原子炉格納容器内部調査装置の開発および実証 ~ 形状変化型ロボット ~

公開日:
カテゴリ: 第12回
1.概要
福島第一原子力発電所の廃止措置に向け、格納容器(PCV)内部を調査するための装置を開発している。PCV 内は放射線量が高く、放射性物質飛散防止の観点から、開口部の小さい配管から内部へアクセスする装置の小型化が必要となる。また、内部での調査時は通路であるグレーチング上を走行するため、高い踏破性が求められる。そこで、アクセス時の配管の通過と、調査時のグレーチング上の平面走行を両立させるため、形状が変化可能なロボットを開発した[1]。PCV 内部調査は、炉心から溶融し地下階に拡散したと想定される燃料デブリの分布を調査することを最終目的としている。その一環として、地下階調査に用いる装置開発に必要な情報を取得するため、本年4月、1号機の1階のグレーチング上の調査を実施した。本報告では、形状変化型ロボットの開発概要と、格納容器内部の調査結果について報告する。 2.形状変化型ロボットの開発 2.1 PCV の概要と適用対象 図1[2]に、 PCV の概要と本ロボットの適用対象を示す。PCV 内部調査は、ペデスタル外地下階に落下していると想定されている燃料デブリを調査することを最終目的としており、今回の調査は、地下階調査装置の開発に必要な情報を取得することを目的として、ペデスタル外側の映像、温度、放射線量率等の環境情報を取得するものである。図中のX-100B(通過貫通部)ペネから挿入し、1階グレーチング上を移動し、ペデスタル外周の調査を実施する。これまでの調査によると、PCV 内部は最大約70Sv/h 程度と、高い放射線環境であると想定されている。 図1.PCV の概要と適用対象
2.2 形状変化型ロボットの概要 2.1 節に示したとおり、PCV 内部は、高い放射線環境であるため、使用する機器には、耐放射線性能が求められる。今回、開発したロボットは、カメラ以外に電子部品を使用しない構成とすることで、耐放射線性能を確保した。また、本ロボットは、狭隘部の通過と平面走行を両立するために、走行部位によって形状を変化させる構成とした。図2に、形状変化動作を示す。カメラを搭載した本体に対し、2つのクローラを直角に配置した平面走行形状と、本体と2つのクローラを直線に配置した管内走行形状の2つの形状を、自在に変形する機構とした。これにより、図1の狭隘な管内通過と、凹凸面上の安定走行が可能になる。 (b)平面走行形状調査用カメラ線量計温度計(a)管内走行形状クローラ進行方向ガイトパイプ進行用カメラ100mm 図2.形状変化動作 図3に、2.1 節に示した2つの形状におけるクローラの動作を示す。平面走行形状時は、左右のクローラを同一方向に駆動することで前後進動作をさせ、逆方向に駆動することで旋回動作をさせる。また、管内走行形状時は、左右のクローラを逆方向に駆動することで、前後進動作をさせる。 前進前進動作左右前進正転正転後進反転反転右旋回正転反転左旋回反転正転動作左(後) 右(前) 前進正転反転後進反転正転 (a)管内走行時 (b)平面走行時 図3.走行時のクローラ動作 2.3 モックアップ試験による動作確認 2.3.1 エントリの確認 図4に、X-100B に挿入されたガイドパイプを模擬したモックアップを用いたエントリの確認状況を示す[2]。図に示す通り、ガイドパイプの前方には、構造物があり、2つのクローラの角度を変えながら、エントリを実施するため、モックアップを用いて、手順の確認を実施した。ガイドパイプ先端ロボット図4.エントリ確認の状況 2.3.2 グレーチング上走行確認 図5に、グレーチング上の走行確認試験を実施した状況を示す。X-100B の位置からグレーチング上に着座後、図1に示すように、PCV 内部をほぼ半周走行し、反対側にあるX-6 ペネ周辺まで走行することを目標として実施した。この走行試験においては、障害物が存在した場合の回避方法や、ケーブルを牽引する性能確認等を実施し、走行可能であることを確認した。- 192 - CRD搬出入ブリッジロボットケーブル図5.グレーチング上走行確認の状況 3.現地実証試験の結果 3.1 実証試験の概要 第2章で示した形状変化型ロボットを、2015 年4 月10 日および4 月15 日~20 日に、福島第一原子力発電所1 号機の原子炉格納容器(PCV)内部に投入し、1階部分を調査する実証試験を行った。図6に、調査概要を示す。実証試験は、PCV 内部の状況把握のため、映像、温度、放射線線量率等の情報取得と、地下階デブリ燃料調査の計画立案に資するため、地下階アクセス開口部、CRD 搬出入ブリッジ等の状況調査を目的とした。 X-100Bペネガイドパイプ地下階アクセス開口部CRD搬出入ブリッジMS配管図6.PCV の概要と適用対象 3.2 実証試験で得られた情報 今回の実証試験で得られた情報を列挙する。 ① 地下階デブリ燃料調査で使用する可能性がある地下階への開口部を調査した。図7[3]に、地下階アクセス部の状況を示す。図より、今後の調査に支障となるような干渉物が周囲にないことを確認できた。 図7.地下階へのアクセスルート確認状況 ② 映像を分析したところ、図8[4]に示す通り、空調機、PLR ポンプやペデスタル壁面、等、既存の設備について、大きな損傷がないことが確認できた。 図8.PCV 内壁面の損傷有無確認状況 - 193 - ③ グレーチング上の放射線量は、最大でも10Sv/h であり、当初の想定よりも低いことが分かった。 今回の調査では、CRD 搬出入ブリッジまで到達することは出来なかったが、地下階デブリ燃料調査の計画を立てるために必要な情報が多く得られた。 4.まとめ 本事業では、PCV 内部調査用の形状変化型ロボットを開発し、1号機の内部調査を実施した結果、地下階調査用装置を開発するために必要な情報を取得することができた、合わせて、今回開発した形状変化型ロボットの実機における動作性を確認することができた。今回、開発した技術、得られた情報に基づき、今後、地下階の調査計画、および調査装置の開発を進める。なお、本事業は、平成25 年度補正予算「廃炉・汚染水対策事業費補助金(原子炉格納容器内部調査技術の開発)事業」として実施したものである。 参考文献 [1] 日立製作所,日立GE ニュークリア・エナジー株式会社,“福島第一原子力発電所での燃料取り出しに向けた調査用の水中走行遊泳型ロボット・形状変化型ロボットを開発”,2014.3.10,日立製作所HP, http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2014 /03/0310e.html [2] IRID,“原子炉格納容器内部調査装置(形状変化型ロボット)の作業訓練の実施について”,IRID HP, 2015.2.3,http://irid.or.jp/research/20150203/ [3] 東京電力株式会社,“原子炉格納容器内部調査技術の開発 ペデスタル外側_1 階グレーチング上調査(B1調査)の現地実証試験の実施について【4月10日実施分】”,東京電力HP,2015.4.13, http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handout s/2015/images/handouts_150413_02-j.pdf [4] 東京電力株式会社,“原子炉格納容器内部調査技術の開発 ペデスタル外側_1 階グレーチング上調査(B1調査)の現地実証試験の実施について【4月日16実施分】”,東京電力HP,2015.4.17, http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handout s/2015/images/handouts_150417_10-j.pdf - 194 -
“ “原子炉格納容器内部調査装置の開発および実証 ~ 形状変化型ロボット ~ “ “岡田 聡,Satoshi OKADA,石澤 幸治,Koji ISHIZAWA,高橋 良知,Yoshinori TAKAHASHI
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)