経済産業省委託事業「原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発」吸引・ブラスト除の実機実証試験
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カテゴリ: 第12回
1.はじめに
福島第一原子力発電所1~3号機のように過酷事象を経験したプラントは建屋内に放射性物質が放出され、建屋内の床・壁面などのコンクリートが高密度に汚染している。そのような建屋の汚染に対して有効な除染技術を選定し、その除染技術を使用して遠隔操作可能な装置化を図っている。 その1アイテムとして、原子炉建屋1階の床面・低所の壁面を対象として吸引・ブラスト除染装置を開発しており、今回、実機適用性を検証するため実機における実証試験を行った。 2.実機における除染実証試験計画 今回の実証試験エリアには、線量率が20~30mSv/h と比較的高く、建屋の爆発に伴いコンクリート粉塵等も存在する1号機1階南西エリアを選定した。また、除染範囲は吸引回収除染で約3m2、ブラスト除染で約1m2を対象として設定した。なお、実証エリアには5~ 10cm 程度のガレキも多く飛散しており、吸引での対象外としていたこれらのガレキについては除染試験前に撤去を行った上で実施した。 なお、実証試験は平成26 年1~2 月に実施した。
3.除染実証試験結果 実証試験の実施状況の一例として、吸引回収除染を施工中の遠隔作業ロボットの外観を図1 に示すが、施工箇所までの段差乗越えや狭隘部アクセス、除染中動作等を通じて走行性、遠隔操作性等に問題のないことが確認された。 除染前後での施工面の外観を図2に示すが、吸引除染により粉塵及び約1cm 以下の小さなガレキが除去されていること、及びブラスト除染によりコンクリート表面のエポキシ塗装表面が剥離していることが確認された。 また、除染前後での汚染密度計測結果と除染係数DF を表1 に示す。ブラスト除染では定量的なDF は確認できなかったものの塗装剥離が確認されており、除染性能的にも有効であることが確認された。 これらの結果から、吸引・ブラストともに問題なく除染施工が可能であり、開発した除染装置の実機適用性が十分にあることを実証できた。 謝辞本研究は、資源エネルギー庁からの委託事業として技術研究組合 国際廃炉研究開発機構IRIDが受託し、その組合員である三菱重工が実施した「平成25 年度発電用原子炉等廃炉・安全技術基盤整備事業」の成果の一部を取りまとめたものである。 参考文献[1] 鬼塚ら、“「原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発」(4)実機実証試験 吸引・ブラスト除染”、日本原子力学会「2014 年秋の大会」予稿集、京都、2014、pp.121(D11). 図1 実機除染実証試験実施状況 表1 吸引・ブラスト除染実機実証試験結果 汚染密度と除染係数“ “経済産業省委託事業「原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発」吸引・ブラスト除の実機実証試験“ “鬼塚 博徳,Hironori ONITSUKA,矢野 雅洋,Masahiro YANO,下鍋 典昭,Noriaki SHIMONABE
福島第一原子力発電所1~3号機のように過酷事象を経験したプラントは建屋内に放射性物質が放出され、建屋内の床・壁面などのコンクリートが高密度に汚染している。そのような建屋の汚染に対して有効な除染技術を選定し、その除染技術を使用して遠隔操作可能な装置化を図っている。 その1アイテムとして、原子炉建屋1階の床面・低所の壁面を対象として吸引・ブラスト除染装置を開発しており、今回、実機適用性を検証するため実機における実証試験を行った。 2.実機における除染実証試験計画 今回の実証試験エリアには、線量率が20~30mSv/h と比較的高く、建屋の爆発に伴いコンクリート粉塵等も存在する1号機1階南西エリアを選定した。また、除染範囲は吸引回収除染で約3m2、ブラスト除染で約1m2を対象として設定した。なお、実証エリアには5~ 10cm 程度のガレキも多く飛散しており、吸引での対象外としていたこれらのガレキについては除染試験前に撤去を行った上で実施した。 なお、実証試験は平成26 年1~2 月に実施した。
3.除染実証試験結果 実証試験の実施状況の一例として、吸引回収除染を施工中の遠隔作業ロボットの外観を図1 に示すが、施工箇所までの段差乗越えや狭隘部アクセス、除染中動作等を通じて走行性、遠隔操作性等に問題のないことが確認された。 除染前後での施工面の外観を図2に示すが、吸引除染により粉塵及び約1cm 以下の小さなガレキが除去されていること、及びブラスト除染によりコンクリート表面のエポキシ塗装表面が剥離していることが確認された。 また、除染前後での汚染密度計測結果と除染係数DF を表1 に示す。ブラスト除染では定量的なDF は確認できなかったものの塗装剥離が確認されており、除染性能的にも有効であることが確認された。 これらの結果から、吸引・ブラストともに問題なく除染施工が可能であり、開発した除染装置の実機適用性が十分にあることを実証できた。 謝辞本研究は、資源エネルギー庁からの委託事業として技術研究組合 国際廃炉研究開発機構IRIDが受託し、その組合員である三菱重工が実施した「平成25 年度発電用原子炉等廃炉・安全技術基盤整備事業」の成果の一部を取りまとめたものである。 参考文献[1] 鬼塚ら、“「原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発」(4)実機実証試験 吸引・ブラスト除染”、日本原子力学会「2014 年秋の大会」予稿集、京都、2014、pp.121(D11). 図1 実機除染実証試験実施状況 表1 吸引・ブラスト除染実機実証試験結果 汚染密度と除染係数“ “経済産業省委託事業「原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発」吸引・ブラスト除の実機実証試験“ “鬼塚 博徳,Hironori ONITSUKA,矢野 雅洋,Masahiro YANO,下鍋 典昭,Noriaki SHIMONABE