)を引き起こした。原子力発電所の再稼働に求め られている高い安全性を実現するためには、津波に よる炉心損傷リスクを低減させる必要があ本研 究では、福島 2、3 号機とほぼ同型である女川原子力 発電所 2 号機の、再稼働申請に伴う安全対策の 1 つ る電源確保がどの程度炉心損傷リスクを低減さ せるか、確率論的リスク評価(レベル 1PRA)を用いて 評価検討した。
2.評価方法
震災当時の女川 2 号機のプラント状況と非常用炉 心冷却系などの安全系の構成を調査し、津波到達を 起因事象とするイベントツリーを作成して炉心損傷 事故のシナリオを決定した。事故進展時間は女川 2 号機とほぼ同型の福島第一号機の炉心損傷開始時 間である 36 時間とした。次にイベントツリーの各要 素を頂上事象としたフォールトツリーを作成し、失 敗確率を算出した。津波は東日本大震災時に発生し た津波を仮定し、600 年に 1 度の大津波とした。各安全系の失敗確率は震災当時のプラント 状況から判断した。また、安全系を構成する機器が 偶然故障する確率(故障率)は主にニューシア (NUCIA,原子力施設情報公開ライブラリー)のデータ を引用した。これら失敗確率を再びイベントツリー に組み込み、各事故進展シナリオの失敗・成功確率 を掛け合わせて算出した炉傷確率の合計をプラ ント全体の炉心損傷確率として求めた。本研究では、 電源車等の電源装置(外部非常用電源)を追加しなか った場合の確率と追加した場合の確率をした。 消防車などによる外部注水は福島第一原子力発電所 の事故状況から、今回は 36 時間以内では成功しない ものとした。故障機器の復旧は考慮していない。
3.結果
電源車 2 台およびガスタービン発電機 1 台、大 容量電源装置 1 台を追加設置した場合は、追加 設置しなかった場合に比べて炉心損傷確率が 低減されたことを確認した。炉心損傷確率はま だ低減の余地があったが、これ以上電源車を増 やしても炉心損傷確率は大きく低減すること はなかった。
4.結論
女川 2 号機の炉心損傷確率の低減は外部非常用 電源の追加配備だけでは限界があるといえる。“ “津波レベル 1PRA を用いた原子力発電所における安全対策の 評価検討 “ “辻 悠太郎,Yutaro TSUJI,奈良林 直,Tadashi NARABAYASHI,森 治嗣,Michitsugu MORI
東日本大震災で発生した津波は、福島第一原子力 発電所の BWR プラントに過酷事故(シビアアクシデ ント)を引き起こした。原子力発電所の再稼働に求め られている高い安全性を実現するためには、津波に よる炉心損傷リスクを低減させる必要があ本研 究では、福島 2、3 号機とほぼ同型である女川原子力 発電所 2 号機の、再稼働申請に伴う安全対策の 1 つ る電源確保がどの程度炉心損傷リスクを低減さ せるか、確率論的リスク評価(レベル 1PRA)を用いて 評価検討した。
2.評価方法
震災当時の女川 2 号機のプラント状況と非常用炉 心冷却系などの安全系の構成を調査し、津波到達を 起因事象とするイベントツリーを作成して炉心損傷 事故のシナリオを決定した。事故進展時間は女川 2 号機とほぼ同型の福島第一号機の炉心損傷開始時 間である 36 時間とした。次にイベントツリーの各要 素を頂上事象としたフォールトツリーを作成し、失 敗確率を算出した。津波は東日本大震災時に発生し た津波を仮定し、600 年に 1 度の大津波とした。各安全系の失敗確率は震災当時のプラント 状況から判断した。また、安全系を構成する機器が 偶然故障する確率(故障率)は主にニューシア (NUCIA,原子力施設情報公開ライブラリー)のデータ を引用した。これら失敗確率を再びイベントツリー に組み込み、各事故進展シナリオの失敗・成功確率 を掛け合わせて算出した炉傷確率の合計をプラ ント全体の炉心損傷確率として求めた。本研究では、 電源車等の電源装置(外部非常用電源)を追加しなか った場合の確率と追加した場合の確率をした。 消防車などによる外部注水は福島第一原子力発電所 の事故状況から、今回は 36 時間以内では成功しない ものとした。故障機器の復旧は考慮していない。
3.結果
電源車 2 台およびガスタービン発電機 1 台、大 容量電源装置 1 台を追加設置した場合は、追加 設置しなかった場合に比べて炉心損傷確率が 低減されたことを確認した。炉心損傷確率はま だ低減の余地があったが、これ以上電源車を増 やしても炉心損傷確率は大きく低減すること はなかった。
4.結論
女川 2 号機の炉心損傷確率の低減は外部非常用 電源の追加配備だけでは限界があるといえる。“ “津波レベル 1PRA を用いた原子力発電所における安全対策の 評価検討 “ “辻 悠太郎,Yutaro TSUJI,奈良林 直,Tadashi NARABAYASHI,森 治嗣,Michitsugu MORI