特定重大事故等対処施設の課題と短期対応の対策案について
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カテゴリ: 第12回
1.はじめに
現在、原子力規制委員会(以下、NRA と称す)においては、特定重大事故等対処施設(以下、特重設と称す)の適合性審査が、BWRおよびPWRプラントの代表プラントで開始されたところである。 当初、NRAは、設置許可申請、工事認可申請、保安規定審査を同時並行で実施するとしており、審査は、約半年を目処に完了するとの見解を示していたが、先行PWR電力殿(特に、九州電力殿川内1/2号機)の審査は、約2年を要しており、審査期間が明らかに遅延している状況にある。 そのために、特重設の適合性審査も大幅に遅延している状況にあり、このままでは特重設の猶予期間である201 8年7月7日までに、審査の完了、特重設の竣工は、間に合わない可能性が高い。 そこで、日本保全学会の原子力安全規制関連検討会では、特重設の猶予期間の延長とその期間に、短期対応の対策代案[1]を提案することとした。本報では、その骨子について発表する。 2.法令上の要求 特重設に関して、原子炉等規制法では以下に規定されている。 ●原子炉等規制法の第43条の3の6に許可の基準、第43条の3の14に発電用原子炉施設の維持(技術基準)に関する規定が設けられており、それぞれ、原子力規制委員会規則で定める基準に適合することが要求されている。 ●特重設に関して、「実用発電用原子炉及びその付属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(以下、 位置等規則と称す)」、及び「実用発電用原子炉及びその付属施設の技術基準に関する規則(以下、技術基準規則と称す)」において基準が設けられているが、それぞれ位置等規則の附則2及び技術基準規則の附則4において、2018年7月7日までに設置の猶予が設けられている。 ●原子炉等規正法第43条の3の23において、「N RAは、これらの基準に適合していないとき、原子炉設置者に対し、当該原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定、その他の保安のために必要な措置を命ずることができる」とされている。 3.猶予期間見直しの考え方(案) 以下に猶予期間見直しの考え方(案)を示す。
4.猶予期間見直しに関する提案 ■猶予期間の見直しについて以下の提案をする。 (1)猶予期間延長のため、原子力規制委員会規則の見直しを図る。 (2)または、2018年7月7日までに、特重設の竣工ができないプラントは、「技術基準適合猶予期間延長申請(仮称)」を書面で提出する。 ■対応手段の例としては、以下のことが考えられる。 (1)重大事故等対処施設に対する対応の強化例(ソフト対応案) ●航空機接近情報の提供によるプラント緊急停止等の導入 ●各プラントに設置するSA設備を用いた訓練の定期的な実施 ●PPの強化(パトロール等監視の増強) (2)重大事故等対処施設に対する対応の強化例(ハード対応案) ●目標物への進入可能性低減対応 ●異常検知および事前準備 ●衝突発生後の対応 ●操作場所の位置的分散 図2 猶予期間変更に伴う代替措置(ソフト案) 図3 特重施設とは別方法で対応可能な対策案 図4 特重用可搬式熱交換ポンプ車載の例. 図5 可搬式熱交換システムによる炉心冷却概念 5.まとめ 以上の検討により、特定重大事故等対処施設の課題と短期対応の対策案についてまとめた。今後、NRAおよび事業者は、この対策案を参考に、特重施設の猶予期間について、充実した議論と対応を取っていただくことを希望する。 参考文献 [1] 日本保全学会,“特定重大事故等対処施設の課題と短期対応の対策案について”,原子力安全規制関連検討会資料 - 36 -
“ “特定重大事故等対処施設の課題と短期対応の対策案について “ “今野 隆博,Takahiro KONNO,佐々木 宏,Hiroshi SASAKI,串間 由紀子,Yukiko KUSHIMA
現在、原子力規制委員会(以下、NRA と称す)においては、特定重大事故等対処施設(以下、特重設と称す)の適合性審査が、BWRおよびPWRプラントの代表プラントで開始されたところである。 当初、NRAは、設置許可申請、工事認可申請、保安規定審査を同時並行で実施するとしており、審査は、約半年を目処に完了するとの見解を示していたが、先行PWR電力殿(特に、九州電力殿川内1/2号機)の審査は、約2年を要しており、審査期間が明らかに遅延している状況にある。 そのために、特重設の適合性審査も大幅に遅延している状況にあり、このままでは特重設の猶予期間である201 8年7月7日までに、審査の完了、特重設の竣工は、間に合わない可能性が高い。 そこで、日本保全学会の原子力安全規制関連検討会では、特重設の猶予期間の延長とその期間に、短期対応の対策代案[1]を提案することとした。本報では、その骨子について発表する。 2.法令上の要求 特重設に関して、原子炉等規制法では以下に規定されている。 ●原子炉等規制法の第43条の3の6に許可の基準、第43条の3の14に発電用原子炉施設の維持(技術基準)に関する規定が設けられており、それぞれ、原子力規制委員会規則で定める基準に適合することが要求されている。 ●特重設に関して、「実用発電用原子炉及びその付属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(以下、 位置等規則と称す)」、及び「実用発電用原子炉及びその付属施設の技術基準に関する規則(以下、技術基準規則と称す)」において基準が設けられているが、それぞれ位置等規則の附則2及び技術基準規則の附則4において、2018年7月7日までに設置の猶予が設けられている。 ●原子炉等規正法第43条の3の23において、「N RAは、これらの基準に適合していないとき、原子炉設置者に対し、当該原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定、その他の保安のために必要な措置を命ずることができる」とされている。 3.猶予期間見直しの考え方(案) 以下に猶予期間見直しの考え方(案)を示す。
4.猶予期間見直しに関する提案 ■猶予期間の見直しについて以下の提案をする。 (1)猶予期間延長のため、原子力規制委員会規則の見直しを図る。 (2)または、2018年7月7日までに、特重設の竣工ができないプラントは、「技術基準適合猶予期間延長申請(仮称)」を書面で提出する。 ■対応手段の例としては、以下のことが考えられる。 (1)重大事故等対処施設に対する対応の強化例(ソフト対応案) ●航空機接近情報の提供によるプラント緊急停止等の導入 ●各プラントに設置するSA設備を用いた訓練の定期的な実施 ●PPの強化(パトロール等監視の増強) (2)重大事故等対処施設に対する対応の強化例(ハード対応案) ●目標物への進入可能性低減対応 ●異常検知および事前準備 ●衝突発生後の対応 ●操作場所の位置的分散 図2 猶予期間変更に伴う代替措置(ソフト案) 図3 特重施設とは別方法で対応可能な対策案 図4 特重用可搬式熱交換ポンプ車載の例. 図5 可搬式熱交換システムによる炉心冷却概念 5.まとめ 以上の検討により、特定重大事故等対処施設の課題と短期対応の対策案についてまとめた。今後、NRAおよび事業者は、この対策案を参考に、特重施設の猶予期間について、充実した議論と対応を取っていただくことを希望する。 参考文献 [1] 日本保全学会,“特定重大事故等対処施設の課題と短期対応の対策案について”,原子力安全規制関連検討会資料 - 36 -
“ “特定重大事故等対処施設の課題と短期対応の対策案について “ “今野 隆博,Takahiro KONNO,佐々木 宏,Hiroshi SASAKI,串間 由紀子,Yukiko KUSHIMA