科学的リスクと社会リスク
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カテゴリ: 第12回
1.リスクの概念
リスクの概念は、現在では経営の分野で広く用いられている。近年の“リスク”という明確な概念が用いられてきたのが金融や保険の分野である。投資や事業の進出などがポートフォーリオとしてリスク概念を元に、体系的にリスクへの取り組みが行われるようになってきた。また、保険の分野では、保険料の算定を正確にかつ論理的におこなうためにリスク評価に基づく方法が取られるようになった。このようにリスクを使う範囲は、経済活動のみならず、食品分野での添加物の管理や医療の分野での治療法の選択、さらには環境の分野では最近話題の地球温暖化に伴う最大問題、情報では様々なウイルスや不正な侵入など広い分野で、“リスク”という言葉が日常的に使われ、リスク対策としてその概念や評価法が議論されるようになってきた。 しかし、“リスク”の認知と同時に、その言葉の使われ方も多様化してきた。最近では、一般に、危険、あるいは損失、傷害、不利益、破壊に身をさらされたときにリスク(risk)という言葉が使われているようである。リスクに似た言葉に、ペリル(peril)とハザード(hazard)がある。ペリルとは「不測の事態」とされる事故をさし、台風や洪水といった天災による偶発事故である。ハザードは、ペリルを発生させる原因のみならず、ペリルの被害の程度を大きくする要因を含む概念である。 例えば、偶発的に起きた山火事はペリルであり、山火事の被害を拡大する原因となる空気の乾燥はハザードである。欧米のリスクマネジメント論では、ハザードは、「脅威」を第一義訳とするスレット(threat)と併記される場合がある。ハザードとスレットのいずれも「事故の原因または事故の被害拡大要因」ということである。被害の対象によって、健康、安全、環境については「ハザード」を、防御、防衛、投資、ビジネスについては「スレット」を使い分ける傾向があるが、使い分けは必ずしも明確ではない。
2.リスクとは
2.1 リスクの定義と定式化 リスクを一般的に定義することは難しい。ベネフィットである期待される成果、正の要因があり、それを得るための負の要因としての想定される「損失」をリスクと言う。すなわち、リスクとベネフィットは対で扱われなければならない。 ベネフィットはすぐに定量化して期待されるが、リスクについては曖昧なままとなる場合が多い。定量的には、リスクとは「現時点より先に、ある頻度で起こりうる事象が与える損失の大きさ(期待値)」と定義される。しかし、多くのリスク事象には発生の不確実性が伴っており、すべての事象が正しく定量化できるものではなく、定量化し難い事象が多い。 リスクを具体的な関数として表すと、“事象影響の大きさ”と“発生頻度”を掛けたものとして定義づけられる。すなわち、一般的には、“事象影響の大きさ”は“被連絡先:宮野 廣、〒212-0013 川崎市幸区堀川町72-21 R1309、法政大学大学院デザイン工学研究科、 E-mail:hiroshi,Miyano.77@hosei.ac.jp - 357 -害規模”に、“発生頻度”は“発生確率”に置き換えて定式化して現わされる。 リスク=Σ(被害規模×発生確率)・・・(2) ここで、“被害規模”は、リスク事象によって被害を受けるエンドポイントでの影響を定量化したものである。 すなわち、ベネフィットを受ける位置(人)とリスクを取る位置(人)は同じでなければならない。 2.2 科学的リスク リスクは、前述の定義により定量化できるが、その場合には、“被害”と言われる事態に至る過程、シナリオが重要である。このシナリオは科学的に分析され、それにより事態の進展の可能性、すなわち確率が算定される。このようにして評価されるのが、「科学的リスク」である。 例えば、工場での事故であれば、事故の進展により工場で働く従業員、職業人が受ける被害や周辺の住民、公衆の健康被害、死亡が想定される。リスクは、企業の損失、職業人の被害、周辺住民の被害とそれぞれ、立場により異なるものが、リスクとして推定される。それぞれの立場には、それぞれ異なるベネフィットがあり、一律に評価できるものではない。 科学的リスクの大きさを見てみる。被害規模と発生確率の関係を図1に示すと、図中の長方形の面積がリスクとなる。リスクの低減とは、長方形の面積を小さくすることであり、それには事象の発生確率と被害の大きさである被害規模をできるだけ小さくしなければならない。リスクの低減とは、この下図の関係においてリスク低減対策を取る、被害規模を小さくするか発生確率を小さくする、ことである。 Fig.1 Relationship between Risk and Consequence, Probability 2.3 原子力発電によるリスク 原子力の専門家、技術者の間では、原子力安全については様々に議論されてきた。そこには、原子力安全に対峙する形で原子力リスクがある。“原子力安全の確保”は、すなわち“原子力リスクの低減”である。 “原子力安全の確保”には、目標を決めて定量的に向う方向を示す必要がある。これまでも、「原子力安全」の目標は、仮想的な事故が発生した場合の事故時の原子力施設の境界における在住の人の死亡をリスク認識、“被害規模”としてその“発生頻度”を10-4/年以下であることと定量的に定めて、その確保を目指してきた。 3.社会リスクの概念 3.1 リスクの多様化と社会が負うリスク 社会の多様化によって、多くのリスクが問われるようになってきた。代表的なものは、地球温暖化によるリスクである。リスクの発生源が特定できても、被害の大きさを正確に把握することが難しい事象である。地球温暖化による気候変動が将来の社会に与える影響については、IPCC の第五次評価報告書には“20 世紀半ば以降に観測された温暖化は、人間活動が主な原因である可能性が極めて高い”と記載されている(環境省,2014)。温暖化による気候変動が社会に及ぼす影響は甚大と予測されている。 一方、原子力事故のような場合には、被害者の経済損失、それに事故で避難を余儀されている人への生活や精神的な被害など、被害規模の大きさは大きく広範囲となっている。影響は地域社会だけではなく、広く地球規模になるとも推察される。 地球温暖化の主要な要因は、温室効果ガスの排出に、石炭火力、ガス火力、石油系燃料火力などの火力発電が大きく寄与していることであり、大気汚染問題を含めて、これらの社会リスクと放射性物質の拡散による社会リスクとの選択、もしくはいずれも回避しなければならない社会リスクとしての対応が求められるものである。 しかし、温暖化問題においても、原子力事故においても、ベネフィットを受けているものとリスクを負っているものは、個人や組織は必ずしも明確ではなく、社会がベネフィットを受け取り、リスクを負っているとも言え、具体的な対応は進まないのが、現状である。先にも示したが、ベネフィットは明確だが、リスクは曖昧であり、この「社会リスク」をどのように考えるべきか、重要な課題となりつつある。 被害規模 リスク 発生確率 規模小 確率小 - 358 -3.2 原子力発電の社会リスク 福島第一の事故においては、原子力リスクが顕在化することとなった。これまでリスクとして評価してきた死亡リスクは想定通りに回避されたものの、想定外のリスクが顕在化してしまった。非難における弱者の死亡リスクや環境の放射能汚染のリスクなどである。すなわち、社会としてリスクへの取り組みが脆弱であったことが露呈したと言える。 そこで、まず国の原子力規制委員会では、住民の生活が重要なこととされ、環境への放出限界、基準が定められることとなった。どこまでのリスクを許容するか、という意味では、テンポラリーではあるが原子力規制委員会は、「100TBq、10-6/年以下」のリスクレベルを提示した。この「100TBq」の想定する被害規模は、福島第一事故の1/100 の放射性物質の放出レベルと言うことであるから、発生頻度の議論は別として国民には、ある程度、多くに受け入れられる目標数値と言えよう。 これは、単に福島地区の住民の目標リスクではない。 図1に示したように、リスクを科学的に分析、評価した上で、社会が決める事象の大きさ-ここでは、「想定する被害規模」を「事象の大きさ」と現わしている-を関係者間でコンセンサスを得た上でこの基準を設定しなければならない。社会は様々なリスクに直面しているが、原子力利用に伴うリスクも、科学的には同じ土俵で扱わなければならない。 Fig.2 Tolerability of Risk and Concept on Risk by HSE 3.2 社会リスクの課題 社会リスクの課題は、科学的評価のみでは解決できない様々なリスクが含まれていることにある。すなわち、風評被害や国際問題、テロなどによる事態の発生への対応など、である。更に、原子力利用に関しては、リスク認識においてバイアスが生じることも多く、そのリスクの理解の相違を生んでいることがコミュニケーションすら疎外している要因ともなっている。リスク評価を基に対話を図る事がリスクコミュニケーションである。特に社会で容認する社会リスクのレベルを確定するには、広く国民との間でリスクコミュニケーションを行いながら、リスクの理解や、対応策などの施策、政策を決めていく、そうした取り組みが必要であり、それにより原子力安全を確保できる原子力利用の可否のコンセンサスを形成することができるものと考える。 4.まとめ 「コンセンサス」はしばしば「合意」と翻訳されるが、同義ではない。コミュニケーションの場では関係者全員のコンセンサスが得られないことも生じる。いくつかの論点については「合意」の意味でのコンセンサスが形成されなかったとしても、その事実認識に関するコンセンサスは形成されうる。社会として受け入れられるリスクのコンセンサスの形成を目指すことが重要である。 参考文献 [1] 内山洋司、羽田野祐子、岡島敬一「エネルギーシステムの社会リスク 」コロナ社(2012) [2] 環境省http://www.env.go.jp/earth/ipcc /5th/index.htm,(2014) [3] Goverment Policy on the Management of Risk Volume Ⅰ: Report, 5th Report of Session 2005-06, Select Committee on Economic Affairs, HL Paper 183-Ⅰ, HOUSE OF LORDS, United Kingdom, (2006) [4] Reducing Risks, Protecting People, HSE’s Decision-Making Process, Health and Safety Executive, United Kingdom, (2011) [5]「原子力安全の基本的考え方について 第Ⅰ編 原子力安全の目的と基本原則」 日本原子力学会標準委員会技術レポート AESJ-SC-TR005:2012 (学会のHP にて公開) [6] 第1回原子力規制委員会 資料6-2「放射性物質放出量と発生頻度の関係」 無視できる事象の大きさ受け入れられる領域受容されない領域広く受容される領域受容できない事象の大きさ事象の大きさ社会が決める基準- 359 -
“ “科学的リスクと社会リスク “ “宮野 廣,Hiroshi MITYANO
リスクの概念は、現在では経営の分野で広く用いられている。近年の“リスク”という明確な概念が用いられてきたのが金融や保険の分野である。投資や事業の進出などがポートフォーリオとしてリスク概念を元に、体系的にリスクへの取り組みが行われるようになってきた。また、保険の分野では、保険料の算定を正確にかつ論理的におこなうためにリスク評価に基づく方法が取られるようになった。このようにリスクを使う範囲は、経済活動のみならず、食品分野での添加物の管理や医療の分野での治療法の選択、さらには環境の分野では最近話題の地球温暖化に伴う最大問題、情報では様々なウイルスや不正な侵入など広い分野で、“リスク”という言葉が日常的に使われ、リスク対策としてその概念や評価法が議論されるようになってきた。 しかし、“リスク”の認知と同時に、その言葉の使われ方も多様化してきた。最近では、一般に、危険、あるいは損失、傷害、不利益、破壊に身をさらされたときにリスク(risk)という言葉が使われているようである。リスクに似た言葉に、ペリル(peril)とハザード(hazard)がある。ペリルとは「不測の事態」とされる事故をさし、台風や洪水といった天災による偶発事故である。ハザードは、ペリルを発生させる原因のみならず、ペリルの被害の程度を大きくする要因を含む概念である。 例えば、偶発的に起きた山火事はペリルであり、山火事の被害を拡大する原因となる空気の乾燥はハザードである。欧米のリスクマネジメント論では、ハザードは、「脅威」を第一義訳とするスレット(threat)と併記される場合がある。ハザードとスレットのいずれも「事故の原因または事故の被害拡大要因」ということである。被害の対象によって、健康、安全、環境については「ハザード」を、防御、防衛、投資、ビジネスについては「スレット」を使い分ける傾向があるが、使い分けは必ずしも明確ではない。
2.リスクとは
2.1 リスクの定義と定式化 リスクを一般的に定義することは難しい。ベネフィットである期待される成果、正の要因があり、それを得るための負の要因としての想定される「損失」をリスクと言う。すなわち、リスクとベネフィットは対で扱われなければならない。 ベネフィットはすぐに定量化して期待されるが、リスクについては曖昧なままとなる場合が多い。定量的には、リスクとは「現時点より先に、ある頻度で起こりうる事象が与える損失の大きさ(期待値)」と定義される。しかし、多くのリスク事象には発生の不確実性が伴っており、すべての事象が正しく定量化できるものではなく、定量化し難い事象が多い。 リスクを具体的な関数として表すと、“事象影響の大きさ”と“発生頻度”を掛けたものとして定義づけられる。すなわち、一般的には、“事象影響の大きさ”は“被連絡先:宮野 廣、〒212-0013 川崎市幸区堀川町72-21 R1309、法政大学大学院デザイン工学研究科、 E-mail:hiroshi,Miyano.77@hosei.ac.jp - 357 -害規模”に、“発生頻度”は“発生確率”に置き換えて定式化して現わされる。 リスク=Σ(被害規模×発生確率)・・・(2) ここで、“被害規模”は、リスク事象によって被害を受けるエンドポイントでの影響を定量化したものである。 すなわち、ベネフィットを受ける位置(人)とリスクを取る位置(人)は同じでなければならない。 2.2 科学的リスク リスクは、前述の定義により定量化できるが、その場合には、“被害”と言われる事態に至る過程、シナリオが重要である。このシナリオは科学的に分析され、それにより事態の進展の可能性、すなわち確率が算定される。このようにして評価されるのが、「科学的リスク」である。 例えば、工場での事故であれば、事故の進展により工場で働く従業員、職業人が受ける被害や周辺の住民、公衆の健康被害、死亡が想定される。リスクは、企業の損失、職業人の被害、周辺住民の被害とそれぞれ、立場により異なるものが、リスクとして推定される。それぞれの立場には、それぞれ異なるベネフィットがあり、一律に評価できるものではない。 科学的リスクの大きさを見てみる。被害規模と発生確率の関係を図1に示すと、図中の長方形の面積がリスクとなる。リスクの低減とは、長方形の面積を小さくすることであり、それには事象の発生確率と被害の大きさである被害規模をできるだけ小さくしなければならない。リスクの低減とは、この下図の関係においてリスク低減対策を取る、被害規模を小さくするか発生確率を小さくする、ことである。 Fig.1 Relationship between Risk and Consequence, Probability 2.3 原子力発電によるリスク 原子力の専門家、技術者の間では、原子力安全については様々に議論されてきた。そこには、原子力安全に対峙する形で原子力リスクがある。“原子力安全の確保”は、すなわち“原子力リスクの低減”である。 “原子力安全の確保”には、目標を決めて定量的に向う方向を示す必要がある。これまでも、「原子力安全」の目標は、仮想的な事故が発生した場合の事故時の原子力施設の境界における在住の人の死亡をリスク認識、“被害規模”としてその“発生頻度”を10-4/年以下であることと定量的に定めて、その確保を目指してきた。 3.社会リスクの概念 3.1 リスクの多様化と社会が負うリスク 社会の多様化によって、多くのリスクが問われるようになってきた。代表的なものは、地球温暖化によるリスクである。リスクの発生源が特定できても、被害の大きさを正確に把握することが難しい事象である。地球温暖化による気候変動が将来の社会に与える影響については、IPCC の第五次評価報告書には“20 世紀半ば以降に観測された温暖化は、人間活動が主な原因である可能性が極めて高い”と記載されている(環境省,2014)。温暖化による気候変動が社会に及ぼす影響は甚大と予測されている。 一方、原子力事故のような場合には、被害者の経済損失、それに事故で避難を余儀されている人への生活や精神的な被害など、被害規模の大きさは大きく広範囲となっている。影響は地域社会だけではなく、広く地球規模になるとも推察される。 地球温暖化の主要な要因は、温室効果ガスの排出に、石炭火力、ガス火力、石油系燃料火力などの火力発電が大きく寄与していることであり、大気汚染問題を含めて、これらの社会リスクと放射性物質の拡散による社会リスクとの選択、もしくはいずれも回避しなければならない社会リスクとしての対応が求められるものである。 しかし、温暖化問題においても、原子力事故においても、ベネフィットを受けているものとリスクを負っているものは、個人や組織は必ずしも明確ではなく、社会がベネフィットを受け取り、リスクを負っているとも言え、具体的な対応は進まないのが、現状である。先にも示したが、ベネフィットは明確だが、リスクは曖昧であり、この「社会リスク」をどのように考えるべきか、重要な課題となりつつある。 被害規模 リスク 発生確率 規模小 確率小 - 358 -3.2 原子力発電の社会リスク 福島第一の事故においては、原子力リスクが顕在化することとなった。これまでリスクとして評価してきた死亡リスクは想定通りに回避されたものの、想定外のリスクが顕在化してしまった。非難における弱者の死亡リスクや環境の放射能汚染のリスクなどである。すなわち、社会としてリスクへの取り組みが脆弱であったことが露呈したと言える。 そこで、まず国の原子力規制委員会では、住民の生活が重要なこととされ、環境への放出限界、基準が定められることとなった。どこまでのリスクを許容するか、という意味では、テンポラリーではあるが原子力規制委員会は、「100TBq、10-6/年以下」のリスクレベルを提示した。この「100TBq」の想定する被害規模は、福島第一事故の1/100 の放射性物質の放出レベルと言うことであるから、発生頻度の議論は別として国民には、ある程度、多くに受け入れられる目標数値と言えよう。 これは、単に福島地区の住民の目標リスクではない。 図1に示したように、リスクを科学的に分析、評価した上で、社会が決める事象の大きさ-ここでは、「想定する被害規模」を「事象の大きさ」と現わしている-を関係者間でコンセンサスを得た上でこの基準を設定しなければならない。社会は様々なリスクに直面しているが、原子力利用に伴うリスクも、科学的には同じ土俵で扱わなければならない。 Fig.2 Tolerability of Risk and Concept on Risk by HSE 3.2 社会リスクの課題 社会リスクの課題は、科学的評価のみでは解決できない様々なリスクが含まれていることにある。すなわち、風評被害や国際問題、テロなどによる事態の発生への対応など、である。更に、原子力利用に関しては、リスク認識においてバイアスが生じることも多く、そのリスクの理解の相違を生んでいることがコミュニケーションすら疎外している要因ともなっている。リスク評価を基に対話を図る事がリスクコミュニケーションである。特に社会で容認する社会リスクのレベルを確定するには、広く国民との間でリスクコミュニケーションを行いながら、リスクの理解や、対応策などの施策、政策を決めていく、そうした取り組みが必要であり、それにより原子力安全を確保できる原子力利用の可否のコンセンサスを形成することができるものと考える。 4.まとめ 「コンセンサス」はしばしば「合意」と翻訳されるが、同義ではない。コミュニケーションの場では関係者全員のコンセンサスが得られないことも生じる。いくつかの論点については「合意」の意味でのコンセンサスが形成されなかったとしても、その事実認識に関するコンセンサスは形成されうる。社会として受け入れられるリスクのコンセンサスの形成を目指すことが重要である。 参考文献 [1] 内山洋司、羽田野祐子、岡島敬一「エネルギーシステムの社会リスク 」コロナ社(2012) [2] 環境省http://www.env.go.jp/earth/ipcc /5th/index.htm,(2014) [3] Goverment Policy on the Management of Risk Volume Ⅰ: Report, 5th Report of Session 2005-06, Select Committee on Economic Affairs, HL Paper 183-Ⅰ, HOUSE OF LORDS, United Kingdom, (2006) [4] Reducing Risks, Protecting People, HSE’s Decision-Making Process, Health and Safety Executive, United Kingdom, (2011) [5]「原子力安全の基本的考え方について 第Ⅰ編 原子力安全の目的と基本原則」 日本原子力学会標準委員会技術レポート AESJ-SC-TR005:2012 (学会のHP にて公開) [6] 第1回原子力規制委員会 資料6-2「放射性物質放出量と発生頻度の関係」 無視できる事象の大きさ受け入れられる領域受容されない領域広く受容される領域受容できない事象の大きさ事象の大きさ社会が決める基準- 359 -
“ “科学的リスクと社会リスク “ “宮野 廣,Hiroshi MITYANO