電磁誘導法による肉厚測定技術の開発(その2) -加熱ジャケット付き容器への適用-

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カテゴリ: 第11回
1.緒言
これまで渦電流を利用し確立された測定技術は、渦流探傷法で、コイルに電流を流したときの磁場によって金属内部に発生した渦電流が、傷などにより乱れることを利用して表層の傷を検知する試験方法である。 しかし、試験体に交流磁束を印加すると、試験体内部にも渦電流は発生しており、内部欠陥によって影響を受けた渦電流は乱れを生じるが、導体内部の磁束分布式で判るように、磁束が指数関数で導体深部ほど弱くなる。 これにより、内部欠陥信号を感知しづらくなることから、内部の傷は深さ数mm 程度までしか検出できず、材料裏側の傷、二重構造物の外側の内面および二重構造物の内側の傷の検出、二重構造物の内側の肉厚の測定はできなかった。 再処理施設では加熱ジャケット付き容器が設置されており、腐食評価を行う上で、二重缶構造の容器内側の肉厚測定が可能な技術を必要としている。そこで、既存技術の現象に基づいた要因とその因子を整理し、渦流探傷法を応用した肉厚測定技術が有望との判断から、二重構造物の内側の肉厚測定技術の研究開発を行ってきた。 この度、肉厚が約30mm の二重構造を模擬したステンレス製の試験体で、内側の肉厚が高精度で測定できることを確認したことからその成果を報告する。
2.測定装置の概要および構成
2.1 電磁誘導法測定原理 電磁誘導法による測定原理は、既存技術として既に確立している。電磁誘導法による渦流探傷法の原理概念図をFig.1 に示す。 2.2 二重構造物内側肉厚測定方法の概要 二重構造物の内側の測定をするにあたり、解消しなければならないセンサーの課題として、以下の2点が挙げられる。 1) 渦電流浸透深さの向上 2) 二重構造物外側(1層目)に流れる渦電流の影響の緩和 課題の解決策として、先ずは渦電流の浸透深さを向上させるため、コイルはコア入り構造を採用した。コア入り構造採用により、周波数を低くすることができ、渦電流浸透深さを向上させることができた。 次に試験体表面に流れる渦電流の影響を緩和させるため、励磁コイルの形状をくの字型とし、検出コイルを中心に放射上に複数配置した。これにより、二重構造物外側(1層目)に対する励磁磁束は斜めに入射され、1層目の渦電流は少なくなる。斜めに入射された複数の磁束は、同相同士のため、相反発することから、二重構造物内側(2層目)に発生する励磁磁束はほぼ垂直に入射され、2層目の渦電流を大きくすることが可能となった。 これにより、二重構造物外側(1層目)に流れる渦電流の影響を緩和し、且つ二重構造物内側(2層目) に流れる渦電流を大きくすることができた。 二重構造物内側の肉厚測定方法概念図をFig.2、二重構造物に示す。 2.2 装置の構成 測定装置は、Fig.3 に示すとおり、PC、デジタル信号処理装置、センサーから構成され、励磁コイルからの磁場を被検体測定部に集中させ、被検体に発生した渦電流による逆磁場を中央に設置した検出コイルで検出し、デジタル信号処理装置で信号処理を行い、PC に測定データを表示する。なお、検出信号の僅かな変化を捕捉できるよう、信号処理装置は16bit のA/D コンバーターを使用し、16bit の数値を掛け算し、32bit の浮動小数点演算関数を使用した高速フーリエ変換(FFT)を行い、高精度化している。 センサー信号処理装置 PC 検出信号 電圧付加 Fig.2 二重構造物内側の肉厚測定方法概念図Fig.4 電磁誘導法による肉厚測定装置概念図渦電流 Fig.1 電磁誘導法による渦流探傷法概念図渦電流による磁束 励磁コイル1層目 2層目 検出コイル交流電圧 検出電圧 Fig.3 二重構造物内側肉厚測定用センサー写真- 60 - 33.二重構造物肉厚の測定結果 3.1 平板の肉厚測定結果 本試験では、二重缶構造を模擬した二重平板を用い て、2層目肉厚が変化した状態を薄い平板を2層目裏 にジャッキにてあてがい、その変化分の肉厚値を正確 に測定できるかを確認した。 確認の結果、Fig.6 の試験データに示すとおり、0.3 mm の肉厚の違いを検出できることを確認した。 また、測定精度に関しても、35.2mm の板厚に対して の測定誤差が最大0.1mm、35.5mm の板厚に対しての 測定誤差が最大0.1mm という結果となり、目標として いる測定精度±0.3mm を満足し、且つ再現性について も問題ないことを確認した。 3.2 二次元曲げ板の測定結果 本試験では、二重缶構造を模擬した二次元曲げ板を用いて、板厚値を正確に測定できるかを確認した。 確認の結果、Fig.8 の試験データに示すとおり、二次元曲げ板板厚35.0mm に対しての測定誤差が、最大0.3mm という結果となり、目標としている測定精度± 0.3mm をほぼ満足していることが確認できた。 なお、Fig.8 に示す測定データは、二次元曲げ板試験体でセンサーを較正後、二次元曲げ板試験体の測定を行った結果であるが、平板の試験体で較正した際の二次元曲げ板試験体の測定値は実際の板厚とは大きく異なる数値が出力された。 この理由としては、平板試験体と二次元曲げ板試験体では間隙が異なっているためと考えられる。 この二次元曲げ板では中央と端部では間隙が異なるため、測定ポイントを変更した際、間隙の違いにより測定値にズレが生じたものと考えられる。 4.今後の課題 再処理施設内に設置されているジャケット付き容器には底部が鏡形状のものもあり、3次元の曲げ板であることから、今後は3次元曲げ板試験体を製作して測定精度の確認を行うとともに、間隙の違いによる補正や較正方法に関する検討が必要である。 5.結言 これまでの研究により、電磁誘導法による二重構造物を模擬した平板試験体、二次元曲げ板試験体での試験の結果、内側(2層目)の板厚を目標としている± 0.3mm という精度で測定できることを確認できたが、間隙の違いによる補正や較正方法に関する検討が必要である。 今後、上述の課題の検討を進めると共に、3次元曲げ板試験体を製作して測定精度の確認を行い、研究開発を進めていくこととしたい。 隙間:80mm 測定器30mm板35mm板30mm板35mm板隙間:80mm 0.3mm板下からプレスで押付けて接触Fig.5 平板の肉厚測定方法 Fig.6 平板の肉厚測定結果 Fig.7 二次元曲げ板試験体外略図 Fig.8 二次元曲げ板の肉厚測定結果 - 61 - 4参考文献 [1] K.NAKAMURA,A new approach to the Electromagnetic Induction Nondestructive Inspection -Preceding of Symposium in the Japan Society of Mechanical Engineers. [2] Electro-Magnetic Induction Testing for Inspection of Wall Thickness and Inner-surface Defects-“I Eddy’’System Vol.5,No.3,NT58,EJAM - 62 - “ “電磁誘導法による肉厚測定技術の開発(その2) -加熱ジャケット付き容器への適用- “ “小泉 英明,Hideaki KOIZUMI,稲熊 正彦,Masahiko INAKUMA,加納 洋一,Yoichi KANO,菊池 英樹,Hideki KIKUCHI,小林 雅弘,Masahiro KOBAYASHI,高倉 一真,Kazuma TAKAKURA,出井 義純,Gijun IDEI
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