シビアアクシデントコードMAAP の改良と事故解析

公開日:
カテゴリ: 第12回
1.緒言
福島第一原子力発電所の中長期的な廃止措置を進めるにあたり、燃料デブリの取り出しにかかる対策の立案及び安全対策の策定に向けては、事故後の炉内状況を推定・把握することが不可欠である。しかし、現状高線量下にある損傷炉心の直接的な観察は困難である。 一方、その代替として期待される事故進展解析技術に関しては、事故進展の概要把握は可能であるものの、得られる結果に不確実性が大きく、それだけで燃料デブリの存在場所・形態、圧力容器の損傷程度等を推定するのは困難である。 したがって、サイトのオペレーションから得られる情報とともに、これと並行して進められる事故進展解析技術の高度化により、現状推定精度が不十分な燃料デブリの存在位置、存在量及び組成等の推定精度を向上させる必要がある。 そこで、本研究では、国内で使用されている代表的な過酷事故解析コード(MAAP、SAMPSON)のモデル高度化を図り、炉内状況(燃料デブリの存在位置、存在量 及び組成等)を推定し、号機毎の燃料デブリ取り出し工法の確定や実施に資することを目的とする。 本報では、MAAP コードのモデル改良の状況と各号機での解析結果の概要について述べる。
2.MAAP コードの改良と事故解析
2.1 コードの概要
MAAP (Modular Accident Analysis Program) は、米国電力中央研究所 (EPRI) が所有する過酷事故解析コードであり、事故時の原子炉圧力容器 (RPV) および格納容器 (PCV) 内の熱水力・核分裂生成物挙動を一貫して評価できる。日本では、産業界が米国からコードを導入し、代表プラントの確率論的安全評価やアクシデントマネジメント策の検討で広範囲に活用してきた。 2.2 モデル高度化 本研究では、これまでに二段階のモデル改良を実施してきた。 まず、平成24 年度から平成25 年度に亘り、福島第一
の分析や、解析モデル調査結果等に基づき、BWR 特有の構造に起因した燃料デブリの移行挙動等の高度化項目を抽出し、モデル改良・実機解析[1]を実施した。 また、日本原子力学会 シビアアクシデント評価研究専門委員会との連携により重要物理現象の抽出とコード改良・高度化項目の妥当性検討を目的として策定したPIRT (Phenomena Identification and Ranking Table) [2]も参照した上で、平成26 年度以降、さらなるモデル改良を実施している(Fig.1)。平成26 年度には、RPV 内の燃料デブリ挙動に関する以下のモデルを重点的に改良した。 1) シュラウド伝熱モデル 2) RPV 下部ヘッド損傷モデル 3) 下部プレナムデブリモデル Shroud Metal Layer Particulate Debris Core Support Plate Molten Core Core RPV Wall Molten Pool Solid Crust CR Guide Tube Fuel Support Piece Jet Pump CRD Housing Radiation HT Model between Shroud and RPV Wall Vessel Failure Mechanism Model Lower Plenum Debris Bed Layering Model Thermal Conduction from Debris to CRD Housing, Radiation HT between CRD Housings Bulk Cooling Model for the Early Phase of Water Addition on Top of Corium Corium Leakage through Sump Piping, Erosion Shape Model PCV Floor Sump Pit Model Improvements Fig.1 Outline of Model Improvement 2.3 各号機の燃料デブリ分布 改良版MAAP コードを用いて、各号機の事故進展解析を実施した。Fig. 2 に燃料デブリ分布の推定結果を示す。 1号機の場合、消防車からの注水タイミングが遅く、事故後の炉心溶融が早期に進展するため、燃料デブリの大部分が格納容器床上に流出する結果となった。 2号機の場合、消防車注水量の感度が大きいものの、想定した注水流量、およびRPV 下部ヘッド損傷モデルの改良とあいまって、RPV は損傷せず、RPV 内部に燃料デブリが留まっている結果となった。 3号機では、原子炉水位の測定値を再現するHPCI 流量を想定した場合、一部の燃料デブリは下部プレナム領域に留まるものの、大部分が格納容器床上に流出する結果となった。 なお、これらの解析結果には依然として不確かさが存在するため、解析コードの特徴や制約を踏まえ、実機から得られたデータ等も用いて、炉内状況の推定やデブリ取り出し計画策定に活用していく計画である。 Core Region PCV Region RPV Bottom Unit-1 Unit-2 Unit-3 Core Region 0 % 65 % 0 % RPV Bottom 10 % 35 % 23 % PCV Region 90 % 0 % 77 % Fig.2 Estimation of Fuel Debris Distribution 謝辞 本研究は、経済産業省 平成25年度「廃炉・汚染水対策事業費補助金(過酷事故解析コードを活用した炉内状況把握)」の一部として実施した。 参考文献 [1] 小島、他 過酷事故解析コードMAAPによる炉内状況把握に関する研究(6)~(9)、日本原子力学会“ “シビアアクシデントコードMAAP の改良と事故解析 “ “藤井 正,Tadashi FUJII,酒井 健,Takeshi SAKAI,西田 浩二,Koji NISHIDA,小島 良洋,Yoshihiro KOJIMA,千原 瑠為,Rui CHIHARA,狩野 喜二,Yoshiji KARINO
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)