クランプを用いた埋設配管補修技術
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カテゴリ: 第12回
1.緒言
東海再処理施設は、使用済燃料を処理する分離精製工場、高放射性廃液の貯蔵施設、低放射性廃液の処理施設等、約40 の施設から成る。東海再処理施設では、浄水(工業用水)を施設の運転維持に必要な冷却水のほか、消火栓用水に用いており、地中埋設及び共同溝内に敷設した配管により、各施設に供給している。 この浄水を供給する配管(以下、「浄水配管」という。)のうち、建家近傍に埋設している消火栓用浄水配管の鋳鉄製管フランジの1つが損傷して漏水が発生した。 これは、東北地方太平洋沖地震で生じた地盤沈下の影響から浄水配管も地盤と共に沈下し、フランジに引張許容応力以上の力が継続的に作用したことが原因であった。この漏水した浄水配管の補修には、建家境界部と配管を埋設する地盤に生じる変位に追従、吸収できる措置として、可とう管継手で接続する工法を採用することとした。また、選定にあたっては、当該配管が設置されている埋設環境における作業性も考慮した。 本報では、多種多様な可とう管継手の中から、N-1 型クランプ[1]の選定に至るまでの技術的評価等について述べる。
2.浄水配管の調査
損傷した浄水配管の補修方法を検討するため、設置状況及び漏水箇所の調査を行った。 調査は、損傷した箇所を含む約12m×1m の範囲を掘削して実施した。その結果、漏水は、写真1 のように制水弁の直管側のフランジが損傷したことにより発生していた。当該浄水配管は、図1 のように建家境界部まで地中に埋設された状態で建家沿いに直管施工された後、T 字管により90°方向を変え、建家内に引き込まれている。直管部には配管、バルブ等の重量物の自重を受けるためのサポートを設置し、建家内に引き込む配管を固定している。このような施工状態において、地震により直管部はサポートを起点に西側に向かって沈下していることを確認した。 図1 浄水配管の損傷箇所
写真1 漏水箇所の状況 図1 浄水配管の設置状況 3. 損傷原因の調査 補修を行うにあたり、埋設配管に損傷が生じないよう再発防止対策を講じるために原因調査を行った。 3.1 フランジの状況 フランジの損傷(割れ)は、写真2 のように天頂方向及び水平北側の2 箇所に発生し、フランジが破断した状態であった。また、損傷したフランジは、表面上に錆が全体的に発生していたものの、著しい減肉は認められなかった。 写真2 フランジの損傷状況 3.2 フランジの損傷に関する評価と原因の推定 漏水箇所の仮復旧にあたって、損傷したフランジの接続を外したところ、フランジ部が約5mm 上方に変位した。このため、当該フランジ部は、直管部に設置した該当サポートを支点とし、西側に向かって生じた地盤沈下により、上向きの荷重が加えられたことによって損傷した可能性が考えられることから、制水弁、損傷したフランジ及び支点となったサポートまでの配管長さ等の寸法測定を実施し、これに基づく応力評価を行った。 本事象に係る配管系を図2 のように単純梁にモデル化し、C 点に生じた約5mm の変位に相当するモーメント及び荷重を梁のたわみ式から算出した。その結果、C 点におけるモーメント(M)は約1.26×107[N・mm]、荷重(W1)は約1.68×104[N]となり、A 点に加わる荷重(W0)は約3.26×103[N]となる。 図2 漏水した浄水配管系統の解析モデル さらに、配管の内圧及び締付け荷重を考慮し、各点に生じる応力を算出した。(表1 参照) 表1 各部に生じる応力と引張許容応力 表1 に示すとおり、C 点(フランジ)は材質がねずみ鋳鉄(FC200)であり、材料特性上、炭素鋼(SGP) に比べて脆く、また、許容引張応力が200N/mm2 と配管の許容応力に比べ小さいことから、C 点に生じ3860 750 10 M M (支点) (作用点) A(力点) B C 配管A 配管B フランジ部3860 750 10 W0 W1 ハブ部A(力点) B(支点) C(作用点) 材質SGP SGP FC200 許容引張応力[N/mm2] 2.90E+02 2.90E+02 2.00E+02 合成応力[N/mm2]:σ 2.88E+02 2.89E+02 2.08E+02 - 298 -る応力がA点やB点に生じる応力よりも先に材料の許容応力に達する可能性のあることが分かった。また、C 点の合成応力は許容引張応力よりも大きくなった。 以上のことから、フランジが損傷した原因は、地震で生じた地盤沈下によって配管サポートを支点とした荷重が長期間作用した結果、配管よりも許容引張応力が小さく脆いフランジ部に割れが生じたことによるものと推定した。 4. 補修方法 補修方法は、浄水配管の調査結果及び損傷した原因を踏まえ、再発防止対策として建家境界部に設置するという特性上、地中埋設配管と建家接続部との変位が生じることを考慮し、可とう管継手を用いた接続方法の検討及び評価を行うこととした。 可とう管継手は、フレキシブル継手や伸縮継手など多種多様のものがあるため、今回の補修に用いる可とう管継手について、以下の条件を考慮した。 <補修方法の条件> ○ 地中埋設による耐腐食対策が容易であること。 ○ 浄水が消火用にも供することから消防認定品であること。 ○ 現場溶接を極力要しない施工が可能であること。 ○ 施工時間の短縮が図れること。 その結果、全ての条件を満足し、埋設、架空、建家内に設ける給水、冷却水、排水等の液体系の鋼製配管の耐震性を向上するための接合用として管工事で用いられているクランプ(ハウジング形管継手) について、強度等の評価を行った。 4.1 クランプの設置概要 図3 のようにクランプは、ハウジング、ゴムリング、ボルト・ナットで構成され、接合する管の端部に鋼製のリングを溶接し、ゴムリングをかぶせる。その後、2 分割されたそれぞれのハウジングの掛かり止めがリングにかかるようにしてかぶせ、ボルト孔を合わせる。合わせ後、ボルト孔にボルト・ナットをセットして締めこむ。これにより管の接合ができる。 配管リング(すみ肉溶接) ハウジングゴムリングボルトゴムリングナットリング(すみ肉溶接) 配管ハウジングクランプ配管 図3 クランプ設置概要図 4.2 応力評価 地中埋設配管のクランプについて、表2 の仕様及び設計条件をもとに、「内圧」「土圧」「温度変化」の条件下で各部に生じる応力について行った。 算出方法と結果を以下に示す。 表2 クランプの仕様及び設計条件 *:日本金属継手協会規格「ハウジング形管継手」 (1) 内圧によりハウジングに生じる応力 ① ハウジングの円周方向応力 名 称 仕 様 材 質 100A:FCMB31 呼び径 (外径/内径) 100A(145mm/133mm) *ハウジングの肉厚100A:6.0mm 概略重量 100A:3.4kg 常用圧力 2.0MPa 許容応力 ハウジング FCMB31:39MPa ハウジング爪部 (せん断) FCMB31:31.2MPa リング溶接部 (せん断) 49.6MPa ボルト 66MPa 設計条件 最高使用圧力[MPa] 0.74 最高使用温度[℃] 50 配管bH1 D DH2 H3 AH1 bH2 tH σH1 = FH1 2AH1 FH1 = bH1DH2P σH1 : ハウジングの円周方向応力(MPa) FH1 : 内圧によるハウジングの円周方向荷重(N) AH1 : ハウジングの周方向断面積(100A:600mm2) DH2 : ハウジングの内径 (100A:133mm、150A:184mm) bH1 : ハウジングの内面幅(26mm) P : 最高使用圧力(0.74MPa) P ボルト:M12 - 299 -② ハウジングの軸方向応力 ③ ハウジングのボルトに生じる応力 ④ ハウジング爪部に生じるせん断応力 ⑤ リング溶接部に生じるせん断応力 (2) 土圧によりハウジングに生じる応力 (3) 温度変化によりハウジングに生じる応力 上記の各応力評価の結果、クランプの各部に生じる応力は、表3 に示すとおり各部材の許容応力以下であった。 表3 クランプに生じる応力の算出結果 4.3 変位量評価 浄水配管に生じた地盤沈下による変位量(δ0)は、原因調査の結果から約110mm と推定している。 本評価では、クランプで接続する地中埋設配管について、配管の内圧、温度変化及び地震により配管軸方向へ生じる伸縮を考慮した場合の許容変位量を以下の式により算出し、変位量(δ0)と比較した。 許容変位量の算出は、クランプ1 個分の変位量とし、かつ変位量が最も小さくなる配管部(クランプからの配管長さL が最も短い部分)として、図4 に示す配管部①について行った。 配管P DDH3H3 DH1 σH2 = FH2 AH2 FH2 = πDH3 0.5833333333333334σH2 : ハウジングの軸方向応力(MPa) FH2 : ハウジングの軸方向荷重(N) AH2 : ハウジングの軸方向断面積(AH2=π(DH12-DH22)/4) DH1 : ハウジングの外径(100A:145mm) DH3 : ゴム摺動部径(100A:114.3mm) σH3 = FH1 2NAH3 σH3 : ボルトに生じる応力(MPa) N : 合口1 箇所あたりのボルト本数(1 本) AH3 : ボルトの谷径断面積(M16:150.33mm2) τH1 = FH2 πDH4bH2 τH1 : ハウジング爪部に生じるせん断応力(MPa) DH4 : リングの外径(100A:128.3mm) bH2 : ハウジングの爪幅(100A:4.0mm) τH2 = FH2 f(πDP1 . e) τH2 :リング溶接部に生じるせん断応力(MPa) DP1 : 配管の外径(100A:114.3mm) f : 溶接脚長(3mm) e : リングの隙間(5mm) DH4 配管リングe f 配管リング溶接hs σH4 = DHtKHbWHsRHEHIHt EHIHt + 0.061KHhRH4 + 2PDHtRH3 KHx × 1ZHt σH4 : ハウジングに生じる円周方向応力(MPa) DHt : たわみ時間係数(1.5) KHb : 底部曲げモーメント係数(0.138) WHs : ハウジングに作用する土圧(N/mm) (WHs=γHshHsDH1) γHs : 土の単位体積当たりの荷重(1.67×10-5N/mm3) hHs : ハウジング頂部の深さ(1000mm) RH : ハウジングの外半径(100A:72.5mm) EH : ハウジングの縦弾性係数(1.81×105MPa) IHt : ハウジングの管壁断面二次モーメント(mm4/mm)(It= tH3/12) KHh : 水平方向地盤反力係数(100A:152.4N/mm3) KHx : 鉛直方向変形係数(0.089) ZHt : ハウジングの管壁断面係数(mm3/mm)(Zt=tH2/6) tH : ハウジングの肉厚(100A:6.0mm) hHs DH1 σH6 = EHαH⊿t σH6 : ハウジングに生じる軸方向応力(MPa) αH : ハウジングの線膨張係数(1.2×10-5mm/mm/℃) ⊿t : 温度変化(15℃) 部 位 作用する 荷重 発生応力[MPa] 許容応力[MPa] 100A 軸方向 円周 方向 ハウジング 内圧 2.9 2.2 土圧 - 0.1 温度変化 32.6 - 合計 35.5 2.3 合成応力 34.5 1900/02/07(100A:FCMB31) ハウジングボルト 内圧 8.6 66 ハウジング爪部 (せん断) 内圧 4.8 31.2(100A:FCMB31) リング溶接部 (せん断) 内圧 7.2 49.6 配管θ β ハウジングδ L 配管 δ = L . sin θ θ = 2sin.1 ..β . ξ 2DP1 .. δ : 許容変位量(mm) L : ハウジング形管継手からの配管長さ (配管部①:1800mm) θ : たわみ角 β : 配管の継手部隙間(8mm) ξ : 配管の伸縮量(mm)(ξ=ξt+ξp+ξe) ξp : 内圧による伸縮量(mm)(ξp=σP2L/EP) ξt : 温度変化による伸縮量(mm)(ξt=σP5L/EP) ξe : 地震による伸縮量(mm)(ξe=σP8L/EP) - 300 -単位:㎜ :今回の補修範囲:配管貫通部(コンクリート) :クランプ:弁:逆止弁:フランジ凡例:送水口(Y型) 図4 浄水配管系統の補修概要 変位量評価の結果、地盤沈下により配管に生じた変位量(δ0)は、表4 に示すとおり、クランプで接続した配管の許容変位量内であった。 表4 クランプで接続した地中埋設配管の 地震時の変位量と許容変位量 4.4 技術的評価 技術的評価は、本補修へのクランプの適合性を判断するために「使用条件」「材料」「性能」「強度」「埋設時の留意事項と対策」を確認した。 (1) 浄水の使用条件と適合性 クランプは、以下に示すとおり浄水の使用条件に適合している。 ① 浄水の供給圧力は0.68MPa(ポンプ供給能力、最大は締切吐出圧力0.74MPa)であり、表5 に示すとおりクランプの最高使用圧力は2.0MPa であるため十分な裕度がある。 表5 クランプの使用条件 ② 使用する浄水は、表5 に示すとおり、その水質のうち腐食の因子となる塩化物イオンは水道水基準を十分に下回っており、水道で使用実績があるクランプを使用することに問題はない。 表6 浄水等の水質 ③ 消火用配管へ用いることについては、消防設備の認定品を使用するため問題はない。 ④ クランプの構成は、ハウジング、ゴムリング、ボルト・ナット及びリングのシンプルな構造であり、ボルト・ナットで締め付け時のトルク管理等を行い、施工品質を確保することで問題はない。 (2) 材料評価 クランプに用いられている材料は、以下に示すとおり設置環境等に適合している。 ① 材料は、日本工業規格(JIS)による製品であり、十分に実績のある汎用品を使用している。 ② 水道等の使用に多くの実績がある。 ③ 本補修における各構成材料に生じる応力は、いずれも材料の許容応力の範囲内である。 ④ ボルト・ナットの組み合わせ強度区分を示している。 ⑤ 配管に生じる変位については、クランプが変位するときに生じる応力、変形に十分に耐えるゴムリング材料を採用している。 ⑥ 土中、屋内湿分等の設置環境を考慮し、ハウジングは塗装を施し腐食対策をとる仕様としている。 (3) 性能評価 クランプ構造からの性能は、以下に示すとおり可とう性を十分に確保できるものである。 ① 引張り、曲がり、圧縮、内圧及び外圧が生じる状況において、ゴムリングが管とクランプを気密にする機構となっている。また、管に逆圧等で負圧状態となっても気密を保持する機構をともな 対 象 地盤沈下により配管に生じた変位量(δ0) [mm] 許容変位量※[mm] 分離精製工場の 浄水供給配管(100A) 配管部① 110 113 ※ハウジング形管継手1 個分の変位量であり、ハウジング形管継手を複数使用している箇所は その個数に応じた変位量が見込める。 呼び径 常用圧力 (MPa) 試験水圧 (MPa) 概略重量 (kg) 備 考 100A 2.0 4.0 3.4 日本消防設備安全 センター認定品 水質項目 県工業用水基準※1 再処理施設測定結果※2 参考(水道水基準)※3 pH 5.8~8.6 7.0 7.5 程度 硬度 ― 48mg/L 10mg/L 以上100mg/L 以下 塩化物イオン ― 10mg/L 200mg/L 以下 その他 供給温度30℃以下 濁度15°以下 鉄 0.05 mg/L 未満 鉄 0.3mg/L 以下 ※1 茨城県工業水道条例より ※2 2015 年再処理施設浄水水質試験報告書より ※3 厚生労働省 水質基準項目と基準値より - 301 -っている。 ② シンプルな構造でありながら、最高使用圧力2MPa において、気密性を保持しつつ変位(たわみ、伸縮、偏心、滑動)を吸収できるものとなっている。 (4) 強度評価試験 クランプは、東海再処理施設の海中放出管で発生した漏洩事象において、平成23 年の海中での復旧に使用した実績がある。当時のメーカ工場及び再処理施設内で行った試験の結果[2]を以下に紹介する。 ① 引張破壊試験 クランプ(マレアブル鋳鉄製、常用圧力1MPa) で繋がれた配管(両端はフランジ止め)の管内に2MPa で充水した試験体について、300t アクチュエータ試験機により上方へ継手が破壊するまで荷重を与え、破壊時の引張荷重(破壊荷重)を測定した。 試験は3 回行い、いずれも約60t を超えたところで破壊している。 試験の結果、破壊するまでクランプから漏水はなく、漏水はハウジングの破断、リング変形によるゴムリングのずれ、抑えが無くなることで生じた。 強度的にはハウジング爪部に応力が集中することで破壊に至った。 ② 荷重試験 引張破壊試験と同様な試験体に5t のウェイトを用いて引張荷重(5 分間)を与え、その後、1MPa の水圧をかけて30 分間保持する試験を行った。 試験の結果、圧力降下及び漏水はなかった。 以上により、クランプは漏水防止性能面においても十分に信頼できるものである。 (5) 埋設時の留意事項と対策 施工においては、国土交通省監修「機械設備工事監理指針」(公共建築協会)の設計時、施工時の注意事項に従って施工することで所定の機能が発揮することができる。 今回の管とクランプを組み合わせた補修方法から推定すると、地盤沈下による変位量110mm の想定ならば破損にはいたらないと考えるが、埋設する際は次のことに留意する。 ① 今回の補修箇所は、地盤の深さ約4m までの調査では、砂分が約85%を占め、そのほかシルト分となっている。震災時に液状化は生じていなかったが、埋設箇所の砂の状況から、震災時同様、建家境界部では沈下が想定される。このため、配管の敷設経路には次の処置をとる。なお、圧密沈下のおそれはない。 ・配管敷設経路の掘削を行い、必要に応じてれき等を充填する。 ・配管敷設経路の基礎底は、機械等を用いて地盤を締め固めた後、土間コンクリートを敷設する。 ・土間コンクリートを敷設した基礎底に配管、継手 を施工する。 ② クランプの埋設箇所には、筒状の点検口を設けて目視による外観観察ができるようにする。 4.5 評価結果のまとめ 本補修で用いる予定のクランプについて、変位への追従及び吸収、機械的強度、気密性等の性能並びに浄水の使用条件、設置環境等への適合性を評価した結果、以下の結論を得ることができた。 (1) 性能に問題はないものと考えられ、使用条件等に適合している。 (2) 所定の機能を発揮するために、埋設施工時に守るべき注意事項はあるものの国土交通省監修の指針において標準化されているため、問題はないものと考えられる。 以上により、クランプは本補修に十分適用できる。 5. 結言 従来の類似した補修では、溶接、フランジによる配管接合を多く採用していたが、今回のように地震による地盤沈下の影響を受けて損傷するなど、変位吸収機構を要する箇所での配管補修にはクランプが有効と考えられる。さらに、クランプを用いた補修では、プレハブを増やすことができるため、現地での溶接を減らして工期の短縮を図ることができるなど幅広く活用できるものと考える。 参考文献 [1] 日本ヴィクトリック株式会社「カタログ」 [2] 日本原子力研究開発機構(2010)「海中放出設備の一部交換 引張破壊試験報告書」 - 302 -“ “クランプを用いた埋設配管補修技術 “ “綿引 健二,Kenji WATAHIKI,石井 貴広,Takahiro ISHII,鋤柄 光二,Koji SUKIGARA,算用子 裕孝,Hirotaka SANYOSHI,伊波 慎一,Shinichi INAMI
東海再処理施設は、使用済燃料を処理する分離精製工場、高放射性廃液の貯蔵施設、低放射性廃液の処理施設等、約40 の施設から成る。東海再処理施設では、浄水(工業用水)を施設の運転維持に必要な冷却水のほか、消火栓用水に用いており、地中埋設及び共同溝内に敷設した配管により、各施設に供給している。 この浄水を供給する配管(以下、「浄水配管」という。)のうち、建家近傍に埋設している消火栓用浄水配管の鋳鉄製管フランジの1つが損傷して漏水が発生した。 これは、東北地方太平洋沖地震で生じた地盤沈下の影響から浄水配管も地盤と共に沈下し、フランジに引張許容応力以上の力が継続的に作用したことが原因であった。この漏水した浄水配管の補修には、建家境界部と配管を埋設する地盤に生じる変位に追従、吸収できる措置として、可とう管継手で接続する工法を採用することとした。また、選定にあたっては、当該配管が設置されている埋設環境における作業性も考慮した。 本報では、多種多様な可とう管継手の中から、N-1 型クランプ[1]の選定に至るまでの技術的評価等について述べる。
2.浄水配管の調査
損傷した浄水配管の補修方法を検討するため、設置状況及び漏水箇所の調査を行った。 調査は、損傷した箇所を含む約12m×1m の範囲を掘削して実施した。その結果、漏水は、写真1 のように制水弁の直管側のフランジが損傷したことにより発生していた。当該浄水配管は、図1 のように建家境界部まで地中に埋設された状態で建家沿いに直管施工された後、T 字管により90°方向を変え、建家内に引き込まれている。直管部には配管、バルブ等の重量物の自重を受けるためのサポートを設置し、建家内に引き込む配管を固定している。このような施工状態において、地震により直管部はサポートを起点に西側に向かって沈下していることを確認した。 図1 浄水配管の損傷箇所
写真1 漏水箇所の状況 図1 浄水配管の設置状況 3. 損傷原因の調査 補修を行うにあたり、埋設配管に損傷が生じないよう再発防止対策を講じるために原因調査を行った。 3.1 フランジの状況 フランジの損傷(割れ)は、写真2 のように天頂方向及び水平北側の2 箇所に発生し、フランジが破断した状態であった。また、損傷したフランジは、表面上に錆が全体的に発生していたものの、著しい減肉は認められなかった。 写真2 フランジの損傷状況 3.2 フランジの損傷に関する評価と原因の推定 漏水箇所の仮復旧にあたって、損傷したフランジの接続を外したところ、フランジ部が約5mm 上方に変位した。このため、当該フランジ部は、直管部に設置した該当サポートを支点とし、西側に向かって生じた地盤沈下により、上向きの荷重が加えられたことによって損傷した可能性が考えられることから、制水弁、損傷したフランジ及び支点となったサポートまでの配管長さ等の寸法測定を実施し、これに基づく応力評価を行った。 本事象に係る配管系を図2 のように単純梁にモデル化し、C 点に生じた約5mm の変位に相当するモーメント及び荷重を梁のたわみ式から算出した。その結果、C 点におけるモーメント(M)は約1.26×107[N・mm]、荷重(W1)は約1.68×104[N]となり、A 点に加わる荷重(W0)は約3.26×103[N]となる。 図2 漏水した浄水配管系統の解析モデル さらに、配管の内圧及び締付け荷重を考慮し、各点に生じる応力を算出した。(表1 参照) 表1 各部に生じる応力と引張許容応力 表1 に示すとおり、C 点(フランジ)は材質がねずみ鋳鉄(FC200)であり、材料特性上、炭素鋼(SGP) に比べて脆く、また、許容引張応力が200N/mm2 と配管の許容応力に比べ小さいことから、C 点に生じ3860 750 10 M M (支点) (作用点) A(力点) B C 配管A 配管B フランジ部3860 750 10 W0 W1 ハブ部A(力点) B(支点) C(作用点) 材質SGP SGP FC200 許容引張応力[N/mm2] 2.90E+02 2.90E+02 2.00E+02 合成応力[N/mm2]:σ 2.88E+02 2.89E+02 2.08E+02 - 298 -る応力がA点やB点に生じる応力よりも先に材料の許容応力に達する可能性のあることが分かった。また、C 点の合成応力は許容引張応力よりも大きくなった。 以上のことから、フランジが損傷した原因は、地震で生じた地盤沈下によって配管サポートを支点とした荷重が長期間作用した結果、配管よりも許容引張応力が小さく脆いフランジ部に割れが生じたことによるものと推定した。 4. 補修方法 補修方法は、浄水配管の調査結果及び損傷した原因を踏まえ、再発防止対策として建家境界部に設置するという特性上、地中埋設配管と建家接続部との変位が生じることを考慮し、可とう管継手を用いた接続方法の検討及び評価を行うこととした。 可とう管継手は、フレキシブル継手や伸縮継手など多種多様のものがあるため、今回の補修に用いる可とう管継手について、以下の条件を考慮した。 <補修方法の条件> ○ 地中埋設による耐腐食対策が容易であること。 ○ 浄水が消火用にも供することから消防認定品であること。 ○ 現場溶接を極力要しない施工が可能であること。 ○ 施工時間の短縮が図れること。 その結果、全ての条件を満足し、埋設、架空、建家内に設ける給水、冷却水、排水等の液体系の鋼製配管の耐震性を向上するための接合用として管工事で用いられているクランプ(ハウジング形管継手) について、強度等の評価を行った。 4.1 クランプの設置概要 図3 のようにクランプは、ハウジング、ゴムリング、ボルト・ナットで構成され、接合する管の端部に鋼製のリングを溶接し、ゴムリングをかぶせる。その後、2 分割されたそれぞれのハウジングの掛かり止めがリングにかかるようにしてかぶせ、ボルト孔を合わせる。合わせ後、ボルト孔にボルト・ナットをセットして締めこむ。これにより管の接合ができる。 配管リング(すみ肉溶接) ハウジングゴムリングボルトゴムリングナットリング(すみ肉溶接) 配管ハウジングクランプ配管 図3 クランプ設置概要図 4.2 応力評価 地中埋設配管のクランプについて、表2 の仕様及び設計条件をもとに、「内圧」「土圧」「温度変化」の条件下で各部に生じる応力について行った。 算出方法と結果を以下に示す。 表2 クランプの仕様及び設計条件 *:日本金属継手協会規格「ハウジング形管継手」 (1) 内圧によりハウジングに生じる応力 ① ハウジングの円周方向応力 名 称 仕 様 材 質 100A:FCMB31 呼び径 (外径/内径) 100A(145mm/133mm) *ハウジングの肉厚100A:6.0mm 概略重量 100A:3.4kg 常用圧力 2.0MPa 許容応力 ハウジング FCMB31:39MPa ハウジング爪部 (せん断) FCMB31:31.2MPa リング溶接部 (せん断) 49.6MPa ボルト 66MPa 設計条件 最高使用圧力[MPa] 0.74 最高使用温度[℃] 50 配管bH1 D DH2 H3 AH1 bH2 tH σH1 = FH1 2AH1 FH1 = bH1DH2P σH1 : ハウジングの円周方向応力(MPa) FH1 : 内圧によるハウジングの円周方向荷重(N) AH1 : ハウジングの周方向断面積(100A:600mm2) DH2 : ハウジングの内径 (100A:133mm、150A:184mm) bH1 : ハウジングの内面幅(26mm) P : 最高使用圧力(0.74MPa) P ボルト:M12 - 299 -② ハウジングの軸方向応力 ③ ハウジングのボルトに生じる応力 ④ ハウジング爪部に生じるせん断応力 ⑤ リング溶接部に生じるせん断応力 (2) 土圧によりハウジングに生じる応力 (3) 温度変化によりハウジングに生じる応力 上記の各応力評価の結果、クランプの各部に生じる応力は、表3 に示すとおり各部材の許容応力以下であった。 表3 クランプに生じる応力の算出結果 4.3 変位量評価 浄水配管に生じた地盤沈下による変位量(δ0)は、原因調査の結果から約110mm と推定している。 本評価では、クランプで接続する地中埋設配管について、配管の内圧、温度変化及び地震により配管軸方向へ生じる伸縮を考慮した場合の許容変位量を以下の式により算出し、変位量(δ0)と比較した。 許容変位量の算出は、クランプ1 個分の変位量とし、かつ変位量が最も小さくなる配管部(クランプからの配管長さL が最も短い部分)として、図4 に示す配管部①について行った。 配管P DDH3H3 DH1 σH2 = FH2 AH2 FH2 = πDH3 0.5833333333333334σH2 : ハウジングの軸方向応力(MPa) FH2 : ハウジングの軸方向荷重(N) AH2 : ハウジングの軸方向断面積(AH2=π(DH12-DH22)/4) DH1 : ハウジングの外径(100A:145mm) DH3 : ゴム摺動部径(100A:114.3mm) σH3 = FH1 2NAH3 σH3 : ボルトに生じる応力(MPa) N : 合口1 箇所あたりのボルト本数(1 本) AH3 : ボルトの谷径断面積(M16:150.33mm2) τH1 = FH2 πDH4bH2 τH1 : ハウジング爪部に生じるせん断応力(MPa) DH4 : リングの外径(100A:128.3mm) bH2 : ハウジングの爪幅(100A:4.0mm) τH2 = FH2 f(πDP1 . e) τH2 :リング溶接部に生じるせん断応力(MPa) DP1 : 配管の外径(100A:114.3mm) f : 溶接脚長(3mm) e : リングの隙間(5mm) DH4 配管リングe f 配管リング溶接hs σH4 = DHtKHbWHsRHEHIHt EHIHt + 0.061KHhRH4 + 2PDHtRH3 KHx × 1ZHt σH4 : ハウジングに生じる円周方向応力(MPa) DHt : たわみ時間係数(1.5) KHb : 底部曲げモーメント係数(0.138) WHs : ハウジングに作用する土圧(N/mm) (WHs=γHshHsDH1) γHs : 土の単位体積当たりの荷重(1.67×10-5N/mm3) hHs : ハウジング頂部の深さ(1000mm) RH : ハウジングの外半径(100A:72.5mm) EH : ハウジングの縦弾性係数(1.81×105MPa) IHt : ハウジングの管壁断面二次モーメント(mm4/mm)(It= tH3/12) KHh : 水平方向地盤反力係数(100A:152.4N/mm3) KHx : 鉛直方向変形係数(0.089) ZHt : ハウジングの管壁断面係数(mm3/mm)(Zt=tH2/6) tH : ハウジングの肉厚(100A:6.0mm) hHs DH1 σH6 = EHαH⊿t σH6 : ハウジングに生じる軸方向応力(MPa) αH : ハウジングの線膨張係数(1.2×10-5mm/mm/℃) ⊿t : 温度変化(15℃) 部 位 作用する 荷重 発生応力[MPa] 許容応力[MPa] 100A 軸方向 円周 方向 ハウジング 内圧 2.9 2.2 土圧 - 0.1 温度変化 32.6 - 合計 35.5 2.3 合成応力 34.5 1900/02/07(100A:FCMB31) ハウジングボルト 内圧 8.6 66 ハウジング爪部 (せん断) 内圧 4.8 31.2(100A:FCMB31) リング溶接部 (せん断) 内圧 7.2 49.6 配管θ β ハウジングδ L 配管 δ = L . sin θ θ = 2sin.1 ..β . ξ 2DP1 .. δ : 許容変位量(mm) L : ハウジング形管継手からの配管長さ (配管部①:1800mm) θ : たわみ角 β : 配管の継手部隙間(8mm) ξ : 配管の伸縮量(mm)(ξ=ξt+ξp+ξe) ξp : 内圧による伸縮量(mm)(ξp=σP2L/EP) ξt : 温度変化による伸縮量(mm)(ξt=σP5L/EP) ξe : 地震による伸縮量(mm)(ξe=σP8L/EP) - 300 -単位:㎜ :今回の補修範囲:配管貫通部(コンクリート) :クランプ:弁:逆止弁:フランジ凡例:送水口(Y型) 図4 浄水配管系統の補修概要 変位量評価の結果、地盤沈下により配管に生じた変位量(δ0)は、表4 に示すとおり、クランプで接続した配管の許容変位量内であった。 表4 クランプで接続した地中埋設配管の 地震時の変位量と許容変位量 4.4 技術的評価 技術的評価は、本補修へのクランプの適合性を判断するために「使用条件」「材料」「性能」「強度」「埋設時の留意事項と対策」を確認した。 (1) 浄水の使用条件と適合性 クランプは、以下に示すとおり浄水の使用条件に適合している。 ① 浄水の供給圧力は0.68MPa(ポンプ供給能力、最大は締切吐出圧力0.74MPa)であり、表5 に示すとおりクランプの最高使用圧力は2.0MPa であるため十分な裕度がある。 表5 クランプの使用条件 ② 使用する浄水は、表5 に示すとおり、その水質のうち腐食の因子となる塩化物イオンは水道水基準を十分に下回っており、水道で使用実績があるクランプを使用することに問題はない。 表6 浄水等の水質 ③ 消火用配管へ用いることについては、消防設備の認定品を使用するため問題はない。 ④ クランプの構成は、ハウジング、ゴムリング、ボルト・ナット及びリングのシンプルな構造であり、ボルト・ナットで締め付け時のトルク管理等を行い、施工品質を確保することで問題はない。 (2) 材料評価 クランプに用いられている材料は、以下に示すとおり設置環境等に適合している。 ① 材料は、日本工業規格(JIS)による製品であり、十分に実績のある汎用品を使用している。 ② 水道等の使用に多くの実績がある。 ③ 本補修における各構成材料に生じる応力は、いずれも材料の許容応力の範囲内である。 ④ ボルト・ナットの組み合わせ強度区分を示している。 ⑤ 配管に生じる変位については、クランプが変位するときに生じる応力、変形に十分に耐えるゴムリング材料を採用している。 ⑥ 土中、屋内湿分等の設置環境を考慮し、ハウジングは塗装を施し腐食対策をとる仕様としている。 (3) 性能評価 クランプ構造からの性能は、以下に示すとおり可とう性を十分に確保できるものである。 ① 引張り、曲がり、圧縮、内圧及び外圧が生じる状況において、ゴムリングが管とクランプを気密にする機構となっている。また、管に逆圧等で負圧状態となっても気密を保持する機構をともな 対 象 地盤沈下により配管に生じた変位量(δ0) [mm] 許容変位量※[mm] 分離精製工場の 浄水供給配管(100A) 配管部① 110 113 ※ハウジング形管継手1 個分の変位量であり、ハウジング形管継手を複数使用している箇所は その個数に応じた変位量が見込める。 呼び径 常用圧力 (MPa) 試験水圧 (MPa) 概略重量 (kg) 備 考 100A 2.0 4.0 3.4 日本消防設備安全 センター認定品 水質項目 県工業用水基準※1 再処理施設測定結果※2 参考(水道水基準)※3 pH 5.8~8.6 7.0 7.5 程度 硬度 ― 48mg/L 10mg/L 以上100mg/L 以下 塩化物イオン ― 10mg/L 200mg/L 以下 その他 供給温度30℃以下 濁度15°以下 鉄 0.05 mg/L 未満 鉄 0.3mg/L 以下 ※1 茨城県工業水道条例より ※2 2015 年再処理施設浄水水質試験報告書より ※3 厚生労働省 水質基準項目と基準値より - 301 -っている。 ② シンプルな構造でありながら、最高使用圧力2MPa において、気密性を保持しつつ変位(たわみ、伸縮、偏心、滑動)を吸収できるものとなっている。 (4) 強度評価試験 クランプは、東海再処理施設の海中放出管で発生した漏洩事象において、平成23 年の海中での復旧に使用した実績がある。当時のメーカ工場及び再処理施設内で行った試験の結果[2]を以下に紹介する。 ① 引張破壊試験 クランプ(マレアブル鋳鉄製、常用圧力1MPa) で繋がれた配管(両端はフランジ止め)の管内に2MPa で充水した試験体について、300t アクチュエータ試験機により上方へ継手が破壊するまで荷重を与え、破壊時の引張荷重(破壊荷重)を測定した。 試験は3 回行い、いずれも約60t を超えたところで破壊している。 試験の結果、破壊するまでクランプから漏水はなく、漏水はハウジングの破断、リング変形によるゴムリングのずれ、抑えが無くなることで生じた。 強度的にはハウジング爪部に応力が集中することで破壊に至った。 ② 荷重試験 引張破壊試験と同様な試験体に5t のウェイトを用いて引張荷重(5 分間)を与え、その後、1MPa の水圧をかけて30 分間保持する試験を行った。 試験の結果、圧力降下及び漏水はなかった。 以上により、クランプは漏水防止性能面においても十分に信頼できるものである。 (5) 埋設時の留意事項と対策 施工においては、国土交通省監修「機械設備工事監理指針」(公共建築協会)の設計時、施工時の注意事項に従って施工することで所定の機能が発揮することができる。 今回の管とクランプを組み合わせた補修方法から推定すると、地盤沈下による変位量110mm の想定ならば破損にはいたらないと考えるが、埋設する際は次のことに留意する。 ① 今回の補修箇所は、地盤の深さ約4m までの調査では、砂分が約85%を占め、そのほかシルト分となっている。震災時に液状化は生じていなかったが、埋設箇所の砂の状況から、震災時同様、建家境界部では沈下が想定される。このため、配管の敷設経路には次の処置をとる。なお、圧密沈下のおそれはない。 ・配管敷設経路の掘削を行い、必要に応じてれき等を充填する。 ・配管敷設経路の基礎底は、機械等を用いて地盤を締め固めた後、土間コンクリートを敷設する。 ・土間コンクリートを敷設した基礎底に配管、継手 を施工する。 ② クランプの埋設箇所には、筒状の点検口を設けて目視による外観観察ができるようにする。 4.5 評価結果のまとめ 本補修で用いる予定のクランプについて、変位への追従及び吸収、機械的強度、気密性等の性能並びに浄水の使用条件、設置環境等への適合性を評価した結果、以下の結論を得ることができた。 (1) 性能に問題はないものと考えられ、使用条件等に適合している。 (2) 所定の機能を発揮するために、埋設施工時に守るべき注意事項はあるものの国土交通省監修の指針において標準化されているため、問題はないものと考えられる。 以上により、クランプは本補修に十分適用できる。 5. 結言 従来の類似した補修では、溶接、フランジによる配管接合を多く採用していたが、今回のように地震による地盤沈下の影響を受けて損傷するなど、変位吸収機構を要する箇所での配管補修にはクランプが有効と考えられる。さらに、クランプを用いた補修では、プレハブを増やすことができるため、現地での溶接を減らして工期の短縮を図ることができるなど幅広く活用できるものと考える。 参考文献 [1] 日本ヴィクトリック株式会社「カタログ」 [2] 日本原子力研究開発機構(2010)「海中放出設備の一部交換 引張破壊試験報告書」 - 302 -“ “クランプを用いた埋設配管補修技術 “ “綿引 健二,Kenji WATAHIKI,石井 貴広,Takahiro ISHII,鋤柄 光二,Koji SUKIGARA,算用子 裕孝,Hirotaka SANYOSHI,伊波 慎一,Shinichi INAMI