格納容器用改良EPDM ゴム(EP-176)の高温・水蒸気シール性

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カテゴリ: 第12回
1.諸言
原子力発電所での炉心溶融や冷却系の破損などの重大事故(シビアアクシデント、以降SA)が発生した場合、格納容器は発電所周りの放射線の影響を少なくするため、原子炉の圧力容器から放出された放射性物質を閉じ込める。この格納容器には高い気密性、耐圧性が要求されるため、格納容器の密封境界部のシール材は、日本では耐熱性と耐放射線性の高いシリコーンゴムが採用され、世界的にはEPDM ゴムのガスケットが採用されている。 近年、SA 時には格納容器の中は多量の水蒸気も充満することが判ってきた。そのため、この密封境界部にあるゴムガスケットは耐熱性と耐放射線性だけでなく、耐水蒸気性も要求される。しかし、シリコーンゴムはEPDM ゴムと比較して耐水蒸気性が悪いことが知られている。そのため、放射線の暴露や高温空気だけでなく水蒸気も含めた雰囲気でのゴムガスケットのシール特性の評価が必要になる。高温でのゴムガスケットの劣化状況と使用限界については、過去に研究されている[1]。最近では、ゴムガスケットの放射線暴露環境での評価[2]や高温および水蒸気環境での評価[3]も行われ、高温でのゴムガスケットの使用期間の推定[3]も行われている。 そこで、本研究ではシリコーンゴムとEPDM ゴムのガスケットについて、SA 時を想定し、加熱後および水蒸気雰囲気中でのシール試験を行い、実際の高温および水蒸気雰囲気でのゴムガスケットのシール性を評価した。
2.ゴムガスケットのシール性
2.1 ゴムガスケットのシール機構
小林らはゴムガスケットのガスの漏れには、明らかに挙動が違う2 種類の漏れがあることを確認した [4]。一つはゴムガスケットの表面と接触しているフランジ面の隙間をガスが通る接面漏れになる(Fig.1)。もう一つはゴムガスケットの内部をガスが透過する浸透漏れになる(Fig.2)。 Fig. 1 Contact surface leakage Fig.2 Penetration leakage 接面漏れは瞬時に石鹸水を塗布すると泡が発生するような漏れになる。この時の漏洩率は1×10-5Pa-m3/s 以上の大規模な漏れになる[5]。それに対して、浸透漏れは石鹸水を塗布しても泡が発生しない1×10-5Pa-m3/s 未満の微小な漏れになる。また、浸透漏れはガスがゴムガスケットの内部を通過(拡散)するので、漏れが発生するまでに時連絡先:花島 完治、〒230-0053 神奈川県横浜市鶴見区大黒町1-70、ニチアス(株)鶴見テクニカルセンター、 E-mail:hanashima-k@nichias.co.jp Leak Inner fluid Leak Flange Gasket - 121 - 間がかかる場合がある。通常、ゴムガスケットは10~15% 以上圧縮すると接面漏れはほとんどなくなることが判っている[4]。 また、接面漏れはガス以上に大きい分子でも隙間より小さければ、ガスと一緒に隙間を通過して漏れる。それに対して、浸透漏れはゴムガスケットの内部の隙間を透過して漏れる。この内部の隙間は非常に小さく、ガス以外の液体、固体はなかなか通過できない。従って、SA 時、格納容器内に密封すべき放射性物質はほとんどが固体なので、密封境界部のゴムガスケットに接面漏れが発生するとガスとともに外部に放出される可能性がある。しかし、接面漏れがなく浸透漏れのみであれば、放射性物質はゴムガスケット内部を透過できないので、外部に放出される可能性はほとんどなくなる。つまり、SA 時、格納容器内の放射性物質の外部への漏れを防止するには、密封境界部のゴムガスケットを圧縮して接面漏れを防ぐことが重要になる。 2.2 圧縮永久ひずみとシール性 ゴムガスケットは通常、フランジの溝に設置し、フランジを締め切って圧縮して使用する。高温や水蒸気、放射線環境で使用するとゴムが劣化してフランジを開放してもゴムガスケットが使用前の厚さまで戻らなくなる。この戻らないひずみ(永久ひずみ)の度合いを評価するのが下式の圧縮永久ひずみ率Cs になる。 Cs = (t0-t2) / (t0-t1) × 100 Cs:圧縮永久ひずみ率 (%) t0:試料厚さ (mm) t1:圧縮時厚さ (mm) t2:取出し後厚さ (mm) 永久ひずみが発生すると圧縮中のゴムガスケットの圧縮量が減少したことになり、ゴムガスケットとフランジ接触面の隙間を埋めている応力が小さくなる。応力が小さくなると隙間が発生しやすくなり、接面漏れによる大規模な漏れの可能性が高くなる。従って、圧縮永久ひずみ率が高くなると大規模な漏れの不安が高くなる。 以上の挙動をゴムガスケットの圧縮復元曲線でFig.3に示す。この時、圧縮して接面漏れが止まる点をシール開始点、復元させて接面漏れが始まる点をシール終了点とする。 Fig.3 Compression-recovery curve and contact surface leakage through the gasket (Example) ここで、加藤らはシール終了点となる圧縮永久ひずみ率を求め、圧縮永久ひずみ率の温度と時間による変化傾向から、ゴムガスケットの使用限界を評価した[1]。また、山本らも実際に圧縮永久ひずみ率の温度と時間による変化からゴムガスケットの使用期間を推定した[3]。 3.試験 3.1 試料 試験試料は格納容器に使用されている一般的なシリコーンゴム(VMQ)とEPDM ゴム(EPDM-A)に、ニチアスでSA 対策用に改良・開発したEPDM ゴム(EPDM-B; EP-176) を加えた三種のゴムとする。一般特性をTable 1 に示す。 Table 1 Typical properties Rubber EPDM Silicone Sample Name EPDM-A EPDM-B VMQ NICHIAS Product No. NU2670-EP NU2680-EP NU2670-EP-01 NU2680-EP-01 NU2670-SiR NU2680-SiR NICHIAS Compound Name - EP-176 - Hardness A 63 A 82 A 53 Tensile Strength(MPa) 17.5 13.1 8.1 Elongation(%) 560 140 580 Cs (%) 40 5 7 Hardness : JIS K 6253、Cs : JIS K 6262 (150℃×72hrs) Tensile , Strength , Elongation : JIS K 6251 Load of gasket Strain (Amount of Compression and Recvery) Seal starting point Seal limiting point Compression recovery t0 t1 t2 - 122 - 3.2 加熱後ヘリウムリーク試験 乾熱環境で劣化したゴムガスケットの浸透漏れを評価するための試験を行う。 ブラインド型の溝フランジにゴムガスケット(Oリング)をセットし、ボルトで締め付ける。セットしたフランジを電気炉に入れ、所定時間加熱してゴムOリングを乾熱大気に暴露させる。その後フランジを電気炉から取出し、常温でヘリウムリーク試験を行い、漏れを測定する。ヘリウムリーク試験はJIS Z 2330 の真空外覆法で行い、ヘリウムガス投入から40 分後の漏洩率を記録する。下記に試験条件を示します。 ・試料形状:ゴムOリング ・サイズ :AS568-320 線径5.33 x 内径27.94 mm ・フランジ:JIS 5K FF 20A (Fig.4) ・溝深さ :4 ㎜ (圧縮率 25.0%) ・ボルト :M10、4 本 ・締付荷重:12kN (締付トルク:6 N-m/本) ・加熱温度:200℃、225℃、250℃ ・加熱時間:24hrs、72hrs、168hrs、336hrs Fig.4 Test equipment 3.3 蒸気シール試験 水蒸気環境で劣化したゴムガスケットの接面漏れを評価するための試験を行う。 ブラインド型の溝フランジにゴムガスケット(Oリング)をセットし、ボルトで締め付ける。この時、フランジ内部に水を10~18g 入れて、セットしたフランジの重量を測定する。重量測定したフランジを電気炉に入れ、所定時間加熱してゴムOリングを飽和水蒸気に暴露させる。その後フランジを電気炉から取出し、常温でフランジの重量を測定し、試験前との重量減少量を飽和水蒸気暴露による漏れ(重量漏洩率)として評価する。下記に試験条件を示す。 ・試料形状:ゴムOリング ・サイズ :AS568-320 線径φ5.33 x 内径φ27.94 ・フランジ:JIS 10K FF 20A (Fig.5) ・溝深さ :4 ㎜ (圧縮率 25.0%) ・ボルト :M12、4 本 ・締付荷重:10kN (締付トルク:6 N-m/本) ・加熱温度:200℃ (飽和水蒸気圧 1.55MPa) 250℃ (飽和水蒸気圧 3.98MPa) ・加熱時間:24hrs、72hrs、168hrs、336hrs Fig.5 Test equipment 4.結果と考察 4.1 加熱後ヘリウムリーク試験 加熱後ヘリウムリーク試験の結果をTable 2、Fig.6 およびFig.7 に示す。試験数はすべてn1 である。 試験前の漏洩率はすべて1×10-5Pa-m3/s 未満と低く、漏れが浸透漏れだけになったことが判る。特にEPDM-A、EPDM-B はVMQ よりも漏洩率が2 桁程度低くなった。試験(加熱)後の漏洩率もほとんど1×10-5Pa-m3/s 未満と低く、加熱による漏洩率の変化も小さかった。これは、一般的にEPDM のガス透過率はVMQ よりも低く、ヘリウムガスの分子量に近い水素ガスによるEPDM のガス透過率はVMQ より一桁程度低いことが判っている[6]。ただし、EPDM-A は250℃、168hrs で大規模漏洩(1×10-5Pa-m3/s 以上)が発生した。 試験後の試料(Fig.7)を観察するとEPDM-A、EPDM-B は内周側に割れが見られた。EPDM-B は200℃、225℃、250℃の各加熱後で内周側の割れに大きな変化はなかったが、EPDM-A は250℃加熱後で多数の割れが発生し、外周まで到達(貫通)した割れも発生していた。VMQ には特に割れなどは見られなかった。 Upper Flange (NW Flange) Sample(O-ring) BOLT FASTENING Lower Flange He He Leak Detector Upper Flange Water Lower Flange Sample(O-ring) BOLT FASTENING Electric furnace - 123 - Table 2 Results of Helium leak test Sample name Heating time Leak rate (Pa-m3/s) hrs 200℃ 225℃ 250℃ EPDM-A 0 1.4E-09 1.1E-08 6.3E-09 24 1.9E-08 2.9E-08 1.4E-08 72 1.6E-08 2.1E-08 2.7E-08 168 5.4E-08 3.8E-08 (Leak) 336 9.0E-08 6.4E-08 (Leak) EPDM-B 0 7.0E-09 1.7E-08 2.4E-08 24 4.5E-08 5.0E-08 3.5E-08 72 3.1E-08 4.1E-08 3.7E-08 168 1.4E-08 4.5E-08 5.9E-08 336 5.4E-08 5.9E-08 7.4E-08 VMQ 0 3.4E-06 1.3E-06 1.1E-06 24 4.0E-06 1.2E-06 1.3E-06 72 3.8E-06 1.3E-06 1.7E-06 168 2.1E-06 1.2E-06 1.2E-06 336 2.2E-06 1.1E-06 1.1E-06 For example : 2.0E-06 = 2.0x10-06 (leak) : 測定限界(1×10-2Pa-m3/s)以上の漏れ (1) 200℃ (2) 225℃ (3) 250℃ Fig.6 Leak rate for Total heating time EPDM-A EPDM-B VMQ (1) Before test EPDM-A EPDM-B VMQ (2) After test (200℃,336hrs) EPDM-A EPDM-B VMQ (3) After test (225℃,336hrs) EPDM-A EPDM-B VMQ (4) After test (250℃,336hrs) Fig.7 Samples after Test and before test 4.2 蒸気シール試験 蒸気シール試験の結果をTable 3、Fig.8 およびFig.9 に示す。試験数は、EPDM-A、EPDM-B はn2、VMQ はn3 になる。 EPDM-A、EPDM-B の重量漏洩率は200℃、250℃ともにVMQ よりも低くなった。これはフランジ内部の水が水蒸気となってゴムOリングの内部を通過する浸透漏れにより、外部に漏れ出たため、ガス透過率の差が漏洩率の差となったと考える。さらに、VMQ は200℃、168hrs 0.00000000010.0000000010.000000010.00000010.0000010.000010.00010.0010 100 200 300 400 500 Total heating time hrs 漏洩量 [Pa-m3/s] EPDM-A EPDM-B VMQ 0.00000000010.0000000010.000000010.00000010.0000010.000010.00010.0010 100 200 300 400 500 Total heating time hrs 漏洩量 [Pa-m3/s] EPDM-A EPDM-B VMQ 0.00000000010.0000000010.000000010.00000010.0000010.000010.00010.0010 100 200 300 400 500 Total heating time hrs 漏洩量 [Pa-m3/s] EPDM-A EPDM-B VMQ Leak - 124 - でフランジの中の水すべてがなくなるほどの大規模漏洩が発生した。 試験後の試料(Fig.9)を観察すると、VMQは3個中2個、目視で確認できる貫通した割れが発生していていた。VMQ はこのような貫通する割れが発生して大規模漏洩となったと考えられる。また、EPDM-A は配合した添加物と思われるものがゴムOリング外部に出た形跡がフランジ面に見られた。 Table 3 Results of Steam seal test Sample name Heating time Average of Leak rate (mg/hrs) hrs 200℃ 250℃ EPDM-A 24 3.7 5.4 72 4.3 5.5 168 4.1 4.6 336 4.3 5.0 EPDM-B 24 5.0 10.8 72 4.9 12.2 168 4.4 11.8 336 5.1 11.8 VMQ 24 15.3 - 72 23.8 - 168 >165.6 (No water) - 336 - (No water) - (Nothing) 24 - (No water) - -: not measured (1) 200℃ (2) 250℃ Fig.8 Average of Leak rate for Total heating time EPDM-A EPDM-B VMQ (1) Before test EPDM-A EPDM-B VMQ (2) After test (200℃,336hrs) EPDM-A EPDM-B (3) After test (250℃,336hrs) Fig.9 Samples after Test and before test 01002003000 100 200 300 400 500 Total Heating time hrs Average of Leak rate mg/hrs EPDM-A EPDM-B V M Q 0204060801000 100 200 300 400 500 Total Heating time hrs Average of Leak rate mg/hrs EPDM-A EPDM-B n=1 n=2 n=1 n=2 n=1 n=2 n=3 n=1 n=2 n=1 n=2 - 125 - 4.3 耐放射線性、耐熱性、耐水蒸気性 今回、試験の材質EPDM-A、EPDM-B、VMQ について、過去報告された放射線照射環境や高温空気および水蒸気環境での圧縮永久ひずみ試験の結果から耐放射線性、耐熱性、耐水蒸気性の評価をまとめる。 耐放射線性については中野らが圧縮永久ひずみ等での評価を報告している[2]。Fig.10 に放射線照射して圧縮永久ひずみ試験を行った試験(圧縮しながら放射線照射した)の結果を示す。 次に、耐熱性、耐水蒸気性については山本らが圧縮永久ひずみ等での評価を報告している[3]。Fig.11、Fig.12 に高温および水蒸気環境での圧縮永久ひずみ試験の結果を示す。なお、この時の放射線照射は圧縮永久ひずみ試験を行う前の未圧縮の試料に行っている。 圧縮永久ひずみ率は高くなると接面漏れの不安が高く、シール性能が悪化するといえる。 耐放射線性について、Fig.10から、EPDM-BがEPDM-A、VMQ と比較して試験の放射線量の範囲で圧縮永久ひずみ率が低く、非常に良好であることを示している。EPDM-A とVMQ はほぼ同じような傾向で、3.6MGyでは90%以上になっており、EPDM-B よりも耐放射線性が悪いことを示している。 耐熱性(乾熱)について、Fig.11、Fig.12 から、EPDM-B はEPDM-A、VMQ と比較して圧縮永久ひずみ率自体が低く、さらに温度、時間の変化に対して圧縮永久ひずみ率の変化も小さく、非常に良好であることを示している。EPDM-A とVMQ に対しては、Fig.11(150~200℃)ではEPDM-A とVMQ は同程度の圧縮永久ひずみ率の変化を示しているが、Fig.12 の225℃ではVMQ の圧縮永久ひずみ率が極端に高くなるので、耐熱性はEPDM-A の方がVMQ よりも良好であることを示している。 耐水蒸気性について、Fig.12から、EPDM-BがEPDM-A、VMQ よりも乾熱と水蒸気での圧縮永久ひずみ率の変化が小さく、非常に良好であることを示した。VMQ はEPDM-A よりも200℃での乾熱と水蒸気での圧縮永久ひずみ率の変化が大きく、耐水蒸気性はEPDM-A の方がVMQ よりも良好であることを示している。 ここで、Fig.10 とFig,12 の圧縮永久ひずみ率を比較する。例えばEPDM-B では、試験前に照射したFig.12 の圧縮永久ひずみ率は200℃、0.8MGy で17%となるが、圧縮しながら照射したFig.10 の圧縮永久ひずみ率は室温、0.3MGy で17%と試験前に照射した場合より温度が低く、線量も低いのに圧縮永久ひずみ率は同じ値となっている。従って、放射線照射を試験前に行うか、試験(圧縮)中に行うかで放射線照射が圧縮永久ひずみに与える影響が変わることを示している。SA 時、格納容器の密封境界部のゴムガスケットは圧縮されながら放射線が照射されるので、圧縮永久ひずみは圧縮した状態で放射線を照射した試験で評価した方が良いことを示している。 Fig.10 Compression set after radiation exposure at ambient temperature (1) EPDM-A (2) EPDM-B 0201900/02/081900/02/28801900/04/090.0 1.0 2.0 3.0 4.0 Total Radiation Dose (MGy) Compression set (%) EPDM-A EPDM-B VMQ 0:00:00204060801900/04/0910 100 1000 Time [hrs] Compression set [%] 200℃ 175℃ 150℃ 対数 (200℃) 0:00:0020401900/02/288010010 100 1000 Time [hrs] Compression set [%]200℃ 175℃ 150℃ 対数 (200℃) - 126 - (3) VMQ Fig.11 Compression set of dry heat (1) 200℃×72hrs (2) 225℃×72hrs (3) 250℃×72hrs Fig.12 Compression set of radiation and steam 5.結言 一般的なシリコーンゴム(VMQ) とEPDM ゴム(EPDM-A)に、ニチアスでSA 対策用に改良・開発したEPDM ゴム(EPDM-B; EP-176)を加えた三種のゴムについて、過去の放射線照射環境や高温および水蒸気での圧縮永久ひずみに関する報告[2]、[3]から、耐放射線性、耐熱性(乾熱)、耐水蒸気性は下記のようになった。 ・耐放射線性は、EPDM-B(EP-176)が最も良好で、次にEPDM-A、VMQ(シリコーン)となった。 ・耐熱性(乾熱)は、EPDM-B(EP-176)が良好で、VMQ(シリコーン)とEPDM-A が同程度となった。 ・耐水蒸気性は、EPDM-B(EP-176)が最も良好で、次にEPDM-A、VMQ(シリコーン)となった。 今回の加熱後ヘリウムリーク試験および蒸気シール試験の結果から下記のようになった。 ・乾熱雰囲気では、EPDM-B(EP-176)およびVMQ(シリコーン)は250℃、336hrs でのシール性の維持が期待できるが、EPDM-A は250℃、168hrs 以上のシール性の維持は難しい。 ・水蒸気雰囲気では、EPDM-B(EP-176) およびEPDM-A は250℃、336hrs でのシール性の維持が期待できるが、VMQ(シリコーン)は200℃、長時間168hrs 以上のシール性の維持は難しい 以上から、格納容器の密封境界部のシール材として使用する一般的なシリコーンゴム(VMQ)とEPDM ゴム(EPDM-A)およびニチアスでSA 対策用に改良・開発したEPDM ゴム(EPDM-B; EP-176)の三種のゴムの中で、SA 時020406080100EPDM-A EPDM-B VMQ Compression set [%] NonRadiation Dry NonRadiation Steam 800kGy Dry 800kGy Steam 020406080100EPDM-A EPDM-B VMQ Compression set [%] NonRadiation Dry NonRadiation Steam 800kGy Dry 800kGy Steam N.D 020406080100EPDM-A EPDM-B VMQ Compression set [%] NonRadiation Dry NonRadiation Steam 800kGy Dry 800kGy Steam N.D N.D N.D N.D 02040608010010 100 1000 Time [hrs] Compression set [%]200℃ 175℃ 150℃ - 127 - を想定した放射線の暴露、高温および水蒸気のある雰囲気において、最もシール性の維持を期待できるゴムはEPDM-B(EP-176)であることが判った。 参考文献 [1] 加藤治, 三枝利有: “輸送キャスク密封装置の耐熱限界の評価”, 電力中央研究所報告 U97101, 電力中央研究所 (1998). [2] M. Nakano, H. Sasaki: ”Radiation resistance of rubber compounds for gaskets (second report)”, ICONE20POWER2012-54985, ASME (2012) [3] R. Yamamoto, K. Watanabe, K. Hanashima: “Endurance test report of rubber sealing materials for the containment vessel”, ICONE23-1610, JSME (2015) [4] 小林重雄, 谷田和雄: “ゴムガスケットのリーク試験”, 真空技術, Vol.7, No.2, pp.101-112, ISSN1883-7182 -1956[5] “管フランジ用ガスケットの密封特性試験方法”, JIS B 2490-2008, 解説7 (2008) [6] M. Nakano, H. Sasaki, T. Watanabe, A. Maezawa: ”Hydrogen Permeability of Rubber Gaskets”, ICONE21-15137, ASME (2013) . - 128 - “ “格納容器用改良EPDM ゴム(EP-176)の高温・水蒸気シール性“ “花島 完治,Kanji HANASHIMA
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