高速実験炉「常陽」における炉内補修技術の開発と実践 - MARICO-2 試料部の回収-
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カテゴリ: 第12回
1.緒言
高速実験炉「常陽」(ナトリウム冷却型高速炉:熱出力140MWt)では、2007年に計測線付実験装置(以下、「MARICO-2」という。)試料部(全長約2.2m、質量約20kg)の本体からの切り離しができなかったことにより、MARICO-2試料部が、原子炉容器内の炉内燃料貯蔵ラック(以下、「炉内ラック」という。)上で変形し、通常の取り扱い手順と経路では回収することができない状況が発生した(図1)。 このため、MARICO-2試料部との接触により損傷した、炉心上部機構(以下、「UCS」という。)の交換及びMARICO-2試料部回収のための特殊な機器・装置の開発を進めてきた。 本稿では、MARICO-2試料部の回収装置(以下、試料部回収装置という。)の開発及び昨年度に実施したMARICO-2試料部回収作業について報告する。 図1 MARICO-2試料部の状況
2. MARICO-2 試料部回収に向けた技術開発
(1) 試料部回収装置の基本設計
MARICO-2 試料部の回収では、原子炉容器内に核燃料が装荷され、冷却材である約200℃のナトリウムが充填された条件下において、カバーガスであるアルゴンガス雰囲気と放射線遮へいを維持した状態で、遠隔操作によってMARICO-2 試料部を把持し、確実に回収する必要がる。このため、試料部回収装置は、原子炉容器内から吊り上げたMARICO-2 試料部を把持装置とともに原子炉上部に据付けた遮へい厚さ330mm の移送容器内に吊り上げて収容し、その移送容器ごと原子炉格納容器外に搬出する設計とした。試料部回収装置の全体概要を図2に示す。図2 試料部回収装置の全体概要(2) 把持機構(グリッパ)の設計
MARICO-2 試料部は、把持機能部品が外れ、頂部が曲がっている。このため、これを把持して原子炉容器内で落下させることなく安全・確実に回収する方法を採用する必要があった。把持機構については、最初にMARICO-2 試料部を直接把持して単体で回収する方法を検討した。本方法の適用可能性を確認するため、図3に示すように把持用の簡易冶具を試作して炉外試験を行うとともに、実際に原子炉容器内のMARICO-2 試料部を数cm引き上げる試験を実施した(図4)。この結果、MARICO-2 試料部は装荷されている移送用ポットと分離せず、移送用ポットも一緒に持ち上がることが確認された。このためMARICO-2 試料部を移送用ポットと一体(約160kg)で回収する方法を第一案とした。図3 試料部引き上げ試験状況(炉外) 図4 試料部引き上げ試験状況(炉内) 移送用ポットと一体で回収する基本設計の妥当性を確認するため、図5に示す移送用ポット模擬体とMARICO-2 試料部模擬体の隙間に1 本のポット吊り爪を差し込み吊り上げる試験冶具を設計・製作し、原子炉容器内で移送用ポットを吊り上げる試験を実施した。その結果、実機においても把持爪を挿入でき、把持可能であること、さらに、吊り上げ操作に摺動抵抗等の影響が無いことを確認した(図6)。 通常の移送用ポットの把持装置は2~3本の爪を用いるのに対し、本設計では試料部との狭い隙間を把持爪1本で把持することから、吊り上げ中の落下を確実に防止することが必要であった。このため、把持状態を3 万画素の高耐放射線性ファイバスコープ(以下、ファイバスコープ)で監視するとともに、把持爪のロック機構(爪がポットを把持すると、ロックレバーが下りて把持爪が開かないようにロックする)、吊りワイヤの多重化等の落下防止機能を設けた(図7)。 - 75 -3図5 移送用ポット吊り上げ試験状況(炉外) 図6 移送用ポット吊り上げ試験状況(炉内) 図7 移送用ポットの落下防止機構 (3) パンタグラフ機構の設計頂部が曲がったMARICO-2 試料部は通常の燃料交換機孔(直径169mm)を通過できないと判断されたことから、回収作業に先立ちUCS を撤去した開口部(直径約1m) を利用して回収することとした。しかしながら、UCS とMARICO-2 試料部が干渉するために、引き抜き前にUCS をMARICO-2 試料部の直上に配置できないため、回収作業時にMARICO-2 試料部と回収孔は同一軸上にない。このため、MARICO-2 試料部位置(移送用ポット中心軸)と回収孔である旧UCS 撤去孔中心軸の2 本の軸の相対距離を計算し、パンタグラフ機構を採用して軸位置を調整することとした(図8)。図8 試料部回収装置の基本構造 なお、回転プラグ下面(UCS 孔の周囲)には、熱遮へい板が取り付けられており、回収時にUCS 撤去孔中心軸と移送用ポット中心軸がずれたまま鉛直に吊り上げると、移送用ポットが炉内ラックから抜けきる前に、上方の熱遮へい板と干渉する。このため、パンタグラフ機構は、上部アーム・下部アームを別々に操作できるようにし、移送用ポットを熱遮へい板の直下まで鉛直に引き抜いた後、先に上部アームを閉じつつ斜め上に引き上げる回収動作を採用した(図9)。- 76 -4この傾斜吊り上げ機構については、把持機構と同様、設計の妥当性を確認するため、実機寸法で部分構造の模擬体を製作し、機能の検証を実施した。図9 パンタグラフ機構の傾斜機能(4)その他の設計 MARICO-2 試料部を収納した移送用ポット内はナトリウムが入った状態となるため、回収後のMARICO-2 試料部を照射後試験施設に搬出するには、移送用ポット内のナトリウムをドレンする必要があった。よって、試料部回収装置はMARICO-2 試料部を回収後、凝固したナトリウムを溶かすための電気ヒータを装備し、図10に示すように横置き状態で斜めに傾けて溶融したナトリウムを移送用ポットからナトリウム回収容器にドレンする構造とした。 図10 ナトリウムドレン作業状況 3.回収装置の製作・機能試験 2014 年1 月末までに図7に示した装置・機器類の製作を完了し、同1 月末から3 月中旬にかけて機能試験を実施した。機能試験に用いた装置外観を図11に示す。機能試験では、回収装置を据え付ける原子炉容器から下の内部構造を部分的に模擬し、その上に実機に使用する回収装置を設置した。機能試験では装置単体の調整、機能確認はもとより、現地回収作業の通常手順、異常時の対応に係る操作試験を行い、各装置が設計どおりの性能を発揮することを確認した。また、これらを用いて現地の回収作業操作の習熟を図るための操作訓練を実施した。図11 機能試験の装置外観 機能試験においては、実際の回収に向けて幾つかの改善点が確認されたことから、以下の手直し等を実施した。(1)把持機構ロックレバーの視認性の改善落下防止機構の把持爪ロックレバーは、機能試験により確実に動作することを確認できたが、実際の原子炉容器内の回収作業では、ファイバスコープを用いた炉内作業監視装置の映像だけで状況を判断する必要がある。このため、ロックレバーの動作を炉内作業監視装置で視認できるよう、視界を遮る把持機構のカバーを取り外した(図12)。- 77 -5(2)移送用ポット格納高さの視認方法の改善図9に示したとおり、移送用ポットの引き上げとパンタグラフ機構の格納操作は、回転プラグ下面の熱遮へい板を回避しつつ実施する。また、移送用ポットを案内筒内に格納した際、引き上げ過ぎていた場合、把持機構が案内筒から抜けてしまう一方、引き上げ不足であった場合には、移送用ポット落下時の衝撃を吸収するためにガイド管の下端に設置してある落下緩衝器と干渉する可能性がある。このため、回収作業時の引き上げ位置を正確に確認する必要があった。案内筒には内部の移送用ポットを視認できるよう、予めスリット部を設けてあるため、機能試験において適切な引き上げ位置となった際に、移送用ポットのテーパ部と一致するスリット部外周の位置に、図13に示すよう、目印のケガキを入れた。図12 把持機構ロックレバー視認性の改善図13 移送用ポット格納高さの視認方法の改善4.MARICO-2 試料部の回収 MARICO-2 試料部の回収作業は、2014 年3 月上旬に試料部回収装置を現地に搬入し、3 月下旬に組み立て、検査(耐圧・漏洩、作動)を順次実施した。6 月下旬に旧UCS 撤去作業を完了後、撤去孔を一時的に閉止する仮閉止プラグを挿入した。その後、仮閉止プラグ上にバウンダリ構成機器を設置し、7 月上旬にMARICO-2 試料部の把持機構及びパンタグラフ機構を内蔵したガイド管を原子炉容器内に挿入した。引き続き、原子炉容器内の高温・高放射線環境条件の下での作動試験を行い、把持機構及びパンタグラフ機構が正常に作動することを確認し、9 月中旬に移送用ポットを把持してMARICO-2 試料部をガイド管内へ格納するため、原子炉容器内で数日間の位置決め調整を行い、9 月末には図14に示す試料部回収装置を据え付け、MARICO-2 試料部の試料部回収装置内への収納を完了した。その後、試料部回収装置を原子炉建家に隣接するメンテナンス建家に搬出し、移送用ポット内のナトリウム回収作業を実施した。その後、移送用ポットを移送用の缶に封入し、10 月末に照射後試験施設への移送を完了した。照射後試験施設に移送する前に確認した移送用ポットの外観を図15に示す。図14 試料部回収装置の据付 - 78 -6図15 回収された移送用ポットの外観 5.まとめ 現在、「常陽」では、燃料交換機能の復旧のためのMARICO-2試料部回収作業とUCS交換作業を終了し、回転プラグの復旧作業を進めている。また、MARICO-2試料部については、照射後試験施設においてX線CTスキャンによる内部の状況等の確認を進めている。MARICO-2試料部の回収では、回収計画立案時の実機原子炉内の調査と長年蓄積し、実証してきた原子炉容器内での遠隔技術を反映した装置設計、作業計画の検討に加え、装置製作後の機能試験を通し、作業手順の詳細検討と作業操作の習熟を図ったことにより、安全かつ確実に作業を完遂することができた。参考文献[1] 小林孝良: “高速炉の原子炉容器内観察・補修技術開発高速実験炉「常陽」の復旧に向けた取り組み”, 日本原子力学会,日本原子力学会誌Vol.54,10 号pp.664-666 (2012) [2] 芦田貴志,伊東秀明他: “「常陽」における燃料交換機能の復旧作業状況”, 平成26 年度弥生研究会「研“ “高速実験炉「常陽」における炉内補修技術の開発と実践 - MARICO-2 試料部の回収- “ “皆藤 泰昭,Yasuaki KAITO,芦田 貴志,Takashi ASHIDA,今泉 和幸,Kazuyuki IMAIZUMI,伊澤 修,Osamu IZAWA,内藤 裕之,Hiroyuki NAITO
高速実験炉「常陽」(ナトリウム冷却型高速炉:熱出力140MWt)では、2007年に計測線付実験装置(以下、「MARICO-2」という。)試料部(全長約2.2m、質量約20kg)の本体からの切り離しができなかったことにより、MARICO-2試料部が、原子炉容器内の炉内燃料貯蔵ラック(以下、「炉内ラック」という。)上で変形し、通常の取り扱い手順と経路では回収することができない状況が発生した(図1)。 このため、MARICO-2試料部との接触により損傷した、炉心上部機構(以下、「UCS」という。)の交換及びMARICO-2試料部回収のための特殊な機器・装置の開発を進めてきた。 本稿では、MARICO-2試料部の回収装置(以下、試料部回収装置という。)の開発及び昨年度に実施したMARICO-2試料部回収作業について報告する。 図1 MARICO-2試料部の状況
2. MARICO-2 試料部回収に向けた技術開発
(1) 試料部回収装置の基本設計
MARICO-2 試料部の回収では、原子炉容器内に核燃料が装荷され、冷却材である約200℃のナトリウムが充填された条件下において、カバーガスであるアルゴンガス雰囲気と放射線遮へいを維持した状態で、遠隔操作によってMARICO-2 試料部を把持し、確実に回収する必要がる。このため、試料部回収装置は、原子炉容器内から吊り上げたMARICO-2 試料部を把持装置とともに原子炉上部に据付けた遮へい厚さ330mm の移送容器内に吊り上げて収容し、その移送容器ごと原子炉格納容器外に搬出する設計とした。試料部回収装置の全体概要を図2に示す。図2 試料部回収装置の全体概要(2) 把持機構(グリッパ)の設計
MARICO-2 試料部は、把持機能部品が外れ、頂部が曲がっている。このため、これを把持して原子炉容器内で落下させることなく安全・確実に回収する方法を採用する必要があった。把持機構については、最初にMARICO-2 試料部を直接把持して単体で回収する方法を検討した。本方法の適用可能性を確認するため、図3に示すように把持用の簡易冶具を試作して炉外試験を行うとともに、実際に原子炉容器内のMARICO-2 試料部を数cm引き上げる試験を実施した(図4)。この結果、MARICO-2 試料部は装荷されている移送用ポットと分離せず、移送用ポットも一緒に持ち上がることが確認された。このためMARICO-2 試料部を移送用ポットと一体(約160kg)で回収する方法を第一案とした。図3 試料部引き上げ試験状況(炉外) 図4 試料部引き上げ試験状況(炉内) 移送用ポットと一体で回収する基本設計の妥当性を確認するため、図5に示す移送用ポット模擬体とMARICO-2 試料部模擬体の隙間に1 本のポット吊り爪を差し込み吊り上げる試験冶具を設計・製作し、原子炉容器内で移送用ポットを吊り上げる試験を実施した。その結果、実機においても把持爪を挿入でき、把持可能であること、さらに、吊り上げ操作に摺動抵抗等の影響が無いことを確認した(図6)。 通常の移送用ポットの把持装置は2~3本の爪を用いるのに対し、本設計では試料部との狭い隙間を把持爪1本で把持することから、吊り上げ中の落下を確実に防止することが必要であった。このため、把持状態を3 万画素の高耐放射線性ファイバスコープ(以下、ファイバスコープ)で監視するとともに、把持爪のロック機構(爪がポットを把持すると、ロックレバーが下りて把持爪が開かないようにロックする)、吊りワイヤの多重化等の落下防止機能を設けた(図7)。 - 75 -3図5 移送用ポット吊り上げ試験状況(炉外) 図6 移送用ポット吊り上げ試験状況(炉内) 図7 移送用ポットの落下防止機構 (3) パンタグラフ機構の設計頂部が曲がったMARICO-2 試料部は通常の燃料交換機孔(直径169mm)を通過できないと判断されたことから、回収作業に先立ちUCS を撤去した開口部(直径約1m) を利用して回収することとした。しかしながら、UCS とMARICO-2 試料部が干渉するために、引き抜き前にUCS をMARICO-2 試料部の直上に配置できないため、回収作業時にMARICO-2 試料部と回収孔は同一軸上にない。このため、MARICO-2 試料部位置(移送用ポット中心軸)と回収孔である旧UCS 撤去孔中心軸の2 本の軸の相対距離を計算し、パンタグラフ機構を採用して軸位置を調整することとした(図8)。図8 試料部回収装置の基本構造 なお、回転プラグ下面(UCS 孔の周囲)には、熱遮へい板が取り付けられており、回収時にUCS 撤去孔中心軸と移送用ポット中心軸がずれたまま鉛直に吊り上げると、移送用ポットが炉内ラックから抜けきる前に、上方の熱遮へい板と干渉する。このため、パンタグラフ機構は、上部アーム・下部アームを別々に操作できるようにし、移送用ポットを熱遮へい板の直下まで鉛直に引き抜いた後、先に上部アームを閉じつつ斜め上に引き上げる回収動作を採用した(図9)。- 76 -4この傾斜吊り上げ機構については、把持機構と同様、設計の妥当性を確認するため、実機寸法で部分構造の模擬体を製作し、機能の検証を実施した。図9 パンタグラフ機構の傾斜機能(4)その他の設計 MARICO-2 試料部を収納した移送用ポット内はナトリウムが入った状態となるため、回収後のMARICO-2 試料部を照射後試験施設に搬出するには、移送用ポット内のナトリウムをドレンする必要があった。よって、試料部回収装置はMARICO-2 試料部を回収後、凝固したナトリウムを溶かすための電気ヒータを装備し、図10に示すように横置き状態で斜めに傾けて溶融したナトリウムを移送用ポットからナトリウム回収容器にドレンする構造とした。 図10 ナトリウムドレン作業状況 3.回収装置の製作・機能試験 2014 年1 月末までに図7に示した装置・機器類の製作を完了し、同1 月末から3 月中旬にかけて機能試験を実施した。機能試験に用いた装置外観を図11に示す。機能試験では、回収装置を据え付ける原子炉容器から下の内部構造を部分的に模擬し、その上に実機に使用する回収装置を設置した。機能試験では装置単体の調整、機能確認はもとより、現地回収作業の通常手順、異常時の対応に係る操作試験を行い、各装置が設計どおりの性能を発揮することを確認した。また、これらを用いて現地の回収作業操作の習熟を図るための操作訓練を実施した。図11 機能試験の装置外観 機能試験においては、実際の回収に向けて幾つかの改善点が確認されたことから、以下の手直し等を実施した。(1)把持機構ロックレバーの視認性の改善落下防止機構の把持爪ロックレバーは、機能試験により確実に動作することを確認できたが、実際の原子炉容器内の回収作業では、ファイバスコープを用いた炉内作業監視装置の映像だけで状況を判断する必要がある。このため、ロックレバーの動作を炉内作業監視装置で視認できるよう、視界を遮る把持機構のカバーを取り外した(図12)。- 77 -5(2)移送用ポット格納高さの視認方法の改善図9に示したとおり、移送用ポットの引き上げとパンタグラフ機構の格納操作は、回転プラグ下面の熱遮へい板を回避しつつ実施する。また、移送用ポットを案内筒内に格納した際、引き上げ過ぎていた場合、把持機構が案内筒から抜けてしまう一方、引き上げ不足であった場合には、移送用ポット落下時の衝撃を吸収するためにガイド管の下端に設置してある落下緩衝器と干渉する可能性がある。このため、回収作業時の引き上げ位置を正確に確認する必要があった。案内筒には内部の移送用ポットを視認できるよう、予めスリット部を設けてあるため、機能試験において適切な引き上げ位置となった際に、移送用ポットのテーパ部と一致するスリット部外周の位置に、図13に示すよう、目印のケガキを入れた。図12 把持機構ロックレバー視認性の改善図13 移送用ポット格納高さの視認方法の改善4.MARICO-2 試料部の回収 MARICO-2 試料部の回収作業は、2014 年3 月上旬に試料部回収装置を現地に搬入し、3 月下旬に組み立て、検査(耐圧・漏洩、作動)を順次実施した。6 月下旬に旧UCS 撤去作業を完了後、撤去孔を一時的に閉止する仮閉止プラグを挿入した。その後、仮閉止プラグ上にバウンダリ構成機器を設置し、7 月上旬にMARICO-2 試料部の把持機構及びパンタグラフ機構を内蔵したガイド管を原子炉容器内に挿入した。引き続き、原子炉容器内の高温・高放射線環境条件の下での作動試験を行い、把持機構及びパンタグラフ機構が正常に作動することを確認し、9 月中旬に移送用ポットを把持してMARICO-2 試料部をガイド管内へ格納するため、原子炉容器内で数日間の位置決め調整を行い、9 月末には図14に示す試料部回収装置を据え付け、MARICO-2 試料部の試料部回収装置内への収納を完了した。その後、試料部回収装置を原子炉建家に隣接するメンテナンス建家に搬出し、移送用ポット内のナトリウム回収作業を実施した。その後、移送用ポットを移送用の缶に封入し、10 月末に照射後試験施設への移送を完了した。照射後試験施設に移送する前に確認した移送用ポットの外観を図15に示す。図14 試料部回収装置の据付 - 78 -6図15 回収された移送用ポットの外観 5.まとめ 現在、「常陽」では、燃料交換機能の復旧のためのMARICO-2試料部回収作業とUCS交換作業を終了し、回転プラグの復旧作業を進めている。また、MARICO-2試料部については、照射後試験施設においてX線CTスキャンによる内部の状況等の確認を進めている。MARICO-2試料部の回収では、回収計画立案時の実機原子炉内の調査と長年蓄積し、実証してきた原子炉容器内での遠隔技術を反映した装置設計、作業計画の検討に加え、装置製作後の機能試験を通し、作業手順の詳細検討と作業操作の習熟を図ったことにより、安全かつ確実に作業を完遂することができた。参考文献[1] 小林孝良: “高速炉の原子炉容器内観察・補修技術開発高速実験炉「常陽」の復旧に向けた取り組み”, 日本原子力学会,日本原子力学会誌Vol.54,10 号pp.664-666 (2012) [2] 芦田貴志,伊東秀明他: “「常陽」における燃料交換機能の復旧作業状況”, 平成26 年度弥生研究会「研“ “高速実験炉「常陽」における炉内補修技術の開発と実践 - MARICO-2 試料部の回収- “ “皆藤 泰昭,Yasuaki KAITO,芦田 貴志,Takashi ASHIDA,今泉 和幸,Kazuyuki IMAIZUMI,伊澤 修,Osamu IZAWA,内藤 裕之,Hiroyuki NAITO