レーザーを用いた配管検査補修装置の開発

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カテゴリ: 第12回
1.諸言
高速増殖炉で使用される熱交換器伝熱管の保守保全技術の開発は、水―ナトリウム反応の事故の苛烈さを考えた場合、この形式の炉において最も重要な研究開発項目である。このため原子力機構では、同炉で使用される内径1 インチ配管内で画像観察およびレーザー照射が可能なレーザー加工ヘッドを開発した[1]。 次に配管減肉など広範囲で深さのある配管損傷を補修するために、ワイヤによる肉盛溶接技術を開発した。この開発では、1 インチ配管内壁に対し肉盛溶接を行うのに適したレーザー、ワイヤ送給速度、トーチ移動速度といった溶接条件、各種デバイスの操作手順を明らかにした。また、この成果を発展させ、石油化学プラント、国際熱核融合実験炉(ITER)、ナトリウム冷却高速炉といった過酷環境下にあるプラントの保守保全への応用について考察を進めた[2]。その結果、配管内へのレーザーヘッドの挿入方法と補修前後の配管形状の定量的な計測の2つに関して課題を見出した。 本報告ではレーザーヘッドを精密制御可能な配管検査補修装置の試作を行った。試作機では、複語型光ファイバを通じた画像観察およびQCW レーザーを用いた照射試験を行い、性能を確認した。
2.配管検査補修装置
試作機は大別してレーザー計測加工ユニットおび制御ユニットから構成されている。 図1 にレーザー計測加工ユニットの全体図(a)およびヘッド先端部(b)を示す。Φ20 mmのレーザーヘッドが2 つのステッピングモーターとボールねじを組み合わせた機構と接続とされている。レーザーヘッドの回転、垂直運動を制御することができる。運動機構とトーチをあわせた大きさは約150 mm(W)×約150 mm(D)×約400 mm(H) であり、1 インチ配管の端から約100 mmヘッドを内部に挿入することができる。レーザーヘッドはXYZ ステージに固定されており、検査補修対象とする配管と挿入するヘッドの位置調整はこのステージを使って行う。レーザーヘッドの先端には8 mm×14 mmの平板ミラーが55 度の角度で固定されており、配管内壁にレーザー光を照射することができる。また、観察用照明として複数の白色LEDを配置しており、観察位置を下側から照らす。また、観察位置に対して上方からライン状の赤色LEDを照らし、ライン形状を画像で確認することで、配管表面の凹凸を判別する。レーザーヘッドはワイヤを用いた配管内壁への肉盛溶接を行うことができる。モーター制御されたワイヤ送給装置からΦ0.4 mmのワイヤを送り出し、テフロンチューブとワイヤガイドを通じて先端のレーザー照射位置に送給可能である。ワイヤガイド先端はアルミナ管を採用し、肉盛溶接時のガイド管と母材の溶着を防いだ。また、溶接用不活性ガスはレーザーヘッド内を通じてレ
ーザー照射位置へ噴射する。 制御ユニットは約600 mm(W)×約1100 mm(D)×約900 mm(H)でモニタ、制御パネル、画像解析ユニット、QCW ファイバレーザーおよびカップリング装置から構成されている。制御ユニットとレーザー計測加工ユニットとは複合型光ファイバ、モーター制御用の信号ケーブルで接続されている。制御ユニットからはレーザー発振、ワイヤ送給、レーザーヘッドの回転直動運動の制御およびヘッド、ファイバによる観察画像の確認を行う。各デバイスは手動操作とシーケンス制御をどちらかを選択できる。 (a) (b) Fig.1 Prototype of maintenance machine for 1 inch tube. 配管形状の定量計測には、レーザーヘッドを通じてHe-Ne レーザーを配管内壁面に集光し、その散乱光強度をヘッド側面のファイバを通じて計測する方法を検討した。この方法の利点は機構が単純で、小口径配管に適用しやすい点である。これまでの試験で配管表面の機械加工痕の形状計測に成功した。 3.検査補修装置のプラント機器への応用 過酷環境下で作動する各種プラント機器の保守保全へ試作機を適用する場合、以下の展開が考えられる。 石油化学工場の中心施設であるエチレンプラントで使用される多管円筒形熱交換器では、高温ガス中に含まれるコークスによる配管減肉が発生する。プラント現場では検査対象となる配管が数百から数千本となることが想定されるため、効率的な検査補修が求められる。このため、本装置をベースに、検査と補修を行うための専用ヘッドの設けることが合理的である。また、面積が広く深さが浅い減肉の場合には耐熱性のライニングを伝熱管内部に挿入[3]し、補修用ヘッドを用いてライニングを伝熱管内壁にレーザー溶接することで作業時間の短縮をはかることができる。 国際熱核融合実験炉(ITER)では、2020 年のファーストプラズマに向けて本体と周辺機器の建造が進められている。ITER では、ブランケットを遠隔からロボットを用いて交換する必要がある[4]。ブランケットはトリチウム増殖のためのものであるが、高温プラズマから真空容器を保護する機能も有する。真空容器内部のブランケットの交換時には、ロボット先端の溶接用ツールでブランケット内冷却配管を突合せ溶接する。これにはレーザー溶接が検討されている[5]。良好な溶接のためには、突き合せた配管の目違いおよび隙間を0.3mm 以内とすることが必要である。この計測にはHe-Ne レーザーと光ファイバによる散乱光強度計測が有効であり、本装置への付加も可能である。 4.結言 レーザーによる配管検査補修装置を試作した。今後、過酷環境下で作動するプラント機器でのモックアップ試験に向けて装置の最適化を行う。 謝辞 本研究における試作機は中小企業庁「平成25 年度補正中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」の助成をうけ、製作した。試作機の動作試験で協力いただいた、サンリツオートメイション株式会社、佃啓二氏、西條慎吾氏、田中真倫氏、エーテック株式会社、竹仲祐介氏、古山雄大氏に深く感謝します。 参考文献 [1] 岡潔, 西村昭彦, 関健史ほか: “複合型光ファイバを用いた1 インチ伝熱管用観察補修レーザー加工ヘッドの開発”, 保全学, Vol.8, No.4, pp.37-42 (2010). [2] 寺田隆哉, 西村昭彦, 岡潔ほか: “レーザー加工トーチを用いた配管表面肉盛溶接技術の研究”, 保全学, Vol.13, No.4, pp.87-94 (2015). [3] ギレセンクリストフ, シールケヘルムート,ハイスターカンプマルコほか: “耐熱性の管板ライニングを持つ多管円筒形熱交換器”, 特許公表2008-545114 [4] N. Takeda, A. Aburadani, H. Tanigawa, et al.: “Rail deployment operation test for ITER blanket handling system with positioning misalignment”, Fusion Eng. Des., Vol.88, pp.2186-2189 (2013). [5] H. Tanigawa, A. Aburadani, S. Shigematsu, et al.: “Comparative study of laser and TIG welding for application to ITER blanket hydraulic connection”, Fusion Eng. Des., Vol.87, pp.999-1002 (2012). - 380 -
“ “レーザーを用いた配管検査補修装置の開発 “ “寺田 隆哉,Takaya TERADA,西村 昭彦,Akihiko NISHIMURA,岡 潔,Kiyoshi OKA,外山 亮治,Ryoji TOYAMA,橘内 大輔,Daisuke KITSUNAI
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