高速炉プラント(「もんじゅ」)の安全性確保の考え方

公開日:
カテゴリ: 第12回
1.はじめに
2013 年7 月、「もんじゅ」について新規制基準が施行されたが、その新規制基準は今後原子力規制委員会において改めて検討し基準を見直すこととなっている。 このような状況を踏まえて日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)は、高速炉プラントの専門家による「もんじゅ安全対策ピアレビュー委員会」を設置して、「もんじゅ」に関する重大事故等を含む安全確保の考え方を整理した[1]。本件は、それらの考え方に基づき検討したもんじゅの安全確保策についての検討状況を報告するものである。
2. 高速増殖炉原型炉もんじゅの安全確保の考え方
「もんじゅ安全対策ピアレビュー委員会」においては、東京電力福島事故の教訓及びNa 冷却高速炉の特徴を踏まえて「設計基準事故対応策の考え方」(深層防護レベル1~3)、「重大事故の防止と影響緩和に関する考え方」(深層防護レベル4)が議論され、「もんじゅ」として特に重要な要求16 項目が摘出されている[1]。現在、原子力機構は、これら要求事項やNa 冷却高速炉の特徴を踏まえ「もんじゅ」の安全確保策について検討を進めている。
3. Na 冷却高速炉の特徴と軽水炉との相違点
Na冷却高速炉の特徴の一つは冷却材であるNaにある。冷却材であるNa は高い熱伝達特性を有し、高沸点(883℃:大気圧)であることから発電のために1 次系圧力を上げる必要がない。このため、軽水炉と異なり1 次系配管からの冷却材の漏れがあっても炉心から冷却材が沸騰してなくなることはなく、冷却材漏えいに対してガードベッセル等の静的機器で液位の確保が可能である。さらに、液体で利用可能な温度範囲が広く、ポンプ駆動を必要としない自然循環冷却が可能である。また、崩壊熱に対して系統Na 及びプラント構造物の熱容量が大きく、除熱が喪失した場合でも炉心の著しい損傷までに時間余裕があることから、信頼性の高い設計基準事故対策を整備することが可能であるとともに、自然循環除熱への自動移行に失敗した場合でも、中央制御室あるいは現場における運転員の手動操作により自然循環除熱に移行可能な多様で頑強なアクシデントマネジメント(以下、AM)に基づく除熱の継続が可能である。一方、Na 冷却高速炉は、炉心中心領域でNa ボイド反応度が正となりうることから、Na の沸騰及びカバーガスの巻込みに対する考慮が必要である。また、最小臨界量を上回る燃料を炉心に保有しているため、燃料が破損し形状が変わった状態において燃料集中による臨界とエネルギー放出の可能性を考慮する必要がある。このようにNa 冷却高速炉は軽水炉と異なる特性を有することから、その安全確保策については、軽水炉との相違を十分に考慮するとともに、確率論的なリスク情報等を参照して、大規模な格納機能喪失に至るシーケンスは実質上除外されるように対策し、大規模な放射性物質の放出リスクを低減しなければならない。図3.1 に上述の相違点をそれぞれ対応させて示す。 図3.1 Na 冷却高速増殖炉の特徴と軽水炉との相違点
4.Na 冷却型高速炉の特徴を考慮したもんじゅの安全性向上策
Na 冷却高速炉において、設計基準事故を超えて重大な炉心損傷に至る可能性のある事故を区分すると、原子炉停止機能喪失事故と、崩壊熱除去機能喪失事故とに区分される。「もんじゅ」の安全性向上策では、これらの事故が発生し、大規模な格納機能喪失に至るシーケンスが実質除外されるような対策を検討している。以下もんじゅの安全性向上策の具体例として、現在検討中の原子炉停止機能喪失対策および除熱機能喪失対策を紹介する。 4.1 原子炉停止機能の確保 4.1.1 原子炉停止機能 もんじゅの原子炉停止系の原設計は以下のとおり。 ・原子炉トリップ信号が発せられた場合、原子炉トリップしゃ断器が開となり、制御棒は重力で自然に炉心内へ落下し挿入される。 ・制御棒は独立した2 系統(主炉停止系13 本、後備炉停止系6 本)から構成される。 ・主炉停止系は、設計基準事故対応として最も反応度価値の高い調整棒1 本が完全に引き抜かれた場合でも(制御棒が入らないことを想定)原子炉が停止できるように設計されている。 ・制御棒の挿入試験では、実物同様の試験体(モックアップ)を用いて1 万6000 回以上実施し、一度も失敗がなく、制御棒の挿入性は信頼が高いことを確認済み。 ・設計基準事故を超えて主炉停止系の制御棒が挿入されない事故を想定しても、後備炉停止系が挿入されることで原子炉は停止する。 図4.1.1 原子炉停止機能原設計 4.1.2 原子炉停止機能の安全性向上策(後備炉停止棒挿入インタロックの追加) 原子炉停止機能喪失事故として、炉心流量喪失時原子炉停止機能喪失(ULOF)、除熱機能喪失時原子炉停止機能喪失(ULOHS)、過出力時原子炉停止機能喪失(UTOP) を想定している。これらの事象への対策として安全保護系とは独立に、図4.1.2 に示す通りのインタロックを追設して機能強化する方策等について検討を進めている。この方策を実施することで原子炉停止機能喪失事故の発生リスクを下げることが可能となり、原子炉停止機能喪失事故の発生確率を極めて低いレベルに抑えることができる。 図4.1.2 後備炉停止棒挿入インタロックの追設 4.2 除熱機能の確保 4.2.1 除熱機能 図4.2.1.1 に「もんじゅ」の崩壊熱除去系の構成を示す。「もんじゅ」は冷却材にNa を使用しており、除熱機能に関する設計上の特徴は以下の通り。
・1 次系配管から冷却材が漏えいしても瞬時に冷却材が減圧沸騰し喪失することがない。 ・ガードベッセルにより流出した冷却材を保持し、原子炉容器内の炉心燃料の露出を防止する。これによって、炉心からの崩壊熱除去が可能。 ・冷却系は3 系統配備しており、1 系統の事故に加え、1 系統の故障を想定しても、残る1 系統で崩壊熱除去が可能。 ・Na 冷却高速炉の特徴として、電源が喪失しポンプの運転が期待できず、強制循環運転が不能となる設計基準を超えた事故を想定しても、自然循環運転によって崩壊熱除去が可能。 このように、「もんじゅ」の崩壊熱除去系は冗長性の高い設計となっており、除熱機能に関して信頼性の高いプラントとなっている。 図4.2.1.1 もんじゅの崩壊熱除去系 図4.2.1.2 自然循環冷却 4.2.2 除熱機能の安全性向上策 崩壊熱機能が一時的に全て喪失するようなことを想定しても、「もんじゅ」は原子炉冷却材が沸騰するまでには、時間的な余裕があることから、多様なAM 策を講じることが可能である。例えば、全ての動力電源を喪失して弁が開とならない事故の想定に対しては、運転員が現場にて弁を手動で開操作することにより、崩壊熱除去に必要な流路パスが確保され、崩壊熱除去機能は確保できる。今後、様々な状況を想定し、採るべき多様なAM 策を検討していく。 「もんじゅ」には主冷却系とは別に、メンテナンス時に用いる1 ループ構成のメンテナンス冷却系が設けられている。この系統の配管は、原子炉容器内で主冷却系配管よりも深い位置に配置されている。上記のベント弁開運用に失敗し、1 次主冷却系による炉心冷却が不能となっても、この系統を運転することによって炉心冷却が可能である(図4.2.2.2 参照)。1 次主冷却系のベント運用を変更することで、2 系統目漏えいに対しても多重の対策が確保された設備とすることができる。 メンテナンス冷却系は、強制循環運転によりメンテナンス中の崩壊熱除去運転を行う設備である。設計基準を超える事故が発生しても、メンテナンス冷却系を用いた崩壊熱除去機能を維持することによる機能強化について検討している。このような設備対策を講じることによって、メンテナンス冷却系を用いた炉心冷却の信頼性を向上させる。 図4.2.2.1 原子炉容器液位確保のためのベント対策 図4.2.2.2 原子炉容器液位低下時のメンテナンス冷却系による除熱 - 5 - 5. おわりに 原子力機構は「もんじゅ安全対策ピアレビュー委員会」を設置して、「もんじゅ」に関する重大事故等を含む安全確保の考え方の検討を実施し、もんじゅの安全確保の考え方を整理してきた。 原子力機構では本考え方を踏まえて、もんじゅの安全性向上策を検討している。今回は検討を進めている対策の内、原子炉停止機能および除熱機能の安全性向上策を紹介した。今後、対策の詳細な検討を進め、対策の効果を評価しプラントの安全性を向上させるための設備対策を確定して行く予定である。 参考文献 [1]もんじゅ安全対策ピアレビュー委員会、“高速増殖原型炉もんじゅの安全確保の考え方”、JAEA-Evaluation- 2014-005 . - 6 - “ “高速炉プラント(「もんじゅ」)の安全性確保の考え方 “ “岡田 俊親,Toshichika OKADA,市川 健太,Ichikawa KENTA,二神 敏,Futagami SATOSHI,江沼 康弘,Yasuhiro ENUMA,宮川 明,Akira MIYAKAWA,堺 公明,Takaaki SAKAI,中井 良大,Ryodai NAKAI
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)