PD 資格試験開始から9 年の実施状況

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カテゴリ: 第12回
1.背景
電力中央研究所 材料科学研究所 PD センターは、日本非破壊検査協会規格NDIS 0603 の附属書に従い、2006 年3 月より軽水型原子力発電所のオーステナイト系ステンレス鋼配管溶接部におけるSCC き裂高さ(深さ)測定のPD 資格試験を実施している。これまでに2013 年度までのPD 資格試験結果を報告[1-8]した。本講演では2014 年度までのPD 資格試験結果およびこれを含めたこれまでのPD 資格試験結果から得られた受験者の傾向について報告する。 2.PD 資格試験の実施状況
2.1 PD 資格試験の実績および結果 PD 資格更新の最大期間は5 年であるため、2010 年度より新規試験、再試験に加えて再認証試験を実施している。2014 年度は2 回のPD 資格試験を実施し、受験者4 名(新規受験1 名(過去にPD 資格を取得、失効後の受験であり、分類は再認証受験者として扱う。)、再認証受験3 名)全員が合格した。これより2006 年3 月の試験開始以降の累計受験者数は99 名、再認証も含めた合格基準に達した者は延べ53 名となった。2006 年3 月からのPD 資格試験回数および受験者数と結果の推移をFig.1 に示す。NDIS 0603 の上で再認証とは, 「資格の有効期限内に同じ手順書を用いて再度認証を受けること」と規定しているが,本稿では「資格の有効期限あるいは手順書番号に拘らず,一度資格を取得した者が再度受験する場合」を再認証として取扱った。Fig.1 より、2006 年度上期をピークに受験者数が減少しているものの、その後は2014 年度までほぼ一定の受験者数で推移していることがわかる。PD 資格試験開始から9 年間における各々の受験種別(新規受験、再受験および再認証受験)のSCC き裂高さ(深さ)測定値の平均自乗誤差(Root Mean Square Error:RMSE)をTable.1 に示す。RMSE は(1)式で表されるもので、PD 資格試験の合否判定に用いられている。
0:00:001900/01/041900/01/091900/01/141900/01/190:00:001900/01/091900/01/191900/01/291900/02/082005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 試験回数受験者数(人) 年度合格(新規+再試験) 合格(再認証) 不合格試験回数Fig.1 PD 資格試験回数、受験者数と合格者の推移 - 155 - Table.1 受験者及び合格者の推移 年度 試 験 回 数 受験者 合格者 受験者のRMSE* 新規 再認証 新規 再認証 新規 再認証 再試験 再試験 再試験 再試験 再試験 再試験 2005 2 8 ― ― ― 3 ― ― ― 3.49 ― ― ― 2006 10 21 14 ― ― 7 7 ― ― 5.19 2.94 ― ― 2007 6 7 6 ― ― 1 4 ― ― 4.81 2.51 ― ― 2008 5 2 5 ― ― 1 4 ― ― 3.15 2.04 ― ― 2009 3 5 1 ― ― 3 1 ― ― 3.29 ― ― ― 2010 3 2 3 2 ― 1 3 2 ― 2.52 1.51 1.92 ― 2011 5 2 ― 7 ― 2 ― 5 ― 2.51 ― 3.27 ― 2012 3 1 1 1 1 0 0 0 0 ― ― ― ― 2013 3 1 ― 3 2 1 ― 3 1 ― ― 1.92 2.40 2014 2 ― ― 3 1 ― ― 3 1 ― ― 1.37 ― 計 42 49 30 16 4 19 19 13 2 4.40 2.59 2.83 2.99 99 53 3.64 * 全データでの統計値(1 名以下の場合は示さず) mi : SCC き裂深さ測定値 ti:SCC き裂深さの真とする値 n:試験体数 0:00:0012:00:001899/12/311899/12/31 12:00:001900/01/011900/01/01 12:00:002005-2006 2007-2008 2009-2010 2011-2012 2013-2014 標準偏差、誤差平均(mm) 試験実施年度標準偏差誤差平均 Fig.3 PD 資格試験合格者の試験年度毎の標準偏差 及び誤差平均 2.2 PD 資格試験受験者の測定精度 過去9 年間の全受験者の試験結果、誤差平均およびRMSE の関係をFig.2 に示す。これまでのPD 資格試験結果と同様に、不合格者の誤差平均が全般的にプラス側に偏っている[3-8]ことがわかる。また、過去9 年間の合格者・不合格者の誤差平均と標準偏差をまとめたのがTable.2 である。合格者の誤差平均,標準偏差がそれぞれ0.32mm, 1.87mm である一方で、不合格者の標準偏差も大きく,誤差平均も1mm を超えている。 Fig.3 は、合格者の試験結果、特に標準偏差および誤差平均について、PD 資格試験開始時からの変化を纏めたものである。年度によって若干の変動はあるものの、PD 資格試験開始から9 年間の合格者の標準偏差は1.5 ~2.0mm程度、誤差平均は0.7mm以下を推移している。以上のことから、PD 資格試験合格者は、比較的精度良く計測されていることがわかる。 Fig.2 PD 資格試験全受験者の誤差平均とRMSE の分布 Table.2 過去9 年間の合格者・不合格者の 誤差平均および標準偏差 誤差平均(mm) 標準偏差 (mm) 合格者 0.32 1.87 不合格者 1.02 4.84 0:00:001900/01/014681900/01/091900/01/11-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 +1 +2 +3 +4 +5 +6 +7 RMSE(mm) 誤差平均(mm) 合格者不合格者RMSE = 3.2 mm - 156 - 2.3 PD 資格試験結果と探傷手順 PD 資格試験受験者の多くは、固定角UT 法とフェーズドアレイ法(PA 法)を組み合わせた改良UT 法を主に使うことは既に報告した[7]。 これまでのPD 資格試験で使用された探傷手順書の比率を、試験実施年度別に纏めた結果をFig.4 に示す。この中で「PA」はPA 法を用いた手法を、「固定角UT」はPA法を使用しない端部エコー法を、「PA+固定角UT」は固定角UT法とPA法を組み合わせた方法をそれぞれ示す。「固定角UT」による受験者は、PD 資格試験開始時のみであること、また「PA」による受験者がPD 資格試験の回数を重ねてもあまり増えないことがわかる。 一方、PD 資格試験前期(試験開始~2008 年度) と後期(2009 年度~2014 年度まで)において、手順書による区分ではなくSCC き裂高さ(深さ)測定値を最終判定した探傷手法による分類を合格者および不合格者内でまとめた結果をFig.5 に示す。合格者、不合格者何れも試験後期におけるPA の比率が試験前期のそれより上がっていることがわかる。さらに、全受験者の最終的に採用した探傷手法毎に、概ね正解と思われる誤差(解答値-真とする値)±3.2mm の測定値を出した割合を示したものがFig.6 である。 以上の結果より、PD 資格試験受験者の大半が「PA+ 固定角UT」の手順書を用いていること、SCC き裂高さ(深さ)測定値(試験解答)の最終判定の方法としてPA を活用するようになってきていることがわかる。また、PA の大きな特徴である画像を用いた判定を上手に利用することにより、大きな誤差を出す可能性が低減できることが示されたものと考えられる。 Fig.6 各探傷手法別の誤差の比率(全受験者) 00.20.40.60.81PA 固定角UT その他 比率 最終判定手法 ±3.2mm超 ±3.2mm以内 Fig.4 PD 資格試験合格者の試験年度毎の 探傷手順書の比率 00.20.40.60.812005-2006 2007-2008 2009-2010 2011-2012 2013-2014 使用比率 試験実施年度 固定角UT PA 固定角UT+PA Fig.7 試験体1 体あたりの回答時間の 誤差の分布(全受験者) 00.20.40.60.810.5-1.0 1.0-1.5 1.5-2.0 2.0-2.5 2.5-3.0 3.0-3.5 3.5-4.0 4.0-4.5 4.5以上 比率 試験体1体あたりの回答時間(時間) ±3.2mm超 ±3.2mm以内 PD 資格試験前期 PD 資格試験後期 Fig.5 試験実施時期によるSCC き裂高さ(深さ) 特定方法 00.20.40.60.81合格者 不合格者 合格者 不合格者 比率 PA 固定角UT その他 - 157 - 2.4 回答に要する時間の分析 全受験者における試験体1 体あたりの回答に要する時間と前出の概ね正解と思われる誤差±3.2mm の測定値を出した割合を示したものがFig.7 である。1 体あたりの回答に要する時間が2 時間程度までは、正解値に近いSCC き裂高さ(深さ)を回答する比率が90%程度であるが、回答に要する時間が2.5 時間を超えると、±3.2mm 超の誤差を出す割合が増加することがわかる。これは、比較的判断の容易な試験体についてはすぐに回答するとともに、探傷中にSCC き裂高さ(深さ)測定に悩み始めると、だんだんと探傷データに対して疑心暗鬼になり、探傷データを正しく解釈できずに、その結果として誤差の大きい回答をするケースが増えるためと推察される。 3.まとめ 2006 年3 月より開始したオーステナイト系ステンレス鋼配管溶接部に発生するSCCき裂の深さ測定に関するPD 資格試験は、2015 年1 月までの約9 年間で42 回実施した。この間の累計受験者数は99 名で、再認証受験者も含めた合格基準に達した者は延べ53 名となった。これまでの試験結果の解析で得られた結果、以下のようなことが得られた。 1) 過去9 年間のPD 資格試験の合格者の標準偏差は1.87 mm、誤差平均は0.32mm であることから、PD 資格試験合格者が高い精度でSCC き裂高さ(深さ)を測定していることを確認できた。 2) 過去9 年間のPD 資格試験の受験者の探傷方法は、フェーズドアレイ法と固定角UT 法を組み合せた手法が主流となっている。さらに、その中でもフェーズドアレイ法を積極的に活用する傾向になっている。 3) 試験体1 個あたりの回答時間が2.5 時間を超えた場合に,正解値(判定条件として,真とする値と比べて±3.2mm 以内)を得る比率が低下する傾向にある。 参考文献 [1] 笹原,直本,秀,神戸 “PD 資格試験開始から一年の実施状況” 第4 回保全学会予稿集,福井,2007. [2] 直本,笹原,秀 “PD 資格試験開始から2 年の実施状況” 第5 回保全学会学術講演会予稿集, 水戸, 2008[3] 秀,笹原,直本,渡辺 “PD 資格試験開始から4 年の実施状況” 第7 回保全学会学術講演会予稿集, 静岡, 2010. [4] 渡辺,笹原,東海林,秀 “PD 資格試験開始から5 年の実施状況” 第8 回保全学会学術講演会特別編予稿集, 東京, 2011. [5] 笹原,直本,秀,井上 “SCC 深さ測定のPD 試験受験者の技量評価” 保全学, Vol.9 No.1, p.44, 2010. [6] 渡辺,東海林,秀 “PD 資格試験開始から6 年の実施状況” 第9 回保全学会予稿集, 東京, 2012. [7] 渡辺,東海林,秀 “PD 資格試験開始から7 年の実施状況” 第10 回保全学会学術講演会予稿集, 大阪, 2013[8] 渡辺,東海林,秀 “PD 資格試験開始から8 年の実施状況” 第11 回保全学会学術講演会予稿集, 八戸, 2014- 158 -
“ “PD 資格試験開始から9 年の実施状況 “ “渡辺 恵司,Keiji WATANABE,東海林 一,Hajime SHOHJI,秀 耕一郎,Koichiro HIDE,太田 丈児,Joji OHTA
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