低所用ドライアイスブラスト除染装置の開発
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カテゴリ: 第12回
1.はじめに
福島第一原子力発電所の廃止措置に関連し、種々の活動が行われている。これらの活動箇所は、雰囲気線量率が高く、遠隔操作あるいは極短時間での作業にならざるを得ないのが現状である。このため、除染、遮へい、線源撤去等により、作業箇所の雰囲気線量率を低減することが望まれている。資源エネルギー庁の補助事業「原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発」においては、種々の除染技術から有望な除染技術を選定し、そのうち、東芝は、ドライアイスブラスト除染の開発を担当することとした。 本稿では、低所用ドライアイスブラスト除染装置の開発経緯と1Fサイトで実施した実証試験の結果について報告する。2.ドライアイスブラスト除染装置の開発 2.ドライアイスブラスト除染装置の開発 福島第一原子力発電所の汚染は、「遊離性汚染」「固着性汚染」「浸透汚染」に分類される。ドライアイスブラスト除染は、これらのうち「固着性汚染」を対象としている。 低所用ドライアイスブラスト除染装置の開発は、平成24 年度の実証機試作と2F サイトでの試験評価を踏まえ、平成25 年度ではシステム改造を実施した。主な改造項目は、監視カメラ等の見直しによる走行安定性の改善やドライアイス搭載量の3 倍化による除染継続時間の延長である。今回の改造では走行時の遠隔監視用カメラの台数を当初搭載の2 倍以上の9 台に増やした。特に、走行時に台車周辺を監視するための車載用カメラは台車の前後、左右の4 方向に配置し全周をカバーすることで、台車の真上から俯瞰した映像を得ることができる構成とした。この俯瞰映像により、通路壁に接近した場合においても、安全で的確な遠隔操作を可能とした(図2参照)。 改造後の低所用ドライアイスブラスト除染装置を図1 に示す。
3.ドライアイスブラスト除染装置の実証試験 改造後の低所用ドライアイスブラスト除染装置について、1F-2 号機の原子炉建屋1 階の実際の汚染表面で、遠隔除染性の確認試験を実施した。本システムは、除染台車、支援台車の台車2 台で構成している。操作はすべて免震重要棟から遠隔操作で行い、除染場所には試験のための監視員も含めて人の立入を禁じ、実工事と同様の完全無人で実施した。除染場所は、原子炉建屋1 階の床面3 か所、壁面2 か所(コンクリート面と電装盤表面)の計5か所を選定し、1日1箇所、計5日間で試験を実施した。試験状況の一例として、「⑤機器表面」の除染作業中の除染台車とアームの状態を支援台車の監視カメラから捉えた映像を図3に示す。全箇所、計画時間内で作業を完了できた。ドライアイス搭載量の増加により噴射時間を約20min から60min に延長し、走査速度1.8m/min、走査ピッチ20mm とすることで、約2m2の除染が可能となった。除染前後で、OSL 線量計による表面線量計測を実施し、除去率を算出した。散水洗浄後の床面除染で除去率62% (DF2.6)、散水洗浄も含めて目標達成(DF5 以上)と評価した。未洗浄部位はDF2.3 であった。4.まとめ 低所用ドライアイスブラスト除染装置の開発に引き続き、高所用ドライアイスブラスト除染装置、上部階用ドライアイスブラスト除染装置の開発を実施中である。また、開発した低所用ドライアイスブラスト除染装置の実機適用により、除染作業の円滑化と廃止措置の推進に貢献することが期待される。5.謝辞 本件は、資源エネルギー庁の「平成25 年度発電用原子炉等廃炉・安全技術開発費補助金」においてIRID が補助事業者となりその組合員である東芝が実施した成果の一部を取りまとめたものである。 図1 低所用ドライアイスブラスト除染装置(改造後) 図2 除染装置周囲の俯瞰画像 図3 実証試験の作業状況 参考文献[1] 佐藤勝彦ほか“原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発(3)実機実証試験 ドライアイスブラスト除染”,原子力学会2014秋の年会予稿集. 1- 200 -
“ “低所用ドライアイスブラスト除染装置の開発 “ “酒井 仁志,Hitoshi SAKAI,金田 雅之,Masayuki KANEDA,齊藤 真拡,Masahiro SAITO,佐藤 光吉,Mitsuyoshi SATO,佐藤 勝彦,Katsuhiko SATO,矢板 由美,Yumi YAITA
福島第一原子力発電所の廃止措置に関連し、種々の活動が行われている。これらの活動箇所は、雰囲気線量率が高く、遠隔操作あるいは極短時間での作業にならざるを得ないのが現状である。このため、除染、遮へい、線源撤去等により、作業箇所の雰囲気線量率を低減することが望まれている。資源エネルギー庁の補助事業「原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発」においては、種々の除染技術から有望な除染技術を選定し、そのうち、東芝は、ドライアイスブラスト除染の開発を担当することとした。 本稿では、低所用ドライアイスブラスト除染装置の開発経緯と1Fサイトで実施した実証試験の結果について報告する。2.ドライアイスブラスト除染装置の開発 2.ドライアイスブラスト除染装置の開発 福島第一原子力発電所の汚染は、「遊離性汚染」「固着性汚染」「浸透汚染」に分類される。ドライアイスブラスト除染は、これらのうち「固着性汚染」を対象としている。 低所用ドライアイスブラスト除染装置の開発は、平成24 年度の実証機試作と2F サイトでの試験評価を踏まえ、平成25 年度ではシステム改造を実施した。主な改造項目は、監視カメラ等の見直しによる走行安定性の改善やドライアイス搭載量の3 倍化による除染継続時間の延長である。今回の改造では走行時の遠隔監視用カメラの台数を当初搭載の2 倍以上の9 台に増やした。特に、走行時に台車周辺を監視するための車載用カメラは台車の前後、左右の4 方向に配置し全周をカバーすることで、台車の真上から俯瞰した映像を得ることができる構成とした。この俯瞰映像により、通路壁に接近した場合においても、安全で的確な遠隔操作を可能とした(図2参照)。 改造後の低所用ドライアイスブラスト除染装置を図1 に示す。
3.ドライアイスブラスト除染装置の実証試験 改造後の低所用ドライアイスブラスト除染装置について、1F-2 号機の原子炉建屋1 階の実際の汚染表面で、遠隔除染性の確認試験を実施した。本システムは、除染台車、支援台車の台車2 台で構成している。操作はすべて免震重要棟から遠隔操作で行い、除染場所には試験のための監視員も含めて人の立入を禁じ、実工事と同様の完全無人で実施した。除染場所は、原子炉建屋1 階の床面3 か所、壁面2 か所(コンクリート面と電装盤表面)の計5か所を選定し、1日1箇所、計5日間で試験を実施した。試験状況の一例として、「⑤機器表面」の除染作業中の除染台車とアームの状態を支援台車の監視カメラから捉えた映像を図3に示す。全箇所、計画時間内で作業を完了できた。ドライアイス搭載量の増加により噴射時間を約20min から60min に延長し、走査速度1.8m/min、走査ピッチ20mm とすることで、約2m2の除染が可能となった。除染前後で、OSL 線量計による表面線量計測を実施し、除去率を算出した。散水洗浄後の床面除染で除去率62% (DF2.6)、散水洗浄も含めて目標達成(DF5 以上)と評価した。未洗浄部位はDF2.3 であった。4.まとめ 低所用ドライアイスブラスト除染装置の開発に引き続き、高所用ドライアイスブラスト除染装置、上部階用ドライアイスブラスト除染装置の開発を実施中である。また、開発した低所用ドライアイスブラスト除染装置の実機適用により、除染作業の円滑化と廃止措置の推進に貢献することが期待される。5.謝辞 本件は、資源エネルギー庁の「平成25 年度発電用原子炉等廃炉・安全技術開発費補助金」においてIRID が補助事業者となりその組合員である東芝が実施した成果の一部を取りまとめたものである。 図1 低所用ドライアイスブラスト除染装置(改造後) 図2 除染装置周囲の俯瞰画像 図3 実証試験の作業状況 参考文献[1] 佐藤勝彦ほか“原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発(3)実機実証試験 ドライアイスブラスト除染”,原子力学会2014秋の年会予稿集. 1- 200 -
“ “低所用ドライアイスブラスト除染装置の開発 “ “酒井 仁志,Hitoshi SAKAI,金田 雅之,Masayuki KANEDA,齊藤 真拡,Masahiro SAITO,佐藤 光吉,Mitsuyoshi SATO,佐藤 勝彦,Katsuhiko SATO,矢板 由美,Yumi YAITA